特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『シャインマスカットのソフトクリーム』と映画『TOVE/トーベ』

 今朝は寒くなりました。先週までは半袖、部屋には扇風機も出ていたのに(笑)、今朝はコートを着てストールを巻いて通勤です。そろそろ木枯らしも吹いたそうですし、衣替えもしなくちゃなあ。

 選挙の告示は明日、投票は31日。約10日ほどしかありません。これでは各党の主張を聞き、考える時間はありませんよね。

 選挙期間の短さや大量の死に票を作る小選挙区制、世界でもトップクラスの供託金の高さなど、日本の選挙制度は絶対おかしい
 
立候補の「供託金」、日本は高すぎる? 海外の選挙と比べてみた(河北新報) - Yahoo!ニュース

 国民の意識の低さもさることながら、選挙制度も国民の政治参加を邪魔しようとしているかのようです。これで得をするのは誰か。地盤・看板を持った世襲議員です。

 地方も含めてでしょうけど、日本の世襲議員比率は約5割と言われています。先進国では断トツの高さです。
diamond.jp

 そもそも日本にはアングロサクソンのような世論の分断を促進するような二大政党制なんか馴染まない。EUの多くの国のように、選挙運動の時間をもっと長く取り、小党でも議席を持って様々な民意をくみ取り易い比例代表制に変えていったほうが良い、と思います。

 ちなみに有名IT企業、サイボーズの青野社長が選択的夫婦別姓同性婚に反対する議員リストを公開しています。ヤシノミを落とすように連中を落選させようというリストです。


 週末はオリンピックの期間中は近寄らなかった北参道へ行ってきました。もちろん日本1美味しいと言われるソフトクリームを食べに、です。今の季節はシャインマスカットのソフトクリーム💛。

 脂肪分が少ない自家製ミルクとは言え、お腹いっぱい、ボリュームはこれで1食分です。でも、ふんわりした食感とまろやかな甘みを味わうと、『生きててよかった』と実感します(笑)。

●今回の選挙では同時に最高裁判所裁判官の国民審査もあります。選択的夫婦別姓を認めないことを合憲と判断した裁判官は全員×


 ということで、有楽町で映画『トーベ
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klockworx-v.com

 1944年、第2次世界大戦末期のフィンランド。厳格な彫刻家の父、優しい母に育てられたトーベ・ヤンソン(アルマ・ポウスティ)は絵描きとして身を立てることを夢見ていた。ヒトラースターリンを非難する風刺画で名を挙げたトーベは戦禍で損害を受けたヘルシンキにあるアトリエで自立生活を始めるが、画家としては中々芽が出ない。その一方 防空壕(ごう)で子供たちに語った物語から、彼女は想像上のムーミンの世界をスケッチするのを楽しみにしていた。
 パーティーで出会った妻帯者の左派の国会議員と不倫関係に入ったトーベだが、ある日、彼女はヘルシンキ市長の娘で既婚者の舞台監督、ヴィヴィカと出会う。

 誰でも知っている児童文学、ムーミンの原作者、トーベ・ヤンソンの30代から40代に焦点を当てた伝記映画です。

 ムーミンと言えば、今年の夏、こんな事件がありました。

 
ムーミン、DHCとのコラボ中止へ 本国の著作権管理会社がコメント「いかなる差別も容認しません」 | ハフポスト

 差別的な発言が度々問題になっている化粧品・サプリ会社DHCとムーミンの日本側代理店が締結した商品提携を、本国側が打ち切ったのです。ムーミンのキャラが描かれたDHCの商品に対する疑問がネット上で挙がると、商品発売の翌日、本国側はあっという間に契約を打ち切り『DHCの会長の発言はムーミンの作者であるトーベ・ヤンソンが示した価値観とはまったく相容れない』という声明を発表しました。

 この顛末はボクもネットで見ていましたが、抗議が挙がってからの電光石火の決断の速さと明快な声明には非常に感心しました。日本の企業はともかく、アメリカやイギリスの企業でもここまで早い決断と断固たる態度は珍しい。
 そういう意味で、トーベ・ヤンソンという人はどういう人なのか興味がありました。
●映画でトーベを演じるアルマ・ポウスティ


 舞台は第二次世界大戦ヒトラースターリンをコケにした風刺画で名を挙げたトーベは彫刻家で厳格な父親に認められないことでコンプレックスを抱いていました。本格的な絵画で評価されたいと願っていたトーベですが、そちらではうまく行かない。戦争中の苦しい生活の中、ムーミンというキャラクターを想像することで心の慰めにしていました。

 映画では直接言及されませんが、当時のフィンランドは『ソ連の侵略を受けてナチス・ドイツの力を借りて抵抗し、その後ソ連と講和し領内からドイツを追っ払った』という複雑な政治情勢にあります。フィンランドにとってヒトラーは一時期は味方だったし、スターリンも講和のためには刺激してはならない人物だった。
 そんな時代に、新聞でヒトラースターリンをコケにする風刺画を描いたトーベは30そこそこの若い女性にも関わらず、強烈な意思を持った人物であることが判ります。

 父親と意見が合わず一人暮らしを始めたトーベはパーティーで出会った左派の政治家、アトスと恋に落ちます。アトスは妻帯者ですが、トーベは全く気にしない。

 例えばアトスと一晩を過ごした次の日の朝、トーベの家にアトスの妻から『夫に用がある』という電話がかかってきます。ベッドから出て電話に出たトーベは平然とアトスに電話を渡す。アトスはやや決まり悪そうに電話に出る(笑)。それでも、双方とも驚くべきオープンさです。ちなみに孤独と自由を愛するアトスはムーミンに出てくるスナフキンのモデルだそうです。

 やがてトーベは舞台の演出家、ヴィヴィカと出会います。ヴィヴィカはヘルシンキ市長の娘、大金持ちの生まれです。ブルジョアの彼女と対照的な左派的な価値観を持っているトーベですが恋に落ちるのは早かった(笑)。そしてトーベはヴィヴィカの存在をアトスにも告白する。
●舞台演出家のヴィヴィカ(写真右)

 相手が男でも女でも気にしない。しかもそれを全部、オープンにする。映画ではトーベはその点について全く葛藤はなかったようです。いくら先進的なフィンランドとはいえ、時代は1940年代から50年代ですから大したものです。

 トーベはヘルシンキの市庁舎に壁画を描くなど芸術的な評価もされますが、ヴィヴィカの勧めもあって、段々とムーミンの方へ注力していく。やがてイギリスの新聞にムーミンの連載を始めると、世界的な大ヒットになります。

 トーベはヴィヴィカの勧めでムーミンを舞台化します。その際 俳優に『なぜムーミンというキャラクターはこんなに優しいのか』と問われて、トーベは『寂しいから』と答えます。スナフキンを始め、ムーミンに出てくるキャラクターは当時の彼女の人間関係が反映されているようですが、ムーミンには彼女の心象風景が反映されているのでしょうか。

 トーベにはトーベなりの苦悩もあります。自分以外にも誰とでも寝るヴィヴィカへの自分の感情、厳格な芸術家である父親へのコンプレックス、子供向けの作品であるムーミンが大ヒットすることで芸術家としての自分が阻害されていくのではないかという焦り。

 トーベを演じたアルマ・ポウスティの演技も中々魅力的で、彼女の人間としての成熟がそれらの葛藤を乗り越えていくところが、この映画の見どころです。

 あと、これは余談ですが、この映画、トーベが酒を飲むシーンがやたらと多い。シャンパン、ワイン、ビール、透明なスピリッツ(ウオッカ?)、ウイスキー、泥酔したりするようなことはないですが、彼女は年がら年中飲みまくっている。北欧の人が強いのか、トーベが強いのかよく判りませんが、これは凄いと思いました。


 ボクはムーミンという作品はそんなに詳しくありませんが、この映画を見ると牧歌的なイメージは全く変わりますね。戦争、自由、孤独、キャリア、愛情、一人の女性の心の旅路がもろに反映されている。

 この映画は伝記映画でありながら、30~40台という年齢に絞った、非常にユニークな作りになっています。トーベ・ヤンソン自体も強烈な個性でかなりユニークな人だと思いますが、ここでは恋をし、自分を探すという、誰にでもある普遍的なことを描いています。
 一見 平板に見えますが、一人の女性の生き方を描いた作品として中々よくできた映画だと思います。


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