特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

8月のNHKスペシャル4題と『0818再稼働反対!首相官邸前抗議』

楽しかった夏休みも終わってしまいました(泣)。名残惜しいですが仕方がありません。
ああ、早く定年にならないかなあ。1週間くらいのお休みは中途半端で、前半に旅行に行った他は溜まっていた本もDVDも消化できないまま終わってしまいました。もうちょっと自分が勤勉ならいいんでしょうけど(嘆息)。


今年の旅行では珍しく、京都で一番人通りが多いであろう祇園界隈を歩いてみました。浴衣を着ている人が大勢いました。道端の店でレンタルをやっているんですね。



着ている人を見たら外国の人、それも中国や韓国の人たちが多い。浴衣を着て喜んでいる姿、華やかな姿は日本人の女の子たちと何一つ変わりません。ヒジャブを被って浴衣を着ている子も居ましたけど、そういうのも微笑ましい。溢れる人混みには閉口してさっさと退散しましたけど、やっぱり女の子たちが喜んでいる光景は国籍に関係なく良いなあと思いました。
お茶屋さんではお抹茶に氷が入っていました。400年以上続いているという店の仲居さん曰く、『ちょっと遊んでみました』(余裕)。店には溶けにくい球形の氷も用意されているのですが、わざと不規則な形の氷が入っています。お茶碗の中の濃緑の液体が余計に美しく見えます。


それと対照的な事件が今週 アメリカで起きました。極右の白人優越主義者が反対するパラリーガルの女性を車で轢き殺した件は言うまでもなく酷い話でした。北朝鮮のバカ将軍リスクに加えて、この件によるトランプ政権の動揺で、この1か月で株価は1000円近く下がったことになります。

現地バージニア州知事がはっきりとKKKなどの白人優越主義者には居場所はない。帰れ!』と声明を出したのに対してトランプが白人優越主義者をはっきり非難しないことで、周囲の大企業経営者や陸海空軍・海兵隊のトップまで怒り出しました米軍幹部も異例の批判 白人至上主義巡る発言 トランプ氏、四面楚歌 :日本経済新聞。そらあ、大企業も軍も白人優越主義じゃ存在できないですもん。ちなみにトランプの親父は昔KKKの集会に参加して逮捕された経歴があります。

結局 こういう時にこそ、その人の判断力が試されるんです。日本でも排外的なヘイトスピーチをやっている連中は図々しくも言論の自由を口にします。言論の自由アメリカ様がくれたことは頭にない排外主義者って言うのは、やっぱりヴェリー・スペシャル・バカ>(笑)言論の自由は大事なものだけど、『人種や国籍で差別をしてはいけない』とか『性で差別してはいけない』など、最低限 言ってはいけないことがあります。差別には議論の余地がないからです。社会を成り立たせる紐帯は絆とかのきれいごとではなく、議論ができるという最低限の常識です。差別に言論の自由はないんですね。いざという時、そういうことを自分が自信を持って主張できるかどうか、右とか左とかの政治的主張より、こういうことの方が大事だとボクは思います。
●あの低能ブッシュですらも白人優越主義者を非難し、マケイン議員に至っては大統領を名指しで非難しています。



さて、夏休みに本をあまり読めなかったもう一つの理由はNHKのドキュメンタリーをずっと見ていたからです。今年の8月のNHKスペシャ、例年にも増して素晴らしかった。民放もネットもぐうの音が出ない水準のものばかり。ネトウヨのクズどもが悲鳴を上げていました(笑)。
13日夜はBS「なぜ日本は焼き尽くされたのか〜米空軍幹部が語った“真相”」、同じく13日の地上波では「731部隊の真実〜エリート医学者と人体実験〜」、14日の地上波『樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇 』、15日の地上波『戦慄の記録 インパール』、どれも力作でした。視点がまともであるだけでなく新しい資料やインタビューを掘り起こすことで、知らないことを教えてもらいました。
●15日夜に放送された、NHK広島の制作『''この世界の片隅に''コトリンゴの映画音楽―完全版ー』、これも良かったです。主人公の『すずさん』は親戚の女の子みたいな感じがするんです。TVの前で泣いてしまいました。http://www4.nhk.or.jp/P4454/


まず 13日夜のBS1『日本はなぜ焼き尽くされたか』。米軍内部で空軍を陸海軍から独立して空軍を作ろうとした将軍たちが爆撃だけで日本を降伏させようとして、焼夷弾による無差別爆撃、地方都市への空爆エスカレートしていったということが将軍たちのインタビューテープを掘り起こして描かれていました。スティムソン陸軍長官によると『原爆投下は将軍たちの無差別焼夷弾爆撃をやめさせるためだった』という側面もあったそうです。物事には色々な考え方があるものですけど、当時は『原爆の方が焼夷弾で都市を無差別に焼き払うより人道的』と考えられていたんですね。

NHKドキュメンタリー

次は13日地上波の『731部隊』。悪名高い人体実験をしながら満州で細菌兵器を研究開発していた連中ですが、ソ連軍による裁判での連中の音声証言をNHKが発掘しました。丸太とよばれる実験台の人たちに強制的に凍傷を作っては治療して、また凍傷にさせたり!、チフス菌を浴びせたり、やってることのウルトラ極悪非道さはいうまでもありません。ボクには連中の施設がナチのアウシュビッツそっくりに見えました。
今回の番組は京大や東大の学長・学部長・教授クラスが731部隊に自発的に協力していたことを明るみに出しました。軍から多額の研究資金を受け取る代わりに、弟子たちを半ば強制的に満州へ送り研究にあたらせた。また日本国内でも中国人憎しという感情から中国人には何をやってもいいという風潮がみなぎっていたことが、それを後押しした。今 日本でも防衛省が大学に研究資金を大量に出そうとしていますが、731部隊は軍隊と大学の結びつきと言う面では今日的な問題なんです。


731部隊の面々は終戦後 優先的に国内へ逃げ帰りました。連中はデータの提供と引き換えに米軍に免責されただけでなく、弟子たちを送り込んだ教授連中も戦後は口をつぐんだまま大学や企業で栄達していきました(怒)。731部隊の連中が作った製薬会社ミドリ十字薬害エイズを引き起こしたことは皆さんもご存知だと思います。
NHKスペシャル | 731部隊の真実~エリート医学者と人体実験~


さらに14日の『樺太の地上戦』。NHKは住民たちの証言や資料を発掘して、8月15日以降の1週間に5000〜7000人もの人が亡くなったことを描いています。今までボクはソ連終戦後も住民虐殺をやったと思っていたんですが、北方を管轄する札幌の日本軍司令部は終戦後も抗戦命令を出していて、現地では無警戒に上陸したソ連軍に対して日本軍から発砲したそうです。住民たちはまともな武器もないままゲリラ戦に動員され、5000人以上の人が亡くなった。そして日本軍は住民を全く守らなかった。札幌で指揮していた樋口季一郎という将軍は評価する声もある人ですが、この点は弁護の余地はない。番組では『本土上陸があれば起きたであろう光景が、樺太では現実に起きた』としています。他人事ではないんです。本土決戦が起きていたらボクだって今 この世に居ないかもしれないんですから。





NHKスペシャル | 樺太地上戦終戦後7日間の悲劇

そして、15日の『インパール作戦』。日本軍が食料も補給の準備もないままジャングルを超えてインドに攻めていき、3万人以上が亡くなったインパール作戦の無能さはあまりにも有名ですが、稀にみる愚将として悪名高い牟田口廉也のお孫さんからの資料提供、実際に牟田口の近くにいたという斎藤さんという少尉の証言をNHKは引き出しました。

今回NHKが1万人以上の戦没者名簿を時間と場所をプロットして調べたら、戦闘中より撤退命令が出てから亡くなった人の方が圧倒的に多いんですね。これは驚いた。現地の人には散々迷惑をかけ、自国の兵隊の命は使い捨て。番組では日本軍の上層部が現地で芸者遊びをしていたのは触れられなかったですが、牟田口をはじめとした将軍たちは負けたらさっさと逃げただけでなく、戦後も見苦しい言い訳に終始し責任を取らなかった。


「現地で死んだのは兵卒で、下士官や将校は殆ど死ななかった」、『我々の命は使い捨てだった』と牟田口の近くにいた斎藤さんは日誌に書き残しています。今は90を超えて車いすの斎藤さんが、何十年かぶりに自分が記録した日誌を見たときに漏らした声はまさに真実の声に聞こえました。番組の最後に流れた彼の表情と悲痛な叫びは忘れることができません。この瞬間を捉えただけでも、この番組は第1級のドキュメンタリーです。
●斎藤元少尉(96歳)





NHKスペシャル | 戦慄の記録インパール


毎日新聞によると、太平洋戦争での230万人の戦没者のうち、餓死+戦病死が全体の6割を占めています

戦没者230万人:6割「餓死」の学説も 無謀な作戦が惨劇招く - 毎日新聞


日本の兵士は国を守るために戦って死んだんじゃないんです。日本の兵隊の6割は敵に殺されたんじゃなく、日本の政府や役人に殺されたんです。731部隊樺太の悲劇、インパール作戦から、現代の福島の事故やブラック企業まで、一直線につながっている。死人こそ出てないけど、子供に理不尽な犠牲を強いるという点では甲子園も同じです(甲子園の開会式で倒れた女の子を高野連や球児が無視したのは、牟田口が前線で長々と訓示を垂れている間にも兵隊たちがバタバタ倒れたのを思いださせました)シャープの液晶、東芝原子力、日銀の国債もそうでしょう!
番組で証言をした元軍人や現地の人も80〜90代でした。我々は、彼らが生きているうちに彼らの教訓を少しでも汲み取る義務があると思うんです。




と、いうことで、今週も官邸前抗議 #金曜官邸前抗議
東京は日差しは弱くなりましたが、蒸すんですよね。午後6時の気温は28度、立っているだけで汗が出て来る。気持ち悪ーい。今日の抗議の参加者は700人


●抗議風景。茨城県知事選は来週。現職が再稼働反対に廻っています。




3年に1度の国の「エネルギー基本計画」の見直しが始まりました。


エネルギー政策の見直しは長期の視点で :日本経済新聞


参加している委員の顔ぶれを見るとがっかりしますが、マスコミを通して聞こえてくる断片的な彼らの発言に一喜一憂していても仕方ありません。はっきり言って今までの議論は超いい加減でした。311直後は原発がないと電力需要が賄えないと国や経産省は言ってましたが、大嘘でしたかと言って、エネルギーの安全保障、温暖化対策の面を考えると、今すぐ原発を無くして良いかどうか、それはボクも断言できないと思います。また原発の廃棄物をどうするかという問題もあります。

長い目で見れば、例えば2030年ごろにはガソリン自動車はほぼ無くなってしまうかもしれません。LEDも大幅に普及するし、省エネ技術も進むでしょう。人口も減るのですからエネルギー需要も減る。全体の需要も産業構造もドラスティックに変わる。その上でエネルギーの安全保障をどうするか、温暖化対策をどうするか、それにコストを考えなければいけないですが、今までの基本計画ではそんなことは全然考えられていない。20年後 日本の工場が今のように工業製品を輸出することができると思ってるとしたら余程 頭がおめでたいです(笑)。


ちなみにボクはコストの面からもエネルギー自給や温暖化対策の面からも、省エネ技術の推進がメイン、その上で再生エネルギーやちゃんと活用していない水力、その上でガスタービン火力というのが優先順位と思っています。それで十分だと思ってますけど、足りなければ原発も仕方ない。いずれにしても原発推進側も反対の人たちも、まともに議論をしようとしないのが一番悪い。
太平洋戦争も『なし崩しに』戦争に向かっていきました。東条英機ですら「清水の舞台から飛び降りる」と言うくらい成算がなかったけれど、国民や軍部の雰囲気に圧されて指導者層は戦争を始めてしまいました(リーダーとしての能力がなかったわけです)。この『なし崩し』というのが一番悪い、とボクは思います。戦争も原発また同じ間違いを繰り返すのかと。