特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『アンネ・フランクと旅する日記』

 楽しい楽しい3連休。毎度のことながら、会社に行かなくっていいだけでこんなに毎日が楽しいとはなあ。

 3月17日は以前飼っていた犬の命日だったので、日曜日にお墓参りに行ってきました。人間の墓参りは全く興味ないんですが、毎年はるばる深大寺まで出かける犬のお墓参りはそれだけで厳かな気持ちになるし、犬のことを思い出すきっかけになって少しうれしい。いつか自分が向うへ行くときのことも想像してしまいます。
●お墓詣りのあとはお茶と桜の水ようかん。美味しかった。


 近大が卒業式に安倍晋三を呼んだそうです。このプロモビデオ、とにかく恥ずかしい(失笑)。

 大学って一応 知に関わる組織の筈ですが、知なのか痴なのか、近大もいよいよ怪しくなってきました(笑)。


 ウクライナの件、避難民が1000万人にも達するそうです。国民の4人に一人。スターリンの侵略に国中が文字通り血みどろになって抵抗したフィンランドの冬戦争・継続戦争では被災者は国民の6人に一人だったそうですから、ウクライナの事態が如何にひどいかが分かります。

 そんな時に鳥越俊太郎や孫崎亨が『ゼレンスキーに国会で演説させるな』と言っているのは呆れました。

 別にゼレンスキーの肩を持つ気はありませんが、一方的に武力で攻め込んできたのはどこの国なのか。莫大な数の避難民や民間人の犠牲を発生させたのはプーチンじゃないのか。

 ボクも以前の都知事選では小池も共産党も嫌だったので鳥越に投票しましたけど、こんな喧嘩両成敗みたいな思考停止から抜けきれないのは、鳥越は既に耄碌してしまっているからでしょう。こういう連中が護憲とか言ってるから、世間からは怪しく見られる。

 現実に起きる様々な事件は『バカのリトマス試験紙』です。

鳥越俊太郎橋下徹のように日頃はえらそーなことを言っていても、いざ現実にぶち当たると、何の役にも立たない机上の空論に逃げ込む連中が如何に多いことか。バカに右左って関係ないんですよね。



 と、いうことで、日比谷で映画『アンネ・フランクと旅する日記

 舞台はオランダ・アムステルダム。第二次大戦中 アンネフランクが住んでいた家は現在は博物館になっており、オリジナル版のアンネの日記が保管されている。ある嵐の晩、その日記の文字が突然動き始め、アンネが日記で会話していた想像上の友人キティーが現代のオランダに現れる。自分は1944年にいると思っている彼女は、親友のアンネを捜してアムステルダムの街を探し始めるが

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 監督と脚本を手掛けるのは『戦場でワルツを』が第81回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたイスラエルアリ・フォルマン。当初はスルー予定でしたが映画館で予告編を見て感心したので、見に行きました。80年前の『アンネの日記』が現代のお話として展開される、というところに想像力の豊かさを感じたのです。

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 お話は現代のアムステルダム、嵐の晩 博物館になっているアンネ・フランクの隠れ家に展示されているオリジナル肉筆の『アンネの日記』が動き始め、アンネが日記で話し相手にしていた架空の友人、キティが蘇るところから始まります。

●アンネ(左)とキティ(右)

 目覚めたキティがアンネと暮らしていた家は80年前のままです。しかし、アンネたち家族はそこにはいない。アムステルダムの街へ出ると、通りや学校、病院と、そこいら中にアンネ・フランクの名前がついている。でも、アンネたちはどこへ行ってしまったのか。キティは街を彷徨いながら探し始めます。

 お話はアンネの日記の中身、つまり80年前に起きていたことと現在が交錯しながら進んでいきます。80年前は幸せに暮らしていた一家でしたが、

 ユダヤ人差別が目に見えて酷くなり、やがて子供たちが収容所に強制収容されるようになる。そして強制収容から逃れるためにアンネたちの家族は隠し部屋に隠れたこと、

 息をひそめながら、飢えに苦しみ、戦争が終わるのを待っていたこと、などが語られます。

 そして、現代。街を歩くとアフリカ系やアラブ系、アジア系など多種多様な人たちがいます。

 中には内戦や独裁に晒されたマリなどアフリカの国々から逃れてアムステルダムにやってきた人たちがいる。廃屋のビルに住み着いている人たちもいる。まるでアンネたちが住んでいた隠れ家のようです。
 そしてキティは警察が難民たちを車両に収容しているのを目撃します。彼女にとっては、現代でもナチスの強制収容と似たようなことが行われているように見える。


 
 キティは警察から逃げ回りながら、アンネたちがどこへ行ってしまったのか探し続けます。

 やがて彼女はアンネたちの運命を知るときが来ます。連合軍が迫ってくる中 解放を待ちわびていたアンネたちが乗せられたのは収容所行き最後の汽車だったそうです。
 アウシュビッツを訪れ、アンネたちに何が起きたのか理解したあと アムステルダムに戻ったキティは難民たちが強制送還されようとしている光景を目にします。今度は彼女は難民たちのために自ら戦うことを選びます。

 努めて現代的なお話です。かってのユダヤ人と難民を重ねて見る視線に加えて、どうしたって今は爆撃の下 ウクライナで暮らす人々を思い起こしてしまいます。WW2でも現在でも子供が戦禍に晒される、という非人間的な事態が普遍的なことになってしまっているわけです。
 
 劇中『アンネの日記は良く知られているが、アンネたちに起きたことをきちんと知っている人は少ない』というセリフが挿入されます。鳥越俊太郎橋下徹のような連中が典型です。
 この映画では、ユダヤ人が強制収容されるに至る迄の経緯、隠れ家での生活の実態、そしてアウシュビッツで何が行われたのか、が丁寧に描かれます。実写だったら厳しい表現になりますが、素直に入ってくるのはアニメだからでしょう。

 ボクはアニメの絵とかは良く判りませんが、女の子が疾走するところやキティが空気と一体化するところなど絵の表現は非常に宮崎駿っぽいと思った。監督は『もののけ姫』と『崖の上のポニョ』が大好きだそうですが、映画の見やすさにもつながっています。
 あと、カレンO(ロックバンド’’ヤー・ヤ―・ヤーズ''のVo)という人が担当した音楽が異常にカッコいい。80年前のアンネ・フランクのことを描いたにも拘わらず、映像も音楽も現代的でセンスがいい。


 クリエイティブな発想、優れた映像・音楽の中に、子供たちを戦禍にさらしてはいけないという強い意志が込められた素晴らしい作品です。極限の状況下にあっても『人間の本性は善である』と信じていたアンネの信念が受け継がれています。

 監督がイスラエル人という事で、イスラエル国際法違反の不法入植でパレスチナ難民を作り出していることに触れていれば満点、という留保はつけておきますが、この監督は『戦場でワルツを』でイスラエル軍とナチを同一視した表現で極右のユダヤ人から非難された人なので、そういうことは判っているとは思います。

 アンネの日記の風化を怖れたアンネ・フランク財団がお金を出して作った映画だそうですが、よくぞこんな質の高い作品を作った。ちょっとびっくりするような、感動的な傑作アニメです。

www.youtube.com