特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『これから無くなる職業』と映画『ゴーストバスターズ』&映画『ポバティー・インク あなたの寄付の不都合な真実』

空も高くなったし、そろそろ秋の気配が漂ってきましたね。最近の雨空はまるで秋の長雨のようにすら感じます。クソ暑い夏は嫌ですが、寒い冬はもっとイヤ(笑)。美味しいものが一杯ある秋ですが、天候の良さが一番です。ああ、1年中 秋だったらなあ(笑)。

                                     
ちょうど 先週のエントリーで最低賃金のことを書いたところですが、そのあと最低賃金の改定が厚労省から発表されました。
都道府県で今年度の最低賃金改定の答申が出そろい、厚生労働省が23日、公表した。改定額は全国平均で823円(時給)と初めて800円台となり、平均引き上げ額は前年度比7円増の25円。時給で表示するようになった2002年度以降最大の引き上げで、政府が掲げる3%引き上げに相当する数字になった。
最低賃金:時給、初の800円台 16年度全国改定 - 毎日新聞
                                
安倍晋三の人気取りとは言え、これ自体は悪い話じゃなくて、かって民主党政権が掲げていた最低賃金1000円に向かって進んでいけばいいと思います。でも全然足りませんよね。1000円×2000時間で年収200万ですから。欧州などに比べて公営住宅が圧倒的にプアな住宅政策、毎年上がる一方の健康保険、日本の景気を何とかするには様々なことを考え直していかなければならないんでしょう。



でも、問題はそれだけじゃありません。これからはITやAIなど技術革新が今までにも増して、どんどん進んでいきます。
先週 ボクの10倍は口が悪い(笑)、某大学の学長(ハーバード卒)から『これからは『仲介』に関する仕事は全てなくなるだろう。』という話しを聞いたんです。なるほど〜と思いました。仲介に関する仕事というと非常に広い。自ら製品やサービスを生み出していない職業は全てです。例えば小売りや卸などの流通業はその典型です。農協や銀行、協同組合なんかもそうですよね。更に学長氏は『自ら新しい知を生み出さず外国の学説を紹介だけしているほとんどの教師&ほとんどの大学教授も要らない』と言ってましたが(笑)、今の政治家なんかも機械に代替したほうが良いですよね。
                                         
デパート、スーパー、中小小売店など多くの小売業が通販に顧客を奪われてどんどん衰退しています。確かにネットと宅配便があれば、よほど専門的な知識や接客が無い限り物販店は厳しい。フィンテックで金融機関、例えば地銀なんかが沢山潰れるだろうし、残った銀行だって支店を減らし人をどんどん減らしていくでしょう。
つい、この前 IBMの人工知能、ワトソンくんが日本国内でもガン治療をしたことがNHKで取り上げられてましたが、既に手術にはダヴィンチというロボットが大々的に導入されているし、これからは医者だって、公認会計士だって危ない
●『今回が初めて』と大げさに謳うこの放送には違和感を持ちましたが。随分前からこういうことは進んでいます。
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2016_0808.html



ホワイトカラーだけじゃありません。今はトラックやバスの運転手さんが人手不足ということですが、これも自動運転に代替されるのは目前です。規則的で単純な労働は事務も力仕事も機械に置き換わるでしょう。ちょうど先週 発売された日産の新車には日本で初めて自動運転装置がついているそうです↓。単一車線の高速など特定の条件下ではハンドル、アクセル、ブレーキが全て自動。
●完全な自動運転までは4段階あって、今回が下から2番目だそうです。

日産ミニバン、高速道で自動走行 291万円から :日本経済新聞
●機械に代替される職業上位20。アメリカの例ですが日本だって同じでしょう。
機械に奪われそうな仕事ランキング1~50位!会計士も危ない!激変する職業と教育の現場 | 『週刊ダイヤモンド』特別レポート | ダイヤモンド・オンライン

結局 あと10年経てば、仲介や規則的な単純作業の職業のかなりが減っているか、無くなっているでしょう。人間の側がよほど準備してないと、やばい。この前も留学から帰ってきた姪に『10年経てば英語なんか自動翻訳になっちゃうから、それじゃ飯は食えないよ』と言ったばかりですが、ボク自身も他人のことを言ってる場合じゃないんです。付加価値のあること、クリエイティヴなことをやれるようにしておかないと。
このまま行くと結構な確率で、ごく一部の機械を動かす側の人と、機械に使われる人&機械に置き換える価値がない安価な労働に従事する人に二分されて、貧富の差が今以上に広がってしまうのではないかと思います。これって安倍晋三がバカだからでも、野党が無能だからでも、ない(笑)。我々はイデオロギーだけでは割り切れない難しい時代にいる、と思います。




ということで、銀座で映画『ゴーストバスターズ

80年代に大ヒットした映画のリ・ブート作品です。前作の監督、アイヴァン・ライトマンが制作にまわり、監督はアメリカで大ヒットしたコメディ『ブライズメイズ』のポール・フェイグ、主演の二人もブライズ・メイズの出演者クリステン・ウィグメリッサ・マッカーシーが演じています。

舞台はNY。コロンビア大のテニュア(教授としての終身身分保障)の獲得を目前にしていた物理学者エレン(クリステン・ウィッグ)は、若いころ 友人の物理学者(メリッサ・マッカーシー)と遊びで書いた幽霊に関する本が問題になってクビになってしまう。おりしもNYの各所で謎の幽霊が出没するようになった。職を失った彼女たちは幽霊退治会社、ゴースト・バスターズを起業する。  
●幽霊退治のリケジョの面々。左からクリステン・ウィッグ&メリッサ・マッカーシーブライズメイズ)、ケイト・マッキノン(テッド2)。皆 ベテランのコメディエンヌです。

         
                                     
この映画はバスターズの面々が全員女性に入れ替わったことでアメリカのネトウヨから攻撃を受けたことも話題になっています。例のアメリカのソニーがハッキングされた事件で、米ソニー・ピクチュアの女性社長が『女性映画を作りたい』と言っていたメールが暴露されたからだそうです。それの何が問題なんでしょうか。アメリカにも日本と同じようなアホで無能で性差別的なネトウヨが居るんですね(オルタナ右翼と言うそうです)。町山智浩 共和党大会とオルタナ右翼とゴーストバスターズ出演者ヘイトを語る



●洋の東西を問わず、現実と妄想の区別がつかないクズは一緒、ってことですな。

女性版『ハング・オーバー』とも言われる『ブライズメイズ』は如何にも最近のアメリカ人が好きそうなコメディでした。いつまでたっても大人になりきれない女性たちが友達の結婚式の介添え人を務めることになって巻き起こす、ドタバタコメディです。アメリカのコメディは日本ではあまり人気がありませんが、ボクは結構好きなので8割がたは見に行きます。ブライズメイズも面白かったんですが、ゲロだの、●ンコなど直接的な下ネタが多いところはちょっと辛かった。大筋として悪い映画ではないですが。

                                          
ゴーストバスターズ』は監督も主演も『ブライズメイズ』と一緒ですが大メジャー作品だけあって、下ネタは控えめでその点は良かったです(笑)。主人公は女性4人、それも美女とかではなく、ごく普通のルックスの中年女性たちです。それが物語が進んでいくうちに全員がとても魅力的に見えてくるんです。それぞれがベテランのコメディアンということもあって、演技もキャラもすごく立っている。4人が皆、専門的な職業を持っている女性、物理学者やエンジニア、地下鉄の案内係をやっている根っからのNYっ子という設定も良かった。ここでは、ごく普通に女性の自立が描かれています。ごく普通のルックスの中年女性たちが魅力的に見えるんですから、大スターもセクシーな美女も出さずにメジャー作品を作る、という賭けは見事に成功しています。

                               
あ、一人 ルックス抜群のスターが出ていた。男性秘書を演じるクリス・ヘムズワースです。彼のキャラクターも素晴らしい?。ハンサムで筋肉もりもり、だけど電話もまともに取れない超ウルトラ・バカを嬉々として演じています。クリステン・ウィッグが彼の採用を『観賞用よ』というシーンがありますが、男性社会の戯画を見事に表現しています。彼が嬉しそうに演じる、頭空っぽでルックスだけの受付男、これだけでもこの映画は充分価値があると思います。ボクは腹を抱えて笑ってましたけど、ネトウヨは頭に来るのでしょうか(笑)。

                                                  
結果として、メジャー作品でごく普通の女性を主人公にして映画を作ると言う試みは大成功だと思います。他にもビル・マーレーやシガニ―・ウィーバーなど前作の出演者も出てくるし、大ヒットした前作の主題歌も使われています。80年代に見た人が嬉しくなるような前作へのリスペクトも十分で、まるで教科書通りの見事なリブートと言えるでしょう。
  
                                    
ただし、脚本がすこ〜し弱い。
根が暗い、いじけたオタクがゴーストを呼び出すと言うのもありふれているし(ネトウヨが頭に来るわけです)、後半はCGに頼りすぎかもしれません。新作ならではのスリルとかオリジナル性もちょっと弱いかもしれない。また、これだけ良心的に作られた映画でも核兵器で問題解決っていうのは気になります。やっぱり、アメリカ人はバカと言いたくなります(笑)。NYとは言わないけど、どこか大都市に原爆が落ちなければアメリカ人は判らないかもしれない。全米ライフル協会の連中が集会やっている頭上に原爆が落ちればいいのに

                        
足りない点はありますけど、全然 悪い映画じゃないです。中年女性4人の活躍は2時間 十分に楽しめます。肩肘張らずに普通の女性が普通に描かれる、こういう作品がもっと当たり前になればよいのに。




もう一つは、渋谷でドキュメンタリー『ポバティー・インク あなたの寄付の不都合な真実』(貧困株式会社)映画『ポバティー・インク ~あなたの寄付の不都合な真実~』 公式サイト Poverty, Inc.

                                   
貧困や災害など世界各国で行われている援助が、援助国の関連企業を儲けさせるばかりか、被援助国の自立を妨げ、民衆の暮らしを貧しいままに放置する原因になっている というドキュメンタリー

例えばハイチでは2010年の大震災の際 日本も含め、世界中から10000もの政府やNPOがやってきて、様々な援助を行ったそうです。地震当初はそれは大きな助けになったそうですが、現在はむしろ害悪が目立っているそうです。例えば米の食糧援助。以前からハイチでは米作が行われ、震災前は週2,3回程度の米食が行われていたそうです。ところが震災後は援助団体が米を無料配給し、それは今でも続いています。その結果 ハイチの米価格は暴落、米農家などの関連産業は壊滅してしまったそうです。いくら現地の産業が頑張っても無料の米にはかないません。
●長期間の食糧援助はその国の産業を破壊する、とこの映画は主張しています。

                                   
太陽光発電業者の例も語られます。電力が不安定なハイチでは、有り余る太陽光を生かした太陽光発電は将来有望として、現地で起業する若者が居ました。自分たちでエネルギーを自給しようというのです。目の付け所は良いですよね。ところが震災後 海外のNPOが無料で太陽電池を街頭に設置し、従来からの業者は商売あがったりになってしまいました。
●ハイチのスラム街。壮絶なスラム街でちょっと驚きました。

                                                     
政府や公的団体、NPOが貧困や災害援助の名のもとに無料で物資を貧困国に提供する。民衆に物資が供給されても、貧困国の産業や企業は打撃を受けます。。一方 援助実績ができた公的団体やNPOには益々寄付金が集まるようになります。無料で物資提供を受けた民衆も最初は喜びますが、徐々に自分たちの雇用が減っていきます。結果として貧困国の民衆はずっと、貧困のままにおかれてしまうのです。
●反貧困運動の善意と結果は必ずしも一致しません。

                                                     
映画ではハイチの他にも、コンゴなどアフリカ各地で同じ様な事が起きていると訴えます。先進国の寄付や援助は関連企業やNPOを広い意味で儲けさせるだけで、非援助国の貧困を固定化させているというのです。
また映画では寄付を呼びかけるセレブリティ、有名人も槍玉に上がっています。例えばボブ・ゲルドフミッジ・ユーロが呼び掛けたバンド・エイドの『ドウ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?』。エチオピアの飢餓撲滅を訴えるキャンペーンソングですが、この曲は援助金は集めたけれど、アフリカは貧困というイメージを固定化させた弊害もあった、とこの映画は主張しています。
●これは2000年代のカバー版。映画は実態と異なる貧困イメージの再生産だ、というのです。

ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?

ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?

例えばU2のボノ。彼はバンド・エイドに参加するだけでなく、長年の間 貧困撲滅のために活動する活動家としても活発に活躍しています。彼は国連や国際会議などでも良く、スピーチしてますよね。映画では彼の活動が本当に貧困国の為になっているだろうか、と疑問を投げかけます。特に問題なのはボノの場合、ロックンロールという熱狂の中で援助を訴えるところだと、映画の中でコンゴの大学教授が語っています。そういう手法だけで援助が語られるから、いつまでたっても人々が真面目に援助の本質を考えないのだ、というのです。
●日本でも発展途上国への古着の寄付などが行われています。しかしこれらの古着はその国の繊維産業を破壊するというのです。

この映画は、物資の援助ではなく、教育、起業のやり方、技術など貧困国が自分たちの手で立ち上がるための援助にしてほしいと主張しています。
それは確かにその通りです。我々の善意がある意味、貧困国を傷つけることがあります。昨日 安倍晋三がアフリカへ行って3兆円投資するとか言ってましたが、果たして本当に役に立つことに投資されるのでしょうか。善意はアリバイじゃないんですね。問題は結果。これは国内でも災害のたびに同じような問題は起きているわけですから、もっと考えられて然るべき問題です。

                                     
                                  
映画の最期に、緊急時の援助は別、と注意書きは出ます(笑)。しかし 援助というものは毒にもなる、というのはその通りだと思います。人間が助け合わなくてはいけないけれど、結局は自分の力で立ち上がらなくてはならない、という古くて当たり前のことなんでしょう。これって多くの事でも当てはまるとボクは思います。人生は大変ですよ(笑)。