特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『ニュー・ラディカルズ(新過激派)(笑)の復活』(バイデン大統領就任式)と『生きづらい明治社会』(現代の源流)

 最近は、マスクしてない奴や昼飯時にマスク外してべちゃくちゃしゃべってる奴を街で見かけると殺意すら、覚えます(笑)。

 頭の中に脳味噌じゃなく、糠味噌でも詰まってそうな若い奴、八百屋でひと山幾らで売ってそうな安っぽいサラリーマンだけでなく、マスクしてない年寄り(特にジジイが多い)を見ると、早く死んでくれ、と思ってしまいます。今や、銀座三越のライオン君もマスクをしているというのに(笑)。

 マスコミは感染拡大のニュースばかり流していますが、東京の実行再生産数は0.9と拡大の目安である1を割ってきました(神奈川は1.05、千葉は1.04、大阪は0.98、全国は0.97)。


toyokeizai.net

 確かに憂慮すべき状態ではありますけど、色々な面から考えなければいけないと思います。油断は論外ですが、過度に悲観的になるのも良くない。冷静に自分の身を守っていかないと。



 さて 個人的にちょっと驚いたニュースがありました。バイデン大統領のオンライン就任式に、98年にアルバムを1枚出したきりで解散したバンド、ニュー・ラディカルズが再結成、出演したんです。ボクは大好きなんですよ。

 スプリングスティーンやフーファイターズ、ジョン・レジェンドが演奏するのは知ってましたレディ・ガガとかはボクは興味なし)。
●番組のオープニングはスプリングスティーンオバマ大統領就任の時もこのリンカーン像前で歌ってましたが、寒空の下でギター(日本製)を弾くの大変だと思うんだよなあ。
www.youtube.com

●この日歌った''Land of Hope and Dreams''の一節。売春婦やギャンブラーまで、すべての人を包含するぞ、という歌です。

 でも国を代表する行事に無名ミュージシャンが出演するのは流石に驚きました。ニュー・ラディカルズなんて、日本人は勿論、アメリカ人だって知らない人の方が多い筈。日本だったらあり得ない。

 就任式で演奏したのは98年の曲、''You Get What You Give''。多様性を強調する放送↓を見てもらうと判りますが、実質的に就任式の主題歌として扱われています。人種、地域、性的志向、性別、年齢、そして犬も包含する(笑)。
●就任式でのニュー・ラディカルズ''You Get What You Give''。
www.youtube.com

●演奏の完全版。下の記事をクリックすると見られます。演奏、気合入ってます。
www.rollingstone.com

 この曲が選ばれたのは、脳腫瘍で亡くなったバイデン氏の息子が闘病中 親子で聞いていたからだそうです。バイデン氏はこう語っています。
「息子は決して闘うことをやめず、生きようとする意志が誰よりも強かったにもかかわらず、彼自身この日がやって来るかもしれないことを知っていたと思います。この曲の歌詞にはこうあります。“この忌まわしい世界が崩壊しても、君はきっと大丈夫。自分の心に従うんだ”」
www.udiscovermusic.jp

 歌詞を抜粋します(意訳しています)。
Health insurance rip off lying
FDA big bankers buying
Fake computer crashes dining
Cloning while they're multiplying

保険会社は嘘をついて、我々から金をだまし取る
食品医薬局は大銀行に買われてしまった
コンピュータのフェイクニュースは食卓を破壊している
同じような商品が世の中にどんどん増殖している

**************
You've got the music in you
Don't let go, You've got the music in you
One dance left, This world is gonna pull through
Don't give up, You've got a reason to live
Can't forget, We only get what we give

(それでも)君の中には美しい音楽が流れている
手放してはいけない、君自身の中に希望がある
もう一回ダンスをすれば 世界は変わるかもしれない
諦めてはいけない 君には生きる理由がある
忘れないで、ボクたちは他人に与えたものしか手に入れることはできないんだ

 大統領が自ら社会批判を含む曲を選ぶのには驚きますが、確かに良い歌詞です。闘病中の人が聴いたら、一層心に響くでしょう。偶然ですが、副大統領のカマラ・ハリスも自分の選挙のテーマソングにしていたそうです。

 この曲が入っている彼らが残した唯一のアルバムは捨て曲なし、名盤です。

Maybe You've Been Brainwashed Too

Maybe You've Been Brainwashed Too

  • アーティスト:New Radicals
  • 発売日: 1998/10/20
  • メディア: CD

 ボクは中心人物のG・アレクサンダーが音楽を担当した名画『はじまりのうた』で知ったのですが、皮肉っぽい歌詞と美しいメロディ、音のセンスが素晴らしい。

はじまりのうた BEGIN AGAIN(字幕版)

はじまりのうた BEGIN AGAIN(字幕版)

  • 発売日: 2016/02/10
  • メディア: Prime Video

 これからバイデン氏もアホの後始末で前途多難だろうけど、こういう曲を好き、というだけで、ボクは人間として信用してしまいます。我ながら単細胞だけど(笑)、こういうことって人間としての基本的な感性だからです。
 もちろんバイデン氏の人間性が素晴らしいとしても、政治家としての業績、結果が素晴らしくなるかどうかは判りません。
●''You Get What You Give''のMV。

New Radicals - You Get What You Give (Official Video)

 コロナ禍が身近に迫ってくる中、最近はボク自身も落ち込んでたりしてました。マスクしないでべちゃくちゃしゃべってる奴を見ると『死ね』と思うのも、気分がブルーだから。我ながら呑気に暮らしてはいても、やはり自分の生活にも仕事にもリスクがありますからね。無能かつ誤りを認めない政府のおかげで、今や日本の死者数は中国を抜き、アジア最悪の感染状況になるのも時間の問題です。

 もちろん、感染はいつかは収まるでしょう。だけど、まだまだ犠牲を払わなければいけないということが哀しいし、腹立たしいんです。


 が、この曲が注目されたことを知って元気が出てきた! たぶんアメリカでも落ち込んでいる人が多いから、バイデン氏はこの歌をフィーチャーしたんでしょう。多様性を強調した就任式全体がそうでした。この人の朗読も良かったです。
courrier.jp

 アメリカが全て良いとは思いませんが、多民族国家だから社会の紐帯は理念に置かざるをえない。だから異国の我々が共感できることもあるのだ、と思います。この曲を改めて聞いて、生きる理由は自分の中にしかないという、シンプルな真理を思い出しました。



 最近今の状況って明治時代に似ているのかも、って思いました。 
 『生きづらい明治社会』と言う本を読んだんです。著者の松沢氏は歴史学が専門の慶應の教授。少し前に出たジュニア向け新書ですが、刊行時は話題になったみたいです。


 本の内容は、松方デフレによる農村の崩壊と都市に人口が流れ込んで生まれた貧民窟、政府が提案した貧民救済の法案が国会で否決されるなど貧困者への冷たい目線、娼妓や女工などで働かされる女性の立場の弱さ、農村から都会に移ってきた若い貧困男性による暴動の発生など明治時代に起きた出来事が記されています。
 更に結論はこんな感じです。江川紹子氏の紹介記事を貼ります(笑)

news.yahoo.co.jp


 著者は『安倍晋三など自称保守主義者は明治時代を美化しているが、実は明治期は弱者に厳しい、生きづらい時代だった』ということを論じています。

 この本のポイントは、現在にはびこる『自己責任論』の源流は明治にある、ということです。
 時代の変わり目になると、政府の力が弱くなり人々は自己防衛に走らざるを得なくなります。それに伴い明治時代は『通俗道徳』という形で、『頑張ればなんとかなる』という考え方が支配的になった。

 江戸時代は税金は個人単位ではなく村単位ですから、ある意味 人々は助け合いをせざるを得なかった面があった。明治期になり封建制度が解体され、『個人』というものが無理やり作られた結果、世の中の変化の荒波にいきなり個人が直面することになった。カール・ポランニの『悪魔の碾き臼』と同じような状況です。

 これは現在とも共通しています。
 ボクは、大仰な左巻き左翼の皆さんが言うように『もう資本主義が終わる』と断言できるとは思わない。そんなことはあと50年くらい経たないと判らないよ(笑)。

 しかし時代が大きく変わりつつあることは間違いなさそうです。右肩上がりの経済成長の終わり、少子高齢化による日本の衰退、格差の拡大、資源や環境など持続可能性の問題など問題は山積しています。それでなくてもバブル崩壊以降、今回のコロナ禍まで日本の社会は数年おきに危機に見舞われています。一人一人の働き方や生活も大きく変化せざるを得ないでしょう。
 
 その変化に政府はついていけない。程度の差こそあれ、日本でもアメリカでもEUでも同じです。言ってることは嘘だらけのトランプや山本太郎おしどりマコみたいなゴミが出てくるのはそれが理由です。国籍もイデオロギーも問わない、バカはユニバーサル、なんです。

 北欧のように政府が国民の暮らしを守ると言う強固な意志、行動を方針にしていれば別ですが、そうでなければ、人々は社会の変化にむき出しのまま晒されます。

 特に国家としての理念もなく、宗教や地域などの人々の間の紐帯が薄い社会であれば、人々は一層むき出しになってしまう。
●その隙を狙って、こういうデマを飛ばす奴が出てくるわけ。何の証拠もないのにオリンピックとワクチンを結びつける。安定のデマ芸人おしどりマコ


 そうなってくると、人間は誰しも自分を正当化したい生き物ですから『自分の力で頑張ればなんとかなる』という自己責任論が強まる『自己責任論』も明治期の『通俗道徳』も同じです。厳しい状況に直面している自分を正当化するための屁理屈に過ぎません。

 「自分の力で頑張れば何とかなる」という自己責任論は真理でもなんでもない。世の中の変化が激しくなると発生する妄想みたいなものだ、ということが良くわかりました。明治時代を振り返ることで現代を相対化する、そういう意味でこの本は良い本でした。


 と、いうことで、今週も金曜官邸前抗議はお休みです。