特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ひたすらパワフルで、ひたすら美しい。:映画『イン・ザ・ハイツ 』

 先週末 土曜日のTBS報道特集の冒頭、金平キャスターが『コロナ対策に専念するため総裁選に出ない』と言う菅を『最後の最後まで国民に本当の言葉を語らなかった』と評していました。
 安倍晋三は100回以上国会で嘘をつきましたが、菅もまた、学術会議の件にしろ、息子の疑惑にしろ、コロナ対策にしろ、オリンピックにしろ、国民の疑問にまともに答えることはなかった。

 総裁選に出馬がささやかれている連中の顔ぶれを見ると日本の政治家の質の低下をつくづく、感じます。

 政治家は国民のレベルの反映、とは言え、こんな輩しかいないのでしょうか。
●同感。

 
 ’’ナチス’’高市を京大の藤井聡が応援しているっていうのも『反緊縮』信者の脳味噌を象徴しています。

 国の予算は史上最大を毎年更新しているのに反緊縮、って言い続けてるような知能レベルの連中だから無理ないか(笑)。


 もちろん、世論調査でトップ?の河野太郎なんかダメに決まってます。そりゃあ、安倍や菅、高市よりはマシかもしれないけれど。
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 学生時代の印象だけでモノを言う訳じゃないですが、勘弁してくれ。
 総裁選のような国民不在の猿芝居より、国会を開いてコロナ対策をまじめにやってもらいたいものです。



 と、いうことで、六本木で映画『イン・ザ・ハイツ
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 舞台はニューヨークに実在する町、ワシントン・ハイツ。キューバプエルトリコ、ドミニカ、チリなど南米の各国からやってきたラテン系の人たちが集まって暮らしている。うだるような暑さだった真夏のある夜、大停電が発生。進学、仕事、恋で悩みを抱えながらも夢に向かってまい進していた若者4人の運命が、停電をきっかけに思わぬ方向へと動き出す
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 映画館、というか、電車に乗って徒歩圏外へ行くのはまだまだ怖いのですが、どうしても見たかった作品がこれ。

 アメリカ建国の父、アレクサンダー・ハミルトンは黒人だった、という設定でトニー賞11部門を受賞、アメリカで社会現象と化した大ヒットミュージカル「ハミルトン」の作者リン=マヌエル・ミランダによるブロードウェイ舞台劇を、彼自身の製作で映画化したミュージカルです。
 原作が舞台で上演されたのは08年ですが、これもトニー賞4冠(作品賞、楽曲賞、振付賞編曲賞)、グラミー賞(ミュージカルアルバム賞)を獲得した大ヒット作だそうです。監督はアジア系のキャストだけで初めて全米興収1位を取った『クレイジー・リッチ!』のジョン・M・チュウ

 ミュージカルものだったら、大きな画面・音響でみたいです。朝1回目の上映を狙って六本木へ出かけました。
 上映が始まって既に1か月が過ぎているし、朝1なら空いているだろうと思ったのですが、評判が高い映画だけあって定員の半分とは言え、席は殆ど埋まっていた。   
 ボクの前の席に朝から髪の毛をばっちりセットした女性が座っていました。珍しいと思って顔を見たら、TBSで夕方のニュースに出ているホラン千秋と言う人。生で見ると、とにかく顔が小さい。それにしても休日の朝から髪の毛をセットして外出するのだから芸能人は大変だな、と他人事ながら思いました。

 さて、お話はドミニカ生まれのコンビニ店員ウスナビ(アンソニー・ラモス)、成績優秀で西海岸の名門大学に進んだが挫折して町へ帰ってきたニーナ(レスリー・グレイス)、美容院に勤めつつデザイナーを夢見るヴァネッサ(メリッサ・バレラ)の3人を中心に進んでいきます。

●左がドミニカに錦を飾ることを夢見るウスナビ、右がデザイナー志望のヴァネッサ。
 

 移民出身の街の人たちは貧しいけれど、それぞれが夢を抱いています。職も少ない故郷とは違い、アメリカでは頑張って働けば自分の生きたいように生きていけると信じています。

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 一方 街は大資本による再開発が進み、個人営業の店は徐々に廃れ、ワシントン・ハイツの光景も変わりつつあります。家賃も物価も上がっていく。この町の将来には希望がないことは多くの人たちは薄々判っている。

●右がニーナ。成績優秀で名門スタンフォードに進んだ彼女は街の人たちの誇りでしたが、大学内での差別と孤立に挫折して退学しようとしています。

 お話は8,9割が歌とダンスで進行していきます。その質がめちゃくちゃ高い。ボクはダンスとかは良く判りませんが、どうしてあんなに足が高く上がるのか、どうしてあんなに早くターンが出来るのか、どうしてあんなにダンサーたちの動きが揃っているのか、理解ができない(笑)。圧巻です。
 それに映像が美しいのもGood。ダンサーたちの動きと肉体、朝、昼、晩と色彩感豊かな街、効果的に使われる照明、実在の街と虚実入り混じったセット、まさに映像美です。
●登場人物を紹介する映画冒頭のダンスシーン。

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 でも、この映画で最も感動したのは、歌声です。

 音楽そのものはサルサなどラテン系のものにヒップホップなど黒人系の音楽が巧みにミックスされている。

 

 よくできているけれど、とりたてて名曲があるとは思いませんでした。が、キャストたちがそれを表現する声にやたらと力があるんです。身体性を感じさせる歌声は鳥肌ものです。

 お話がどうこう、というより、キャストたちの力強い歌声を聞いていると自然と感動の涙がこぼれてくる。こういう体験は久しぶりでした。

●原作・作詞作曲・製作者のリン=マヌエル・ミランダもかき氷売り役で出演

 あと素晴らしいのがメインキャストの三人。歌もダンスも半端じゃない。というか、凄い。特に二人のヒロイン。歌声といい、ダンスといい、彫刻のような肉体美といい、殆ど呆れるような感じで見ていました。二人とも新進の女優・歌手だそうですが、ため息がでるような存在感で、こんな人たちをどこから探してきたんだ、と思いました。
 日本人キャストで日本語版のミュージカルも上演されているようですが、このキャストでないと全然意味がないと思う。

 当然 この二人は放っておかれるはずがなく、ニーナ役のレスリー・グレイスはDC映画のバットガール役、ヴァネッサ役のメリッサ・バレラはネットフリックスで連続ドラマの主演が決まるなど、今後のスターダムが約束されています。

 中国系のジョン・チュウ監督は『クレイジー・リッチ』でもオークワフィナやコンスタンス・ウーなどアジア系の俳優をブレイクさせましたが、今回もまたマイノリティのスターを生み出すことになるのでしょうか。貧困や差別に直面しても諦めずに、登場人物たちが夢をかなえる機会を追い求める、この映画の精神にも合致します。
●人間離れした足の長さのレスリー・グレイス(左)と『クレイジー・リッチ』でも多くのアジア系俳優を発掘した監督のジョン・チュウ。


 圧倒的な歌、ダンス、夢のある演出、差別への怒り、それでもたくましく生きていくラテン系の人たちのプライドを表現した見事なエンターテイメントです。トランプに代表される排外的な雰囲気に対する強烈なアンチテーゼでもある。ディテールも細かく出来てるので何度見ても新たな発見があると思う。傑作、としか言いようがない。
 これは見ないと絶対に損をする、素晴らしい作品でした。今年のベスト5には必ず入ります。ホント、見に行って良かった。

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