特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『#dontbesilent』と映画『KCIA 南山の部長たち』

 週末はもう春がやってきたかのようなお天気でした。気持ちよかったです。街にはいっぱい人が出てましたけど。くわばらくわばら。

 嬉しかったニュース。週末 森喜朗の差別発言に対して、EU各国の駐日大使館がTwitterで抗議の声を挙げました。ドイツ大使館に始まり、スウェーデンフィンランド、国連広報部まで#dontbesilenntのハッシュタグtwitterデモをやったのです。

 何処の国、いつの時代でも偏見や差別を口にするバカは居るのだと思います。それを傍観しているのは同罪です。上に挙げたハフィントン・ポストの記事にあるように一線を越えたバカがいたら皆でたしなめなければ、それがまかり通ってしまう。

 バカは自分が何を言ってるか意味なんか理解していないからです。バカにつける薬はありません。
 


 
 EUの皆さんのtweetはありがたいですけど、相変わらず、日本人には自浄能力がないのは情けないですね。

 これはブログを拝見しているわんおぺまむさんの抗議tweet

 森喜朗のような粗大ゴミは履きだせという、昨日行われたホウキデモに呼応したものです。素晴らしい抗議です。バカはバカなんだから、こちらは眉を吊り上げる必要なんかないんです。ボクもシルバニアファミリー、欲しくなりました。

mainichi.jp

 ボクとしては、森喜朗は即辞任でガス抜きするのではなく、ギリギリまで醜く地位にしがみついてオリンピックもろともお払い箱にしてもらいたいところです。でも、森も菅も安倍晋三も二階も日本の老害ジジイ連中って、犬やパンダどころか、シルバニアファミリーにも劣る連中ばかりです。シルバニアファミリーは失言なんかしませんから。可愛いし。
 


 と、いうことで、新宿で映画『KCIA 南山の部長たち
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 1979年10月26日、韓国。大統領直属の諜報機関、中央情報部(KCIA)の部長を務めるキム・ギュピョン(イ・ビョンホン)が大統領(イ・ソンミン)を射殺する。それまでの40日間を描く。
klockworx-asia.com

 かって韓国に君臨した独裁者の大統領、朴正熙KCIAの部長に暗殺された事件は、その動機など今も多くの謎に包まれているそうです。今作はそれを映画なりの解釈を行ってドラマ化、韓国では昨年の興行収入第1位という大ヒットを記録しました。ボクは良く知りませんが、今作で部長を演じたイ・ビョンホンと言う人は女性に大人気だそうです。
 テーマとしてはあまり興味なかったんですが、非常に評価が高いので見に行ってきました。
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 朝鮮戦争後の1961年 韓国では軍部のクーデターが起こり、朴正熙軍事独裁政権が成立していました。その独裁政権を支えたのが中央情報部、KCIAです。通常の情報活動だけでなく、拉致、拷問など非合法活動も厭わない組織は設置された地名の南山という名で呼ばれ、その部長は大統領に次ぐNO2として絶大な権力を握っていたそうです。
イ・ビョンホン演じるキム部長

 朴大統領とキム部長はお互い軍事クーデターを起こした同志です。日本陸軍士官学校を出た親友同士でもありました。
朴正熙

 その頃の朴政権は国内で政敵を弾圧するだけでなく、野党の大統領候補、金大中を日本で誘拐するなど強圧的で腐敗が目立つようになっています。国民の不満がたまっているだけでなく、アメリカに亡命したKCIAの元部長パク・ヨンガク(クァク・ドウォン)が下院議会聴聞会で大統領の横暴を告発するに至っていました。
KCIAの元部長は米国議会で朴大統領を糾弾します。

 朴大統領は告発に激怒します。大統領に忠誠を誓うKCIAのキム部長はかつての友人でもあるヨンガクに接触して、事態収拾を図ろうとします。
 朴大統領やお気に入りの部下の大統領警護室長などはヨンガクを殺してしまいたい。しかし、そんなことをすればアメリカが黙っていません。キムはこれ以上の告発を止めるよう、ヨンガクが執筆した回顧録の原稿を渡すよう説得します。

 しかし、回顧録の内容は日本の週刊誌に載ってしまう。キムの面目は丸つぶれです。朴大統領に媚びへつらう大統領警護室長は、「それ見たことか」とキムを責め立てる。

 独裁者の朴大統領は常に命の危険を感じていたようです。どこに行くにも大統領警護室の厳重な護衛が付き、酒を飲むのも専用に作られた設宴所(料亭のようなもの)です。朴大統領がキム部長と一緒に飲みながら、日本語で『あの頃は良かった』と述懐するシーンは非常に印象的でした。日本語で育った二人の過去と独裁者の悲哀が感じられる見事な場面です。

 キム部長を追い落とそうとする大統領警護室長との対抗上、キム部長は友人であるヨンガクを殺さざるを得なくなります。苦心惨憺して始末しても、朴大統領はキムを褒めるどころか不満を表す始末です。自分は指示していない。アメリカが怒っても責任は自分にはない。という訳です。独裁者にありがちな手口です。
 部下として、親友として、大統領に忠誠を誓っていたキム部長も次第に不満を抱くようになります。

●沈着冷静なキム部長ですが、いざ、ブチ切れると銃を抜くくらいは何でもない。

 やがて韓国各地でデモや暴動が発生します。朴大統領や大統領警護室長は軍を出して鎮圧しようとしますが、キム部長はそんなことをしたら却って朴大統領の立場が危うくなる、と懸命に止めます。朴大統領とキム部長が命を懸けた18年前の軍事クーデターは理想のためではなかったのか、という訳です。しかしキム部長は却って忠誠を疑われるようになります。

 アメリカ大使館に呼ばれたキム部長は、大使から『アメリカはもう朴大統領を支持しない、代わりに新しい政権を立てろ』と迫られます。キム部長は拒否します。しかし朴大統領はアメリカ大使館を盗聴していた。やりとりが漏れたことを知ったキム部長は決意を固めます。

 イ・ビョンホンが演じるキム部長の沈着で感情を抑えた姿は非常に印象的です。さらに朴大統領の独裁者の悲哀と手練手管、これも非常に味わいがある。この二人の演技は名演、という部類だと思います。韓国映画にありがちな大仰なところは全くありません。劇中シェイクスピアが引用されますけど、格調高さすら感じさせます。


 それでいて、きちんとしたエンタメになっています。非常に面白い。退屈しません。大統領警護室とKCIAの勢力争いで、時折KCIAが出し抜かれるところだけは、ちょっと違和感がありましたが(そんなにマヌケとは思えないので)、お話としてはそれでよかったのかもしれません。

 映画の最後に実際のキム部長の法廷での陳述が引用されます。ボクには朴大統領とキム部長が起こしたクーデターにどんな理想があったのか理解できないんですが(軍事クーデターごときに理想があるのでしょうか)、これも一つの歴史解釈なのでしょう。ちょっと大河ドラマ明智光秀みたいだった(笑)。

 キム部長の意図はともかく、人間ドラマとしては一級品だったと思います。政治ネタを扱った映画が年間興行収入1位になるのですから、日本人より韓国の人の方が遥かに意識が高いということを実感させます。なかなか面白かったです。


なぜ崇拝する大統領を暗殺したのか…イ・ビョンホン主演『KCIA 南山の部長たち』予告編