特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『また、あなたとブッククラブで』

 楽しかった正月休みも今日でオシマイです。どこにも行かない、誰とも会わない、心穏やかに徒歩圏で暮らすお正月は、楽しかった分だけ終わるのが悲しいです(笑)。


 世俗に煩わされずに暮らしていけたらどんなに楽しいだろうって、初めて徒然草を読んだ小学生くらいの時からボクはずっと思ってるんです(笑)。小学生の時から学校には馴染めなかったし、社会人になっても社会そのものに馴染めない。
 もちろん生活の資は得なければいけないから社会と関わるのは仕方ないし、ボクみたいなダメ人間でも生かしておいてもらえるだけありがたいですが、集団ではやはり嫌なことばかり。コロナが典型ですが、他人と関わるから禍はやってくる。

 それでも歳を経るにつれて鈍感力が増したのか、多少は楽になってきましたけど、近所の神社に初詣に行って人とすれ違うだけでも少し不愉快になる(笑)。半径3メートル以内には近寄りませんが、この期に及んでマスクしてないバカがたまにいるもんなあ。 
 しかし世の中には全体の15%、救いようがないバカが18万人もいるんですね。驚きです。 


 お正月のテレビはベビーメタルが出演してたものを録画して見たくらいでしたが、今年のNHK-BS『欲望の資本主義2021』は面白かったと思います。

 格差がどんどん拡大し資本主義自体の前途が危うくなっているのでは、という論調は同じでしたが、金融だけでなく無形資産の拡大が格差を生んでいる、という観点は従来とアップデートされていて面白かった。
 橋本健二早大教授が『日本は確かに70年代までは社会的格差が小さかったが、その総中流幻想に足を引っ張られて格差対策が絶望的に遅れた』と言ってました。そして『正規雇用が中心だった最後の世代である今の50代が引退すれば、非正規の分厚い層が全ての現役世代に存在するようになる』とも。
 格差が拡大するだけでなく、固定化しつつあるのが今の日本です。非正規雇用から正規雇用に移動する例がごくわずかであることからわかるように、この国の社会的流動性はどんどん下がっている。コロナはそれを加速させている。

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 しかも生活が苦しいからこそ生まれる自己肯定欲求が自己責任論を強化して、格差を一層 固定化させる。自ら罠にはまってしまう。そして人材が有効活用されなくなり、社会全体が衰退していく。それが今の日本の地獄絵図です。

 
 自らそれを望む連中は仕方ありませんけど、極力踊らされないよう、巻き添えを食わないよう、自戒していくしかありませんね。これも、ソーシャルディスタンスです(笑)。

●余談ですが、昨年亡くなったギンズバーグ判事のドキュメンタリー『RBG 最強の85歳』が今週5日、6日の夜にNHK-BSで放送されます。面白いですよー。
www2.nhk.or.jp
www2.nhk.or.jp


 と、いうことで新年1回目の映画はハッピーな(笑)作品
 有楽町で映画『また、あなたとブッククラブで

bookclub-movie.jp

 会計士の夫を亡くしたばかりのダイアン(ダイアン・キートン)、20年以上前に離婚した夫のことを引きずっている連邦判事のシャロンキャンディス・バーゲン)、独身を貫き豪華ホテルを経営するやり手のビビアン(ジェーン・フォンダ)、定年退職した夫との関係に悩むキャロル(メアリー・スティーンバージェン)ら4人の女性は長年の友人同士。彼女たちは一冊の本を読んで感想を語り合う読書会を定期的に開いていた。あるとき彼女たちは世界中で大ヒットしたベストセラー官能小説「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を読み合うことになるが。

 出演する女優4人の平均年齢が74歳、という恋愛コメディ。ダイアン・キートン74歳、ジェーン・フォンダ84歳、キャンディス・バーゲン74歳、メアリー・スティーンバージェン67歳、全員がアカデミー賞ゴールデングローブ賞の受賞者。

 相手役はこれまた、アンディ・ガルシア64歳、ドン・ジョンソン71歳、リチャード・ドレイファス74歳と豪華な配役を集めています。
 18年に公開されたアメリカでは初登場3位、興収70億円という大ヒットを飛ばしています。

●4人の大女優。左からダイアン・キートンキャンディス・バーゲンジェーン・フォンダメアリー・スティーンバージェン

 お話も配役も映画の狙いがあまりにも見え見えで、どうせくだらない、とは思ったのですが、大好きなダイアン・キートンとお久しぶりのドン・ジョンソン見たさに期待しないで見に行きました。
 これが面白かった~(笑)。

 ヨーロッパはともかく、アメリカ映画では一昔前は老人の恋愛ものなんかあり得ないといわれていました。今はセックスも込みで堂々と作られるようになったのは進歩ですね。人間は人間なんだから。
 相変わらず日本は例外みたいですが。


 前の年に長年連れ添った会計士の夫を亡くしたダイアン(ダイアン・キートン)は老人の一人暮らしを心配する娘(アリシアシルバーストーン!)から、長年住んだLAを離れて自分たちが住むアリゾナへ引っ越すよう迫られています。

 ホテル事業に成功したビビアン(ジェーン・フォンダ)は、セックスは金で解決すればいい、と豪語しながら独身生活を謳歌しています。

 前述のギンズバーグ判事のようになることを目標にしている連邦判事のシャロンキャンディス・バーゲン)は20年以上前に離婚した夫が若い女と再婚することに激怒しています。

定年退職して時間が出来た夫に全く相手にされないキャロル(メアリー・スティーンバージェン)は嫌がる夫と無理やりダンス教室へ通っています。


 時間もあるし、健康だし、ある程度のお金も知性もある。そろそろ終活を始めてもおかしくないような彼女たちですが、ひょんなことから世界的ベストセラーになった女性向け官能小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を読書会のテーマに選んだことで、彼女たちの生活に変化が訪れます。

 『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』って現実の小説です。女性向けポルノ、と酷評されつつも世界的に大ヒットしました。映画化もされて、日本でも映画館に女性がいっぱい押し寄せてました。もちろんボクは見たことも読んだこともありません(笑)。
●今回のエントリーを書いて初めて知ったのですが、映画はドン・ジョンソンの娘が主演だったんだ~(笑)

 今作の映画の中の主人公たちは一応インテリです。だから、この本をバカにしつつも、いざ 読んでみたら人生が刺激された(笑)。

 ダイアンは飛行機の中で隠れて(恥ずかしいので)本を読んでいたら、臨席の男(アンディ・ガルシア)と知り合います。

 ビビアンは数十年前に別れたハンサムな元カレ(ドン・ジョンソン)と巡り合います。

 裁判官らしく謹厳実直な生活を送ってきたシャロンはネットで出会い系を試し始めます。

 キャロルだけは夫を振り向かせようとあの手この手を尽くしますが、うまくいかない。

 大女優が演じているだけあって、登場人物のキャラが立ちまくっています。
 ダイアン・キートンは相変わらずお洒落でチャーミングです。知的だし、相変わらず垂れ目で優しそうだし(笑)、70過ぎても背筋がしゃきっとしている。カジュアルな服を着てもスーツを着ても何着てもカッコいい。
 70年代後半 ラルフ・ローレンはこの人が着たことで有名になりましたが、それをほうふつとさせます。近年の彼女の出演作の中でも今回は特にカッコいい。

 ジェーン・フォンダは個人的にはあまり好きじゃありませんが、80を超えてもセックスシンボルらしい立ち振る舞いが似合ってるのは驚きです。これまた堂に入っている。80過ぎて胸元が空いた服が似合ってるのはどうなってるんだ(笑)。

 キャンディス・バーゲンはずいぶん太っちゃったけど、凛々しさは相変わらず変わらない。

 キャンディス・バーゲンは昔NHKでやってたTVドラマ『TVキャスター マーフィーブラウン』が大好きでした。当時のブッシュ政権をコケにしまくった、笑って泣かせる最高の政治コメディでした。


 アンディ・ガルシアも太っちゃったけどカッコいいし、ドン・ジョンソンは相変わらずのモテ男(笑)。でも、この人は子供の時から自分のベビーシッターを口説いていた(笑)そうですから、根っからそういう人です。だから嫌味がない(笑)。この映画でもマジでカッコいい。

 この人は80年代のTVドラマ『マイアミ・バイス』が有名ですが、ボクは90年代のTVドラマ『刑事ナッシュ・ブリッジス』が大好きでした。サンフランシスコを舞台にした刑事ものですが、認知症の父親の介護と高校生の娘を抱えた×2の刑事、という設定がいかにも90年代、の面白いドラマでした。
 余談ですが90年代はボクにとって文化不毛の時代で、ニール・ヤングのいくつかのCDとジョン・アーヴィングの小説、それに『刑事ナッシュ・ブリッジス』くらいしか心の支えがなかった。あのドラマにはずいぶん影響を受けました(笑)。

刑事ナッシュ・ブリッジス シーズン1 [DVD]

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  • 発売日: 2010/10/06
  • メディア: DVD

 いまいち目立たなかったリチャード・ドレイファスメアリー・スティーンバージェンのお話のオチも最後はまさかのミート・ローフのネタでビックリ。選曲も含めて、ここは号泣しました。これが判る人は日本ではあまりいないでしょうけど。

 ミート・ローフって挽肉料理じゃなく、欧米で数千万枚CDを売ったドラマチックなロックオペラの歌手です。大ヒットしたけど作品は大仰でバカなことでも知られている。
 と、思わせつつ、トッド・ラングレンバンドの超腕利きベーシスト、カシーム・サルタンがバンドリーダーを務める等 バカそうに見えて、実は趣味が良い(笑)というのが本質です。
 大映テレビの『スクール・ウォーズ』などのドラマ主題歌の元ネタですが、日本では殆ど知られていない。ボクはミート・ローフ、唯一の日本公演を最前列で見たのが自慢です。

地獄のロック・ライダー(期間生産限定盤)

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 と、言う具合で見ていて、とにかく楽しい。綺麗な画面、スターたちが過去の自分たちの当たり役を前提にした達者でカッコい演技、80年代の音楽と80年代風に作った新しい音楽。制作側の狙い通りと言えば、その通りですが、これだけうまくできていると全く文句がありません。

 無理に若作りしてるようなところもないし、浮いてるところもない自然体です。大スターたちの自分たちの積み重ねてきたキャリア、経歴がそのまま映画の中の味になっている。ちょうどよい重さです。男女問わず、70になっても80になっても、年相応のカッコ良さってある。やっぱりこういう歳の取り方は憧れちゃいますね。勉強になります(笑)。

 要するにこの映画のマーケティングの狙い通りにボクは嵌められました(笑)。
●こういう画を作られたら、アンディ・ガルシアも太ってたって、カッコいい


  確かにあざといですが、これだけ良くできていたら文句ありません。ロマンチックな風景、お洒落なダイアン・キートンの美しいお姿、ドン・ジョンソンのかっこよさ、ここぞというところで出てくる80年代の超名曲。どう考えても、やり方が汚い(笑)。

Avalon

Avalon

  • 発売日: 2004/04/01
  • メディア: MP3 ダウンロード

 めちゃくちゃ楽しいファンタジーでした。これはもう何度も見たいから、発売されたら絶対DVD買っちゃいます。

『また、あなたとブッククラブで』日本版予告編|2020.12.18公開