特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『国際特集』:『アジア最新情報』とBS世界のドキュメンタリー「戦時下の大統領 ゼレンスキー」

 桜は、すっかり散ってしまいましたが、今度はつつじが咲き誇っています。なんだかんだ言って、世界って良く出来ています。って言うか、元来 人間の感性は自然に沿っているものなのでしょう。
 つつじの他にも花は咲いてますが、ボクは植物の名前は全然わかりません(笑)。とにかく綺麗です。
 毎日の辛さをお花が一瞬でも慰めてくれるのはホント、ありがたいです。

●六本木の新国立美術館。様々な色のつつじがきれいでした。
 


 楽しいゴールデンウィークですが、経済の方は心配です。
 もの凄い勢いで円安が進んでいます。ただでさえ資源高のところに円安ですから、ますます物価は上がる
 昭和の時代なら国内で生産したものを輸出して食っていましたから円安はOKでした。しかし今は工場なんかとっくに海外移転しています。例えばトヨタの自動車生産台数は年間で858万台、そのうち日本で作っているのはその3分の1の276万台です。
www.fnn.jp

 輸出企業ですらこれが実態です。円安が進めば進むだけ資源を輸入しなければやっていけない日本は貧乏になる、ということです。日本の企業や土地が割安になって外国企業からの買収も進むでしょう。
 でも円安を止めるために金利を上げたら借金が残っている企業、特に中小はバタバタ潰れる。失業補償を拡充してゾンビ企業を潰していくのは長期的には良いかもしれませんが、社会的には難しい。金融緩和を進めて円安をもたらしたアベノミクスという政策は、日本経済そのものを麻薬中毒にするようなものでした。

アベノミクスのツケ、どうするんだよ(沈む船を止める手はない)


 さて、今日は国際特集です(笑)。

 最初は 身近なアジア事情から。
 上海の方はロックダウンが続いています。ちょっと前に勤務先の現地の人から話を聞きましたがspyboy.hatenablog.com、また、最新の話を聞きました。

 TVで報じられている’’食料がない’’というのは主に貧困層の人が住んでいる地域、と言っていました。他の地域は不便はあるけど大きな問題はないと、言ってました。ただ、ビールが切れた!と、文句は言ってました(笑)。

 先々週くらいまでは全然問題なかったそうですが(地域差はある)、中国流の完全ロックダウン!が1か月を迎えて『流石にやばい』となってきたようです。社会活動がほぼ止まっているんです。

 日系企業で言えば、4半期決算が出来なかったり、従業員に給与が払えないなどの問題が起きています。ロックダウンで会社に出社できないのですから、決算どころか、給与だって払える訳がありません。決算が出来なかったら、日本の本社の四半期決算にも影響が出る。給与が払えなかったら、現地の従業員の反乱がおきる(笑)。

 ただし、さすが中国で、共産党に●ネがあれば何とかなるそうです。安倍晋三と同じ『人治主義』(法律無視のコネ社会)(笑)。具体的な例としては医療や警察など緊急車両は通行OKなので、コ●を使って救急車をタクシー代わりに使って出社させて給与の支払い手続きをさせたなんて企業の話も聞きました(笑)。

 それでも、さすがに従業員が大勢出社する訳にはいきません。工場はほぼ全て止まっている。と、なると、これから日本にも供給の問題が出てきます。結論として、『これ以上長引くとやばい』そうです。日本の景気にも影響がでてくるでしょう。中国共産党はゼロコロナ政策を見直す気はあるのでしょうか。
 やっぱり間違いを認めない政府って恐ろしい。いまだにPCR検査を拡充しない日本も同じですが。

 ついでにベトナムのお話です。一時帰国した人に話を聞きました。
 あちらではロシアの侵略戦争に対する反感は殆どないそうです。国民感情面では今でもロシアとつながりが強くて、冷凍保存して展示しているホーチミンの遺骸を毎年モスクワに送ってメンテしているほどだそうです。今のロシアは共産主義国ではありませんが、まだまだつながりは強いみたいです。
 ボク自身は、社会主義国と言ってもベトナムは西側への輸出で経済が成り立っていますから実質的に資本主義国か、と思っていたのですが、間違っておりました(笑)。

 国連総会でロシア非難決議を棄権した国は幾つもありましたが、そういうつながりがある国は他にもあるんでしょう。ボクがキューバ人だったら、苦しい時助けてくれたロシアの味方をするのは判らないでもない(笑)。
 やっぱり戦争の恨みは長く残る。そして、困ったときに助けたら覚えていてくれる。どこかの恥知らずな国は政府からして健忘症みたいですが(怒)。


 
 おまけ
 冗談が大好きな某大学の学長さんの話を聞きました。この、プーチンとグデーレス国連事務総長の会談の机の距離、’’まるで自分の家みたいだ’’と言ってました。彼は三世帯同居だそうですが、コロナ対策の為 お孫さんとこれくらい?距離を離さなければ、一緒にご飯を食べさせてもらえないそうです( ´艸`)。 

グテレス国連総長と会談のプーチン氏、歩み寄り見せず…停戦交渉停滞でウクライナ非難:写真 : 読売新聞オンライン



 この前の 日曜夜、NHK-BS1でやっていたドキュメンタリー「戦時下の大統領 ゼレンスキー」、面白かったです。
www.nhk.jp

 今年作られたばかりのドイツ制作のドキュメンタリーです。もともとボク自身はゼレンスキー大統領自体にそれほど知識も興味もなかったのですが、ユニークなお話でした。
 
 皆さん、ご存じのようにゼレンスキーは元コメディアン。彼が脚本を書いたテレビのコメディドラマ『国民のしもべ』で大統領役を演じて人気を博し、そのまま大統領になってしまった、という人です。

www.youtube.com

元々コメディアンとして人気だったゼレンスキーに資金を出してテレビドラマをやらせたのは親ロ派のオリガルヒ(イゴール・コロモイスキー)だったそうです。放送したTV局も親ロシア派のオリガルヒが運営していた。
 選挙戦中もそのことが突っ込まれたそうですし、当初の彼は親ロシア派と評されることもあったようです。

 当時のウクライナは政治腐敗、経済低迷、それにロシアのクリミア併合に加えてドンバス地方への侵攻、と問題山積でした。そういう時期だったからこそ清新なイメージがある彼が選ばれました。

 行政経験のない全くの政治素人だった彼は外国に向かって、きちんと意思表示できるか危惧されていました。ドイツとフランスの仲介でプーチンと和平会談をしても埒が明かなかった。2000年の大統領選の際 トランプが4億ドルの軍事援助と引き換えにバイデンの息子の不正の証拠を調査しろと圧力をかけてきた際も、消極的に拒否するだけでした。
 これらの姿勢がプーチンに舐められた、という見方は確かにあるのでしょう。

 更に昨年秋 エリザベス大統領、プーチン、ブレア元首相などタックスヘイブンを利用していた政治家や有名人を暴いたパンドラ文書(パナマ文書の続編です)の中でゼレンスキーの名が挙がりました。コメディアン時代の財産を、タックスヘイブンを利用して国外に置いていたのです。 

 もちろんタックスヘイブンの利用は違法ではありません。日本の銀行だって、海外に投資する際はタックスヘイブンの活用を普通に勧めてきます。法制度の問題です。ただし、国民的人気だけが資産のゼレンスキーには打撃は大きい。


www.chunichi.co.jp


孫正義氏やドンキ創業者… 日本の財界人も多数登場 租税回避地巡る「パンドラ文書」|【西日本新聞me】

https://www.bbc.com/japanese/58784715

 しかし、ロシアとの関係が緊迫するに従い、ゼレンスキーは変化を見せます。
 彼を応援していた親ロシア派のオリガルヒを切り捨て、『国民のしもべ』を放送していた親ロシア派が経営しているテレビ局も閉鎖させます。と、同時に国民や世界に対する呼びかけを始める。『自由と尊厳以外我々は失うものはない。我々は奴隷にならない。それが我々の意志だ。
 ロシア軍が攻め込めばゼレンスキーは直ぐ逃亡すると思っていたプーチンの思惑とは正反対、文字通り命を懸けた訴えを続け、国民を団結させた。
 あとは皆さん、ご存じの通りです。

 ロシアとの紛争がこれからどうなるか、それは分かりません。
 それでもゼレンスキーは『ウクライナの子供たちに、大人たちがどう行動したか、という記憶を受け継がせたい』と言います。『世界中の人たちが我々がとった行動を記憶に刻んでいる。将来 新たな国難が起きても、その記憶がウクライナの子供たち、孫たちを助ける力になる』と言うのです。

 これは阿片戦争で清の政治家、林則徐がイギリスと戦った理由と同じです。林則徐は戦争覚悟でイギリスからの阿片密輸を取り締まり、没収して焼き捨てました。
 当時の超大国イギリスに麻薬を押し付けられて何も抗議しなければ中国の精神そのものが弛緩する。たとえ負けるに決まっていても不正に対して戦った記憶が100年後に国を再興させる、と林則徐は考えていたようです。偏狭なナショナリズムになりかねない問題もありますが、林則徐の考えは正しかった。今の発展した中国があるのも、阿片戦争で軍だけでなく民衆もイギリスに抵抗した記憶が大いに助けになったに違いありません。

 民間人への虐殺が多数発生していることからわかるように、ロシア相手に無条件降伏しても、国民の命が助かるとは限りません。世の中にはそういう相手もいるのは事実。
 ロシアは既にモルドバにだって食指を伸ばしているのですから、ウクライナの次はバルト三国ポーランドフィンランドだって危ない可能性は高い。ゼレンスキーが『ウクライナはヨーロッパ全体のために戦っている』と言っているのは一理あります。

 平和主義で平和や自由を守れるとは限りません(守れることもあるでしょうけど)。『常に戦っていなければ自由は得ることはできない』とゼレンスキーは言っていました。民主主義と同じですね。
 考えさせられるドキュメンタリーでした。5月4日に再放送があります。