特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『メロンのソフトクリーム』、『オリンピックは「スポーツを介した戦争」』とBS1スペシャル『独占告白 渡辺恒雄 〜戦後政治はこうして作られた 平成編〜』

 東京の感染は深刻な状況になってきました。
 前回もそうでしたが、これだけ感染者が増えると職場でも、本人じゃなくても保育園や学校、塾で子供が感染したり濃厚接触者になった、という人が増えてきます。着実にコロナの足音が近づいてくるのを実感します。

 一方 街を見ると確かに飲み屋は一杯です。国がオリンピックでお祭りをやっていれば、特に若い人は『なんで我慢しなければいけないの』、『オリンピックもやってるんだから大丈夫でしょ』となるのは当然です。
 菅も小池も『人流が減った』とか『危機感がない』とか他人事みたいなことを言ってますが、集団心理まで考慮して政策を打つのが政治家やマネージャーの仕事です。

 


 こちらは 北参道のソフトクリーム屋さんの『メロンのソフトクリーム』。
 7月限定なのでオリンピックが始まる前に食べておきたかったのですが、ギリギリ間に合った。

 メロンの甘い香りとお店のオーナーの実家のミルクの控えめな甘さが良く合います。ミルクというキャンバスの上に絵を描いたかのようです。ああ、美味しいなあー。
 ただ、北参道は国立競技場に近いから、オリンピックが終わるまで近寄りたくない。こちらもソフトクリームを我慢しなくてはなりません(笑)。迷惑な話です。


  東京には銀座でも渋谷でも、そこいらの街でもオリンピック関連らしき外人がいっぱいいます。
 普段はタクシーなんか来ないビジネスホテルの前に朝からタクシーが何台も止まってたり、オリンピックの服着た頭の悪そうな外人がアップルストアに入っていったりしている。そうやって感染は一般人に広がっていく。
 と、日本人は思うのですが、NYタイムズなんかに言わせると、『選手が日本人から感染する』だそうです、なるほど(笑)。

 オリンピックの狂騒が続いています。TVは朝から晩まで、新聞もオリンピックが1面です。自分で身体を動かすのは楽しいですが、他人が運動してるのを見て何が楽しいの?(笑)。

 好き嫌いの問題はいいですが(笑)、朝から晩までオリンピックを放送している方も見ている方もどっちもどっち、と思います。マスコミは酷いものですが、それを見る人間がいるから画面や紙面がオリンピック三昧になる。そもそもオリンピックにしたって廃棄弁当だけじゃなく、感染対策、不透明な予算や招致、開会式への政治圧力、突っ込みどころは幾らでもあるでしょうに。

 意地悪なボクは、洗脳って言葉が頭に浮かんじゃいます。なになに、水谷隼とかいう卓球選手が差別tweet(犬笛)したんだって?水谷隼、誹謗中傷報告のツイート削除 一部で人種差別との指摘も(よろず~ニュース) - Yahoo!ニュース


 半藤一利氏や加藤陽子氏の著書には、満州事変から太平洋戦争にかけて日本の新聞は戦争一色だったことが書いてあります。勝利のニュースを大々的に流せば部数が伸びる。一方 反戦的な記事には在郷軍人会が講義して不買運動をする。そうやってマスコミが戦争一色になっていくに従い、国民の熱狂もどんどん増していく。マスコミと国民の負のスパイラルが戦争を始めたんです。
 太平洋戦争が始まる頃には天皇や大臣ですら、対米戦争に反対すると国内で革命が起きるのでは?、と恐れるような事態になっていた。

 ネットで『オリンピックは「スポーツを介した戦争」』という言葉を見かけました。オリンピックは国家間の代理戦争で、政治家はスポーツという武器で国威発揚ナショナリズム強化を図っている、というのです。
diamond.jp

 国策で行われている東京オリンピックはまさに『スポーツを介した戦争』です。そもそも個人じゃなく、国単位でオリンピックに出ること自体 発想が古い(ドーピング疑惑でロシアは個人参加らしいですが)(笑)。
 朝から晩までマスコミが日本人選手の活躍を煽り、反対していた国民まで取り込まれる産経がしきりに観客を入れろといってるのが象徴的です。ただ、コロナ対策の不手際で下がった内閣支持率が上がるかどうかは知りません(笑)。

 今 マスコミが国策オリンピック一色になっているのは戦前に起きたことと全く同じです。マスコミは国策に従い、下級国民はそれに乗せられ、それをほう助する
 だからボクはせめて、オリンピックを放送するTVは一切 見ない。国策オリンピックに夢中になってるのは、真珠湾攻撃で提灯行列をやってた国民と違いはないと思うからです。

 今回のオリンピックを見ていると、今度戦争があっても、大多数の国民は反対しないことがよく判ります。憲法9条がどうのこうのより、日本人がマスコミに乗せられたり、もしくは知らず知らずのうちに奴隷臣民になっちゃう発想の方が遥かに問題が有る。
 憲法改正国民投票でもオリンピックと同じやり方・物量で世論操作が行われるでしょう

 これって右も左も関係ありません。大政翼賛会に先頭切って参加したのは無産政党です。オリンピックに限らず、軍国主義の戯画みたいな甲子園を見て喜んでる奴はボクは一切信用しないのですが、自分の中にもそういう奴隷臣民(ファシスト)的な感性がないか、自分を疑いながら生きていきたいと思います。


 さて、7月22日に放送されたBS1スペシャル「独占告白 渡辺恒雄 〜戦後政治はこうして作られた 平成編〜」は非常に面白かったです。今年95歳を迎えた読売新聞の主筆 渡辺恒雄NHKの大越キャスターが2時間ものインタビューを行ったものです。

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www.nhk.jp


 昨年放送された昭和編ではナベツネが戦前 軍隊生活でいじめられ、戦後 共産党に入って除名された経緯(軍隊も共産党も強権的なのは全く同じ、だったそうです)、読売新聞記者になって共産党山村工作隊への潜入でスクープを飛ばしたあと、大野伴睦中曽根康弘などに深く食い込み、政界のフィクサーとして動いた話を語ったものでした。


 ナベツネと言うと権力との距離感が問題になります。あんなに権力べったりなのがジャーナリズムと言えるのか、と言うのは良く指摘されるところです。

 しかしナベツネにしてみれば、権力にくっつくのは日本を良くするためにやっている。政治家と一緒に酒飲んで飯を食って麻雀をやって、お互い情報提供して、政界に影響力を及ぼす。

 ボクは大嫌いですが(笑)、良くも悪くも昔の日本的なやり方です。しかし、昔はそれが有効でもあった。社会党だって自民党の政治家と宴会やったり麻雀やってたのですから、昭和という時代はそういうものだった。ロクなもんじゃありません(笑)。


 今回の平成編はナベツネが平成時代に動いた自民党自由党公明党の連立、小泉内閣改憲靖国参拝プロ野球幻に終わった自民・民主党の連立について彼が回顧したものです。

 ナベツネ改憲論者で、読売新聞でも改憲試案などを発表しています。改憲を主張するのは今の憲法だと戦前に後戻りする恐れがあるからだそうです。国民が改めて憲法を決め直すことで、リベラリズムに沿った憲法を日本に確立することが出来る、というのです。

 番組の中では、番組では憲法のどこの部分がどう、という話は具体的にはなかったですが、憲法を決め直す『選憲』という議論は上野千鶴子などとも共通しています。まあ、ボクは今の劣化した日本人が新しく憲法を決めるようなことをしたらロクなことにならない、と思うから、これには懐疑的です。


 権力べったりのように見えるナベツネですが、小泉の靖国参拝には本気で反対します。ここは彼が絶対に譲れない点らしい。

A級戦犯が祀られているようなところに総理大臣が参拝するなんて、国民が誤った歴史観を持ってしまうリスクがあるナベツネは社説で断固主張し、曲げることがなかった。小泉もイデオロギーより、党内の政治的な力学に基づいて参拝したようですが、参拝を止められなかったのはナベツネは今でも悔しそうでした。


 未遂に終わった自民・民主の連立はナベツネフィクサー的な役割を果たした最後の出来事だそうです。
 第1次安倍内閣が潰れ、福田康夫が政権をとった後、ナベツネは自民・民主の連立政権を成立させようと陰で動きます。
 ナベツネに言わせると、小泉の郵政改革などは『口からのでまかせで、あとのことは何も考えてない』(笑)そうです。良いことを言います。

 小泉、安倍でボロボロになった日本を立ち直らせるために、連立で安定した政権を発足させようとしたのです。

 ナベツネの意をうけて自民党福田康夫に話をつけたのは森喜朗、当時の民主党の代表だった小沢一郎に話をつける役割を果たしたのは元財務次官の斎藤次郎でした。好き嫌いは別にして、やっぱり森喜朗は男のムラ社会なら調整能力はあるんですね。

 一方 小沢の方も『政経験がない素人揃いの民主党自民党と連立して政治経験を積むことが必須』と考えていました。それが将来の選挙にもつながる、と。小沢自身も党務ばかりで行政経験がないから、自分でも良く判っていた(笑)。政治家というより、政局屋です。

 福田も小沢も連立に同意し、大臣の数まで決まっていた。連立内閣は成立寸前になります。しかし話を持って帰った小沢は党の役員会で大反発を受け、連立は流れてしまいます。

 ここで安定した政権ができていれば、当然 今の自民党より中道寄りの政権になったでしょう。福田康夫が言っているように、低成長の時代のなかで国民の真の豊かさを目指した政権になったかもしれない。番組には出て来なかったですが、この時『中選挙区に戻す』という福田・小沢の合意があったことも一部では報じられています。惜しかった。
 そこまで行けなかったとしても民主党の人材育成になっただけでなく、安倍内閣の昭和のリバイバル政治のような惨事を繰り返すことも防げたはずです。

 当時はボクも、何で大政翼賛会みたいな連立をしなければいけないのか、と思ってました。が、今考えてみれば、自民と民主党の連立が成立していたら、この国はもう少しマシなものになっていたでしょう。
 結果論ですが、菅直人や鳩山とか前原とか当時の民主党の首脳陣は驚くようなアホばっかりだった。役員会には今の立憲民主党の中心人物、福山哲郎安住淳も映っていました。
 やっぱり立憲民主がいまいちなのは民主党政権当時の総括をきちんとしてないからだと思う。


 ナベツネは『今後も絶対に戦争は防がなくてはならない』と言う点では固い想いを持っているようです。 

 戦前のマスコミは戦争賛成ばかりでしたが、彼らが反対していれば戦争は防げたのではないかとも言っています。東京オリンピックだって、もっと早く新聞やTV局が反対していたらどうだったでしょう。

 国策オリンピック一色のTVを見ればわかる通り日本は既にその段階まで来ている。だからこそ、体験者であるナベツネの意見は貴重です。

 人間というのは良い点もあれば悪い点もある、特にナベツネのような人間を一方的に悪と決めつけるのは簡単ですが、実際はもっと複雑、清濁併せ呑む存在です。

 インタビューから伝わってくるナベツネは読売内の権力闘争で勝ち残った独裁者、強権的ですが、魅力ある人間でした。権力を持たないと何もできないと思っているリアリストではあるけれど、戦前のような社会に絶対に戻してはいけない、という志もある。政策的なこともある程度は納得できることを言っている。言ってることが端から間違っている山本太郎みたいなのとは違います。

 ナベツネのやり方は昔のやり方、典型的なBOY'S CLUBのやり方です。こういうジイさんは早く消えてもらった方が良いけれど、全否定して済むものでもないと思います。学ぶべき点は多々ありそうです。
 大変興味深い番組でした。『昭和編』も含めて、再放送はこれからも度々あると思いますので機会があれば、どうぞ。