特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『新年の抱負(笑)』と映画『ユダヤ人を救った動物園 〜アントニーナが愛した命〜』と『ヒトラーに屈しなかった国王』

今日は成人式だそうですね。
でも成人式は15日と言う意識があるから、あんまりぴんときません。そもそも成人式に行くって言う人が大勢いるのも面白いなーと思います。ボクは出たことないから判らないけど、成人式って区長とかがなんか説教垂れるんでしょ。強制ならともかく、なんでそんなインチキ臭いものに自ら進んで行くのか全然理解できない。
来年 成人を迎える姪っ子ちゃんにどうするのか聞いてみたら、『そんなの行くわけない』の一言でした。偉い(笑)。
●インチキ臭いと言えば、最近は神社行くとしかめ面して拍手してる人ばかりで、これも胡散臭いと思ってました。ボクが子どもの時にはそんなことやってる人は年寄も含めて誰も見かけなかった。だいたい神社本庁なんて既得権益にしがみつくバカウヨの利権団体でしょ。


明日からは本格的に仕事も始めなければいけません。現状認識、今の日本を考えるとこんな感じだろうなーとボクは思っています。




極端に思われる方もおられるかもしれないけど、全て事実です。現実はかなり行き詰っていると思うんです。今の日本は。まあ、日本なんかどうでもいいけど(笑)、一人一人が何か新しいことを考え始めなければいけないなーとは思います。今までの延長線上にいたら東芝経産省と一緒です。もちろん、そこで『維新』とか言いだしたら、ただのバカですけど(笑)。
そろそろ、自分がどうやって生きていったらよいのか、どうやって死んでいったらいいか、そんなことを考えてしまいます。それでも80歳になっても答えは判らないのは判っています。劇場で見た作品を昨晩DVDで見直した「グランド・フィナーレ映画『グランド・フィナーレ』と『最高の花婿』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)(今 この映画の劇中歌がLGのTVCMでバンバン流れてます)はそういう映画でした。

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行先は判らなくても自分なりに、今までの延長線ではない、もっと有意義なこと、新しいことを本気で考えていきたい と思いました。それが新年の抱負(笑)。*ブログに書いておけば、自分でもサボれないだろって思いましたので(笑)
●お正月明けの六本木。まあ、いいですけど、インチキ臭い(笑)。寒かった。

●お口直しにモッツアレラ3種類とカラスミのピッツァ



さて 今回の映画はどちらも実話、ナチに侵略を受けた当時のお話です。

日比谷で映画『ユダヤ人を救った動物園 〜アントニーナが愛した命〜ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命~ 2017年12月15日公開

舞台は1939年、ポーランドワルシャワ。夫婦でワルシャワ動物園を営み、動物に囲まれて生活していたヤン(ヨハン・ヘルデンベルグ)とアントニーナ(ジェシカ・チャステイン)。やがてナチスポーランドに侵攻し、ユダヤ人を壁に囲まれたゲットーに押し込めて弾圧を始める。ユダヤ人の友人も多くいた夫妻は動物園を彼らのための隠れ家として活用することを思いつき、ゲットーに暮らすユダヤ人たちを救い出して匿っていた。だが、次第に戦局の悪化とともにナチスの横暴は厳しさを増し、彼らにも危険が及ぶようになる



アカデミー作品賞を取った『ゼロ・ダーク・サーティ』、最近の傑作『女神の見えざる手』の女優ジェシカ・チャスティンが主演、プロデュースを務め、昨年公開のインディーズ映画ではアメリカで興収1位だったそうです。
ジェシカ・チャスティンという人は近年 売れっ子で色々な映画に出てきますが、不思議な魅力がある人です。正統派美人と言えなくもないですが、むしろ一癖ある役、特に孤独な戦いを続ける女性の役が非常に多い。実際にも女性問題に関する発言も積極的な人のようです。
●ヤンとアントニーナ(ジェシカ・チャスティン)はワルシャワで動物園を営んでいました。


この映画の主人公、夫婦で動物園を営むアントニーナは動物が大好きな、どこか影がある女性です。ロシア革命を逃れてポーランドに逃げてきて、人間が信じられなくなった人間です。
●撮影では実際にジェシカ・チャスティンが動物たちを懐かせたそうです。


動物に囲まれて楽しく暮らしていた夫妻でしたが、二人の生活はナチス・ドイツの侵攻で暗転します。大型獣は殺され、兵士たちが動物園の中に進駐してきます。ナチス側の動物学者もやってきますが、彼はアントニーナに気があるようです。
ゲーリング付きのナチの動物学者はアントニーナに鼻の下を伸ばしています。


ヤンとアントニーナはナチを説得して、動物園を食料用の豚の飼育所として存続させます。しかし、ナチはユダヤ人狩りを始めました。今まで夫妻の友人だった人たちがゲットーに押し込められ劣悪な環境に置かれます。女性や子供も例外はありません。夫妻はやむに已まれず、友人のユダヤ人たちを匿うことを始めます。
●当初は中継地点として動物園を使っているだけでしたが、殺されていく人たちを見るに見かねて 夫妻は自宅の地下室にユダヤ人たちを匿うようになります。


映画としてはやや平板な作りだと思います。ドイツ軍の眼を盗んでユダヤ人を匿うところははらはらしますし、ゲットーの劣悪な環境やドイツ軍の横暴もちゃんと描かれています。『こどもの権利』で有名なコルチャック先生のエピソードは感動しました。
●コルチャック先生は子供たちと離れることを拒否して、自らアウシュビッツ行の貨車に乗り込みます。


ただ、話の抑揚がイマイチ。実話だからしようがないんですが、それなら後半の時間を増やしてもいいと思います。戦時中にもかかわらずジェシカ・チャスティンがやたらときれいな服を着ているような演出も違和感を感じます。夫妻は上流階級だから実際もそうだったのかもしれませんが、どうなんでしょうか。


後半は非常に考えさせられるものがありました。
最初にユダヤ人がナチに対して武装蜂起します。黙っていれば殺されるのですから、それは理解できます。ナチは容赦なく彼らの居住区であるゲットーごと焼き払い、それを鎮圧する。夫妻を始め心あるポーランド人はそれを見ていることしかできません。また戦争末期にはポーランド人達が立ち上がる。しかし、そのワルシャワ蜂起はソ連の裏切りもあり、悲惨な結果に終ったのは広く知られている通りです。
映画では、アントニーナの夫のヤンも蜂起に参加してドイツ軍に捕えられます。いよいよ危険にさらされたアントニーナはユダヤ人たちをトラックで逃がし、自分は子供たちを連れて徒歩で!疎開します。それも爆撃を避けながらです。
ワルシャワの街は90%が廃墟になったと言われています。これほどまでひどい目にあったポーランドですが、ドイツ敗退後は更にソ連による占領が待っています。日本に置き換えてみましょう。最初はアメリカに占領された。そのあとソ連に占領されたとしたら?
大国に囲まれたポーランドの歴史自体がそういうものかもしれませんが、あまりにも過酷です。全く救いがない。ポーランドの人たちの心の中はどうなんだろうか。日本人の国家観とは明らかに違うでしょう。自分がポーランド生まれだったらどうだろうか。


戦後 ヤンは捕虜収容所から生還します。家族一同 歓喜の再会。話がうますぎるだろと思ったら史実でした(笑)。結果として夫妻は300人以上ものユダヤ人を救い、ワルシャワ動物園は今も続いているそうです。


映画自体はそんなに悪くはないんです。ジェシカ・チャスティン好きだし(笑)。何よりも超過酷な運命に見舞われたワルシャワにもこういう英雄的なお話があって、それを映画化したのは素晴らしいです。ただ、こういう映画を観ると考えることが余りにも多く浮かんできます。もうちょっと深堀りしたくなる映画です。



もうひとつ、銀座で映画『ヒトラーに屈しなかった国王
『ヒトラーに屈しなかった国王』公式サイト
20世紀初頭 ノルウェーはスウェ―デンとの連合王国を解消、国民投票デンマークの王子を、ホーコン七世(イェスパー・クリステンセン)としてノルウェイ国王として即位させ、独立国家として歩み始めた。折しも1940年4月9日、各地にナチスドイツ軍が侵攻し、次々と占領されてしまう。ナチスドイツ軍は降伏を迫るが、ノルウェー政府と国王は拒否。オスロを離れ奥地へ異動します。追跡してきたドイツ軍は降伏を求めるべく、ドイツ大使(カール・マルコヴィクス)と国王ホーコン7世への謁見を要求する。ドイツに従えば国民の犠牲者は少なくて済むが国の主権は失われる。国王は決断を迫られる……。


お話しは1940年4月9日からの3日間、ホーコン7世の苦悩にスポットを当てたものです。と、言っても、殆どのシーンは圧倒的なドイツ軍に追われて国王が逃げ回っているだけなんですが(笑)、これまた考えさせられるものがありました。
●国王は普段は杖を突いていますが爆撃に逢うと、杖を捨ててダッシュで逃げ回ります(笑)


1940年4月 中立政策を取っていたノルウェーに突如ドイツ軍が攻め込んできます。豊富な鉄資源があるノルウェーです。北海への出口となる港もあります。圧倒的な戦力を持つドイツ軍にノルウェーは太刀打ちできません。政府は首都を離れ地方に退避します。時を同じくしてノルウェー内のナチがクーデターも起こします。
●政府の会議は避難先の教会で行われます。


国王と言っても日本の天皇とはだいぶ違います。何だかんだ言って天皇家は自家の存続が第1の関心事だと思います。様々な資料を見ても敗戦時の昭和天皇は明らかにそうだったし、今の天皇もそうだと思います。絶望的な戦局だけでなく、民衆の革命を怖れたのも、昭和天皇を始めとした支配層が降伏を決意した主な理由の一つです。もちろん人間としては理解は出来ます(笑)。誰だって自分の利害は大事。
しかし、ここで描かれるノルウェー国王は、あくまでも国民のためになるかどうかが価値判断の基準です。投票で選ばれた国王ですから当然かもしれませんが、日本の天皇家とは意識が明らかに違います。

●国王一家の食卓。普段は家族を愛する普通の家庭です。


こんなシーンがありました。圧倒的なドイツ軍を足止めして国王を逃がすために、ノルウェー軍は守備陣地を作ります。陣地を視察した国王に、まだ10代の兵隊が『国王のために戦います』というのを彼はたしなめます。『国民のために戦うんだよ』。
●こんな少年たちも勝ち目のない戦いに血を流します。それが本当に国民のためなのか、国王は苦悩します。

さまざまな人物が出てきます。非常時に判断できない政治家、自分で責任を取るといって命令がないのに抗戦を始めるノルウェー軍司令官、融和を図ろうとするドイツ大使、強硬な態度のドイツの占領軍。
●流血を最小限にとどめようとするドイツ大使と強硬なドイツ軍司令官は対立します。


ここで描かれるノルウェー国王も普通の人物で、取り立てて立派でもなければ頭が良い訳でもない、一人の時は足が痛い〜と床にひっくりかえっている割には爆撃を受けた際は走って逃げるんです(笑)。
●床にひっくり返って孫と遊ぶ国王。そういう姿まで映画に描くのは良いですよね。日本では考えられません。


政府内は意見が一致しません。勝ち目はなくてもナチと徹底抗戦すべきだという者もいます。ナチと融和すべきだという者もいます。ナチと協力協定を結べば国民の犠牲は最小限にとどまるからです。
まとまらない政府に対して国王は意見を発しません。日本の天皇同様、立憲君主として国事は内閣に任せなければならないから、国王は政治的な発言は常に慎まなくてはならないからです。その彼がぎりぎりのところで、一度だけ政治的な発言をします。
ナチスに屈するくらいなら自分は退位する。そして王家は廃絶してくれ』

良心の声ではありますが、これは政治的な発言です。立憲君主の枠を逸脱しています。彼は憲法を破りました。しかし『国民のため』という根本の価値判断はぶれていない。考えさせられますでしょ(笑)。


その後 国王はイギリスへ退避して抗戦を呼びかけます。ノルウェイ国内ではレジスタンス活動が続けられます。国王は一足先に逃がした家族とは離れ離れになり、戦争が終結するまで逢うことはできませんでした。ナチスと戦う姿勢を崩さなかった国王たちを戦後 国民は熱狂的に迎えます。


その後ノルウェイは従来の中立政策を放棄します。EUには加わりませんが、NATOの集団安全保障体制に加わります。スウェーデンフィンランドもそうですが、日本にとっても考えさせられる事例だと思うんです。

安全保障にしろ、天皇の退位発言にしろ、今の日本の情勢を鑑みたら大変興味深いお話です。簡単に言うと、しょうもない爺さん一家がナチに追われて逃げまくっているだけの映画(笑)なんですが、すごく考えさせられました。そういう意味では非常に良い、深みのある映画体験でした。