特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『牛肉のクリームソース和え』とBS1スペシャル「欲望の資本主義2020スピンオフ ジャック・アタリ大いに語る」

 朝の気温はまだまだ一桁の日が多くて、例年に比べてまだまだ寒いような気がしますけど、それでも気候も良くなってきました。もう連休が始まった人っているんですか?ボクはカレンダー通り。
 4月から新しい仕事になって、早くも疲れてきたけど、あと1週間の我慢です。

 東京都の感染者数推移、低下傾向が続いています。努力すれば効果は出てくる。
 ですが、感染者が減り始めてからわずか1週間ちょっと。感染者数もまだ、平均では100人を超えています。まだまだ油断できない水準です。

 早く経済を立て直すためにはまず、感染者を減らさなければならない。これからが勝負であることは間違いありません。
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 極力大人しくしていようと思っていますけど、この週末はいつも行っているイタリアンへ行ってきました。普段と違って夜ではなく、お昼に、しかも徒歩で、です(笑)。

 先週 老舗弁当屋の弁松の廃業がありましたけど、こんな状況ですから、やっぱり、お世話になっている店は微力でも応援はしたい。
 しかも昨今は住宅地のほうが人は多い。先週の駒沢公園などひどいものでした。まだ都心のほうがマシかもしれない。
●人影もまばらな表参道
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 もちろん飲食店はどこも大変な状況です。在宅勤務の広がりでお昼は人がいないし、夜はまともに営業できない。しかも営業してると、他人の足を引っ張るこういう人間のクズ↓がボウフラのように湧いてくる。自ら同調圧力の奴隷になるアホがファシズムを作り出す、いかにも日本的な光景です。

●パチンコなんか文化とは思わないけど、科学的な根拠も示さずにつるし上げるのはどうでしょうか。店名を公表するような強硬措置をするのなら説明責任ってものがあるはず。


 2時間かけて歩いて行った店は、出来立てのものを出すのがポリシーだからテイクアウトはやらない。おまけに感染リスクを下げるため、昔から知っているお客さんの予約だけでやっているそうですから、余計に大変だろうと思いました。
●白アスパラ。イタリアのものは入らなくなったので、ドイツ産。イタリアやフランスのものとはまた、味が違うのが面白かった。土の違い、ですかね。

 良い材料を使う店に行くと農家や漁師などの生産者の事も思い浮かんでしまいます。飲食店がおかしくなると生産者だって立ちいかなくなる。飲食店にしろ、生産者にしろ、一度無くなったら簡単には復活できません。文化とは作り手と受け取り手が良きことを続けていくことでもある。

 そんなことを考えながら、ダイエットを忘れてお腹いっぱい食べました(笑)。
●ファッソーネ牛のクリームソース和え。シェフが『ヒマだから作った』(笑)という牛筋から作ったソースはコラーゲンたっぷり、肉に吸い付くようでした


 飲食店だけじゃなく、映画館も劇場も、いや、製造業やサービス業などほとんどの業種が大変な状況です。多くの企業では4月は売上が殆ど蒸発した状態です。更にこれから5月、6月と資金繰りが厳しくなってくる企業がどんどん出てくる。
 他人のことを心配している余裕はありませんが、微力でもできることはやっていきたいと思っています。
motion-gallery.net


 先週放送されて面白かったNHKのバリパラ『桜を見る会』、予定されていた再放送がなぜか他のものに差し替えられたそうです。どういうことなんでしょう。
 今週木曜の続編は大丈夫でしょうか。



さて、先週、4月23日(木) 午後9:00から放送された BS1スペシャル「欲望の資本主義2020スピンオフ ジャック・アタリ大いに語る」、

 これはさすがというか、実に面白かったです。

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www2.nhk.or.jp

 昨年秋に来日した際『日本の現在と将来』について語ったインタビューですが、コロナ危機の現在の状況にも当てはまるものでした。

 アタリ先生はまず、日本の現状について社会の持続可能性が乏しいと指摘します。先進国では断トツの最下位レベルだそうです。
 日本には少子高齢化、女性活用の遅れ、巨大な国家債務などの大きな問題がありますが、最も問題なのは『社会的流動性に乏しいこと』。

 彼は『利他主義が世界の将来を切り開く』としていますが、その理由は長期的な視点に立てば利他主義が最も合理的だからです。自分一人だけが利益をむさぼってしまえば、個人だって、企業だって、長期的には存続が難しくなる。

 この、長期的な視点に立つということがポイントです。アタリ先生は長期的視点という観点からは企業は同族経営が良い、と述べていましたが、現代の資本主義は金融の力が強くなりすぎ、四半期決算など短期的な視点に重きを置くようになってしまった。そこが問題です。
 
 例えば株価を上げるために企業が従業員をリストラするなどがその一例です。
 短期的な視点に立てばリストラをすれば人件費は下がりますから、企業の利益は増え、株主への配当を増やすことができ、株価も上がります。
 しかし長期的な視点に立てば優秀な従業員をリストラすれば、企業の競争力は弱くなります。従業員のリストラは道義的に問題であるだけでなく、長期的な経済的利益を損ねてしまう。

 これはボクも日頃 本当に実感していることでもあります。歴史が長い企業の多くはその傾向があるそうですけど、創業100年以上経っているボクの勤務先も、企業の文化としてそんなに阿漕なことはしないでおこう、という雰囲気が確かにあるからです。
 そんなに立派な会社でもないし、公明正大でもないけど、リストラとかマネーゲームのように利益のためなら何でもする、という傾向はあまりない。地道にコツコツと本業をやっていくだけだ、と経営者も、社員の多くも、そう思っているようです。
 企業を長く存続させることを考えたら、そうやって本業で社会に貢献しながら共存するのを目指すのが得策だと、ボクも思います。


 社会が長期的に存続するためにはまず人口減を防ぐ、そのためには日本は、住宅供給や女性がもっと働きやすくするなど。10年くらいの時間をかけて家族政策への投資が必要、とアタリ先生は言います。
 フランスはGDPの8~9%をかけた家族政策を10年間続けたそうです。それで出生率が回復した。日本の場合 40兆~50兆円かけて公営住宅の供給や教育費の低減・無料化、保育所介護施設の拡充をやれ、と言うことです。確かにそういうことをやれば子供は増える、とボクも思います。あと、男が家事をやらなければいけませんが(笑)。

 そして社会的な流動性です。どんな階級に生まれても頑張れば豊かな生活を送ることができる。誰もがそう思えるから社会に活力が生まれます。国会が2世・3世議員ばかりなことからも判るように日本の場合、そこが根本的に欠けている。『日本は社会的流動性が低い』と指摘するときのアタリ先生の顔↑は実に雄弁じゃないですか。


 今後 世界で起こる可能性があるリスクについて、アタリ先生はテクノロジーで社会の細分化・分断が極端に進む『マイクロ・ヴァルカニゼーション』(バルカン半島化)のほかに、極右と極左が結び付いた過激派の台頭を挙げていました。

 社会が不安定になったり、格差が拡大して、自分の生活に不安を覚える人が増えると、判りやすくて感情を揺さぶるような、『純粋な』言説が増えてくる。ポピュリズムですね。
 しかし『純粋な言葉』は過去しか見ていない。過去は都合の良いように切り取れるから純粋な話を作れますけど、未来は不確定、不透明です。未来は純粋さとは程遠い。

 アタリ先生は、例えば極端なエコロジストと原理主義的な宗教が結び付いた過激派が力を増してくるリスクがある、と指摘していました。どちらも理想を追求する『純粋な』主張です。

 フランスだけの話ではありません。例えば日本でも『消費税ゼロ』を主張する山本太郎は一時期 極右とくっつこうとしていました。消費税ゼロにすれば景気はよくなると主張する山本も、なんでもかんでも韓国や中国が悪いという極右も、主張は判りやすく『純粋』です。しかし、理屈は間違っているし現実を見ていない。

 山本太郎が主張する『消費税ゼロという公約を野党共闘が飲まなければ、選挙区にれいわも候補者を出す』は純粋です。そして実質的に安倍晋三への援護射撃です。そんな山本がいつ、安倍晋三や維新みたいな連中とくっついても不思議ではありません。右だろうが左だろうがリベラルだろうが、アホはアホバカに右も左もないんです(笑)。

 インタビューのなかで『ポピュリズムを背景にした独裁体制が台頭するか、民主主義を守れるか、今後50年が瀬戸際だ』とアタリ先生は述べていました。暗い予想ですが、そのリスクがあることはボクも同感です。

 
 アタリ先生の言葉で最も印象に残ったのは、『未来を恐れていたら、必ず失敗する』です。
 ただでさえ、世界も日本も問題が山積しています。世界的なパンデミックに襲われた現在はなおさらです。
 格差を縮小するための経済構造の変革や気候変動への対応など、今後は従来とは全く異なる路線へ舵を切っていかなければなりません言うだけなら簡単ですが、実行するとなると困難な話です。

 90年代初頭のバブル崩壊に始まって、山一ショック、ITバブル崩壊、小泉不況にリーマンショック、東北大震災+原発事故、そして今回のコロナ危機、と数年に1回は危機が襲ってきています。厭世的な気持ちになりがちなのはボクだけでしょうか(笑)。
 しかし厭世的になって将来を恐れていたら、判断を誤ったり、ポピュリズムや過激派、権力者の間違った言説に惑わされてしまうリスクは高い。正面から未来に向き合え、ということなのでしょう。
 
 ボクはアタリ氏の本、少なくともこの10年くらいのものは全て読んでいるし(パンデミックのリスクも指摘していました)、講演も聞きにいきました。
spyboy.hatenablog.com

 それでも今回のインタビューで『社会的流動性は長期的な社会の存続に必要』なことや『未来を恐れていたら失敗する』など、初めて気が付いたこともありました。
 まるで中国の古典の賢人の話を聞いているかのようでした。TV番組でこれだけの示唆をもらえたのは初めてかも。非常に良い番組でした。3回も見直しちゃいましたよ(笑)。28日深夜にBS1で再放送があります。