特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『0407#まともな政治を求める新宿デモ』と映画『15時17分、パリ行き』(人生に無駄なことはない)と『シェイプ・オブ・ウォ―タ―』(世界は水の中)

毎度のことですがお休みが過ぎるのは早いです。ああ(嘆息)。ゴールデンウィークが待ち遠しい。
●映画とデモの幕間に天丼(笑)



この週末は新宿のデモに行ってきました。官邸前抗議を行っている『未来のための公共』が共謀罪に反対するアムネスティ海渡雄一(弁護士、福島みずほのパートナー)らの団体と一緒になって『0407#まともな政治を求める新宿デモ』です。


出発地の柏木公園に行くと、久々に年齢層が高いなあーと感じました。共謀罪の人たちと一緒だったからです。大した数ではありませんが、動員の組合関係もいる。あいさつに立った海渡雄一は『今日は参加者が若い』って喜んでましたが、普段はどれだけ爺さんばかりでやってるんだよ(笑)。オールド左翼全般に言えることですが、いい加減 発想を切り替えないと明日がない(笑)。ボクだって共謀罪は反対だし、彼らと一緒にデモをやるのもそれはそれでいいんですが、やっぱりイメージ悪い(笑)。それに街頭への訴えという点では散漫になったような気もしないでもない。
でも梯団が分かれていたんで、デモがスタートしたら、そんなことは忘れてしまいました(笑)。最近はデモとか集会って、ボクは完全にライブのノリなんです(笑)。参加者が楽しそうにしていれば、沿道の人にだって何か伝わるでしょう。辛気臭いのなんか、ダメに決まってます(笑)。




デモ出発時は参加者450人という告知がありましたが、途中で人が増えて最終的な参加者は700人だそうです。お日柄もよく、デモ日和でした。






1月に亡くなったECDの声をサンプリングしたトラックに載せて『言うこと聞かせる番だ、私が』(コーラーが女性なので)という終盤のコールはやはり、ぐっときました。彼は我々と共にいる。新宿西口を存分に?練り歩くデモでした。ただ、やっぱりテーマは絞った方が訴えは明確になって良かったかも。高プロ制度を盛り込んだ労働基準法の改悪にしろ、森友の問題にしろ、共謀罪にしろ、ふざけたことは山ほどあるから、ではあるんですが。


デモ行進:「まともな政治を」新宿で政権運営に抗議 - 毎日動画


14日は東京、大阪、福岡、札幌、その他各地で大規模な抗議が行われます。でも主催が若い人たちだけでなく、それこそ辛気臭いオールド左翼の『総がかり』も入ってるからなあー。つまんなそう(笑)。連中はまた悲憤慷慨しながら(笑)、非論理的で内容がないスピーチを延々とやるんだろうなー。バカは死ななきゃ治らないのはしょうがないけど、普通の人がみんな退いちゃって逆効果になると困るんだよな。それでも大勢で抗議をすることが大事なので、我慢して出かけるつもりです。iPod聞きながら、集会に参加しましょうか(笑)。




と、いうことで、80歳を超えて、ますます元気なクリント・イーストウッド監督の新作です。六本木で映画『15時17分、パリ行き

2015年8月21日、アムステルダム発パリ行の高速鉄道’’タリス’’に、イスラム過激派の男が乗り込みテロを企てる。その時、列車には偶然、幼馴染のアメリカ人3名、空軍兵スペンサー、州兵アレク、大学生のアンソニーが乗り合わせていた。彼らはとっさに犯人に立ち向かう
●左から州兵のアレク(イラク駐在)、大学生のアンソニー、空軍兵スペンサー(スペイン駐在)
[:W360]
2015年のこの事件については日本でも報じられました。この映画は実際に犯人を取り押さえた3人に加え、列車の乗客も実際の人たちが出演している、という驚くべき作品です。


映画は決して恵まれているとは言えない3人の若者の生い立ちと列車の中の出来事が交互に描かれます。3人中 軍隊に入った二人はシングルマザーに育てられました。学校では偏見の目で見られる問題児。実際 頭もあんまり良くない。ひきこもりになった時期もあるし、憧れて軍隊に入っても落ちこぼれ。3人の人生がようやく落ち着いたところで幼馴染たちはヨーロッパ旅行に出かけます。
●スペンサーとアレクを育てたシングルマザー二人は本物の役者さんです。



列車の事件のシーンはやはり緊迫感があります。実際の観客たちが再現している、というのはやはり見る側も、これは本当のことなんだ、という気になります。実際のアクションシーンの中にまで、今までの彼らの人生が反映されているというのも驚きです。1時間30分という短い時間に3人の人生と彼らが出くわした劇的な事件をまとめきっているのはお見事だと思います。
●彼らのヨーロッパ旅行のシーンが延々と描かれます。一見 事件とは全く関係がないように見えますが、彼らがその列車に乗っていたのにも運命のようなものがありました。





斬新な構成で賛否両論ある作品のようですが、ボクは面白かったです。ダメダメな人生を送ってきた彼らですが、それでも彼らの人生は無駄ではなかった。彼らが過ごしてきた過去がその瞬間に結実する。同じように平凡な人生を暮している我々の人生も無駄ではないんだ、と思わせてくれるからです。冗長さのない職人芸映画。良かったです。



もう一つは 新宿で映画『シェイプ・オブ・ウォーター映画『シェイプ・オブ・ウォーター』オフィシャルサイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

1962年、冷戦期のアメリカ。政府の研究所で清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)は喋ることができない。ある日彼女は同僚の黒人清掃員、ゼルダオクタヴィア・スペンサー)と秘密の実権を目撃する。アマゾンで原住民にあがめられていたという奇妙な生物が運び込まれるのを目撃する。彼女と同じように言葉をしゃべることができない『彼』に心をひかれた彼女は、こっそり『彼』に会いに行くようになるが、彼が生体解剖されることになっているのを知ってしまう。


ベネチア映画祭金獅子賞、アカデミー作品賞を始めとして、さまざまな賞を獲得した作品です。監督のギレルモ・デル・トロは日本の怪獣マニアとしても有名で、苛められっ子だった幼少期を救ってくれたのは怪獣だったと発言しています。そんな体験が色濃く反映された、ギレルモ版『美女と野獣』です。曰く美女と美男のラブストーリーなんておかしい。美男と美女じゃなくてもラブ・ストーリーがあっても良いじゃないか、そういう作品です。
●主人公のイライザ(サリー・ホーキンス)は幼少時に負った傷でしゃべることができません。


映画は主人公のイライザの衝撃シーンで始まります(笑)。だけど後にして思えば、主人公のキャラクターを描くために深みを加えるシーンだったと思います。イライザは子供の頃のDVで喋ることができません。新聞社をリストラされたゲイの風刺画家(リチャード・ジェンキンス)と一緒に住んでいます。家賃節約のため、なんでしょう。
●イライザと同居人の画家。彼はゲイですので、女性としてのイライザには興味ありません。純粋な友情です。


喋ることができないイライザは職場でも人間扱いされていません。同僚の黒人、ゼルダと一緒です。60年代初頭はそういう時代であったと同時に主人公の内面をうかがわせる背景描写です。
●しゃべることができないイライザ、黒人のゼルダオクタヴィア・スペンサー)は研究所では人間扱いされていません。下級人種のように扱われています。


主人公の職場に運び込まれてきたのがアマゾンの半漁人です。彼も言葉を話すことが出来ず、人間扱いされていない。イライザと同じです。彼は警備主任(マイケル・シャノン)から拷問を受けます。血を流す彼を慰めようと傍にいるイライザ。話さなくても気持ちは通じるんです。
マイケル・シャノン演じる警備主任(左)も怪物のような存在、イメージが半魚人やイライザと次第に重なってきます。


ほとんどの画面が暗い。お風呂や水槽、海の中はもちろん、イライザの家も研究所もまるで水の中にいるような感覚です。イライザが住む町も殆どずっと雨が降り続いています。まるで世界全体が水の中にあるようです。でも暗い水の中を覗き込んでみると、違う世界が広がっています。人種の違いも身体の障害も関係ない。そこには自由が広がっている。
色彩が非常に美しいです。緑や青、赤などの色を暗い場面に応じて強調しながら、登場人物たちの心情を表現している。その中でオールディーズの『They 'll Never Know』が何度も流れます。ノスタルジックでいい感じです。そこがアカデミー作品賞なんでしょう(笑)。


なんで一介の掃除人の主人公が秘密の実験動物に近寄れるんだ?とか、政府の研究所から逃げ出せるんだ?とか、突っ込みどころはあるかもしれませんが、お話がいい感じに緩いのは、ボクは良いと思います。このお話はおとぎ話なのですから。あ、おとぎ話と言えども半漁人の造詣だけは異常にリアル。これはギレルモ監督の趣味でしょう(笑)。
●思い切り身体を張ったサリー・ホーキンズは名演だったと思います。


主な登場人物、主人公のイライザも同僚のゼルダも、イライザの同居人のリチャード・ジェンキンスも、半漁人を殺そうとする警備主任(マイケル・シャノン)も、皆 恵まれた立場にはいません。お話が進むにつれて、段々美しく見えてくるサリー・ホーキンズも哀愁を漂わせるマイケル・シャノンリチャード・ジェンキンスもすごく良かった。特にサリー・ホーキンズは通常の年だったら主演女優賞を取ってもおかしくない名演でした。
●アカデミー最優秀作品賞を受賞した時 監督と一緒に出演者やスタッフが壇上に登りました。が、マイケル・シャノンの姿はありませんでした。当日のマイケル・シャノンが酒場で目撃されています(笑)。



人間と異種との恋物語は外国人を排斥するトランプへの抗議の意も込められている。それを美しく、ちょっと怖いおとぎ話として提示して見せる。見事なもんです。ボクはアカデミー候補作の中で他にもっと好きなものがありますが、完成度も高いし、心が温かくなる、間違いなく良い作品だと思います。