特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

帆を上げよう(Setting Sail):ドラマ『モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~』

 明けまして おめでとうございます。
 3ヶ日も過ぎて正月休みが残りわずかになってきたのが辛いところです(泣)。おかげさまで寒いけど穏やかな年明けでしたが、今年は株の異様な上昇やオリンピック後の不況も心配だし、きな臭くなってきたイランや北朝鮮で戦争、なんてことにならなければいいんですけど。

 正月のTVはいつもながらアホらしい。早回しできる録画でしか見なかったです。リアルタイムで見たのは『行く年 来る年』くらいでしょうか。在日韓国人の人が集まるお寺が出てきたのは良かったとは思います。ネットではクズなネトウヨが発狂してましたが(笑)。


 紅白なんか3時間くらい録画して、PerfumeとTWICEのシーン、併せて7分以外はすぐ消去(笑)。MISIAの登場シーンでは出演者が皆でレインボーフラッグ(LGBTQの象徴)を振った演出がちょっと話題になってましたけど、歌自体が耐えられないですから。



 ただ、31日の緒方貞子さんを取り上げた2013年のNHKスペシャルの再放送は緒方さんの仕事や人物像をコンパクトに振り返ることが出来て、感動しました。
www2.nhk.or.jp

 ボスニアイラクで難民の命を守るために今まで国際機関のタブーとされていた軍隊にも物資輸送などの援助を求めた緒方さんの決断も考えさせられましたが、満州事変当時の歴史を研究した政治学者の緒方さんが『今の日本は当時と同じく内向きで無知、傲慢な部分が間違いなく、ある』と断言していたのは印象的でした。慧眼です。判る人には本質が判っている。



 一方 我が身を振り返れば、年賀状は書くのも見るのもウンザリ。良く定年になって『年賀状をご辞退申し上げます』という便りを送ってくる人が居るそうですけど、あれ、いいですよね。

 この数年、年賀状はごく僅かな人だけ出して、あとはもう無視(笑)。来たものも見ない。まず、ハガキを巻いた輪ゴムを外す気力がない(笑)。要するに現実逃避、世の中から目を背けていたいんです(笑)。正月早々、世知辛い世の中なんかに向き合いたくないですよ。ムリムリ(笑)。

 ただ、昨年末に紀ノ国屋(関西でいうところの『いかりスーパー』みたいなもんです)へ行ったら、年配のご婦人がレジで店員さんに『良いお年を』と挨拶しているのを見ました。大して知っている相手でもないのにこういう挨拶をしているのには、少し新鮮な感動(笑)を覚えました。昔はこういう習慣って一般的にあったと思うんですけどね。
 また大晦日に銀座へ頼んでおいた和菓子を取りに行ったら、若い店員さんが『お寒うございましたね』と、わざわざ店先でお茶と善哉を出してくれた。原価は大したことないでしょうけど、印象は全然違う。
●善哉をほんの一口、というのが品があります。ふっくらと煮た小豆が輝いてました(笑)。

 まさに金持ち喧嘩せず(笑)を絵に描いたような光景です。お金はともかく、この悠然とした態度は見習わなくちゃと思いました。そうすることで嫌な世の中も多少は過ごしやすくなるかもしれません。とにかく今年も世俗とは極力かかわりを少なくできますように(笑)。 


 と言いつつ、このお休みにびっくりするようなものを見てしまいました。
 アマゾンのプライム・ビデオでドラマ『モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~
f:id:SPYBOY:20200103120243p:plain

www.amazon.co.jp

 最近はアマゾンやネットフリックスなどの巨大IT企業が多大な金額を投資して、自社独自の作品を作っています。技術進歩が目覚ましい昨今、本当の意味で差別化できるのはコンテンツしかないからです。

 映画だと映画会社が興行成績を気にするから上映時間や内容に制限をつけることがよくあります。しかし、アマゾンやネットフリックスなどは映画館は関係なし、自社でネット配信すればいいから、それほど興行成績は気にしません。金もうなるほどある。そこで制作資金と同時に制作の自由を保障して、優秀なクリエイターを招いて優れた作品を作る競争が起きている。昨年のアカデミー賞作品『ROMA/ローマ』や先日の『アイリッシュマン』などがその典型です。

 しかし、こういうビデオ配信ものは見始めるときりがないし、そもそもボクは見る時間がないので敬遠していました。が、今月 音楽雑誌を見たらボクの大好きな『はじまりのうた Begin Again』、『シング・ストリート 未来へのうた』のジョン・カーニー監督がアマゾンで30分×8本のドラマを作ったという記事が目に留まりました。それがこの『モダン・ラブ』です。

シング・ストリート 未来へのうた(字幕版)

シング・ストリート 未来へのうた(字幕版)

  • 発売日: 2017/01/10
  • メディア: Prime Video
はじまりのうた BEGIN AGAIN [DVD]

はじまりのうた BEGIN AGAIN [DVD]


 原作はNYタイムスに掲載されている同名の実話コラムを基にジョン・カーニーらが脚本をつくったというもの。NYを舞台にした1話完結のドラマにはそれぞれアン・ハサウェイティナ・フェイ(30ROCK)、 デヴ・パテル(スラムドック・ミリオネア)などの有名スターも出演しています。

 ジャンルとしてはラブコメディ❤️に分類されていますけど、若い男女だけの狭い話ではありません。
 東欧出身、元スナイパーのドアマンと若いシングルマザーとの素晴らしいエピソードから始まり、引っ込み思案の起業家が中年女性ジャーナリストの力を借りて以前の恋人と寄りを戻す話、倦怠期の夫婦関係をテニスのラリーに準えた話、双極性障害の女性の恋と友情、デートをすっぽかされた男性が病院に担ぎ込まれてナイジェリア系の女性と語り明かした一夜、養子をもらおうとするゲイカップルとホームレスの女性、ファザコン若い女性と30も年上の男、老境を迎えた男女の恋、どれも今まで聞いたことがないようなユニークなお話ばかりです。

 登場人物たちは性別も年齢も人種も本当に多様です。だからこそ、お話が広がり、普遍性が感じられる。それでいて常にユーモアがあってハートウォ―ミング、悪人がまったく出てこないのは一貫しています。

 一体どうしたら、たった30分でこんなに心を深く揺れ動かすお話を作れるのか、殆ど理解できません。全8話のうち、6話は号泣してしまったくらいです。

 お話、役者さんの演技、佳曲が並ぶ音楽、ファッション、全てが見どころだし、全てに意味がある。無駄がない。こんなに完成度が高い、素晴らしいドラマを見たのは正直 生まれて初めてでした。日本のTVドラマとは3桁くらいレベルが違う。違い過ぎる。
アン・ハサウェイは喜々として双極性障害躁鬱病)の主人公を演じていました。

 強いて難点を言えば、お話がどれも感動しすぎてしまう、1話が30分で終わってしまうのはもったいないってことくらいです。
●監督らが自ら手掛けたサントラも実に素晴らしい。これだけでも泣けました(笑)

Modern Love: Season 1 (Music From The Amazon Original Series)

Modern Love: Season 1 (Music From The Amazon Original Series)

  • 発売日: 2019/10/25
  • メディア: MP3 ダウンロード


 ジョン・カーニー監督らが自ら作った主題歌''Setting Sail'’で始まる(オープニング映像もまた、本当に素晴らしい)30分間×8回はまさに至福の時間でした。

 ともすれば新年は暗い気持ちになりがちなのですが(笑)、これを見ていたら生きていることがまんざらでもないと思えたし、うんざりするような世界に立ち向かう勇気が湧いて来ました(笑)。男女に限らない愛情や友情、お金、キャリア、人生を長く生きてくると失くしてしまうものも多いけれど、幾つになってもまた、見つければよい。

 新年早々良いものを見てしまった、というか、呆れ返るような大傑作。早くもシーズン2の制作も決まったそうで、楽しみです。アマゾンのプライム会員に入っていれば無料で見られます。

アン・ハサウェイ出演『モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~』予告編 | Amazonプライム・ビデオ