特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『獺祭の意見広告』と『日本のワクチン接種(報道1930)』

 今年は梅雨が早く来るそうですけど、そのあとは酷暑が待っています。コロナがこんなに広がっている時に酷暑ってどうなっちゃうんでしょうか。

 今週初め、超有名シンクタンク野村総研の社長の話を聞きました。曰く、

 『イギリスやイスラエルなどワクチン接種が進んだ国の数理データを使って、新規感染者とワクチン接種者の数を分析した。集団免疫の獲得まではまだまだ時間がかかるが、ワクチンを1回でも接種すれば新規感染者の発生は減っていくので、日本でも今のペースでワクチン接種が進めば9月末にはマスクを外せる状況になるのではないか、と個人的には思っている。

 個人的な見解、とは断っていましたが、そうなればいいですね。この人は希望的な観測を言う人ではないし大勢の前で話したことなので、ホラとも思えない。
 新たな変異株(東京五輪株!)(笑)も出てくるかもしれないし、一般の人にワクチンが回ってくるのは来年と覚悟しているので、ボク自身は眉唾だと思いましたが、今朝になって一般への接種は一部では7月から始まる、というニュースも流れてきました。そういう情報を前提にした話かもしれません。
www.yomiuri.co.jp

 今はコロナに関する悲観的な見方しかありませんので、エクスキューズという意味でこの話をご紹介しました。物事は色々な観点から見なければいけないですからね。

 
 ただ、現状はそんな感じではありません。今週月曜の日経朝刊に日本酒の有名メーカー獺祭(旭酒造)が、飲食店の営業制限に抗議する意見広告を出していました。

 ディスカウントしているかもしれませんが、普通は日経の1面広告なんて3000万はかかります。獺祭は本気です。会社のホームページにも書かれている内容は尤もなことばかり。

『例えば兵庫県の感染経路別患者数を見ても、家庭52.1%、職場16.2%、福祉施設7.5%などに対して、飲食店は最下位のわずか2.9%』

『にもかかわらず、飲食店には極めて厳しい営業時間制限などが掛けられている。こんなことに意味があるのだろうか。』

『飲食店に負担を押し付けながら自分たちは宴会をやっている役人こそが制限策に意味がないことを一番よく判っているのではないか。彼らこそがローカル経済を破壊している。』

『感染の拡大も飲食店の倒産も抑えるために、意味のある感染防止策に見直して欲しい』

『地域経済を支えている人々の最低限の雇用を守りながら感染対策を進めることも、「いのちを守る」ことだ』

『グローバル大企業が担う「二割の雇用・三割のGDP」だけでは、日本の地域社会は支えられない』

『私たちの願いは、飲食店の経営が最低限の健全さを保ち、飲食店が雇用の受け皿であり続けること』
●クリックすると原文を見ることが出来ます。
www.asahishuzo.ne.jp

 以前 混ぜ物たっぷりで低品質の日本酒を作っていた旭酒造は倒産寸前に追い込まれました。そこから死中に活を求めて杜氏を廃止、コンピュータ制御を導入した革新的な酒造りで『獺祭』を開発、復活したことで有名です。サミットなど国際会議でも度々獺祭が使われています。

 ボクはお酒飲みではありませんが、実際 獺祭はリーズナブルで(安いグレードしか買わないので)(笑)、飲みやすくて美味しい、です。我が家の冷蔵庫には必ず入っています(笑)。


 
 言うまでもなく、オリンピックをやると言いつつ緊急事態宣言、なんて矛盾しています。

 満員電車は走っているし、劇場もデパートも学校もやっているのに、飲食店や映画にばかり負担をかける制限策なんか意味がない、のは誰だって判っています。実際にクラスターが発生しているカラオケやキャバクラと殆ど感染が広がっていない純粋な飲食店を一緒にするのはおかしいし、飲食店でもきちんと対策している店とそうでない店を一緒くたにするのもおかしい。山梨や鳥取はきちんと対策店を区別しているではないですか。

 憲法を変えないと私権制限が出来ないとか言ってるバカが居ますが、今だって十二分に私権を制限しています法的・科学的な合理性はない恣意的な形で

 バカ政治家のせいで飲食店だけでなく農業や漁業、生産者だって困っています。
www.agrinews.co.jp

 ボクは近所のイタリアンでテイクアウトを買う際 料理の他に、必ず生産者の材料も買うようにしています。そのイタリアンでは生産者を応援するために取引のある生産者の材料を調理法のレシピを付けて売っているんです。
 まるでポルチーニ茸のように巨大な''王様シイタケ''や’’生で食べられるアスパラ’’などこだわりの生産者が作っている材料を家でも食べられるのは嬉しいです。でも手間暇かけて良い作物を作って、質の良さを理解できる店にしか売っていない生産者にとっても、今回の制限策はたまったものではありません。
●王様しいたけ。肉用フォークの大きさと比べてみてください。

●ロワール産の白アスパラと無農薬・無化学肥料なので生で食べられる北海道ジェットファームのアスパラ。

 グローバルダイニングのように感染対策を徹底した上で営業を続ける飲食チェーンも出てきていますが、いくら奴隷根性の日本人と言えども、流石に言うことを聞かない人は増えてくるのではないでしょうか。
●映画は映画館主の皆さんがロビーイングを繰り返して、上映を認めさせることに成功したようです。

 日本の無能な政治家連中が国民の多くが反対しているオリンピックや理不尽な飲食店・生産者虐めを強引に続けるのは、ビルマの国軍が国民を弾圧している光景と重なって見えます。

 国民はバカだからオリンピックさえ始まれば、感染のことなんか忘れてしまうって、政治家やIOCに舐められているんですよ。ま、あながち否定できませんけどね(笑)。  

 
 さて、今週24日放送のBS-TBS『報道1930』は日本のワクチン接種について論じていました。面白くて、つい見入ってしまいました。

 まず圧倒的に差が出ているイギリスと日本とのワクチン入手の違いについて。

 イギリスはワクチンが開発される前、昨年の4月に責任者を決め、入手の交渉を始めています。その責任者は民間のベンチャーキャピタルから起用した女性です。ベンチャー企業への投資は成功もあれば失敗もあるから、ポートフォリオを組んで色々な企業へ投資します。よく考えたら、開発に成功するかどうか判らないワクチンとよく似ている。
●イギリスはポートフォリオを組んで7種類のワクチンを入手。今は変異株に備えて第3回目の接種の準備を始めているそうです。

 一方 日本は昨年は役人が製薬会社の日本支社と接触しただけで、責任者を決めて本格的に本社と交渉したのは今年の1月。既に開発は終わっていて各国で取り合いが起きています。遅すぎてどうにもなりません。

 確かにビジネスをやったことがない役人には、開発が成功するかどうかわからないワクチンの交渉なんか出来ないでしょう。でも結果が判る前に交渉するから金銭的にも納期的にも有利になるのは商売の常識です。規制に守られた役人や独占企業の人間には理解できないかもしれませんが(笑)、世の中は結果が判らなくても判断しなくてはいけないことばかりです。

 ボクの友人も医薬品ベンチャーへの投資をやっていたんですが、日本にもそういう交渉が出来る人材は商社や金融などに履いて捨てるほどいます。やっぱり政治が無能だった

 接種についても、イギリスは昨年8月に大手スーパーの元人事責任者で国民健康保険にも在籍していた女性を責任者に起用、準備を始めています。日本が接種が始まってから供給体制や予約システムを検討しているのとは大違いです。

●イギリスのワクチン接種を支えた責任者二人。ベンチャーキャピタルの女性はスキャンダルで昨年末に辞任(笑)。彼女が名門出身のジョンソン首相のお友達なのも如何にもベンチャーキャピタル出身らしい。でも非常事態ですから、ワクチンさえ手に入ればいいんです。

 現場への供給予定すら立っていない。接種を早めろと言ってもワクチンの供給予定がはっきりしなければ自治体だって体制が組めるわけはありません。また予約システムも接種が始まって1か月経っても、バグでシステムが止まっている有様。で、ヤケクソになって自衛隊の力技に頼っているのが現状です(笑)。


 
 その後 ゲストの元自衛隊統合幕僚長河野氏が日本政府のワクチン接種について、こう話していました。
 『旧日本軍の失敗を分析した名著『失敗の本質』を要約すると、失敗の理由は3つである。『目標の不明確さ』、『戦力の逐次投入』、『根拠なき楽観論』。断定はしないけれど、今回のワクチン接種もその観点から考えるべきではないか』

 それを受けて、コロナ対策が全国1位と言われる鳥取県の平井知事はもっとはっきりと発言しました。
 『3つの失敗の理由を日本のコロナ対策に当てはめると、『目標の不明確さ』とは経済と感染防止の優先順位をつけなかったこと、『戦力の逐次投入』は対策を小出しにしたこと、『根拠なき楽観論』は第1波、第2波の被害の少なさでうまくいったと思い込んでしまったことではないか。』

 実際に接種した人に聞いても接種の現場を担当している市区町村や自衛隊は融通を利かせながら頑張っているようですが、役人や政治家など日本の上層部は無為無策のまま
 しかも『検査が少なかったこと』、『対策を小出しにしたこと』、『ワクチンの入手や接種体制の構築が遅れたこと』に対する反省はかけらもない

 昔 ノモンハン事件の際 ソ連軍の司令官が日本軍を評して『日本軍は兵卒や下士官は驚くほど優秀で頑強に戦うが、将軍や佐官などの幹部は驚くほど頑迷で無能』というようなことを言っています。作家の司馬遼太郎ノモンハン事件のことを書こうとして資料を集めたものの、『日本人であることが嫌になる』と言って作品を書くのをやめたのは有名な話です。

 それは今も全く変わらないようです。いつも言っている話ですが、日本人には自治能力なんか無いんですよ(笑)。アメリカの51番目の州どころか、属国だって分不相応なくらいのレベルかも(笑)。