特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『いだてん 明日なき暴走』と【0707 NO NUKES ! 原発ゼロ★国会前集会】と映画『アマンダと僕』

 日曜日のNHK『いだてん』の『明日なき暴走』は期待に違わぬ出来、いやそれ以上でした。
www.nhk.or.jp

 冒頭 これが遺作になるであろうことが本人も判っていた筈のショーケンの存在感(撮影時、彼は腹水がたまってお腹がパンパンに膨れていました)と本気を出した寺島しのぶが視聴者を物語に引き込み、ビートたけし神木隆之介くんの見事な狂言回しで舞台を整え、主役たちが熱量の籠った演技を見せる。全然知らなかったのですが人見絹枝を演じた菅原小春って人は演技は初めてだったそうですね。国際的なダンサー、振付師だそうです。

 大震災からの伏線を綺麗に回収し、たかだかスポーツの話を女性の自由や平等に昇華させたお話しも素晴らしい。明治、大正の話がまさに現代に繋がった。『明日なき暴走』というタイトルは文字通り''Born To Run''と言うことだったのもやられた~と思いました。開始後20分くらいからはもう、ずっと泣きながら見てました(笑)。TVドラマでこんなものを放送していいのか?!
 この回は『モテキ』や『湯けむりスナイパー』などの傑作深夜ドラマや数々のヒット映画も作ってきた大根仁の最高傑作になったと思います。



 さて、日曜の夕方は『0707 NO NUKES ! 原発ゼロ★国会前集会』へ行ってきました。
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 まあ、ただ集まってるだけの集会とかはあまり興味ないです。スピーチとかも大抵はつまんない。仲間うちにしか通用しない内向きの話を聞くより、自分から声を出したり、歩いたりする抗議やデモのほうがボクは好きです。
 雨模様だし涼しかったので、今年バーゲンで買ったマッキントッシュのレインコートで気分をアゲて出かけました(笑)。生憎の雨で国会前はこんな感じでした。
●雨の中で演奏すると言うのも大変だと思いました。頑張ってる。ただ直接的な歌詞ばかりの歌はご勘弁、でしたが。

●主催者挨拶

●政治家のスピーチ。順に『原発ゼロの会』の初鹿衆院議員、大分スピーチが上手くなった共産党の山添拓参院議員、立憲民主の山崎誠衆院議員、菅直人

 この中では『原発が日本の足を引っ張っている』という山崎誠衆院議員の言っていることが一番納得出来ました。
 それと比べれば『選挙公示初日はおしどりマコと一緒に東電前へ行った』と相変わらずボケまくってる菅直人なんかさっさと引退した方が良い。東電前に行って投票してくれそうな有権者が居るのかよ。日本の将来どころか、デマ芸人を擁立することで票が減ることすら考えていない。楽観的と言うより市民を舐めてます。過去の総括も満足にしないまま、政治不信を煽っている菅直人は、立憲の足を引っ張ってると思う。
 古賀茂明氏もまあ、どうでもいいですね(笑)。


 選挙序盤の予測で『自公が過半をとる』という予測が発表されています。
www.asahi.com

 当たり前だと思います。
 右左関係なく まともな人なら、国会で自公が圧倒的多数を占めるのは良くない、と判ってると思うんです。でも投票したい野党がない、と感じてる人も多いはず。
 


 だって客観的に見て、立憲民主、国民民主、共産、どこも今回の選挙で積極的に支持する理由がないじゃないですか。彼らが前回の選挙と何か変わりましたか?だったら与党が過半くらいとってしまうのは当り前。ボクは3分の2を阻止できれば良いと思っています。


 まさか、MMTの山本太郎?ご冗談でしょ(笑)。
●『山本太郎の特集を組もうとしたら番組がつぶされた』というデマが飛び交っています。C級マスコミが陰謀論を広め、信者がそれを流布します。そもそも番組が終わるんだから、山本太郎が関係あるわけがありません(見出しと違い、記事本文にはそう書いてあります)。スタッフが元『噂の真相』のリテラ(笑)はともかく、中島岳志あたりも引っかかるんだから、ほんとバカばっかり。


 鼻をつまんで投票する冷静に見て、その程度が今の野党の実力じゃないでしょうか。自己認識すらまともにできないから、ダメなんですよ。野党もいわゆるリベラルな人たちも。
●『武器としての世論調査』の光春氏が選挙区別に各報道機関の予測をまとめたもの(参考になります)


武器としての世論調査 (ちくま新書)

武器としての世論調査 (ちくま新書)

 いずれにしても棄権ほど無責任で馬鹿げたことはありません。大した理由もないのに選挙を棄権するような人間は民主主義を破壊する、いわばテロリスト、文字通りの犯罪者という空気はもっと広まってよいはずです。
 参院は選挙期間も衆院選挙より長いし、序盤の予測はいくらでもひっくり返ります。ここから如何に選挙に関心を持つ人が増えるか、増やすことができるか、じゃないでしょうか。



 ということで、恵比寿で映画『アマンダとボク
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www.bitters.co.jp

パリで一人暮らしをする24歳の青年、ダヴィッド。普段は知り合いのアパート経営者の手伝いと公園の枝打ちで生計を立てている。近所にはシングルマザーの姉がいて、姪のアマンダともども仲良く暮らしている。ダヴィッドにはレナ(ステイシー・マーティン)という恋人が出来るが、ある日 テロリストの乱射事件に巻き込まれて、姉は死亡、レナは重傷を負ってしまう。自分が後見人となるかどうかは迷いを抱えながらも、ダヴィッドは7歳のアマンダの面倒を見ることになるが。

 ミカエル・アース監督は長編三作目、日本公開はこの作品が初めてですが、東京国際映画祭のグランプリと最優秀脚本賞を受賞しています。

 主人公のダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)は幼いころに親が離婚して父子家庭で育ったせいもあって、近所に住む姉、サンドリーヌと仲良しです。シスコン気味と言っても良い。
ダヴィッド(右)と姉のサンドリーヌは大の仲良しです。幼い時に母親が家を出ていった二人は父子家庭に育ちました。
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ダヴィッドはシングルマザーであるサンドリーヌの子供、アマンダとも仲良しで学校の送り迎えまでやっています。
●サンドリーヌの娘、アマンダ(左)の学校の送り迎えもダヴィッドがやっています。
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 やがてダヴィッドはアパートの入居人、レナ(ステイシー・マーティン)と恋人同士になります。
●ボクのお目当ては『グッバイ・ゴダール!』でアンヌ・ヴィアゼムスキーを演じたステイシー・マーティン。これだけきれいな人は中々いないと思う。子供の時 日本で育ったそうです。
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 そんなある日、公園でレナとサンドリーヌが無差別テロに巻き込まれます。レナは重傷を負い、サンドリーヌは死亡。レナは傷ついたまま故郷に帰ってしまい、残されたダヴィッドはアマンダを抱えて途方にくれます。
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 ダヴィッドとアマンダ、傷ついた者同士の描写が非常にリアルです。ダヴィッドはまだ24歳、仕事もフリーターに毛が生えたような程度だし、一人前の大人とは言い難い。
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 そんな若者が、まだ7歳の子供を抱えて途方に暮れるのは良く判ります。経済的にも精神的にもプレッシャーは大きい。ダヴィッドは不安に駆られてしょっちゅう涙を見せます。これだけ男の子が泣く映画も珍しいかもしれない。でも、そこが良いんです。演じるヴァンサン・ラコストの演技も含めて、この造型には非常に好感が持てました。
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 監督が道端でオーディションに参加しないかと声をかけたというアマンダ役の女の子も名演だと思います。名実ともに、まだまだ子供なんですが、一人の人間として非常に繊細に描いている。遊んでいる時の素の笑顔と悲しみの感情を押し隠す複雑な表情の対比がお見事です。
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 映画の中ではデヴィッドとアマンダ、二人が走る場面が何度も描かれます。象徴的ではあるんですが、動きのなかで段々と変化していく二人の表情が素晴らしい。この演出は非常に上手い。
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 無差別テロという現代を象徴するような題材を扱いつつも、まともな人間のまともなお話し(笑)に着地しています。世の中がまともではないので(笑)、こういう作品は逆に新鮮に感じました。余韻があるエンディングといい、非常に心に残る、まともな作品です。観ていてホッとしました。
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 繊細な登場人物たちの感情を、奇をてらわず正面から描く、穏やかで繊細な、とても良い映画です。孤独な二人の人間関係が愛情に変わっていく過程も感動的ですが、何よりも人間の理性への信頼が感じられます。いかにもフランス人らしい。この監督の前作『サマーフィーリング』が今月 公開されるので、これも是非見に行こうと思っています。

『アマンダと僕』予告編