特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『黒イチジクのグラタン』と『突破力なんか要りません!』(日本人の意思決定スタイル)

 今日から10月。緊急事態宣言も解除されたかと思ったら、台風がやってきました。
 東京は暴風圏から微かに外れていましたが、今朝は緊張感のある徒歩通勤でした。今まで閉まっていた飲食店が朝から開業準備をしているのも見かけました。
 こちらは、近所のイタリアンで食べた『黒イチジクのグラタン』。


 
 普通の白イチジクより味が濃いと言う黒イチジクにカスタードをかけて焼き、バニラアイスを載せたもの。シンプルだけど美味しい~。

 さて自民党総裁選の勝者は岸田ということで、どうしようもない連中のなかでは一番マシ、穏健そうな雰囲気ではあります。新自由主義からの転換という政策も大多数の野党と共通しています。
自民党総裁候補と野党の政策の方向性の比較(BS-TBS『報道1930』)

 しかし政治家は政策の方向性だけでは決められません。実行力や判断力というものがある。岸田という人はその点、どうでしょうか。

 心配なのは往々にしてハト派が権力を握ると逆のことをやりだしかねない、ってことです。
 歴史を振り返ると、こういう皮肉なパラドクスってよくあります。反対勢力を懐柔して権力を維持するために、ハト派が敢えてタカ派的なことをする、またタカ派ハト派的なことをする、って案外多い。

 前者ではケネディベトナム戦争に深入りしたり、クリントンボスニアスーダン空爆しました。後者ではトランプは戦争をしなかったことや安倍晋三が韓国と慰安婦合意を一旦は纏めたのが良い例です。合意は韓国の暴走で潰れましたが。あれはタカ派の安倍でなければできなかった。
 スケールは小さいけど、日本の民主党政権がわざわざ尖閣を国有化したのもハトがタカ派的行動をとった例でしょう。
山本太郎マンセーのデマ記事をしょっちゅう流している元朝日の鮫島浩ってこんな感じ(笑)。自分の希望的観測ばかりで、全く信用できない似非ジャーナリスト。

 だからハト派が政権を取るのも案外危ない。まして今回は決選投票で高市の票が岸田に回ったから、安倍の傀儡政権になる可能性すらあります。

 かといって『野党に政権交代』に望みを託す気にもなれません。消費税の時限減税とか1年間所得税ゼロとか訳の分からないことを言いだす今の野党に政権を任せるのはまずい、と思います。却って混乱が起きて、そのツケはまた、社会の弱い方に回るからです。それにアベノミクスの後始末なんか誰がやってもムリ(笑)。

 でも自公維の議席を減らして与野党伯仲状態になって国会を機能させる』。それが今回の選挙の目標とボクは思っています。



 少し前、『面白い』と思った話がありました。
 フランスの有名ビジネススクール(INSEAD、欧州経営大学院)の教授が、各国の意思決定や文化のスタイルを実態調査して、比較のマトリックスを作ったんです。
 縦軸は意思決定のスタイル、横軸は文化のスタイル(文化とか人間関係と思ってください)。

business.nikkei.com

 日本は、意思決定では極端に合意を重視するけど、人間関係では社会的地位など権威で左右される権威主義、これは世界でも特異な国だ、というのです。

 確かに日本ではトップダウンの意思決定ってあまりありません。政治が良い例です。官僚や企業の中ではなんだかんだ言って、根回しや合意形成で成り立つボトムアップの意思決定が主流です。上層部が中堅将校の強硬論を抑えきれなくて開戦に繋がった太平洋戦争が良い例です。
 最近はたまにトップダウンの政治家が出て来るけど、長くは続かなかったり、辞任したら元の木阿弥になる。長野県知事時代の田中康夫とか小泉純一郎が典型です。

 また、日本人は文化や人間関係で権威や職位などを重んじるのは皆さんご存知の通りです。社会的地位や職位に拘らないフランクな人もいますが、なんだかんだ言って地位が高い人には表面上は恭しく接しますよね。『お上』という言葉に良く表れている通り、権威は殆ど『礼儀』という形で、ボクも含めて内面化されている。
 日本の政治家に世襲が多いのも、その影響は大きいんじゃないですか。
平河エリ / Eri Hirakawa『25歳からの国会』(現代書館) on Twitter: "世襲or非世襲
親族に政治家がいないの、多分高市さんだけかな……?

○ 岸田総裁
○ 麻生副総裁
○ 甘利幹事長
○ 梶山幹事長代行
✕ 高市政調会長
○ 福田総務会長
△(叔父) 遠藤選対委員長
○ 高木国対委員長
○ 小渕組織運動本部長
○ 河野広報本部長"

 つまり、日本人は表面的には上にヘーコラする。けれど実際の意思決定では案外言うことを聞かない(笑)。
 コロナでもそうだったじゃないですか。最初は国民も自粛していたけど、段々言うことを聞かなくなったし、路上飲みをするバカは後を絶たなかった。自粛だってお上の権力より同調圧力のプレッシャーの方が国民には効いていたでしょう。

 このマトリックスは他の国の人の特徴も的確に捉えています。
 右上の象限、中国は意思決定はトップダウン、人間関係は社会的地位を重んじる権威主義
 一方 左上の象限、アメリカやイギリスは人間との接し方はフランク、平等主義だけど、意思決定は見事にトップダウン。実際にボクが中国や英米の人と仕事をしても、この特徴は当てはまります。
 北欧やオランダの意思決定は合意形成を重視するのは知らなかったけど、実際に多くの小党が連立して合意形成をする政治をやっているのだから、そうなのでしょう。

 もちろん意思決定や人間関係のスタイルに優劣がある訳ではありません。歴史的な経緯もあるし、その国の状況に応じて相応しいスタイルがある。
 ボク自身が仕事をするときはスピードを重視するから『トップダウンの意思決定+平等主義』です。短気だし(笑)。しかしこれからの日本が目指すべきなのは『合意形成型の意思決定+平等主義』だと思います。

 何故なら、先進国は社会の構造が複雑で色々な立場の人が居て、様々な利害があるからです。先進国の社会とビジネスとは違います。トップダウンで押し切るには利害が複雑過ぎる。合意形成型は決定に時間がかかるし責任が不明確になるリスクもあるけれど、判断を誤るリスクはトップダウンより少ない。
 実際 英米も含めトップダウンの国では『分断』が深刻な社会的問題になっているじゃないですか。

 マスコミの悪影響なのか、最近の日本ではトップダウンの政治ばかり持てはやされている気がします。小泉改革然り、橋下の不正府政然り、安倍晋三や菅の説明しない政治然り。この国は合意形成を軽視しすぎるのではないでしょうか。市民もマスコミもトップダウン権威主義を目指しているようにすら、見える。

 トップダウン権威主義』の国を見てみると中国とかロシア、サウジにインドネシア、と強権的な国、非民主的な国々が目立ちます。インドは民主主義国とされていますが、社会的格差は滅茶苦茶だし、何よりもカーストという最悪の権威主義がある。マトリクスにはないけど、北朝鮮だってそうです。
 『トップダウン権威主義』の国ってフランスを除けば、悪いけどロクな国はない。トップダウンの政治、つまり『決められる政治』、『突破力』とかを目指すとこういう国になるんです。

 マスコミや政治家は’’決められない政治’’とか’’突破力’’と言ってレッテル貼りしますけど、決められなくて結構。合意形成に時間がかかるのは仕方がありません。ベルギーやオランダのように連立政権を組むのに年単位かかる国だってある。超先進国のドイツでも今回の選挙では連立を組むのにあと数か月かかるようじゃないですか。
 ベンチャー企業ならいざ知らず、多様な利害関係者がいる先進国では合意形成が遅れるコストより、間違った意思決定をして損害を出すコストの方が大きいに決まってます。


 コロナ危機には突破力、とか総裁選で河野太郎が言ってましたが、突破力なんか要りません河野太郎にしろ、小泉のバカ息子にしろ、山本太郎にしろ、ヒーロー(もどき)なんか要りません。

 日本のコロナ対策が機能しなかった、如いては経済にしろ、少子化対策にしろ、近年の日本が落ち目の一方なのは『(指導者に能力がないくせに)トップダウン権威主義(市民に説明しない)』の政治が続いたからです。


 
 こうやって考えれば、二者択一の政党を強制的に選ばせる小選挙区制は理論的にも間違っていることが判ります。小選挙区制は先進国には向かない先進国は小選挙区ではなく大選挙区比例区、そして北欧のような多党連立が向いている、と断言しても良いのかもしれません。

 今や日本には様々な人が居ます。自営業/サラリーマン/非正規雇用もいれば、地方/都会、老人/若者と、色々な立場の人が居る。外国人が居なければ農業やコンビニだって成り立たない。電通の調査によるとLGBTQだって全体の5%は存在する。

 これだけ多様な人々が居るのだから、時間はかかっても、皆が話し合って合意形成をしていく、つまり多くの人が政治参加をしていくしか、皆が幸せになる方向はない。。あとは簡単な答えなんかない、悩み続けるしかないってことを国民が理解出来るかが問題です。

 右とか左とか関係なく、誰かに任せれば何とかなるようなヒーローのような政治家はこの世には存在しません。まして、突破力なんか要りません
 ボクはそう思います。