特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『オペレーション・ミンスミート -ナチを欺いた死体-』

 週末は良いお天気でした。これで少し温かくなってくれれば良いのですが。

 ボクの勤務先はロシアやウクライナと深いつながりがある訳じゃありませんが、ロシアの侵攻が始まってから不審メール(詐欺メール)が激増しています。日本企業を装ってEmotetの不正プログラムをダウンロードするサイトに誘導しようとするものです。

 この数日、個人でも詐欺メールが増えたと言っている人もいるので、たぶん日本の相当数の企業や個人に対して大量に送られているんじゃないですか?送信元がロシアかどうかは確認できませんが(色々な国を経由している筈)、どこからか盗み出されたアドレスが渡っているのでしょう。皆さま、どうぞお気を付けください。

 今回の侵略のような非常事態があるといわゆる『化けの皮』が剥がれることが良くあります。橋下や安倍晋三はもちろん、

 れいわ新選組ウクライナに関する国会決議に反対した、なんてこともありました。
www.fnn.jp

 明日予定されている国会決議にも反対するそうです。バカで嘘つき、役立たずな連中のいつものポーズです(笑)。黒幕の斉藤まさしとロシアが何かあるのか😇。もはや、自民党より先にこいつらが先に潰れた方が世の中のためになるかも。 



 土曜日のTBS報道特集、69歳の金平キャスターが自らウクライナ南部に入っていたのは驚きました。ジャーナリストの鏡だと思います。

 マドンナの元夫でもある名優、ショーン・ペンは今 キエフにいるそうです。

 彼は『ウクライナは民主主義に祝福されたいという夢の象徴だ。そのウクライナを見捨てることはアメリカの魂を失うことだ』と言っています。

 世の中に『中立』なんてことはあり得ません。限られた情報に基づいてでも、誰もがどこかの時点で、何らかの形で『判断』をしなくてはならない。

311の地震の時もそうでしたが、非常時には人間の本質が問われます。ただでさえ、こういう現象↓もある訳です。頭がカー助になるのはプーチンだけではない。これもまた、人間であるが故の『罠』ですね。こういうときだからこそ、我々は注意深く振舞わなくてはならない。

 銀行決済のネットワークからロシアを排除するのは良い手です。外貨準備も使えなくするそうですから、皆で徹底的にルーブルを売り倒せばいいんじゃないですか。侵攻前は一ドル80ルーブルだったのが、今日は120ルーブル近くにまで下落しています。先ほどロシアの中銀は金利を20%に引き上げると発表しました。ハイパーインフレへの道、まっしぐら、です。
news.yahoo.co.jp

 世の中で本当に大切なものって何でしょうか。ショーン・ペンの言う通り、今 起きていることは単に平和の危機というだけでなく、世界の民主主義の危機でもあります。
ドイツでは緑の党出身の環境大臣原発容認を記者会見で表明しました。戦禍に晒されていない我々は石油や天然ガスの値上がりくらいは耐え忍ばなければならない、と思います。

 そして、平和も民主主義も一人一人が声を出さなければ実現しません。


と、いうことで、六本木で映画『オペレーション・ミンスミート -ナチを欺いた死体-


gaga.ne.jp

舞台は第2次世界大戦、1943年。連合軍はヨーロッパ本土への反攻第一弾としてシチリア攻略の準備を進めていた。ところがシチリア沿岸は固い防御が敷かれており、莫大な犠牲が予想されていた。そこでイギリス諜報(ちょうほう)部のモンタギュー少佐(コリン・ファース)らは、高級将校に見せかけた死体に「イギリス軍がギリシャ上陸を計画している」という偽造文書を持たせて地中海に流し、ヒトラーを騙すという計画を立てる。

 第2次大戦中 海上墜落事故に見せかけて死体に連合国軍の上陸予定地はギリシャという偽の書類を持たせて海に流し、ヒトラーを騙してシチリア島の防備を手薄にさせた、という第2次大戦のイギリス軍の実話です。

 主演は名優、コリン・ファース、監督は『恋に落ちたシェイクスピア』や『女神の見えざる手』(大好き!)のジョン・マッデン

 戦争物、というのもあまり興味ないのですが、この作品は10年くらい前にノンフィクションの原作本「ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実」を読んでいたので、映画はどうなのかと思って観に行きました。

 映画はコリン・ファース演じるモンタギュー海軍少佐が自宅で盛大なパーティーを開いているところから始まります。彼のユダヤ人の妻と子がアメリカへ渡る送別の宴です。ナチスの台頭で戦局が激化したからという理由ですが、イギリス国内ですからユダヤ人が直ちに危ないという訳でもない。不思議です。

 やがてモンタギュー少佐と妻の関係が冷え切っていること、弁護士だった少佐は軍で軍需物資の調達をしていることになっていることになっているが実は秘密の諜報任務を行っているらしいこと、彼の弟は遊び人で謎の人物であること、などが判ってきます。複雑な人間関係です。
コリン・ファースが演じるMI5の海軍少佐は元弁護士です。

 モンタギュー少佐はチャムリー空軍大尉とペアでMI5で諜報任務に就いていました。彼らの部下には後に007の原作者になるイアン・フレミングまでいます。
●モンタギュー少佐とチャムリー空軍大尉(左)。二人は盟友ではあるのですが、対照的な人物でした。

 折しも連合軍はヨーロッパ大陸への反攻の第一弾として、シチリア島への上陸を狙っていました。連合軍の拠点である北アフリカからイタリアを攻めるにはシチリア、というのは常識的な話です。当然、イタリア軍、というよりドイツ軍はシチリアに厳重な防備を固めていました。シチリアを攻略するには莫大な損害が予想されるのが、チャーチルの悩みの種でした。

 Mi5のモンタギュー少佐たちはシチリアの防備を弱めるために『連合軍の目標はギリシャ』というニセ手紙を将校の死体につけて流す諜報作戦を思いつきます。そんな奇想天外なことは上手くいくはずがない、という各所からの反対をチャーチルが押し切って、作戦が実行されることになります。
チャーチルだけが作戦の成功を信じ、推進させます。この作戦だけではありませんが、彼には意思と霊感のようなものがあったようです(外れもありましたが)

 モンタギュー少佐とチャムリー大尉、それにイアン・フレミングらはホームレスの死体を参謀将校ウィリアム・マーティン少佐という人物にでっち上げ、死体に偽手紙をつけて、ファシスト政権下でドイツの友好国だったスペインの海岸に流して、ドイツの手に渡るようにする作戦を立てます。

 ただ、死体を流せばよいという訳ではありません。
 ドイツの諜報機関に裏を取られても良いように、死体は海軍将校ということにして、家族や恋人まで含めた身元をでっち上げなくてはなりません。証明写真をつくるだけでも一苦労です。
 更に死体は検死されても海難事故で死んだようにしなくてはなりません。ヒトラーを騙すために本物そっくりの精巧な偽手紙も作る。自国の諜報機関が必死に死体と手紙を探すふりまでさせます。スタッフにはイアン・フレミングまでいますから、ストーリー作りはお手の物です(笑)。
●死体も吟味して選びます

 戦争映画ですが、戦闘シーンは全くありません。モンタギュー少佐たちが作戦を本当らしくさせるために様々な工夫をしていくドラマが描かれます。しかも、それも一筋縄ではない。
 モンタギューは作戦を実行するうちに、死体の恋人役を演じさせたMI5の女性スタッフと親密になります。妻とは関係が冷え込んで別居しているにしてもモンタギューはまだ、妻帯者、美しい女性スタッフは夫が戦死して寡婦です。

●スペインの海岸に流れ着いたウィリアム・マーティン少佐の死体の財布に仕掛けられた恋人の写真(本物)。正体はMI5の女性スタッフ(wikiより)。

 一方 独身のチャムリー大尉は尊敬する兄が戦死したばかりです。チャムリーは盟友だったモンタギューに嫉妬する(笑)。
 さらにMI5はモンタギューの弟が共産主義者であることを突き止めます。そしてモンタギューもソ連のスパイではないかという疑いを抱き、チャムリーにモンタギューをスパイさせます。でもモンタギューはそれに気が付いている(笑)。

 MI5が二重スパイ、三重スパイを使ってドイツに偽手紙を信じ込ませようとするスパイ作戦、それにMI5内のスパイ合戦が重なります。ここいら辺の構成は複雑ですがドラマとしては非常に旨い。というかドラマではなく、事実なのですが(笑)。

 最初はコリン・ファースがやたらと重々しい演技をしているので、戦争ドラマごときで何でだろう、と思ったのですが、話が展開していくにつれ、この映画は戦争というより複雑な人間ドラマであることが良く判ります。

 作戦は成功し、ヒトラーは連合軍の上陸はギリシャということを信じ、軍をシチリアから移動させます。その隙をついて16万人の連合軍が上陸、死者は5000人程度と大規模な上陸侵攻作戦にしては異例の少なさで済んだそうです。ミンスミート作戦は第2次大戦の諜報作戦の中でも最も成功を収めたものの一つ、として知られています。

  

 イギリスが諜報でここまでやるのか、ということには恐れ入りました。ドイツを騙すために死体を利用したり、恋人まで作ったり。そして同性愛まで使った二重三重のスパイ網、数か月腐らせないまま死体を保管するための大型魔法瓶の開発まで、とにかく、日本なんか全く及ぶところではありません。
●90年代 やっと秘密解除されて、ミンスミート作戦に使われた死体は本名でスペインに墓が作られました(本物の写真)。下部には彼(死体)はウィリアム・マーティン少佐として国に尽くした、との銘が刻まれています(wikiIより)。
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 とにかく驚きの話です。実話の方があまりにも複雑なので、途中の伏線など全てを追い切れていないところもあるのですが、MI5内の人間ドラマに絞ったところは大正解だし、その部分の監督の脚色は切れ味鮮やかです。映画として、というより、人間ドラマとしてはAクラス、面白かったです。


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