特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『犬王』

 今日の東京は一日中 雨が降り続きました。関東甲信は梅雨入りだそうです。早く梅雨入りしたんですから早く梅雨が終わる?といいな。
エリザベス女王なんかどーでもいいけど、パディントン、大好き。ベン・ウィショーの声もぴったり。


 土曜日の新聞に『出生率が6年連続下がり続けている』というニュースが載っていました。出生者数は81万人と前年比3万人減。


 
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 記事によると原因は女性人口の減少と20代の出生率低下に加えて、コロナ禍で21年の婚姻件数は50万件と戦後最少だったことが影響したそうです。

 人口が減る、ということは国内の経済がどんどん縮小していく、ということです。どんな企業だって先行きのことは考えますから、人口が減少する国内に工場を作ったり支店をつくるよりは海外へ進出しよう、ということになります。ただでさえ悪い景気がますます悪くなる。年金だけでなく、水道や鉄道、医療、福祉など社会的インフラの存続も心配です。

 もともと日本の出生率は先進国の中でも低いことで知られています。

 原因の一つに女性の家事負担が大きいことがあります。アホな男女の性別分業意識に加えて、国の子育て関連予算が少ない分、女性に負担が回っている。育児への社会的サポートが少なすぎる。そりゃあ、誰が子供なんか作るか、って話になります。


www.nikkei.com

 一度は経済大国として世界に名をはせた日本ですが、今や政治の無策と男どもが家事をしないせいで日は沈んでいきます。そのスピードは年々早くなっている。

 日本はSDGsの17の目標のうち「ジェンダー平等」、「気候変動対策」、「海の環境保全」、「陸の環境保全」、「パートナーシップ推進」、持続可能な生産・消費を目指す「つくる責任、つかう責任」が最低評価だそうです。

 SDGsとかいうと『偽善』ということばを直ぐ発想してしまうのですが、今の日本が持続不可能になりつつあるのは間違いありません。
 他国が侵略してくるとかではなく、男が家事をサボって滅んだマヌケな国家なんて、未来の歴史に燦然と輝く存在じゃないですか(笑)。



 と、いうことで、新宿で映画『犬王

舞台は南北朝時代。壇之浦で死んだ武士たちの呪いにより盲目となった琵琶法師の少年・友魚は猿楽一座に生まれた異形の少年、犬王と出会う。異様な風貌を隠すように面をかぶせられた犬王と友魚は、壇之浦で亡くなった武士たちを主人公にしたもう一つの平家物語を歌と舞で表現するようになる。『報われない者たちの物語』を歌と踊りで表現する二人に、足利将軍義満が目をつけるが
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 ネットフリックスで大ヒットしたアニメ『デビルマン クライベイビー』や『日本沈没2020』(どちらもボクは未見)で話題になった湯浅政明監督が、古川日出男の小説「平家物語 犬王の巻」をアニメ化。室町時代に人々を魅了した実在の能楽師と相棒となった琵琶法師の運命を描いたロックミュージカル。脚本は『逃げ恥』などの野木亜紀子、キャラクター原案を「ピンポン」などの漫画家・松本大洋、音楽は大友良英。声は、犬王をロックバンド「女王蜂」のアヴちゃん、相棒の友魚を森山未來。 

 アニメ作品ということで最初はスルー予定でしたが、非常に評判が良いのと音楽が大友良英なので見に行った次第。

 お話は壇之浦の戦いから始まります。安徳天皇を始め、多くの武士たちが海の藻屑となって消えていった。南北朝時代の今もその恨みは波間に漂っている。漁師の息子だった友魚は亡霊の祟りを受けて失明、琵琶法師となり平家の物語を語ることで生計を立てるようになります。
●壇之浦の漁村で生まれた友魚(声、森山未來

 都に流れ着いた友魚は異形を仮面で隠した猿楽師、犬王と出会います。犬王の身体には亡霊が取りついており、異形の姿になっているのです。
●呪いで失明した友魚は琵琶法師になり、京の街で異形の者、犬王(声、ロックバンド’’女王蜂’’のアヴちゃん)と出会います。

 
 ともに社会から外れた存在である友魚と犬王は意気投合、従来の平家物語とは異なる、非業の死を遂げた亡霊たちの物語を歌と舞で表現するようになります。二人は語るべきことを見つけたのです。
●異形の猿楽師、犬王。当初は異形の顔に身体にウロコ、片方の腕だけが異様に伸びています。

 友魚と犬王のステージ?シーンは素晴らしい。アニメごときと思っていたので期待していなかったですが、驚くようなシーンが多々あった。あまり良い曲はないけど、琵琶の音色と60年代っぽいロックを混ぜた演奏も当時の時代考証を反映させた踊りや舞台装置も独創的です。 アヴちゃんと森山未來の歌もそんなに悪くない。

 この映画、これだけで充分に価値があります。日本的な要素、時代劇の要素を組み合わせてロックオペラになっている。強いて言えばデビッド・ボウイが演じたキャラクター、ジギー・スターダストの影響はどうしても透けて見えますが、ここまで消化して独創的なものになっていれば全然OK。本気で興奮しました。本当に素晴らしい。

●犬王が舞い踊るたびに、亡霊たちの呪いが解けて異形の姿が変わっていきます。

 人気者になっていく友魚と犬王に、権力を掌握しつつあった将軍、足利義満が目をつけます。世の中の秩序や常識とは関係なく、自由気ままに物語を奏でる犬王たちは権力にとって邪魔なのです。民衆の自由な表現を嫌うのはナチや大日本帝国チェコ東ドイツソ連などの旧共産主義国、それに中国やロシア、ヤジまで排除する安倍晋三も一緒です。

 ステージシーンの素晴らしさに比して、 情報量が多いお話は展開がちょっと粗かったなーとは思います。中盤まではわくわくするようなお話が続いていましたが、クライマックス以降 無理して伏線を回収しようとして、とっちらかってしまった感は否めません。それに伏線が多すぎる。映画の冒頭で語られた通り、『報われない者たちの物語』にもっと焦点を絞っていれば大傑作になったと思います。

 ただ、これだけ独創的なものを見せてもらえれば、全然文句はない。今まで見たことがないようなものを見せてもらった。世界に通じる表現を持つ映画だと思います。面白かったです。

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