特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『ローマ法王と我々が対峙しているもの』と『1129再稼働反対!首相官邸前抗議』

 めっきり寒くなりました。真冬の寒さです。
 春と秋がどんどん短くなっていると思いませんか。勤務先でタイ帰りの人が『(春と秋がない)東南アジアのような気候だ』と言ってましたけど、地球温暖化の影響はこんなところにまで出てきています。24節気のように四季の繊細な変化を楽しむ日本の文化はあと数十年で影も形もなくなってしまうでしょう。
●晩秋の夕方、運河にかかる橋の上で鳥たちが翼を休めていました。
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 まず、今朝ビックリしたのがこのニュース↓

 今年4月の大学の入学式に親同伴というのが7割以上!というのです。入学式に出席した学生が97%と言うのも驚きですが、子供というより、まず親の問題です。気持ちは判らないでもないけど、子供に精神的な自立をさせよう、なんて発想は薄い親が多いんでしょうね。だって大学生でしょ(笑)。こりゃ、日本にプロ臣民が粗製乱造されるわけです。だ~めだ、こりゃ(笑)。

●ちなみに、このニュースには全く驚きませんでした(笑)



 さて、木曜の朝、朝日の論壇時評津田大介氏が現代の『剥奪感』について述べていました。
digital.asahi.com

 アメリカの貧困問題を取り上げた本を訳した北海道大の政治学者、吉田徹氏らの座談会での指摘、『現代に広がる『分断』は格差や社会的不平等が広がる中で誰もが相対的な「剥奪(はくだつ)感」を抱くようになったことで「マイノリティ化」したことによって引き起こされた』というのです。
synodos.jp


 この座談会で取り上げられている、住民が貧困や格差にあえいでいるというロンドンのイーストロンドンやアメリカのヤングス・タウンなんか、音楽ファンのボクとしては『何を今頃言ってんだよ、だから学者はダメなんだよ』と思います(笑)。 
 元々移民が多いイーストロンドンはパンクのメッカ、70年代からパンクスや極右の抗争がしょっちゅう起きていましたし、
ザ・クラッシュ。Voのジョー・ストラマーの兄が国民戦線(極右)に入って自殺したことから反ファシズム・反差別を貫きました。

 ブルース・スプリングスティーンが鉄鋼業が潰れて町が廃墟同然になったことをうたった『ヤングスタウン』を作ったのは90年代です。往々にして日本の学者によくあることですが、連中は20~30年頭が遅れている。ストリートに出てないんだな(笑)。
●『ヤングスタウン』が入っている『ゴースト・オブ・トム・ジョード』。『怒りの葡萄』です。

 それはともかく(笑)、格差や不平等が広がる中で多くの人が不満を持つ人が増える、中には被害者意識を持つ人が増える、というのは頷けます。
 『日本サイコ―』みたいなTV番組がたくさん作られたり、総理大臣が『日本を取り戻す』みたいな戯言を言い出したり、ネットで差別的な言動をするようなバカが増えたのは、心の中に被害者意識/剥奪感を持っている人が多いからです。


 事実を直視せず『悪いのは他の誰か』という幼稚園児なみの発想ですが、これだけ広がってくると笑って済ませるわけにはいきません。津田が言っているように剥奪感は偏狭なナショナリズム、それに福祉などを削減する新自由主義的緊縮政策と結託しやすい他人を差別&排除することで自分の帰属意識を満足させるわけです。

 前回のエントリー、それに今回の津田の評論でも触れられていますが、先週末 東大の大澤というAI関連の特任准教授が『自分の会社では中国人お断り』という差別的なツイートをして炎上、マネックスなどスポンサー企業が講座への寄付を停止、提携先のスイスの会社が『レイシストとは商売しない』として提携を打ち切るという騒ぎがありました。
●1枚目は先週末、2枚目が今週の展開

 これで、こいつのキャリアはほぼ絶たれたも同然だし、そもそも最近のAIやIT分野の中国人技術者の実力を知らないなんて救いがたいバカではあるんですが(笑)、東大の、福島県の「中流のやや貧困層より」の家庭で育った(当人談)人間でさえ、そんな狂ったことを言い出すのが最近の日本です。


 今回のローマ法王の来日で一番なるほどと思った言論は27日水曜日の日経2面、『真相深層』でした。
www.nikkei.com

 『法王が核廃絶や自国ファースト主義などをはっきり否定する姿勢には、台頭するポピュリズムとの対決姿勢が見える』と言うのです。
 核を巡る情勢は中距離核戦力廃棄条約が廃棄されるなど悪化する一方、トランプのメキシコとの壁やイギリスのブレクジットなど多国間協議を拒絶する単独行動が台頭しています。日本でTPP反対とか言ってるバカも同様(笑)。

 その原因は一般国民の不満がたまったことによって台頭しつつあるポピュリズム、政治家の大衆迎合です。トランプやジョンソン、それに安倍晋三自民党のネット部隊は、国民の不満の原因を外国人や生活保護など他の弱者のせいにすることで、自分たちの権力の正当性を主張する。まさにポピュリズムです。

 一方 政府に対立する側でもポピュリズムをあおることで、自分たちの権力強化を図っている。『TPP反対』や『ムサシの投票機の選挙違反』などのくだらない陰謀論、『消費税廃止』のような自分で自分の首を絞める夢物語、選挙のたびにバカが新党を立ち上げて安倍晋三の援護射撃をしているのもその一例です。
mainichi.jp

山本太郎が自分の勉強会にデマゴーグ高橋洋一を呼んだのが騒ぎになっています。以前にも書きましたが山本のようなバカは消費税廃止なら三橋貴明のような極右でも高橋洋一のようなレイシストデマゴーグでも、なんでもいいんです(笑)


 日経の記事は『イデオロギー対立が終わり、国際体制の秩序が崩れたことで、教皇の競争相手は共産主義からポピュリズムに変わった』と指摘しています。なるほど~です。

 意識的にしろ、無意識にしろ、我々は津田が言うところの『剥奪感』を抱えている、と同時にポピュリズムに騙されるリスクも抱えている。今の法王は『今の我々には何が問題なのか』、いや『我々の真の敵は何か』を理解しているのでしょう。
 我々の真の敵は偏狭なポピュリズムです。だからこそ、来日時の彼の言葉に納得する人が多かったのだ、と思います。

 いくら野党がだらしがないとは言え、安倍晋三の政権だっていつかは終わりが来ます。
 しかし、それだけでは問題は全く解決しない。人々の不満を煽り、単純化された心地よい言葉で事実から目を背けさせるポピュリズムには終わりがないからです。
 偏狭なポピュリズムの原因である経済の問題は重要ですが、それ以前にまず、我々自身がポピュリズムの危険性にもっと目を向けることが大事だと思います。
 



ということで、今週も官邸前へ#金曜官邸前抗議
 今日は久々の晴れ。今年一番の寒さでしたが、気持ちいいです。午後6時の気温は8度、参加者は200人ちょっと。
●『電気代をワイロに使うな!』。抗議風景

 今週 女川原発2号機の安全審査に合格が出ました。柏崎や東海第二などと比べて地元合意も得られやすいのではないか、という観測も出ています。
www.nikkei.com

 東日本大震災女川原発僅か80センチ差で津波の被害を逃れました。当初は12メートルで堤防を建設する予定だったのを、過去の津波を研究していた地元出身の東北電力の平井副社長(故人)が周囲の反対を押し切って14.8メートルで堤防を作らせたそうです。女川原発地震で1メートル地盤が沈下したところに13メートルの津波が来襲、80センチ差で助かった。
business.nikkei.com
 
 「技術者には法令に定める基準や指針を超えて、結果責任が問われる」というのが平井氏の信念で、14.8メートルという数字は自分で古文書を調べて出した数字だそうです。自分の頭で考え、自分で判断したわけです。

 同じ経営者でも、『堤防の高さは不足ではないかという意見にただ耳をふさぐだけで、何も判断せず、アクションも起こさなかった東京電力の連中とは全く対照的』なのには全く驚きます。経営者にしろ、政治家にしろ、リーダーは結果責任。だからこそ高い給料をもらっているんです。

 当初 東北電力東通、女川併せて安全費用を3000億と見込んでいたそうですが、女川第二だけで3400億円かかるそうです。東北電力はただでさえ電力需要が減っていきます。そんな環境下での巨額の負担増は普通の企業だったら、それだけでひっくり返るような話、社長や担当役員がクビになるような話です。今の東北電力の経営陣は平井氏のように自分の頭で考えている人がいるのでしょうか。


 こんなユルい話が平然と通ってしまうのは、電力料金に転嫁する総括原価方式という仕組みが出来ているからです。個人にできる抵抗は『東北電力を使っているなら、切り替える』、政党に『総括原価方式を見直す政策を要求する』だと思います。特に後者。総括原価方式さえぶっつぶせば、電力会社は原発なんか維持できなくなります。
 今も原発で潤っている連中がいる以上、ただ原発反対というだけでなく、原発を支える仕組みを解きほぐしていかなければ原発はやめられない、と思います。
女川原発の再稼働に関するパブコメ募集が始まりました。12月27日まで
search.e-gov.go.jp