特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

金沢の旅と映画『ゆきゆきて神軍』と『0817再稼働反対!首相官邸前抗議』

まだまだ日差しは強いですが、時折吹く風には、そろそろ秋の気配が漂ってきました。
今日 大雪山では平年より1か月も早く初雪が降ったそうですし。猛威を振るった夏もそろそろ終わってくれるかと思うと、若干は名残惜しさもあったりして(笑)。


今週は金沢から京都へ回ってきました。
お盆に旅行なんて高いし混むしバカバカしいと思っていたのですが、長い休みはなかなか取れないし、何よりも人生の折り返し地点を過ぎて(笑)、多少無駄でもいろんなこと、特に食べたいもの(笑)は経験しておくべきではないかとも思うようになってきました。
金沢は随分昔に仕事で行ったきりです。昔は飛行機でしか行けませんでしたが、新幹線だと近いですね。ただ、ボクは食べ物しか興味ないんだよなー(笑)
●近江町市場で。ウニ、岩ガキ、白エビコロッケ(笑)





地元の人に言わせると、新幹線ができてから街が変わってきた、という話ですが、さすが強烈な個性、文化があるなあ とは感じました。近江町市場も兼六園21世紀美術館茶屋町も歩いて回れる、サイズ的にも人間らしい暮らしができる大きさの町ですし、観光地だけでなく市井の街角に古い物が残っている。翌日に行った京都と比べると良くも悪くも田舎っぽさもあって、そこも個性的です。
21世紀美術館、最初の3枚は「アレハンドロのプール」。対象と非対象が交錯するこの展示は面白かったけど、現代美術って所詮 一発芸ですよね。そんなに価値があるものとは思えない。



●暖簾をくぐると鈴虫が大きな声で鳴いていました。鈴虫も従業員らしいです(笑)。


●金沢のお魚。1枚目の奥の白身はクエ。次はノドグロ、口子、ハタハタ&鰈の干物。







さて、お盆休み後半のNHKスペシャルは録画して見ました。13日の『船乗りたちの戦争 〜海に消えた6万人の命〜』、15日の『ノモンハン 責任なき戦い』、どちらも興味深かったです。
『船乗りたちの戦争』で取り上げられた、まともな装備も訓練もないまま、10代の子供まで乗せた小舟のような漁船を輸送や偵察などの任務に無理矢理駆り出して、6万人!も犠牲者が出たという『黒潮部隊』の話は始めて知りました。酷い話です。

NHKスペシャル | 船乗りたちの戦争~海に消えた6万人の命~


「命を捨てろ。でも補償はしない」空襲被害者に冷酷すぎる日本政府(大前 治) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)


ノモンハン』の方は個人的には目新しいところはなかったし、見過ごされがちな日本軍よりソ連軍の方が死者が多かったことは突っ込んで欲しかったけど、日本軍の無責任さ、具体的には『佐官クラスの中堅幹部が強硬論に走り、上層部は組織内部の人間関係に引きずられて、それを放置。まともな情報収集もしないまま戦ってボロ負けし、そのあとは中堅幹部も上層部も責任逃れと情報隠蔽、現場が責任を取らされる』という構図は相変らずでした。2年後の太平洋戦争でも同じことが繰り返されたし、今でも同じことが繰り返されています。モリ・カケの話だって亡くなったのは財務省の現場担当者だけ、上層部は責任を取らないどころか、ご栄転です。


でも、こういうことは一般の企業や日常でもよくありそうです。東京電力東芝、その他 あまた出てくるデータ改ざん企業、いくらでも例があるし、町内会やPTAもそうなんじゃないですか。ボクの実体験でも組織をちゃんとマネジメントできている例って、むしろ少ない、と思います。平時はともかく、いざという時 情実を気にしたり、他人に嫌われたりすることを恐れずに判断するって大変です。リーダーはある意味 自分を捨てなければなりません。同調圧力が高い村社会の日本で、周りから嫌われることを恐れずに判断するのは実際は結構 難易度が高いノモンハン事件を起こした『無責任の構造』は努めて現代的な問題だと思います。

NHKスペシャル | ノモンハン 責任なき戦い


ただ言えているのは、日本軍と日本政府は歴史に類を見ないほど無能でサイテーだったこと。敵に殺されるより、飢え死にや病気などで官僚に殺された方がはるかに多かった、ことは絶対に忘れちゃいけないと思います。『平和を守れ』なんて抽象的なことより、『日本という国は絶対に信じない』、その方がはるかに貴重な教訓だと思います。
戦後70年が経っても、日本人は反省が足りないと思います。政治家や役所、企業でも、今も昔と同じことをやっているのですからその象徴の一つが丸坊主だらけの甲子園だし、インパール2020』と揶揄されている炎天下のオリンピックだって同じじゃありませんか。
●ボランティアの『宿泊は自己手配、自己負担』って、『現地で自活』と言って中央から補給もなしに放り出された日本軍とまるっきり一緒じゃん(笑)。

学生確保 懸念広がる 東京五輪ボランティア 厳しい条件、予定見通せず :日本経済新聞




さて、「ノモンハン」とは対極のお話です。渋谷のアップリンクで映画『ゆきゆきて神軍ドキュメンタリー映画の鬼才 原一男公式サイト

神戸でバッテリー商をしている奥崎謙三ニューギニアで約1000名中30数名しか生き残れなかった連隊の生き残りだった。彼はかって賃借トラブルで不動産業者を刺殺、さらに昭和天皇をパチンコ玉で狙撃した事件、ポルノ写真に天皇一家の顔写真をコラージュしたビラをばらまいた事件で前科3犯だった。彼は自分の連隊で兵士の殺害を命じた真相を突き止めるため、今も生きている上官たちを訪ね始める


87年に公開された『ゆきゆきて神軍』は公開当時 各種の映画賞を受賞し、マイケル・ムーアが生涯最高のドキュメンタリーの一つと絶賛するなど、名作ドキュメンタリーとして名高い作品です。残念ながらボクは今まで見たことがなかったのですが、渋谷のアップリンクで再上映されたので見てきました。

ゆきゆきて、神軍 [DVD]

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●昨年の監督インタビュー:ゆきゆきて、神軍:公開30年 いま上映は…原監督に聞く - 毎日新聞


見る前はもっとおどろおどろしいものを想像していたのですが、見ようによってはユーモラスな作品でした。
何と言っても奥崎氏のキャラが強烈すぎます。田中角栄を殺す』、『神軍』、『怨霊』と大書した車で全国各地を訪ねまわります。目立ちます(笑)。それでなくとも彼の行動は公安が監視しています。彼が車で出かけるときは後ろにずらーっと公安の車がついてきて大名行列状態になっているのは笑ってしまいました。彼自身も堂々と警察に行先を告げて出かけたりもします。天皇誕生日に皇居に行こうとしたときは流石に日比谷公園で警察に阻止されていました(笑)。
●この車で走っていれば怖いものなし(笑)


奥崎氏が駆り出された、ニューギニアの戦いは日本軍が行った戦いの中でもとりわけ悲惨だったことで有名です。インパール作戦同様 補給を全く考えなかった作戦の結果、敵と戦うより、ジャングルの中で餓死、病死した兵士の方が多かった。 20万人の兵士のうち 生還したのは2万人。奥崎氏が所属した連隊は、約千数百名の兵士のうち、なんと30数名しか生還していないそうです。ちなみに奥崎氏は軍隊の中でも度々上官を殴っていたそうです。上官はメンツがあるので罰することができなかった。で、鼻つまみ者になって、一人で食料を探すうちに連合軍に見つかり、自ら投降したため生き残った。ちなみに日本軍は東條英機の命令で投降を禁じられており、多くの兵士が玉砕していますが、奥崎氏はそんなのは屁でもない。そういう人です。


ちなみに『俳優の三船敏郎氏は陸軍に7年も居たのに上等兵のまま、全く進級しなかった』と今週 映画評論家の町山智浩氏がラジオで話していました。その理由は、正義感が強い三船は軍隊内に横行していた苛めを見過ごせず、度々上官を殴っていたから、だそうです。カッコいい! 敵と戦う以前に、味方の兵士を虐めることが日常茶飯事なんだから、日本軍なんて やっぱり史上最低の軍隊です。
水木しげる先生もニューギニア戦線で死地を彷徨いました。彼は片腕を失くしましたが、原住民を虐めたりしていた多くの日本兵と違い、原住民と仲良しだったので生き残ることができました

総員玉砕せよ! (講談社文庫)

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戦後 奥崎氏は戦友たちの慰霊をしているうちに、上官の命令で射殺された同僚の兵士がいるという話を聞きつけます。彼は真相を究明するため、兵士の遺族を連れて、かっての上官たちを訪れます。が、上官たちは中々口を割らない。奥崎氏はしつこく説得し、場合によっては相手に殴りかかって、話をさせようとする。カメラはそれらの経緯を収めています。
●奥崎氏。殆どすべてのシーンで口調は穏やかで、三つ揃いを着ています。


奥崎氏は一見 穏やかそうに見えます。言葉も丁寧です。が、突然 激昂する。ただし理屈は通っています。かって自分は不動産トラブルで人を殺したし、天皇をパチンコで撃ったが、全て責任を取ってきた。部下の死に責任がある上官たちが責任を取るどころか、真実すら語らないのはおかしい、と相手を難詰する。戦後30年経っていようが関係ない。彼にしてみれば天皇は兵士たちを無駄な死に追いやった元凶、まして上官たちが言い逃れしたり、口をつぐむのは許せないわけです。
●かっての上官たちを求めて、例の車で日本全国どこへでも喪服で押しかける。これは怖い(笑)。後ろは奥さん。


かと言って彼は純真無垢という感じでもない。目立ちたがり屋だし、カメラの前では演技をしています。カメラの前では初めて押しかけたふりをしていますが、実際はフィルムを撮る前日に独りで上官宅に押し掛けたりしていたそうです。この映画はドキュメンタリーではありますが、フェイクのドキュメンタリーでもあります。その真偽が入り混じったところがこの映画の魅力です。


やがて遺族たちも奥崎氏との行動は避けるようになります。確かにこのオヤジ、マジでやばい。穏やかで丁寧な物腰で喋っていたかと思うと、突然激昂して暴れ出すのですから、一種 病的なんじゃないか、とボクは思いました。そんな危ないオヤジと行動するのは嫌ですよね。しかし責任論という面では筋が通っている奥崎氏は自分の奥さんや知り合いを偽の遺族に仕立て、更に上官たちに迫っていきます。
●奥崎氏は、元上官が泣こうとわめこうと、足腰が立たない状態だろうと、誤魔化しは許しません。


上官たちは異口同音に『世の中には言わない方が良いこともある』と言い訳します。自分が同胞の殺人や人肉食に手を染めたことなんて話せる訳がありません。奥崎氏はそんな言い訳には一切構わず『真実を話すことがあなたの戦争責任ではないか』、『お前は昭和天皇のように無責任な人間になってよいのか?』と迫り続けます。
ただ、元上官たちも奥崎氏も『絶対に戦争を繰り返してはダメだ』と言う点だけは一致しています。地獄の戦争を味わった者同士のコンセンサスです。そういうコンセンサスが成り立っていたのは、30年前は今とはちょっと違っていたのでしょう。加藤紘一自民党幹事長が『昔はネトウヨみたいなことを言ったら、村に何人も居た元帰還兵が一喝していた』と言っていたのは正にこういうことなんだと思います。まだ世の中の感覚がまともだった。


夜討ち朝駆けを全く気にしない(笑)奥崎氏のしつこい追及で、次第に事実は明らかになっていきます。奥崎氏の連隊では兵士が上官の命令で射殺されたこと。その理由は人肉食を止めさせようとしたから、もしくは階級が下の者から食べられたため。どちらかははっきりしません(後者の方が濃厚?)。しかし部隊のなかで人肉食が行われたこと。白人兵士は白豚、原住民は黒豚と呼ばれて食べられていたこと。ただし、どちらも武器も食料もない日本軍より強い😄。だから、日本兵同士が仲間の死体を漁ったり、隙あらば互いに殺しあったり籤引きで食べられていたんです。


やがて奥崎氏は元上官の息子に発砲、重傷を負わせ、懲役12年の刑に処せられます。出所後も彼は変わりません。ニューギニアに慰霊の旅に出て、カメラも同行しますが、インドネシア政府からフィルムを没収されたところで映画は終わります。
●上映後 原監督から裏話がありました。自己顕示欲が強い奥崎氏とはしょっちゅう喧嘩をしながらカメラを回したそうです。


確かに超強烈なドキュメントです。TVでは絶対に見られない(笑)。凄惨なお話しですが奥崎氏の独特なキャラクターで、ボクは何度も笑ってしまいました。それに天皇や上官の責任を追及し続ける奥崎氏や責任を回避し続ける上官たちの言っていることが、今の時代とあまりにもマッチしすぎているところが衝撃でした。その点は全く古びていないどころか、世の中は変わっていない。
戦争の凄惨な実相や単純な反戦メッセージだけでなく、人間の矛盾や面白さまで描いているところが、この映画の名作たる所以でしょう。


確かに8月に見るべき映画でした!重いテーマにそぐわない言葉かもしれませんが、敢えてこういう表現を使います。面白かった!



ということで、今週も官邸前抗議へ
午後6時の気温は27度。少し強い風も爽やかに感じます。参加者は550人。

●抗議風景



良い話なので書いておきたいのが、今朝のこのニュース。日立が計画中のイギリスの原発の建設から米のゼネコン、べクテル社が降りた、というのです。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180817-00000005-asahi-bus_all

世界最大のゼネコン、べクテル社は元国防長官や国務長官が経営幹部に就任する等、強力な政治力でも知られています。日米構造協議の議題に取り上げてまで、90年代以降 羽田空港拡張工事など日本の公共工事にべクテルが入り込んだのは記憶に新しい。それ以来 日本の公共工事外資への参入が目立つようになりました。
日立が、そのべクテルと組んで原発を作ろうとしたのはリスクヘッジの点で非常に賢い、と思っていたんですが、費用の高騰で建設からは降りてしまったのです。報じたのはまだ朝日だけなので、詳細は判りませんが、政治力もあり、世界各地の巨大事業をやってきたべクテルでさえ、原発はムリと判断したのは非常に大きい。日立なんか潰れてもどうなってもいいけど、保証という形で税金が投入されかねません。3バカが社長をやってた東芝と違って、日立は原発建設がヤバいのは分かっています。だからベクテルを連れて来た、で、失敗した😄。それでも撤退の決断が出来ない。これも太平洋戦争に似てますねー😈
ボクの持論、日本はアメリカの51番目の州になった方がマシ!というのはこういうところにも表れています。今も昔も日本の指導者層は損得勘定すら、まともにできないのですから。