特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『2025年問題とスズキの炭火焼き』とアメリカの橋田寿賀子ドラマ(笑):映画『フェアウェル』

 この週末はずいぶん雨が降りましたねー。伊豆七島の人たちは大変だったみたいですけど、東京もずっと雨が続きました。

 日本学術会議の任命拒否の件、相変わらず政権が理由を説明しないのは酷い話だなーと思います。相変わらず、まともに説明しないどころか菅は名簿も見てないとか言ってますね。支離滅裂です。

 が、よく考えたら、今に始まった話じゃありません。安保法制も特定秘密保護法モリカケも政府はまともに説明しない。マスコミもまともに突っ込まない。で、国民もすぐ飽きる。

日本はまるで中国共産党北朝鮮みたいな世界になりつつあります。それをバカウヨ政治家や国民が推し進めているんだから、まるでブラック・ジョークみたいです。


 
 それでなくとも、あと5年もすれば日本は、団塊世代後期高齢者入りする2025年問題が起きます。
gendai.ismedia.jp

厚労省の解説
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/dl/s0927-8e.pdf#search='2025%E5%B9%B4%E5%95%8F%E9%A1%8C'

 国民の4人に1人が75歳以上、認知症は現在の150万人から320万人に増加します。医療・福祉予算は不足し、医療介護従事者だけでも100万人単位で不足すると言われています。
その頃 アベノミクスで溜まりに溜まった財政赤字がパンクでもしたら、もう目も当てられません。

 個人的には出来る限り、アホとの共倒れは避けようとは思ってますけど、もちろん悪影響から完全に逃れることはできません。インフラが整い、日本でも最後まで生き残るであろう?東京に残るべきか、地方に逃げて自給自足生活でもするべきか、マジで悩みどころです。

 

 これは少し前に食べたスズキの炭火焼き。上にはウイキョウの花が載っています。ウイキョウの香りが付いたオリーブオイルを塗って焼いているからです。
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 身の厚さは1センチくらいあるでしょうか。肉でも魚でも身が厚いモノって美味しいですよね。
 昔は常磐沖のスズキは立派なものが獲れるので有名でしたけど、311後、この店では使わなくなりました。これは千葉のものですが、質が良いものを探すのは大変だそうです。10年経っても原発事故の影響はこんなところにも残っている。

 備長炭で焼いた分厚い身を口の中に入れると文字通りふっかふかでした。焼く前に塩を振る加減がコツ、とシェフ氏が言ってましたが、魚って上手く焼くとホクホクした石焼き芋のような触感がする。ちょっと驚きでした。


 と、いうことで、高齢化をテーマにした映画です。新宿で映画『フェアウェル
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farewell-movie.com

 舞台は中国北部の地方都市、長春。末期がんを患う祖母のため、祖国を離れて海外で暮らしていた親戚一同が、従兄弟の結婚式を理由に中国に戻ってくる。25年前にアメリカへ一家で移民した次男の娘ビリー(オークワフィナ)は、幼時にかわいがってくれた祖母が残りの人生を悔いなく過ごせるように病状を本人に明かした方が良いと主張する。しかし両親を含め親族たちは、反対だった。

 たったの4館のみの上映だったにもかかわらず、最終的には891館まで上映館が拡大、全米各地に広がり大ヒット。主演のオークワフィナがゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞するなど、非常に評価が高い作品です。
 少し前の傑作コメディ『クレイジー・リッチ!』に続いて、アジア系の俳優しか登場しないにも関わらず、アメリカで大ヒットしたのが注目されています。

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  • 発売日: 2019/06/12
  • メディア: Blu-ray

 日本では4月公開の予定でしたが、半年遅れ。ボクも噂を聞いて、首を長くして待っていた作品です。


 ニューヨークで暮らす31歳の女性、ビリーは美術館の学芸員として働くことを夢見ています。が、就職はなかなかうまく行かず、金欠状態。くじけそうになる毎日ですが、独立すると親に宣言した手前、弱音を吐くこともできない。

 そんな ある日、中国北部の地方都市、長春で暮らす祖母が末期がんという知らせが届きます。25年前にアメリカへ渡ったビリーの一家を始め、親族一同は祖母に病状をしらせず別れを告げるため、日本で暮らす長兄の息子の結婚式を口実に一族が長春に集まることにします。
●前列左からビリー、祖母、祖母の妹、後列左からビリーの両親(祖母の次男)、従弟と日本人の奥さん、ビリーの叔父(祖母の長男)

 祖母は集まってきた一族を大喜びで迎えます。彼女は自分が末期がんで余命三か月ということを知らないのです。自分はただの風邪だと思っている祖母は孫の結婚式の準備を陣頭指揮(笑)。この祖母、なんとなく吉行和子に似ています(笑)。

 しかし、幼時から祖母にかわいがってもらったビリーは、悔いのない人生を過ごせるよう祖母に症状を知らせるべきではないか、と主張します。アメリカではそれが当たり前だからです。日本でも当たり前ですよね。医者は平然と告知するもんなあ。



 しかし、中国ではそうではありません。親戚一同は当人に告げることは望まないし、医師も敢えて告知しません。
 死ぬ前に思い残すことがないように祖母に病を告知するべきではないか、と強硬に主張するビリーですが、一族は全員反対です。
 父は『中国では生命は自分だけのものではない。(親族や地域など)全体の一部なのだ。ただ 祖母を心静かに送ってやりたい』とたしなめる。実際 祖母も曾祖母に告知をしませんでした。みんな、ぎりぎりまで当人には告知しないで、死を迎えてきたのです。

 ボクは見たことないですが、橋田寿賀子ドラマってこんな感じなのでしょうか。それを100倍くらい知能指数を増やして、1000倍くらい描写を巧みにした感じでしょうか。事前の予想とは違い、非常に濃い、そして上手い人間ドラマです。

 祖母も祖母の妹も、ビリーの父(次兄)も、日本で暮らすビリーの叔父(長兄)一家も、嫁いでくる日本人女性もいかにもあるあるな感じです。人間関係も環境も、嫁姑の関係も、良く描かれていて、一筋縄でいかないだけでなく、細やかに描かれています。
 どろどろした人間関係のドラマはボクはあまり好みませんが、これだけ上手な描写が続くと流石に興味津々です。

 やたらと一族がテーブルを囲むシーンが出てきます。中華料理がどれも美味しそうなことも含めて、とても面白いです。

 でも、一番強烈だと思ったのはエスニシティ(文化的な習慣)の違いの描写です。
 アメリカで暮らすビリー一家、日本で暮らすビリーの叔父一家、その息子と結婚する日本人女性、そして祖母や祖母の妹をはじめとした長春で暮らす中国人たち。同じアジア系でも、それぞれの考え方、性格、表現の仕方の違いがとっても面白い。

 中国に住む人たちはやたらと自分の感情を表面に出す。アメリカ的な価値観のビリーたちは自分の考えや感情を主張はするけど、個人というものが考え方の根底にあるから、中国育ちの中国人とは感覚が全く違う。
 日本で暮らすビリーの叔父一家は比較的穏やかです。あまり強引な主張はしない。さらに日本人の嫁に至っては普段はにこにこしているばかりです。自分の考えがないわけじゃなくて結婚相手のビリーの従弟を完全に尻に敷いているんだけど、表立ってはあまり主張はしない。祖母は『あの娘には感情がないのかい?』と言い出す始末。

 このエスニシティの違いの表現は、如何にも、という感じで本当に面白かった。他民族が共に暮らしているアメリカの都市部ではよくある光景なんでしょうね。
●一番左が日本人のお嫁さん、その隣が夫となるビリーのいとこ

 面白い会話がありました。25年前 富や自由を求めてアメリカに移住したビリー一家に、長春に住む親戚たちが、『お金を儲けるなら中国にいる方が良いのに』というシーンです。

 今や富のことだけ考えれば、中国にいたほうが儲かる。長春は中国ではそれほど大きな都市ではないと思いますが、画面で見ても近代的で急ごしらえの超高層ビルが数えきれないくらい林立しています。日本の地方都市なんか比べ物になりません。
 これだけお金が動いていればアメリカで就職口を探すより、はるかに稼げることは間違いない。まして長兄一家のように日本に移住することなんか言うに及ばずです。25年の時の流れはすさまじい。


 見る前は『泣ける』感動巨編(笑)かと思っていましたし、宣伝もそんな感じでしたが、物語はコミカルに進み、コミカルに終わります(笑)。東西の価値観に引き裂かれていたビリーが、最後は自分の中で調和を見つける。

 アメリカ人にとって、エスニシティの調和というのは身近な出来事でしょうから、余計に評価される映画なのでしょう。ボクは感動はしなかったのですが、面白さだけならかなり面白いです。リアルに、ていねいに、上手に人物やエスニシティを描き出す、ユニークだけど成熟した視点の映画だと思います。

泣ける…『フェアウェル』日本版予告編