特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

NHK-BS『昭和の選択』(石橋湛山特集)と『河野洋平インタビュー』(毎日新聞)、それに『0826再稼働反対!首相官邸前抗議』

今日の午後 公的年金の源資を管理するGPIFが4〜6月に5兆円の運用損を出していたことが発表されました。7月末に昨年度の運用損が5兆円というのが報道されたばかりですが、今度は3か月で5兆円です。

GPIF運用損5兆2342億円 2期連続赤字 :日本経済新聞

                                      
14年に株式の運用を倍にしてからの通算も約1兆の赤字に転落しました。完全にアベノミクスのツケです。偉そうにしていた化けの皮がどんどん剥がれています。デフレ脱却は失敗、実質賃金は下がりっぱなし、運用損は累計1兆円、正社員の雇用は殆ど増えない、これだけ失政が続いても有効に攻められない野党も情けないですが、これで平気な国民にもあきれ返ります。

                               
                           
さて 木曜日の夜って、結構忙しいんです(笑)。翌日デモへ行くので、夕飯も2日分作らなければならない。昨日スペアリブを圧力鍋にセットして、少し手が空いたのでTVをつけたら、NHK BSプレミアムでこんな番組をやっていました。
昭和の選択「“核なき世界”と権力への挑戦〜いま石橋湛山を見る〜」http://www4.nhk.or.jp/P3246/2/

                                          
これが超面白かったです。石橋湛山は戦前は植民地放棄を主張し戦争に抵抗したジャーナリスト、戦後は首相になったが病気で直ぐ辞任、ということしかボクは知りません。評価が高い人なので、とりあえず船橋洋一の書いた分厚い評伝は読書兼エレキギター演奏用の部屋(笑)の床に積んであるのですが、まだ読んでない。

                                                 
残念ながら、ボクが見たのは1時間番組が始まって15分経ったところからだったのですが、こんなヴィヴィッドな問いが画面で流れていました。東洋経済の実質的な社長だった石橋湛山が軍部の言論弾圧に直面した際 どういう手段を選んだかという問いを出演者が議論していたんです。議論ではこんなオプションが上がっていました。

1.正面から抵抗する
2.臨機応変に対応し、言論活動を続ける
3.軍部に抗議して筆を折る
4.諦めて権力の言うことを聞く


出演者の歴史家、磯田道史(『武士の家計簿』の人)増田弘(歴史家)船橋洋一元朝日のジャーナリスト、福島事故の民間事故調をやった人)宮崎哲弥(評論家)高橋源一郎(元活動家で小説家、SEALDsのアドバイザーをやった人)の議論は凄く面白かった。

1ではあっと言う間に権力に潰されてしまいます。3では路頭に迷う従業員への責任があります。なによりも1や3は人々に情報や意見を届けることが出来なくなります
番組の中で議論は、1や3は無責任&現実逃避ではないか、という方向に収束していきます。ほんと、そうですよね。『国会に突っ込め』とか言うバカサヨや、『中国製の服を着て中国産の野菜を食べてるくせに中国への強硬論ばかり』のネトウヨなんか、ただの現実逃避でしかありません。バカです(笑)。さらに途中で高橋源一郎が『今のほとんどの人は4だよね』と言い出します(笑)。

湛山は2を選びます。のらりくらりとした、でも読む人が読めばわかる表現で戦争反対を婉曲に訴え続ける。当時は軍部や右翼の圧力で、大臣や軍人でも戦争反対とか和平とか言えば、命が危うかった時代です。先日むのたけじ氏が亡くなりましたが、彼のことを考えれば石橋湛山は如何に危ない橋を渡ったか判ります。戦争末期 1945年5月の東洋経済が番組で紹介されましたが、戦争反対とか降伏とは言わないけれど『日本は反省してやり直せ』ということを書いているんです。ちょっとびっくりしました。その東洋経済を三井も三菱も安田も広告を出して支えていたのも面白かった。
                                    
この問いは多くの人に当てはまる普遍的なものだと思います。政治上の意見だけでなく、仕事でも家庭でも、自分の意に沿わないことに直面することはいくらでもあるじゃないですか。そういう時、みなさんはどうしますか?

こういう議論が今のNHKで堂々と行われていることに非常に感銘を受けました。もちろん出演者も制作側もNHKやマスコミの現状を意識して発言している。この議論になる前、放送では『言論活動が封殺されていくのは自主規制や基準があいまいなことから起きる。現在も危ないですね』と論じられていたばかりですから。言論の掲載基準があいまいだったり判らないことから言論封殺が起きるというのは目からウロコでした。まさに今がそうじゃないですか。

                                                
政治家になった石橋湛山を描く後半は病に倒れた湛山が懸命のリハビリの末、岸信介らの反対や右翼の猛抗議を受けながら中国への訪中に踏み切ったことが印象に残りました。その十数年後 田中角栄は国交回復のために訪中する際 病床の石橋湛山を見舞ってから中国へ出かけたそうです。いかにも田中角栄らしいエピソードです。
平和を希求する湛山は最後まで日米中ソの集団安全保障集団的自衛権ではない)を目指していたそうです。ボクですら夢物語だと思いましたが、番組で『安保法制は成立してしまったが、もっと広い視野で安全保障を考えるうえでは今も重要な示唆ではないか』と言っていたのは、その通りだと思いました。


番組の議論は『イデオロギーではなく、国民の利益を考える政治家の重要性』、『理想と現実主義の両立』、『真の自由主義とは』が語られて収束します。高橋源一郎が『石橋湛山のような政治家が今いてくれたら』、船橋洋一は『石橋湛山のようなジャーナリストが今いてくれたら』、宮崎哲弥は『石橋湛山のような日銀総裁が今いてくれたら』と語った後(笑)、磯田道史が『今 こういう番組を作ることができて本当に嬉しかった』と締めくくって番組は終わります。制作側の気持ちが伝わってきましたよ。


昨今のNHK、クローズアップ現代の件や夜7時、夜9時のニュースなんかは本当に酷いもんだと思います。だけど、こんな番組が作れるのはやはり大したもんです。民放やネットでこれだけの質のものは見たことないです。ま、ボクもたまたま見つけた番組なんで偉そうなことは言えませんが(笑)、まともな視聴者はこういう番組を応援しないと、と思いました。事実を伝えることと深い議論がかみ合って、視聴者自らをも突き刺す、見事な番組だったと思います。来週9月1日朝8時からNHK BSプレミアムで再放送があるし、NHKオンデマンドでも見られるようです。
石橋湛山の本、読まないと(笑)。


さてさて、このような番組に思い入れすら持ってしまうのも、やっぱり最近の風潮はどうもおかしい、と感じるからです。『ペンの力 今ダメじゃん』と鳥越氏に言われて反発する癖に未だに高江のことを報じない朝日新聞もそうだし(NHKは昨晩 報じました)、生活保護叩き、SEALDs叩きなど、意味が全く分からないバッシングもそうです。世の中に自由にモノが言えない雰囲気が漂っていると思います。

それはマスコミや政府の問題というより、国民の意識の問題のほうが遥かに大きいと思います。
例えば小池百合子大阪維新の支持率の高さ、ボクには理由はさっぱりわからないのですが、共通しているのは、どちらも仮想敵を作って『改革』を目指しているところです。
橋下は旧大阪府政や公務員、小池は自民党都連を仮想敵に仕立て上げ、いわゆる既得権益からの『改革』を謳っています。小泉改革もそうですよね。郵政民営化は彼の信念だったかもしれないが、実質は彼の敵対派閥、経世会潰しとアメリカの要請に従っただけです。大阪都構想もボクには意味がわからなかったし、小池の『改革』はもっと意味がわかりません。確かに大阪府・市の公務員は酷いお役所仕事だったようですし、自民党都連がクズばかり、それは否定しない。だけど、何をどう『改革』するんでしょうか(笑)。大体 『改革』って大仰な言葉がインチキ臭い(笑)。小選挙区制を導入した『政治改革』も『小泉改革』も、ロクでもないものばかりじゃないですか。
                                                      
殆ど意味がわからないにも関わらず、多くの人が『改革』を求めるのはやはり現状に満足できないから、だと思います。この20年間日本人の実質賃金はずっと低下しているのだから、それは当然です。だけどそうやって安易に改革を求めるのは、不満の原因を他の誰かのせいにしているから、です
公務員が悪い、金権政治家が悪い、大企業が悪い、左翼やマスゴミが悪い、どこか他の国が悪い、そんな話ばかりです。判りやすいけど、本当にそれだけが問題なんですかね。

                                                   
25日の毎日新聞夕刊のインタビューで河野洋平が『SEALDsは一つの希望』と言っていました。特集ワイド:松田喬和のずばり聞きます 元衆院議長・河野洋平氏 - 毎日新聞




                                                   
いくら大人がダメだからと言って普通の大学生たちをあまり美化するのはどうかとも思いますが(笑)、彼の言ってることは『首相の解散権濫用』、『外国にもっと敬意をもって外交をしろ』など他も含めてほぼ、同感です。政治も経済も国際関係も複雑に絡まりあった時代、政治家も学者も答えなんか持ってません。まして 誰にでも判る『判りやすい答え』なんかあるはずないじゃないですか(笑)。だったら、一人一人がやるしかない。だから河野洋平は『SEALDsは一つの希望』と言ったのだ、と思います。それこそ我々一人一人が石橋湛山のように理想主義と現実主義を両方持てるよう努力しながら、目の前のことを一歩一歩良くしていくしかない。現実逃避やデマをまき散らすネトウヨやバカサヨはいい加減お払い箱にしないと(笑)。自分の頭で考え、判らないことは判らないと認められる勇気、精神的な強靭さ(知的体力)を持つことにしか希望はない、と改めて思いました。


ということで、今週も再稼働反対の官邸前抗議
今日の午後6時の気温は30度(笑)。台風前の東京は蒸し風呂のような暑さです。参加者は主催者発表で900人。また少しずつ活気が増してきたようにも思いました。
●毎度お馴染みの抗議風景




●今週初めに撤去された経産省前 脱原発テント跡。抗議の人が集まっていました。ボクは市民的不服従としては理解できるけど、あんまり威張るようなものでもないとも思います。

                                      
今日 鹿児島県の三田園知事が九電に川内原発の停止を申し入れました。知事に法的な停止権限はないことをとやかく言っている阿呆が居ます。でも川内はまともな避難道路もないのに再稼働をしている。住民の命を守ることが仕事である地元の首長として声を挙げるのは当然でしょう。沖縄の翁長知事もそうですが、これから三田園知事を一人にさせてはいけないと思うんですよ。地元の目先の経済だってあるから、もしかしたら何か妥協を図らなければいけない時もあるかもしれない。そう言う時 直ぐ日和ったとか言い出すバカがいる(笑)。困難に直面した時こそ市民の側も知事と一緒に現実的な見地に立てるか石橋湛山のように理想と現実主義を両立させて一歩でも前へ進む知恵があるかが、我々一人一人に問われてくると思います。

●生きていれば石橋湛山だって、こういう手を使ったかもしれない(笑)

●プラカードと秋の空