特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『名護市長選』と映像に圧倒される映画2題『ジュピターズ・ムーン』と『バーフバリ 王の凱旋』

昨日の名護の市長選の結果は残念でした。
昨年来から与党陣営の企業や組織丸抱えの事前運動や現職に対するデマの拡散等の話は伝わってきましたし、今回の選挙も有権者の44%に及ぶほど期日前投票が異常に伸びたというのも動員でしょう。危惧は当たってしまいました。金と動員、宣伝で選挙結果を左右できるというのは、映画でみたチリやアルゼンチンなど南米の独裁政権下の選挙を思い出しました。違いは拷問の有無くらいで、あとは政権側の強引なやり口も、宣伝や動員に自ら乗せられてしまう日本人の民度も、独裁政権下の選挙と共通しているように思えます。


未来のための公共 on Twitter: "#名護市長選 のオール沖縄候補で辺野古新基地建設に反対する #稲嶺ススム さんに関して出回っている卑劣なデマに事実を提示して反論する画像です。最後ですが是非ご拡散ください。… "


しかし、結果は結果なので、汚いとか愚痴を言っていても何の役にも立ちません(笑)。確かに与党候補が勝てば名護市に補助金を出す、といった露骨な利益誘導は酷い。税金がこのように恣意的に使われるのは間違いなくおかしいですけれど、それを認める国であるし、補助金に釣られる名護市民でもある、ということでしょう。


あと創価学会のアホ信者。宗教に引きずられてる奴には言葉は通じません.アホはアホだから、連中は仏罰が下るまで判らないでしょ(笑)。


ただ、これは気になります。50代以下、特に若い年代は与党候補に投票した人の方が多かった、という出口調査の結果です。

●青が現職、緑が与党候補者に投票した人。50代までは与党への投票の方が多かった。


沖縄においても戦争経験が薄れてしまった、ということなのかもしれません。でも、それは仕方がない。時の流れというものは変えられません。
海江田万里が言っていたんですが、スマホしか見ていない若い人がフェイクニュースやデマに騙されているというのはあるかもしれません。でも、そういう人も仕方がない。ニュースを見極められないほどリテラシーが低いのは、今の時代ではアホってことです。トランプに投票した労働者が良い例で、そういう人は右往左往しながら誰かに操られて搾取され続けるしかない。そういう人はいつの時代にもどんな国にもいる。


根本的な問題は、『若い人に対して声があまり届いていないことだ』と思います。ネットで野党の側の動きを見ていても、従来からのスタイルで従来からの主張を繰り返してばかり。『基地を無くせ』というのはもっともですが、それに加えて『平和を守れ』、『憲法を守れ』とだけ言っていても、しょうがないでしょう。訴えるスタイルも旧態依然だし、将来自分たちの暮らしをどのようにすれば良くしていけるかということを訴えなければ、未来がある若い人には声は届かない、と思います。与党候補のように政府の補助金頼み、では地域経済は立ちいくはずがないんですけど(笑)、経済や暮らしに関してどのようなビジョンを出していくか、本土の野党も市民運動もその点は著しく欠落しています。


あと、かっこ悪いのはダメ(笑)。選挙応援に行った小泉進次郎の沖縄での演説内容なんてバカじゃないかと思いましたけど、野党の側はいつもの年寄りばかりで、あれに匹敵するアピール力はありませんでした。 76歳のバーニー・サンダースや68歳のジェレミー・コービン労働党首が良い例で年寄なのが悪いんじゃないんです。アピール力、脳味噌の問題です。辻元清美氏がやっと最終日に行ったみたいですけど、それだけじゃ足りませんよね。
本土の野党も市民運動も若い人に声を届かせるにはどうしたら良いか、もっと真剣に、もっと頭を使わなければならないと思います。今までの彼らのスタイルや存在そのものが時代遅れ、それくらいは自覚しなければ、スタートラインにも立てないでしょう。


個人的には日本の将来がお先真っ暗でもいいかな、とは思っています。少なくとも今世紀中ごろまでは少子高齢化は止められないし、まして国民が右も左も高度成長の幻影を追いかけたまま、他人任せの親方日の丸、家事も介護も女性に任せっぱなし、ということだったら、衰退は更に加速するでしょう。普通に考えたら、日本はもうだめかも(笑)。正確には、貧乏で内向きのボケた年寄りばかりの四流国になっていくってことです。でも自業自得ですよね。自分も含めて国民がアホなんだから仕方がない(笑)。未来の歴史書では、日本は自ら自滅したアホ国家として笑い話くらいにはなるかもしれない(笑)。
ただ、ちょっと勿体ないなーとも思うんです。米英よりはまだ格差が少なかったり、少なくとも今までは戦争はしなかったり、食べ物は美味しかったり、日本にだって、良いところは結構あるんですけどね。



ということで、今回は映像に圧倒される映画二つの感想です。どちらも素晴らしかった。
まず、渋谷で映画ジュピターズ・ムーン映画「ジュピターズ・ムーン」公式サイト 2018年1.27公開

舞台はハンガリー。医療ミスによって病院を追われ、難民キャンプで働く医師シュテルン。彼は金と引き換えに難民を違法に逃がしては、遺族への賠償金に当て訴訟の取り下げを狙っていた。ある日、警察に撃たれて重傷を負った難民の少年アリアンが運び込まれる。撃たれたショックで彼には重力をコントロールし浮かぶ能力を持つようになっていた。それを知ったシュテルンは、金もうけに使えるとキャンプから連れ出す。一方、警察はアリアンを撃ったことを隠ぺいしようと二人に迫ってくる


日経の映画評でも5つ星、カンヌ映画祭にも出品された作品です。
ハンガリー人の監督は『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)』コルネル・ムンドルッツォ。と言っても見た人は少ないと思います。日本でもひっそりと公開されただけですけど、ボクは見たんです。犬たちがバカな人間に反乱をおこしてブダペストを占拠するという、素晴らしい設定のお話だったからです(笑)。この映画自体は犬が可愛くなかったので僕の求めるものとは違ったんですが(笑)、今作に通じるところが多かった。


今作は難民たちがハンガリーに密入航しようと川を渡るシーンから始まります。極右政権が成立したハンガリーが移民に対して強硬な取り締まりを行っていることはニュースでも報じられていますが、警察は狩りのように難民たちを追い詰めます。逃げる難民たちは転覆した船に隠れ、川を泳ぎ、森に走りこむ。それが延々長回しのワンショットで描かれます。ものすごい臨場感ある画面です。ただの長回しではありません。どうやって撮ったのだろう。この映画は難民を扱った映画というだけでなく、新たな映像体験をする作品なんです。


ハンガリー人医師のシュテルンは難民が収容されるキャンプに勤めています。かっては大病院に勤務していましたが、ミスによる医療事故で全てを失った。しかし意地を張って遺族に謝罪もせず、賠償金を払えばいいんだろうと片意地を張っています。その金を稼ぐために、金を受け取って難民を逃がすアルバイトをしています。
●人生に敗れた男。医師のシュテルン。


警官に撃たれた難民の青年、アリアンは突然変異で重力を操る力を得ます。彼が空中に浮揚するシーンも長回しです。自分も空中に浮きあがっていくような不思議な感覚を観客に与えます。こんな映像は見たことがありません。よく考えたら前作の『ホワイトゴッド』でもこういう撮り方はされていましたが、あれはあまり可愛くない犬が走り回っているだけだったから(笑)、あまり心に訴えるものはなかった。今回は違います。
ハンガリーに逃げてきた難民のアリアン(左)は警官に撃たれたことから、突然変異で不思議な力を身に着けます。



地上ではハードなドラマが展開されます。アリアンを病院から連れ出した医師のシュテルンは悪人でもないし、人種差別主義者でもありませんが、金のためなら手段を選びません。実は金が目的ではなく、彼は自分の人生を取り戻そうとしているだけですが、取り戻そうとあがけばあがくだけ、深みにはまっていく。誰にも心を開くことができず、孤独な男です。しかし、孤独であることすら自分では理解できていない
ここで描かれるハンガリーの町は黄色みがかった色彩で描かれています。社会主義時代の名残か、町やインフラは荒廃し、くすんだ光景が広がっています。しかし一部ではきらびやかな建物やパーティが展開されている。旧社会主義国にありがちなパターンですが、格差は急激な勢いで広がっている。
●前半部の描写はヨーロッパの落日を象徴するかのような、黄色みがかったくすんだ画面が続きます。


シリアから逃げてきたアリアンは途中で父とはぐれ、再会することを望んでいます。シリアでは普通に暮らしていたアリアンですが、ハンガリーの社会は受け入れようとしません。シュテルンとアリアン、孤独な者同士の友情が芽生えていきます。


しかし自爆テロを起こした過激派に自分のパスポートを使われ、罪もないアリアンは警察の執拗な追跡を受けることになります。
●難民は撃ち殺しても構わないという悪徳警官は執拗にシュテルンとアリアンを追ってきます。


神とは何か、レイシズム、自由とは何か。様々なことが扱われる哲学的な映画ですが、堅苦しさはありません。初めて見る感覚の映像は終始 観客を圧倒し続けます。浮揚シーンに限らず、ブダペストの町、シュテルンの孤独な暮らし、テロ、シュテルンの診察を受けるブダペストの大金持ちたち、どれも非常によく描かれています。特に緊迫感あふれるテロのシーンは出色でした。


重力を断ち切って浮揚するアリアンは自由の象徴です。その自由を人々は扱いかねている。日本も一緒かも。題名のジュピターの月とは木星の衛星エウロパ、つまり、ヨーロッパのことを指しています。ポピュリズムレイシズムがはびこり混乱するヨーロッパですが、映画は観客に一縷の希望を訴えて終わります。間違いなく映画的な体験ができる作品。評価が高いのはうなずけます。非常に良い映画だと思います。



もうひとつは新宿で映画『バーフバリ 王の凱旋映画『バーフバリ 王の凱旋』完全版公式サイト

舞台は古代インドの架空の王国。伝説の王バーフバリの祖父から3代にわたる愛と裏切りと復讐を描く


世界最大の映画製作国のインドでは『きっとうまくいく映画『きっと、うまく行く』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)や『PK暗闇の中で拍手が沸き起こる。映画『pk』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)などの大傑作を超える史上最大の大ヒット、アメリカでも初登場興収3位という世界的な大ヒット作品。昨年公開された『バーフバリ 伝説誕生』の続編です。前作と合わせて400億円以上の興収をあげているそうです。

バーフバリ 伝説誕生 [Blu-ray]

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といっても ボクはアクション映画は興味ないので、前作はスルーでした。が、とにかく『バーフバリ』は評判が高い。特に今作は『スターウォ―ズの何十倍も面白い』などと言われ、一部では熱狂的に支持されています。実際 公開は小規模ながら2か月以上のロングランに突入して、公開回数も拡大しています。評判が評判を呼んでいる。どんなものなのか、見に行ってみました。
たまたま映画を見る前に映画館の隣の伊勢丹会館で昼ご飯を食べていると隣に座った若い女性二人がずっと、この映画のことを話していました。評判は嘘ではなさそうです。ボクが見た回の客席は満員です。幅広い客層ですが、結構 若い女性が多かったですね。


冒頭 前作のダイジェストが流されます。前篇を見てないボクでも大丈夫。
が、お話はどうでもいいんだと思います。インドの叙事詩マハーバーラタ』がモデルだそうですけど、日本も含めて各国の神話によくある、いわゆる貴種流離譚です。それがインド流に描かれる。



奇想天外なお話、ハンサムで優しい、そして滅茶苦茶強い英雄と超きれいなお姫様、極彩色の画面に歌とダンス、人数はいくらでもいるエキストラにCG、やたらとバカでかいセット。

●姫とバーフバリ。矢を一本ずつ射るなんてせこいことはしません(笑)


日本の昔の映画、クレージーキャッツとかゴジラとかはやたらと大勢のエキストラが出てくるじゃないですか。セットもでかい。それだけで非日常の迫力がありました。昔はCGがなかったからでもありますが、人件費が安かったということも大きい。ハリウッドも含めて、今や先進国の映画ではそういう迫力を感じることはありません。ここいら辺はインド映画ならではです。
●これが悪役の王


それに加えてCG。コンピュータ産業の隆盛でインドのCG技術は世界のトップクラス(日本なんか問題にならない)と言われていますが、圧倒的な迫力です。
●象だって弓を引いちゃうんだから(笑)


ボクは今まで映画でこれだけでかいセット、大勢のエキストラ、大量のCG、VFXは見たことありません。それをバックに楽しい歌や豪華絢爛な踊り、筋肉モリモリの英雄と強くてきれいなお姫様の物語が展開される。ボクは男性ヒーローには辛口ですが(笑)、バーフバリの俳優さんはマジでカッコいい。筋肉の量と豪快なお話で全く文句ありません。インド映画らしく美女も半端じゃなくきれいだし、強い。薄ら笑いを浮かべながら生首下げて、復讐に来るところなんかサイコーです(笑)。奇想天外さも音楽もダンスも美女も美男もCGも何もかも特盛良い意味で頭がおかしい(笑)。でかい音響も含めて、とにかく普通じゃないです。格好良すぎです。


スターウォ―ズどころか、ハリウッドの大作も日本映画も全く問題にならないです。何千人?もの群衆が『バーフバリ!バーフバリ!』と熱狂的に王を讃えるシーンがあるんですけど、自分もそういう気持ちになりました。
●この人数!


これからインドの人口は世界最大になります。こういう国は超優秀な人も大勢いますけど、貧困や差別、犯罪なども根強い。そう簡単にまとまるわけがありません。こういう英雄(権力)がなければ社会におさまりがつかないのかなと思ったりもしました。ただし権力は権力だけど、民衆のために奉仕する権力でなければ民衆に簡単に引きずりおろされる。そういうお話です。英明だったとしても人間が如何に簡単に間違いを犯してしまうか、また、それでもやり直すことができるかが、非常によく描かれていると思いました。


滅茶苦茶面白いです。奇想天外で痛快なお話が圧倒的すぎる迫力で描かれます。しならせたヤシの木で人が空を飛び、古代なのに戦車が走り、象が踊り、船が空を飛び、みんなで歌って、踊って、暴れて、大団円。上映時間の2時間40分は全然長くない。画面の迫力に圧倒されながらも、手に汗握って、げらげら笑って、スカッとします。終わったら客席から拍手が沸き起こる
お気楽なエンターテイメントですけど、これだけ迫力があると、映画の見方が変わる、人生が少し変わるといっても過言ではありません。映画を見るというより、常識が破壊される体験でした。王を讃えるというか、この映画を讃えます(笑)。本当にすごいです。

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