特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『シャドー・ディール 武器ビジネスの闇 』

 緊急事態をもう1か月延長すると政府が言ってますが、そんなこと、最初から判ってますよね。逆に1か月でどうにかなると思ってた奴がいたとしたら、よほど頭が悪い。お前のことだよ、菅。
 

確かに1週間の移動平均で見ても(下グラフのオレンジ線)、東京の感染者は減ってきているんですけど、

検査も減らしてるから(グラフ左)、何がホントだか判らないんですよね。
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新型コロナウイルス 国内感染の状況

 しかし、コロナだけでなく、経済への影響も心配です。前回の緊急事態の時はそれでも『少しの我慢』と言っている飲食店の人もいましたけど、今回は流石にシャレにならなくなってきた。殆ど話題にすら出ないですもん。

 土曜日のNHKスペシャル『夜の街で生きる』、コロナ禍での歌舞伎町を描いたルポでした。
 ボクには全く縁遠い世界ですが、番組に出てきたホストクラブの人も、バーの人も、ビルのオーナーも凄く真剣なのには驚きました。ホストクラブの社長なんか若いホストに激減した給料を渡すとき『きついよな。辛かったら田舎へ帰っていいぞ。でも、自分にだけは負けるな』と一言 添えてましたもん。普通 そんなこと言えないよな。ボクはそこまで相手に向き合って話した事なんかないですもん。
 その社長は以前コロナにかかりましたが、完治後も医療の役に立ちたい、といって自分は抗原検査を毎月行っています。
www.nhk.jp

 NHKの番組に出てくるような人だからではあるんでしょうけど、彼らは懸命に感染対策をし、毎月 従業員の検査をし、自分の商売というより、雇用と街を守ろうとしている。政治家を始めとして世間はああいう世界を目の敵にしますけど、それだけでいいのかって思いました。


 緊急事態と言っても髪の毛は伸びます(笑)。
 この1か月 週末は徒歩圏で暮らしてましたけど、この週末は残り数少ない髪の毛を切りに(笑)、久々に原宿・青山へ行ってきました。
 閉まっている店は一段と増えていました。でも、人はいっぱい出てましたね。竹下通りとか人はいっぱいでしたので、田舎から人が出てきているのでしょう。子供の時は自転車で遊んでた通りですが、今や東京の人は近寄ることすらしない場所です(笑)。


 代官山を通りかかったら、ちょうど夕刻でした。普段は通り過ぎるだけの西郷山公園に立ち寄ってみました。昔の東京西部の高校生には西郷山公園の夕陽って格好のデートスポットだったのですが(笑)、ご存知の方はおられるかしらん(笑)。兵どもの夢のあと(笑)。

 公園と道路を挟んで向かいにあるレストラン、マダム・トキ(昔TVドラマ『王様のレストラン』のロケ地になったところ)も見かけたら、久しぶりに行きたくなりました。何十年も行ってないですが(笑)、クラシックな料理も今 食べたら新鮮なのかも。

 どこかへ行きたいとかは全く思わないんだけど、美味しいものは食べたいなあ(泣)。テイクアウトと作り立てはやっぱり違いますからね。


 ということで、一か月ぶりの映画館、青山でドキュメンタリー『シャドー・ディール 武器ビジネスの闇

unitedpeople.jp


 元南アフリカの国会議員で今はイギリスでジャーナリストとして活動しているアンドルー・ファインスタインのノンフィクション「武器ビジネス マネーと戦争の「最前線」」を原作にしたドキュメンタリー。内部告発者や元政治家、官僚、軍事産業関係者などの証言を基に、武器の国際取引の実態に迫ったもの。

 映画は第一次大戦でのあるエピソードから始まります。ドイツ軍と連合軍が塹壕を挟んでにらみ合う中、クリスマスに連合軍がツリーを飾ったことが切っ掛けで、両軍の兵士が勝手に持ち場を離れて、前線で歓談が行われたそうです。お互いが攻撃することもなく、数時間にわたって住所を交換したり、ダンスをしたり、クリスマスソングを歌ったりした。
●当時の写真。

 つかの間の平和は将校が銃を撃ちだしたことで破られたそうです。元来 人は戦争なんかやりたくないはず。なのに人間はなぜ戦いをするのだろう、映画はそこから問いかけを始めます。


 映画本編は大統領当時のロナルド・レーガンがサウジへの武器輸出を始めようとするところから始まります。莫大な金額の武器を輸出しようとしたレーガンですがイスラエルの抗議を受けて、イギリスに商談を譲ります。

 そこでイギリス最大の軍需企業、BAEが戦闘機などを輸出することになりました。


 当時のサッチャー政権は大喜び、サッチャーはロンドンへやってきたサウジの王子を自ら出迎え、大歓迎します。ただの歓迎ではなく、非合法な接待も行っていました。売春婦に王子を接待させ、情報を引き出していた。そうすることで契約金額は膨れ上がっていった。
●武器ディーラー曰く『武器の取引とはそういうもの』だそうです。

 それだけでなく裏では金が動いていました。サッチャーの息子に、サウジの王子に、そしてアメリカにも金が渡っていたのです。商取引と言うより、お互いがリベートを分け合う関係でした。
サッチャーはTV出演して盛んにサウジの王子を誉めそやしました。

 映画はそれを告発した検察官の証言など、公的な資料がフィーチャーされているのが特徴です。陰謀論の類ではない。ただ、我々の記憶から薄れてしまっているだけ。
労働党のブレア政権になっても、関係はずっと続いていきます。

 
 更にその金は時には反政府組織などへ回す秘密工作にも使われます。典型的なのがレーガン政権時のコントラ事件です。サウジの王子に渡した武器取引の裏金がニカラグアの右翼ゲリラ、反政府組織に回っていた。CIAなどがその組織を応援し、反乱を起こさせる。武器取引が新たな紛争・戦争を産んでいるのです。
レーガンもサウジの王子を自ら接待します。

 その後も政権と武器取引との関係は続いていきます。アメリカでは軍隊の民営化が80年代後半から進みます。レーガン、ブッシュ(父)政権でそれを推進していたチェイニーは退任後 民営化を受託する企業、ハリバートンのCEOに就任します。
 やがてブッシュ政権(息子)では副大統領になったチェイニーは、今度は自分の上司だったラムズフェルドと一緒にイラク大量破壊兵器疑惑をでっち上げて戦争を始めます。占領後のイラクに乗り込んだのは勿論、ハリバートンです。

 元々、イラクだけでなくチェイニーやラムズフェルドは以前からスーダン、シリア、ソマリアなど9か国に軍事介入する計画を持っていたそうです。最終的にはイランを狙う。イラクはその始まりにすぎません。

 オバマ政権になっても他国への軍事介入は止まりません。軍を派遣するのではなくドローンなどによる暗殺、という手段がスマートになっただけです。

 それにより、子供を含めた大勢の市民が大勢亡くなっています。どうやって撮ったのか判りませんが、このドキュメンタリーでは黒い服を着て遊んでいた子供たちが上空のドローンからの攻撃で命を奪われる衝撃のシーンが出てきます。文字通り子供たちが吹き飛ばされる。もちろん誤爆
 政府はテロリズムとの戦いを標榜していますが、むしろ武器は市民に向けられているのが実態です。

 映画ではアメリカやイギリスだけでなく、イスラエル南アフリカなどの例が取り上げられます。イスラエルは無数の市民が押し込められているガザに度々攻撃を加えていますけど、毎年攻撃が行われる時期は同国の兵器企業の見本市が行われる直前だそうですよ(怒)。

 ちなみに日本の防衛装備品の市場は約2兆円、製造業全体の1%にもなりません。売上上位の企業は三菱重工三菱電機川崎重工NECなどの超大企業が占めていますが、企業の中では軍需は主流ではない、むしろお荷物部門です。
 2年前 コマツが一部装甲車の製造から撤退したのがニュースになりましたけど、日本の軍需市場は小さいし、海外輸出しようにも実戦での実績がないので苦戦続き、このままでは超大企業とその下請けで成り立っている日本の防衛産業は立ちいかなくなる、と言われています。良かった~(笑)。
www.nikkei.com


 この映画で描かれていることは、公開情報や公的機関の関係者(政治家、検察、軍人)などの関係者のインタビューが多く、信頼度が高いとは思います。ただ企業側からの動きがあまり見えなかったのは物足りないところです。まあ、企業が映画のインタビューに応じるわけがありませんが。ちなみにこの映画の原作者はロッキードから訴えられそうになったそうです。


 ともすれば政治家は武器製造の大企業の傀儡、と思われがちですが、そんな単純な構造ではありません
 企業から政治家に金は流れますが、それだけでなく政治家もそれを利用し、他国の政治家や武装勢力に金を流す。その間には銀行やファンドも介在する。銀行やファンドが介在すれば株式市場、それに我々の年金基金だって絡むようになる。全員が共犯者です。

 その武器は市民に向けられます。そして利害関係者の金儲けが延々と続く。それがこの50年来 中東で起きてきたことです。これは日本も無関係ではありません。
 この映画を見ているとそんな構造が垣間見えるのです。
www.youtube.com