特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

報道特集『医療的ケア児と教育』と映画『ボブという名の猫』&『ベイビー・ドライバー』

今朝は暑くもなく寒くもなく、雨もなく、久方ぶりの爽やかな朝でした。こんな感じが続くといいな。
●今朝はもう、道端に秋の花?が。


このところ新聞もTVも相変らず北朝鮮の脅威を煽るものばかりで、非常に不愉快です。刈り上げデブに核兵器を持たせておくのは確かに危険ですが、現実に連中の核兵器を取り上げることはかなり難しい。だったら対話と圧力、二つの手段でリスクを減らしていくしかない。にも関わらず、マスコミは脅威を煽るものばかり。対話は猪木頼み、じゃないでしょうね(笑)。あとはくだらない避難訓練?。バカ言ってるんじゃないよ。
こうやって戦争が近づいてくるのだ と思います。国民の間でこんなに脅威ばかり煽っていたら、対話なんかできないじゃないですか。で、いずれ、そういう強硬な世論に迎合するポピュリスト政治家が台頭する。そうなったら戦争へのカウントダウンです。戦争を起こすのはバカな政治家だけじゃないです冷静さを失ったバカな国民が戦争を起こすんです。


一方 土曜日のTBS報道特集『医療的ケア児と教育』は心を打たれる特集でした。


医療的ケア児と教育 | 報道特集 : TBSテレビ


医学の進歩により、医療ケアを受けながらであれば、通常通りの生活を送ることができる子供が増えている というルポでした。
胃ろうで栄養分を補給しなければならないお子さんがいる野田聖子なども出ていましたが、一番 印象に残ったのが箕面市の例でした箕面市は15年前から医療的ケア児専門の看護師の予算を確保して地域の学校への受け入れを進めているそうなんです。番組で紹介されていた子供は重度の脳性まひで、人工呼吸器をつけストレッチャーに乗せられながら、普通の教室で他の子供たちと一緒に授業を受けている。彼は話はできないけど視線や口の動きで周囲と意思疎通をしている。脇には看護師さん二人が付添ってケアを続けている。


他の子供たちは、その子のことを『優しい、話を聞いてくれる』と言うんです。担任の教師が『子供たちが身体が不自由な人に対して持った優しい気持ちが、彼への印象として反映されている』と説明していました。障害がある子供を学校に受け入れることは障害を持った子供の権利であることは勿論ですが、一緒に学ぶ子供たちにとって非常に良い教育になるんですね。
子供だけではありません。何年か前 ボクの職場でも、お子さんに胃ろうが必要で会社を辞めようか悩んでいた人がいました。正直びっくりしましたが、在宅勤務制度をテストする(笑)という大義名分を作って、自分の職場にその人が働きやすい環境を作りました。今もその人は立派な戦力になっているし、お子さんも問題なく育っています。結局 誰にとっても得なんですよ。


世の中には色々な人がいる、そういうことを理解し、学ぶのは大事なことだと思います。特に子供なら、少しぐらい偏差値が上がることより優しい心を持つことの方が一億倍も大事、でしょう。色々な人がいることを受け入れるのはみんなにとって得なんですね。こういう話になるとすぐ、予算がどうのとか、勉強の邪魔になるとか、くだらないことを言い出す大バカがいますが、視野が狭すぎるし、頭が悪すぎ。長期的視点に立って損得を考えるべきです。付添う看護師さんの数、学校での受け入れ態勢など様々な問題はあります。簡単なことではないけれど、こういう試みが広がっていくことは我々全員にとってかなり大事なことだ と思いました。



ということで、新宿で映画『ボブと言う名の猫映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」オフィシャルサイト

ジェームズ(ルーク・トレッダウェイ)はホームレスでヘロイン中毒。彼はギターを手に、ロンドンの街角でストリートミュージシャンとして日銭を稼いでいた。ドラッグ更生プログラムで代用薬を飲んでいた彼は、日々の辛さに負けてヘロインを摂取して病院に搬送される。その後 親身になってくれる更生担当者ヴァル(ジョアンヌ・フロガット)が用意してくれた安アパートに入居した彼のもとにどこからか茶トラの猫(ボブ)が迷い込むのだが。


これは実話です。ロンドンの路上でホームレスだったヘロイン中毒の若者が野良猫を救ったことで立ち直っていく物語。原作はベストセラー・リストに76週間連続でランクインする記録を樹立。30を越える地域で出版され、販売部数は世界中で500万部、続編2冊を合わせると計1000万部を越える大ベストセラーだそうです。

ボブという名のストリート・キャット

ボブという名のストリート・キャット

丁度 9/4の朝日新聞に実際のジェームズが載っていました。

http://www.asahi.com/articles/DA3S13116294.html


ボクはどちらかというと猫より犬派だし、この話は数年前 日本でも話題になりましたから知っていました。あまり期待せず、公開3週目に出掛けたんです。ところが、どうしてどうして、拾いものの映画でした。

お話の筋は判っているので、前半のお話自体はやや かったるいなー という感じはしました。
ただし、演出はうまい。ストリートミュージシャンの主人公の歌の画面への取り入れ方など実にスムーズです。監督はロジャー・スポティスウッドと言う人、ペキンパー監督の編集係からのし上がって『007/トゥマロー・ネバー・ダイ』の監督にまで上り詰めたそうです。巧みな演出はホームレスの環境を非常にリアルに感じさせます。
●主人公役の歌が上手いんだか下手何だか中途半端なところがリアルです(笑)。


寒い雨の日、そして飢え。観ているうちに主人公の心情に引き込まれていきます。彼の環境は生易しいものではありません。良家に育った彼は両親の離婚をきっかけに麻薬に走り、ホームレスにまで落ちぶれました。一度転落すると中々這い上がれない。そしてプライドまで根本的に破壊される。だから麻薬から逃げられないんです。
でも主人公は心の底にはまだ、良心や希望は残っている。だから行政が機械的に提供する麻薬更生プログラムは続けている。でも就ける職は少ないし、麻薬も簡単に手に入るし、行政の仕組みは冷たい。ケン・ローチ監督の傑作『わたしはダニエル・ブレイク』で描かれた世界、それに先日のロンドンの低所得者向け住宅の火災を思い起こさせます。
●今のところ今年最強、魂をえぐるような映画です。カンヌ映画祭グランプリ。

わたしは、ダニエル・ブレイク [DVD]

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ボクは主人公に凄く感情移入できました。子供の時だったら尚更 誰だって辛いことがあったら逃げたいと思うじゃないですか。ましてや家の前で麻薬を売っているような社会環境です。ちょっと足を踏み外せば、彼のように路上生活になる可能性は誰にでもある人間はそんなに立派なものじゃないと思うんです。問題はそこからどうするか。誰だって動物でも芸術でもいい、ちょっとした助けが必要になることはあるじゃないですか。
主人公を演じた役者さんは結構 好き(笑)。エドガー・ライト監督(後述)の『アタック・ザ・ブロック』で貧民街の若者役で出ていたそうですが覚えてない(笑)。ここではホームレスの恰好をしていても、ハンサムなだけでなく繊細な感じが漂ってくる。


中盤以降 猫のボブ君が出てくると映画はガラッと変わります。実際のボブが殆どを演じているそうですが、この子、凄い役者なんです、マジで。表情と言い、動きと言い、自然で滅茶苦茶上手い。見ず知らずの主人公の肩に乗るのも全然嫌がらない。当初はハイタッチをする猫と言うことで日本でも話題になったのですが、控えめながらも本当にハイタッチするんです。お利口さんです!安倍晋三北朝鮮のデブの1億倍は賢いんじゃないですか!!
この映画で最も驚くべきなのはボブ君の演技です。


希望を失くしかけていた主人公も、ボブが居ることで変わっていきます。 自分のためでなく、ボブのために生きようとする。ヘロイン中毒でホームレスだった主人公ですが、怪我をした猫を有り金はたいて救う気持ちは残っていましたこれこそが人間の根本的な価値だと思うんです。
回復したボブは主人公から決して離れません。無理やり彼の路上演奏にまでついていきます。ところがギターや肩の上にちょこんと載ったボブと主人公の演奏は一躍 人気になります。
●猫を連れた主人公の演奏は街角で人気になります。演じるのは本当のボブだそうですが、大したものです。


主人公は演奏だけでなく、ビッグ・イシューの販売などで懸命に生活を立て直そうとする。そして地獄のような禁断症状に挑戦して、麻薬を根本的に断つことを決意します。いつも傍にいてくれるボブから勇気を貰ったのです。

●ボブは観客からもらったマフラーを巻くようになりました。


主人公は怪我をしたボブを助けましたが、今度はボブが主人公を救います世界ってそういう風に出来ている と思うんです。この映画ではその過程が実に説得力を持って描かれる。
ホームレスや麻薬中毒のリアルな描写とボブくんの名演!で、ボクのようなひねくれた大人が見ても十分に納得できます。後半はずっと泣いてました(笑)。こういう映画は大好きです。実に良い映画です。すばらしい。人間より、犬や猫のほうが上等な生物なのを再認識しました!

●目覚ましTVでも取り上げられたそうです。



もう一つは新宿で映画『ベイビー・ドライバー映画『ベイビー・ドライバー』 | オフィシャルサイト| ブルーレイ&DVD&ULTRA HD発売

幼いころの交通事故の後遺症で耳鳴りに悩まされながら、iPodで音楽を聴くことで驚異的なドライビング・テクニックを発揮するベイビー(アンセル・エルゴート)。その腕を買われて犯罪組織の 逃がし屋として活躍していたが、ある日ダイナーのウェイトレスのデボラ(リリー・ジェームズ)と恋に落ちる。ベイビーは裏社会の仕事から手を引こうとするが、組織のボス(ケヴィン・スペイシー)はそれを許そうとしなかった


この映画、今夏の作品では一番 評価が高いんじゃないでしょうか。
ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスマン』、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』などのエドガー・ライト監督の新作です。ボクはこの人の監督作は全部見ていると思います、たぶん。好きであることは間違いないんだけど、ちょっと乗れないところもある、ボクにとってはそういう監督です。

映画は冒頭から度肝を抜かせます。ベイビー君は常にiPod(しかもclassic!)をかけることで、驚異的なドライビングテクニックを発揮するのですが、音楽のビートとカーアクションがシンクロしているんです。これはすごいー。観客にしてみると自分もiPodを大音量で聞きながらアクションの真っただ中に放り込まれたような感じになります。これは見事なアイデアです。
●耳鳴りに悩まされ、常にiPodで音楽を聞いてないと生活ができない主人公。


全編で約30曲くらい流れるのは、まるでミュージカルのようです。アクション版『ラ・ラ・ランドと言われているのもうなずける。カッコいいです。ここまでは満点。ボクもまだ、iPod classicを使ってます(製造中止になったので、予備にもう一個持っているくらい)。
だけど、かかる曲がいまいちなんです(個人的な好み)。オールディーズやサム&デイブなどのR&B、ビーチボーイズ、クイーン、ダムドなどのパンク、ベックやブラーまで微妙な選曲で、悪いとは言わないんだけど、良い曲と思うものは1曲もなかった。


映画のタイトルのベイビー・ドライバーサイモン&ガーファンクルの曲から取ったそうです。そもそもボクはS&Gなんか興味ないんだよ。てな、具合です。


主役のアンセル・エルゴート君は可愛いです。いい感じ。佳作『きっと星のせいじゃない』の彼氏役だったのね読書『初めての福島学』と『日本人の99.9%がバカ』、それに映画『きっと、星のせいじゃない』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)。犯罪組織のボス役のケヴィン・スペイシー、犯罪者仲間のジェイミー・フォックスはすごい迫力で、いい味を出しています。芸達者だなあ。
ケヴィン・スペイシー(一枚目左)もジェイミー・フォックス(二枚目左)も強烈な個性を出しています。見ていて楽しいです。

                                  
だけど何よりも彼女役のリリー・ジェームス。顔はあまり好きじゃないんだけど、表情、いや存在そのものがキラキラしてる。オーラがあります。この子はこれからスターになる!と思いました。
●この女の子、全編にわたってキラキラしてます。照明やメイクが特殊なわけじゃありません(笑)。


脚本も頑張ってます。月並みなサスペンスにならないように工夫しているのは良くわかる。お話が二転三転していくのも面白い。だけど、感情的にいまいち、のめりこめないんです。なんでだろう。やれ!やれ!、やっちまえ〜!って言うのがないからかなあ。常識的なエンディングは間違いじゃないとは思いますけど、映画としてはもう一つ、捻っても良かったかも。当初の展開通り、カーアクションで完結させればもっと良かったと思います。
●音楽映画、カーチェイス映画としてはともかく、ボーイ・ミーツ・ガールものとしては良いと思います。なかなかロマンティックです。


公開初日に見たので映画館の外にはぴあのアンケートが観客に評価を聞いていました。周りの人は熱狂的に100点とか答えていて、それも判らないではありません。ボクは82点くらいだなあ。俳優は良いし、脚色も良い。アクションもカッコよくて、間違いなくおもしろいけど、曲がいまいちなのと、そもそもボクは車の運転とか嫌いだから、カーアクション自体あんまり興味ない(笑)。
でも、ボーイ・ミーツ・ガールのロマンティックなお話しとしては1級品だし、音楽とシンクロしたカー・アクションは凄いです。絶対見る価値がある今年を代表する作品であることは間違いありません。