特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『羊と干豆腐の麻辣煮』と『冬休みの読書』

 いよいよ寒さもピークを迎えつつありますね。
 今週は良いニュースが一つありました。今日は勤務先の新年会がある予定だったのですが、オミクロンで中止になったんです!(笑) 

 ボクの勤務先では例年 国内外の拠点から主だった社員を集めて新年の方針説明を行ったあとに懇親会をやっていました。昨年1月は当然中止でしたが、コミュニケーション促進のために今年は国内は懇親会をやる、ということになっていたんです。こういう名目では宴会大嫌いのボクでも流石に表立ってはケンカを売れません(笑)。

 でも、今週になっての感染の再拡大、いや再爆発で見事に中止になりました。こんな時にホテルの宴会場に『××社御席』なんて札を掲げられたら大変なことになります(笑)、わはは。それ以前にこの状態で全国から人を集めること自体、リスク管理上あり得ない。

 ちなみにアメリカの某大企業(GAFAクラスです)に話を聞いたら、来月NYに世界中から数千人集めて新年の方針説明をやるって言ってました。その会社はこの2年、世界的に従業員は出社禁止にしていました。リスク管理にそれだけ厳しい会社がそうなのですから、実はアメリカ人はオミクロンはそれほど気にしてないのかも。

 感染はおっかないですが、嬉しいって感情を感じたのは久しぶりです!!(笑)。
 あとは月末にオークラでやる得意先のパーティー、これもどうかぶっ潰れますように!

●こいつらも潰れますように!(玉木って頭は悪くないけど、本当に勝負勘がない奴だと思う)


 今週報じられたコロナ禍による岩波ホールの閉館は7時のニュースで取り上げられるなど大きなニュースになりました。この↓ハマケン氏のtweetにある通り、ボク自身は岩波ホールは既に役割を終えている存在だと思いますので、それほどの感慨はありません。

 上映作品の選び方には一日の長はあっても新しい作家やジャンルを発掘したりすることは最早殆どないし、劇場の設備も運営も客層も時代の波に取り残されている。要は経営側にやる気が感じられない。

 戦後民主主義が終わりかけている中で、岩波ホールの閉館もまた一つの象徴でしょう。終わるという事に自覚的であれば次の新しい芽がでてくることもあるでしょうから、全然OKだとは思います。だけど懐かしがっているだけ、というのが一番やばいんだよなー。


 

 さて、年末に食べた『鯛の頭の発酵唐辛子蒸し』が実に美味しかったので
spyboy.hatenablog.com

また三軒茶屋のガチ中華、四川料理より辛いという湖南料理に行ってきました。今回は『羊と干し豆腐の麻辣煮

 麻辣と言っても四川料理に使う花椒の痺れる辛さとは違う、発酵唐辛子の深みのある辛さです。色々な部位の羊肉と干豆腐を煮たものにパクチーがトッピングされている。麵みたいに細長いのが干豆腐です。  

 はっきり言ってめちゃくちゃ美味しい。つまんないステーキを食べるより、よほど肉を食べている気がします。ラムじゃなくマトン、ってところもいい。長粒米と一緒に食べるからカレーみたいですが、甘・酸・辛・苦が混じった、もっと複雑な味だし、発酵の深みがある。これで1000円。大げさでなく生きててよかった(笑)と思えるような味でした。これなら毎日食べたい。



 と、いうことで、冬休みの読書の感想です。この3冊を読みました。
暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

 昨年ノンフィクションなど優れた散文に与えられる『大佛次郎賞』を受賞、年末に日経や朝日の書評で激賞されていたノンフィクション。資料が殆ど残されていない『陸軍船舶司令部』の歴史を広島出身の著者が掘り起こしたものです。
 広島市の海沿いに宇品という地域があります。ここには陸軍船舶司令部という組織が置かれていました。日本では軍隊の輸送は海軍ではなく陸軍が担当し、陸軍は自分で船も建造していました(笑)。海軍は輸送には全く無関心でした。

 昔は鉄道が広島までしかなかったため、日清戦争の時代から陸軍の輸送と補給は宇品で行っており、その後も太平洋戦争に至る迄、全ての軍隊はここから出発したそうです。
 その宇品で陸軍船舶司令部を育てたのは田尻中将という人です。実務家らしく、精神主義を排し合理的な判断を優先する人だったそうです。船舶の神とまで言われた彼は世界で初めて上陸用舟艇や強襲上陸艦を作り、上海事変で活躍させるなど非常に優れた実績をあげました。
news.yahoo.co.jp

 ところが太平洋戦争の前年、田尻中将は陸軍から追われてしまう。日中戦争で既に補給能力は限界に達していたのに、更にアメリカとの戦争準備を命じられた田尻中将は日本の輸送能力の数字を挙げて『不可能』と中央に抗議します。それに対して中央の人事部から引退勧告が2度に渡って送られてきますが、中将は断固拒否。すると倉庫に謎の小火が起きて、その責任を問われて彼はクビになってしまったのです。

 小狡い手を使って、戦争前年にロジスティクスの総責任者をクビにするなんて有り得ません。案の定、日本のロジスティクスはめちゃめちゃになるのはご存知の通りです。300万人を超える犠牲者のうち、戦死より餓死や水没した兵士の方が遥かに多かったのですから。
newspicks.com
 
 陸軍は既に昭和15年から対米戦争の準備を始めていたこと、開戦3年目以降は輸送船は沈まない(笑)という無謀な計算で戦争を始めたこと、ガダルカナルで優秀な輸送船が数隻沈められた時点でロジスティクスの面で日本はもう終わりだったこと、軍隊より下級の存在として扱われた船員は補償もないまま大勢が死んでいったこと、また広島に原爆が落ちた際 宇品の人たちが救援に大活躍したことなど知らなかった話が沢山ありました。

 何よりも都合の悪いことは直視しない、臭いものには蓋。その結果の無為無策はコロナ対応でも同じことが繰り返されている、とつくづく思いました。
 公文書から故人の日記まで少ない資料を作者が探しあてながら、今に続く日本の愚行を宇品という場所から浮き彫りにした労作です。確かに非常に面白かった。


太平洋戦争への道 1931-1941

 半藤一利加藤陽子、保坂正康の3人がなぜ無謀な戦争を始めてしまったのか、6つの分岐点について語ったもの。ボク自身はこの人たちの本は度々読んでいて、おなじみの話ではあるので目新しさはありませんでした。ただNHKのラジオ番組が元になっているせいか、内容がコンパクトに整理されてまとまっているので、非常に判りやすい。
 対談の数か月後に鬼籍に入る半藤一利氏が『昭和の日本人は非常に不勉強だった。ルーズベルトヒトラー蒋介石スターリンなどがどんな人間か勉強していなかったのだから、正しい判断が下せるはずがない。だが今の日本人はもっと不勉強かもしれない』と書き残しているのは印象的でした。

●まず、正確な現状認識が大切と思います(笑)。


選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川一区」密着日記

 『衆院議員の小川淳也氏に政治や経済のことは何も知らない人間が食い下がる』という『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた』(面白いです)を書いた音楽・相撲ライターの著者が、今度は小川淳也氏の香川1区での選挙活動、約2週間に密着したもの。

 密着といっても著者が自分でも書いている通り非常に『緩い』本です。電話かけとかビラ配りもやるけれど、著者はしょっちゅう饂飩を食いにいったりして選挙活動をサボっています。まあ、いいんだけど(笑)、こっちは選挙運動の内実をもっと知りたかったので少しイライラする(笑)。それでも青空対話集会での小川淳也氏の演説や投票日前日に行われた小川氏と小泉今日子とのネット対談などがアーカイブとして読めるのは凄く良かった。特に演説はちょっと泣いちゃいました。
 公開中の映画『香川一区』にも著者は登場しますけど、大島監督とも視点も異なっていて、補完するような本かもしれません。
www.kagawa1ku.com


 小川氏曰く『選挙活動では自分の政策を語るより、人々の意見を聞くことの方が大事』だそうです。小川氏は選挙活動中もとにかく対話を続ける。対立候補の支持者でも、票にならない高校生でも、対話をし続ける。
 『少子高齢化社会が日本の最大の課題であり、その為にはスウェ―デンのような北欧型社会を目指すべきだ』が持論の小川氏が目指すのは『(有権者一人一人と)一緒に悩んで、たった一つの正解じゃない解にリスクを背負って、決断して歩み始めること』。今の世の中、正解なんか中々見つからない。だから彼は衆院選挙でも党首選でも青空集会に拘り続けるのでしょう。

 それにしても、この国と民主主義との距離の遠さには嘆息を漏らさざるを得ません。この国の政治家と国民の距離の遠さは世界でも指折りでしょう。これは政治家と国民双方の問題だと思いますが、やっぱり日本は民主主義国家とは言えない、中国もどきの国なんじゃないか(向こうの方が政治家が優秀なだけマシ)、そんなことを思ってしまいます。自民党がどうとか、野党がどうとか、それ以前の問題のように思えるんです。