特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

 『0414国会前大行動』と今 見るべき映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

週末の土曜日は国会前へ行ってきました。
ニュースでも報じられている『#国会前大集合』(森友学園公文書改ざん問題の真相解明を求める国会前緊急大抗議行動)です。


旧SEALDsの子たちと反原連などの『Stand For TruthStand For Truth (@StandForTruthJP) | Twitterと『未来のための公共未来のための公共 (@public4f) | Twitter、それに旧来の市民運動『総がかり行動委員会』の共催の抗議行動です。


集会:政権退陣求め 国会前で - 毎日新聞
国会前デモ:安倍政権退陣迫る 森友・加計問題で - 毎日動画


前半15:30までがオールド左翼の『総がかり』、後半は若い人たちの仕切りです。当然 前半はパスして、ボクが国会前に付いたのは15:00頃でした。前の方ではまだ政治家や金子勝のスピーチをやってたみたいですが、興味ありません。そんなの聞いていると頭が悪くなります(笑)。余談ですが、日曜の朝日朝刊も1面にこの抗議を載せたのは良いけれど、取り上げたスピーチが金子勝じゃ、相変わらず古臭い(笑)。言ってることの主旨はともかく、内容は説得力がないんだもん。


ボクが国会前に着いた頃は 後ろの方で奥田君など若い人たちが前の方と関係なく(笑)、DJを使って『安倍やめろ』コールをやってたので、そちらに加わりました。
●警官 うざい(笑)

●SEALDsの奥田君たち


『安倍はやめろ』などのリズム感あるコールとテンポの速いビートが組み合わさって、気持ちいいです。ドラムセットを持ってきた人までいましたから、これは盛り上がります。パーティーみたいです。
●BGMのテープに加えて、生ドラムがあると盛り上がりが違います。



15:30少し前になると、コールを繰り返しながら、奥田君たちは群衆の中を最後尾からゆっくりと前の方へ進み始めました。スピーカーを持った人やメガフォンを持った人もドラム隊も、群衆もついていく。感心したのは彼らはこれを全部計算しながらやっていることです。道を開けて誘導する子、PAを運ぶ子、細かく役割分担して、混乱を起こさないよう、コールをやる子が冷静に合図を出している。いつもボケっと突っ立っているだけの『総がかり』の誘導係の爺さんがかえって人々の邪魔になっているのとは大きな違いです。



前の方にいる年配の人たち、動員で来たのであろう、幟を持った人たちは目を丸くしています。女の人は嬉しそうに手をたたいている人が多かったかな。やがてコールは『前へ、前へ』に変わりました。そこいらの人も『前へ、前へ』と連呼している。じっとしてないで、どんどん前へ行こう。国会の方へ行こう。、人々のそんな思いが場を支配しているかのようです。


前の方へたどり着いたころ、右側の空間が開けてきました。歩道と車道の間を封鎖していたバリケードが倒されたのです。人々が車道にあふれ出します。2012年、2015年の再現です。でも混乱が起きているわけじゃないし、人々はゆっくりとバリケードを乗り越えて車道に広がっていく。子供も歩いて行けるくらいの速さです。秩序は維持されています。前方と後方、2か所のバリケードが決壊しました。





最初はスピーカーの準備などが間に合わなかったのでしょう。車道に広がった人々の間から『安倍はやめろ!麻生もやめろ!』『総辞職! 総辞職!』などのコールが自然発生的に沸き起こります。凄い熱気です。やがて、前の方にコールをする子たちがたどり着いて、リズムに合わせてコールが始まりました。僅かな時間でPAだけでなく、発電機なども路上に展開させたわけですから若い子たちの手際の良さは大したもんです。





ボクは国会前中央に居ましたが、コールはいろんなところで行われています。コールをやっていた子たちが いつの間にか方々に散ったんです。統率がとられていないようで、実は盛り上げ方を考えています。いい感じです。奥田君などは後ろのほうでやってましたね。スペースに余裕がある後ろはDJも使ってダンスパーティーみたいになってました。


●前方で『さようなら 安倍晋三』というダンマクが立ち上がりました。2015年の国会前でも使われましたが、秋葉原の安倍の演説会で掲げられて、安倍が思わず『あんな人たち』と失言したやつです(笑)


●ヘリが撮る写真向けに、ダンマクが横に広げられ、手渡しで移動していきます。


『安倍はやめろ!安倍はやめろ!』、『公的文書を改ざんするな』、『昭恵は出てこい!』、『嘘をつくな!』、『安倍晋三はさっさと辞めろ! 麻生太郎もさっさと辞めろ!』、『総辞職! 総辞職!』などビートに載ってリズム感あるコールが繰り返されます。楽しい(笑)。まさにライブです。コールをやる子たちが車道の方々に分散しているだけでなく、PAの力が弱い分、コールを中継するメガホンを持った子たちが方々で盛り上げています。頭使ってます。そこが左巻き爺さん連中との違いです。







●国会前の車道 前の方


主催者発表では今日の参加者は午後3時半現在で3万人、終了時点で延べ5万人だそうです。警官を押しのけて、車道が決壊するだけのことはあります。でも、あまりにもひどい事案ですから、韓国のことを考えれば、ボクは50万人くらい来るんじゃないかと思ってたんで(笑)(半分マジ)、思っていたより少ない。
それはともかく、参加者はまだ2015年より少ないと感じました。この日思ったのは動員が少ないということです。幟とかを担いだ頭の悪い連中が2015年の時より少ない(存在はしてます)。まだ組合や旧来の市民運動はちゃんと動いてないということなのかもしれません。彼らが動くには数か月かかると言いますが、それじゃ間に合わねえよ(笑)。だから連中はダメなんだ。金曜のデモもそうですが、今回は本当に普通の人たちが集まっている。良いことですけど、もっと数の力が必要です。普通の人がもっと集まって安倍政権を倒せば、安倍と一緒に左巻き市民運動も用済みにできる!(笑)。
ダメな連中といえば、2015年に国会へ突っ込め(笑)と暴力行為を煽っていた中核派のジジイ連中はいませんでしたが、僅かですが核マル派のクズも若干いました。今どき『全学連』と書いた小汚い幟でしたから誰も相手にしてないですけど(笑)。


楽しい抗議ですけど、大事なのは『画を作る』という目的が参加者の間で暗黙の裡に共有されていることです。ヘリや報道、周りを意識した抗議が行われています。決壊した国会前の車道が大々的に報じられましたけど、その『画』を見た人たちが今後 関心を持ってくれることを意識しているんです。音楽や風船、コールだけでなく決壊もツールの一つです。けっしてただ暴れているわけじゃありません(笑)。主催だけでなく見回り弁護士さんたちや給水班、医療班なども含めて、子供や犬も参加できるような抗議になっている。目的がはっきりしているから楽しいんです。





●各所の様子。幟を持った連中が歩道で立ち尽くしています(笑)。後ろの方ではパーティが始まりました(笑)

Bloombergで『安倍は''Liar''と呼ばれている』ことが世界中に発信されました。インパクトある言葉です(笑)。これだけでも抗議をやった意味があります。


Bloomberg - Are you a robot?


動員の連中が少ないから、雰囲気が良かったのだと思います。若い人、中年、年配の人、子供連れ、犬連れ、いろんな人が集まって、ビートに載って『安倍辞めろ!』とコールしている。凄く楽しかったです。心配していたお天気も大丈夫でしたし。
●この日起きたことは、SEALDsのドキュメンタリーを撮った西原監督の96秒の動画を見ると良く分かります。⇒
西原孝至 on Twitter: "2018年4月14日
#国会前大集合… "


国会前でコールされた『公的文書を改ざんするな』や『嘘をつくな』は政治的な主張というより、小学校の道徳レベルの話です(笑)。今はそういうレベルの政権になってしまっている。イデオロギーは関係ありません。
安倍晋三がいつ辞めるか、わかりませんが、ああいうバカで厚顔無恥な奴はしぶとく居座るでしょう。こういう行動はまだまだやらなきゃいけない。もっと大勢でやらなければいけないこういう行動の繰り返しが『民主主義ごっこ』の日本に本当の民主主義を定着させるプロセスだと思います。


●子供や仔犬が参加できるデモだからこそ、意味があるんです




●飛ばし飛ばし見てもらうと 楽しい雰囲気は伝わると思います。

●最新の世論調査。あと、もう一息!


内閣支持率26.7% “発足以来”最低に(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース



と、いうことで、六本木で映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公式サイト 9.5[WED]Blu-ray&DVDリリース!

舞台はベトナム反戦運動が盛り上がっていた1971年。「NYタイムス」が政府の極秘文書“ペンタゴン・ペーパーズ”の存在を暴いてトルーマンからニクソンまで歴代の大統領が国民をだましていたことが明らかにします。ところがこの文書をニクソンが掲載を差し止めてしまいます。ライバル紙である「ワシントン・ポスト」も主筆のベン(トム・ハンクス)がペンタゴン・ペーパーを入手するが、会社を上場させたばかりの社主キャサリンメリル・ストリープ)は会社を危うくするリスクを冒して掲載すべきか悩む……。


トランプの当選を受けてスティーヴン・スピルバーグが約1年で完成させた社会派ドラマです。にもかかわらず、アカデミー作品賞候補になったのは記憶に新しいと思います。主演はメリル・ストリープトム・ハンクス、脚本を『スポットライト 世紀のスクープ』で第88回アカデミー賞脚本賞を受賞したジョシュ・シンガーが担当。ちなみに『スポットライト』は長年はびこっていたカソリック教会の神父たちの幼児暴行を暴いた新聞記者の物語(実話)です。


簡単に言うとNYタイムスがベトナム戦争の秘密文書をスクープしたものの、ニクソン政権に訴えられて掲載差し止めに陥った際、ライバルのワシントンタイムスが更に秘密文書を公開、今度は政権がワシントンタイムスを訴えると、更にいくつもの地方紙が記事を掲載、ニクソンに大ダメージを与えたという実話をもとにしたお話しです。
ちなみに東京では2月に公開された『ザ・シークレットマン』はその後 ニクソンを辞任に追い込んだ『ウォーターゲート事件』をテーマにしています『新聞に出るニュースと出ないニュース』と映画『ザ・シークレットマン』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)。まるで、この映画とセットになっているかの作りになっていますし、こっちもめちゃめちゃ面白いです。
●ワシントン・タイムスの主筆ベン(トム・ハンクス)と社主キャサリンメリル・ストリープ)が報道の自由と自社が危機にさらされたとき、どうしたか、を描いた物語です。


この映画はマスコミのお手本となるような実話ですが、ボクも内情は詳しくは知りませんでした。
まず、ペンタゴン・ペーパーはトルーマンアイゼンハワーケネディ、ジョンソン、ニクソン、歴代の政権が『ベトナム戦争には勝ち目がない』ことを隠していたという秘密文章です。歴代の政権は勝ち目のない戦いを推し進め、無駄な戦死者を重ねていったことになります。右翼系のシンクタンクランド研究所(今もあります)にあったコピーを、政府の隠匿に腹を立てた、これまた極右の研究員ダニエル・エルズバーク博士がマスコミに暴露したものです。どんなところにでも良心がある人はいる、んですね。


次にワシントン・タイムスは経営悪化していて、オーナー家による経営から株式公開に変えて、経営資金を入手しようとしていました。それがちょうど記事を掲載する前の週でした。いったん 株式を引き受けた投資家が手を引くことが可能なクーリング・オフ期間です。まさに最悪のタイミングです。
●お嬢様育ちのキャサリンは投資家に経営を説明するようなことは苦手でした。


更に、ワシントン・タイムスの社主のキャサリンは元の国防長官ロバート・マクナマラとは家族ぐるみの親友でした。ロバート・マクナマラはフォードの副社長から超優秀な頭脳を見込まれ、ケネディに国防長官に抜擢されました。秘密文書にはマクナマラが情報を隠したことが詳しく書いてあります。ちなみに後年 マクナマラは自分の過ちを認め、『フォッグ・オブ・ウォー』というドキュメンタリーの中で懺悔の告白をしています。まあ、懺悔というより、もぐもぐ言い訳してましたけどね(笑)。



不安定な経営状況、権力やエスタブリッシュメント層の圧力、こんな状況の中で、秘密文書の記事を掲載することはワシントン・タイムスを潰すことにもなりかねない。会社が潰れれば自分だけでなく従業員、それに家族にまで多大な影響を与えます。またマクナマラとの家族ぐるみの付き合いもある。社会正義を唱えることは簡単ですが、これはそう簡単に決められることでありません。事実 役員はほぼ全員 記事の掲載に反対した。その気持ちは良くわかります。
ワシントンポストの役員は全員、ニュースの公表に反対します。キャサリンの家が役員会ができてしまう広さなのが凄い(笑)。


困難な決断をする社主のキャサリンを演じるメリル・ストリープ、いつものことかもしれませんが、名演です。世間知らずで、どことなく頼りない、お金持ちのお嬢さんがそのまま社主になってしまったというキャラを圧倒的な演技力で演じています。声が裏返るところまで、綿密にやってます。スクープの掲載に躍起になる編集主幹を演じるトム・ハンクスもカッコいいです。この人、悪役というか、欠点があるキャラの方が似合いますね。スピルバーグはこの二人を起用すれば、演技指導をする必要がないから(笑)、早く撮れるということだったらしいですが、この二人が出ているだけで充分絵になります。あと活字を使った輪転機とか、70年代ファッションとかも細かく違和感なく作られていて、そこも感心しました。


経営が不安定で外部投資家を招き入れたばかりの状況のワシントン・タイムスが政府を敵に回せば、会社がつぶれてしまうかもしれません。しかし、ベンはこう言います。『報道しなければ、新聞社はつぶれるのと一緒。』。なぜなら『報道の自由は報じ続けることでしか守られない』から。そして『(権力の恐怖に)我々が負ければ、アメリカも負ける


社主のキャサリンも編集主幹のベンも記者たちも、それぞれの立場で『報道の自由』を守るために戦いました。しかし、報道の自由を守るためには如何に困難な道があったか、如何に大きなリスクがあったのか、この映画はそれを判らせてくれますアメリカに比べれば日本のマスコミなんて、とはボクも思いますが、でも、報道の自由というのはそんなに簡単なことではない。劇中『報道の自由を守るためには、報道し続けることしかない』という台詞がありますが、そのためにはリスクと胆力が必要だということが良くわかります。彼らは職を賭けて、自由を守った。報道の自由を守る』と言うことは口先だけではできないことがこの映画を見て良くわかりました。



もちろん、これはアメリカだけの話ではありません。この映画を見ていると、今の日本のマスコミはどうなんだ、という疑問は常に感じます。権力の手先としか言いようがない新聞社もあるし、リベラルと言いつつ独善的だったり、偽善的な新聞社もある。それにどこの新聞社も経営問題を抱えている。外部からはうかがい知れない事情があるのでしょう。でも結論として、キャサリンらはここまで会社の運命を賭けた。大変なことですが、それがマスコミの使命なんでしょう。


ちなみに今 ワシントン・ポストはアマゾンの創業者ジェフ・ベソスが所有しています。経営不振が続いた同紙を、キャサリンの息子が友人だったベソスに約250億円で売却したのです。これも考えさせられる出来事です。ジェフ・ベソスはワシントン・ポストの遅れていたネット戦略にはかかわっているけれど、報道の自由のために紙面には介入していない、と言われています。だからトランプが怒っている(笑)。ちなみにトランプの当選後 同紙は『Democracy Dies in Darkness(暗闇の中では民主主義は死んでしまう)』という新しいスローガンを紙面に掲げるようになっています。


複雑な話をテンポよくわかりやすく、感動作にまとめたのはさすが、スピルバーグとしか言いようがありません。トランプの当選で、無理やりスケジュールを空けてこの作品を撮った彼も、報道の自由を守ろうとしたわけです。間違いなく良い映画で、これを見た人は誰もが、何かを感じると思います。まさに今、見るべき映画だと思います。