特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『最低賃金』と読書『資本主義と民主主義の終焉』、それに映画『パリ、嘘つきな恋』

 今週は半年に1回の勤務先の強制連行宴会で、ボクは官邸前抗議はお休みです(泣)。
●宴会っていうのは話すこともないし、とにかく楽しくない。それでいて、窓の外を見るくらいしかやることもないから、結局 食べちゃうんですよ。しかも大してうまくない(泣)。ほんとに時間と資源の無駄だと思う。
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代わりと言っては何ですが、日曜日にエキタスの『最低賃金上げろデモ#最低賃金を1500円に があるので、そちらの模様は月曜の更新でアップします。


 木曜の日経に出ていましたが、最低賃金を上げても失業は増えないという研究や実例が、アメリカやイギリス、ドイツなどで続々と出てきています。失敗したのは一気に16%も上げた韓国だけです(そりゃあ、いっぺんに16%も上げればそうなりますよ(笑))。
●良い記事なのに有料記事なので全文貼り付けます。

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www.nikkei.com

 消費税アップ凍結ならまだしも、山本太郎のように頭の悪い奴が『消費税廃止』と言ってますけど、それには 財源の問題や世代間格差を拡大させるという大きなマイナスがあります。富裕層から税をとれ、というのは賛成ですけど、それだけじゃ財源は足りないでしょう。

 このブログで前々から言っているように、相続税100%なら景気対策としても財源としても格差対策としてもOKですが、勿論 山本太郎のような真正アホはそこまで頭は回らない(笑)。
●前回のエントリーで山本太郎が極右の偽経済評論家、三橋貴明と組んだのをご紹介しましたが、今度はこれ。案外 細野豪志と一緒に自民党二階派に入ったりして(笑)。半分冗談にしろ、自民だったらそれくらいやるし、山本太郎もそれに引っかかるくらいはバカでしょう(笑)。


 一方 最低賃金を上げれば働く人の皆の給料も増えるし、消費も増えるから企業も儲かり、税収入も増える。財源だって出来るでしょう。生産性が低い企業の淘汰も進み、日本経済の足を引っ張っている無能な経営者の整理も進めることができる。人手不足と言っている今がチャンスなんです。もう少ししたらAIやロボットで人間の雇用だってドラスティックに減る可能性だってある。そうなってからではもう、間に合いません

 選挙に向けて 自民や国民民主の公約は最低賃金1000円以上、立憲民主党は5年以内に1300円という公約を掲げています。ただでさえ先進国の中でも低い日本の最低賃金の引き上げは格差対策だけでもなく、景気対策としてもますます重要になってきています。
www.nikkei.com


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さて、軽い読書の感想です。
資本主義と民主主義の終焉」。民主党のブレーンでもあった山口二郎法政大教授と水野和夫法政大教授が平成の30年間を振り返った対談。

 内容は冷静な語りで過去を思い出させてくれる部分もあるし、さらさらと読めて面白い本です。自分でも忘れていたことも多かったので、過去を振り返ることは将来への学びを得るためには大切だ と思いました。ただ、水野和夫先生のいい加減な放言、山口二郎のくだらない寝言や愚痴も混じっています(笑)。律儀に全部を本気に取るとまずいかも(笑)。

 対談の中で、『与野党ともに話し合う共通の基盤があって「河野談話」などを出すことができた90年代初頭が日本の戦後民主主義のピークだった』というのは成程~と思いました。『民主党政権、特にリーダー3人、鳩山は定見はあるけど政治的スキルがなさすぎ、菅、野田は個人的なことばかり考えて理念が全くなかった』のも言えています。

 これに政争以外に興味がない、行政経験もまともにない小沢一郎が絡むのだから、民主党政権は、とにかく人材不足だった。私利私欲しか興味がない安倍晋三よりはマシかもしれませんが、それでも酷かった、というのは事実です。失敗は仕方ないにしろ総括は必要だと思う。それにこの4人はもう、政界に出てくるべきではない。


 この本の結論は資本主義が終焉に向かいつつあり、なおかつ少子高齢化で衰退の道をまっしぐらの日本は、今後二つの事をやっておかなければならない。』というもの。一つは『財政の均衡を図り社会保障を含めてゼロ成長でも持続可能な財政制度を設計すること』、もう一つは『エネルギー問題の解消』(石油依存からの脱却)

 かって日本は自動車、電機、機械、の3つの産業の黒字で石油を輸入して存立する経済構造でしたが、今や電機は壊滅、ほぼ自動車産業だけで貿易黒字を稼ぎ出す構造になっています。となってくると、現在の日本の存立条件は『自動車産業の国際競争力があること』、『石油が1バレル100ドルを超えないこと』(水野先生の計算)、『ゼロ金利であること』の3つです。一つでも崩れたらこの国はアウト。実に危うい状況です。

 自動車産業だって電気自動車へのシフトが進む中で、いつまで国際優位を保てるか判りません。石油が1バレル100ドルを超えることだって、国際情勢次第でいくらでも考えられる。現にこの10年間、何度も100ドルを超えるような事態が起きています(下のグラフのオレンジ線が100ドル)。その時 日本は経常赤字になったし、たまたま円安でしかも短期間だったから大事にはならなかっただけです。
●WTI原油先物価格のこの10年間の推移
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 TPPやアメリカとのFTAを『自動車のために農業を売り渡した』とか言ってる連中がいますけど、どちらが重要かを考えれば当然のことです。現時点では自動車がなければ石油は買えない。石油が買えなければ農業だって壊滅します。農業資材やビニールハウスの燃料、肥料、生産物の保管や輸送、日本の農業がどれだけ石油漬けなのかわかってないのか(笑)。もちろん石油がなければ他の産業だってただでは済みません。

 そんなことより競争力のある産業を如何に育てていくかは資源小国の日本にとっては急務です。農業のように従事者の平均年齢60台後半の斜陽産業に構っている余裕なんかあるはずないです。農業への企業参入解禁、それに農協を強制分割したり流通支配を崩すなど産業の競争力を高める策ならよいとは思いますが。


 まして、山本太郎のように日本でもMMTとか言っている連中は完全に頭がおかしい、と改めて思いました。
 今でさえ上記の3つの条件が満たせなくなったら日本は壊滅です(笑)。今はまだ 日本が経常黒字だから国内で借金を用立てることができる。だから、今のところは借金まみれの国でもなんとかなっているんです。
 
 でも MMTとか言って無制限に金を使っていて、その時に経常赤字になったらどうなるでしょう? 外国の金を借金して経済を回そうとするわけですから、資金繰りに窮するのは必至です。
 そうなれば 文字通りギリシャみたいに増税と年金・福祉削減の国になってしまう。オリンピック後というところも共通しているかも(笑)。そんなことに成ったら一番しわ寄せがいくのは庶民です。

 要するにMMTなんてわざわざショック・ドクトリンを誘発しているようなものです。だから、アホだっていうんです。
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ということで今回はすっごく楽しい映画! 新宿で『パリ、嘘つきな恋

paris-uso.jp

スニーカー販売会社のフランス支社長、ジョスラン(フランク・デュボスク)は49歳、独身。口八丁手八丁で女性の尻を文字通り追いかけているプレイボーイ。結婚する気なんか全くない。亡くなったばかりの母親のアパートの後片付けをしていると、隣人のセクシーな介護士ジュリーに足が不自由と勘違いされる。若くてセクシーなジュリーの気を惹こうと、障碍者のふりをするジョスランだが、ジュリーからは足が不自由な姉、フロランス(アレクサンドラ・ラミー)を紹介される。車椅子生活にも関わらずバイオリニスト、車いすテニスの選手として活躍し、知性に溢れるフロランスにジョスランは惹かれていくが、自分が健常者であることを言い出せなくなってしまって- - --


 主演のフランス人コメディアン、フランク・デュボスクが監督・脚本も務めたという、フランスで興収1位、200万人を動員したというラブ・コメディです。
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 主人公のジョスランは49歳にもなって文字通り、年がら年中、女性の尻か胸を追いかけているような男です。口八丁手八丁というといやーな感じですが(笑)、あまり嫌悪感を感じません。ジョスランはドスケベだけど、上品だし、知性もある。
●主人公は有名スニーカー販売会社のフランス支社長、仕事は出来る。いい歳こいてますが、独身、ハンサム、金もあります。

 演じる主演兼監督のフランク・デュボスク、フランスのコメディアンだそうですが結構ハンサム。49歳という役の割には老けているような気はしましたが、フランス人というよりイタリア人っぽい。それに洋服がお洒落。これ、ポイント高い。

 ボクがフランスやイタリアの映画が好きな理由の一つは、服がお洒落というのがあります。この映画はその点、お見事です。非常に参考になります。
 ボクは今までドレスシャツの第2ボタンまで開けるのは抵抗がありましたが、この映画を見てから開けるようになった(我ながら、軽い)(笑)。折しもバーゲンのシーズン、かっこいいシャツが欲しくなって困ってます(笑)。
●いかにもラテン系のいいスーツです。

 ジョスランは亡き母のアパートの隣人、若くてセクシーな介護士、ジュリーに足が悪いと思われて仲良くなったことで彼女を、いや、正確には彼女の尻と胸を追いかけ始めます(笑)。
●ジュリー(右)を見るジョスランの視線に注目(笑)。

 彼女の実家へいくことになったジョスランですが、そこで足に障害がある、自分と同年代の姉、フロランスに紹介されます。
●ジョスラン(右)はジュリー(中央)の実家で、姉のフロランス(左)に紹介されます。

 妹としては年齢的にも、足に障害があるということでも、お似合いではないか、ということだったのですが、ジョスランは車椅子テニスの選手でバイオリニストとして積極的な人生を送る、そして年齢相応の知性と落ち着きがあるフロランスに本気で夢中になっていきます。

 ただの艶笑コメディではなく、スケベでもジョスランが女性の知性を評価できるだけの知性があるからこそ、成り立つお話しです。

 そして車いすに載った二人がパリを舞台にバリアフリーラブ・ストーリーを繰り広げる。障碍者の大変さも描きつつ、家に閉じこもっているだけの障碍者なんか描かない。
 美味しいものを食べて、お酒を飲んで、恋をして、お洒落をして、みんな、人生を謳歌している。ここいら辺が如何にもヨーロッパらしい。アメリカや日本のお子ちゃま映画とは違います。

 ヒロインを演じるアレクサンドラ・ラミーという女優さんは、始めて見ましたが、美しいだけでなく、知的で落ち着きがある。いつも背筋がピンと伸びているところが素敵(笑)。ジョスランならずともいい感じです(笑)。

 彼女が登場すると、ジョスランが女性の胸と尻を追いかけていた時と異なり、画面には知的な会話やクラシックのコンサート、美しいパリやプラハの光景、と俄然美しくなってくる。見ていて益々楽しくなってくる。あと、当たり前のようにEU全体がデートスポットになる(笑)こういう映画を見ていると、日常的にもう、既にEUは一体、と思いました。

 ジョスランがフロランスを招いて、初めて自宅で食事するシーンの演出は誰もがあっと驚く素晴らしさ。

 フロランスを好きになるにつれて、ジョスランは自分がウソをついていることを益々言い出せなくなります。観客としては、『このバカ男』と思いながら見ているわけですが、嘘を誤魔化すために、奇跡を起こすということで有名なルルドの泉にまで出かけていくドタバタぶりは面白い。

またジョスランと秘書とのエピソードもありきたりですが、観客の期待通りのハートウォ―ミングな展開でこれまた、良かった。


 深く考えさせるとかそういう話ではありませんが、見ていて実に楽しい、ユーモアがあって、お洒落で実に気分がアガる映画です。そういうことを狙った映画は数限りなくありますが、実際に説得力を持って見せてくれるものは少ない。
 大人の知性とお洒落とユーモア、センスが良いから出来る芸当で、そういう映画って年に1、2本しかお目にかからない。この映画はまさにそういう1本。フランスで大ヒットと言うのも良く判ります。本当に楽しい映画でした!

映画『パリ、嘘つきな恋』本編映像

『パリ、嘘つきな恋』予告編