特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『Give Peace A Chance 未来を選び取る新宿東口街宣』+ドキュメンタリー2題『牡蠣工場』と『レストレポ 前哨基地Part1,Part2』

そろそろ暖かくなるかと思っていたのですが、週末は寒かったですね〜。日曜日は新宿へSEALDs+学者の会の街宣へ行ってきました。

この土日は新宿だけでなく横須賀など各地でデモや集会&抗議が行われました。NHKですら横須賀のデモを取り上げていました。土曜は中野で女子高生が主催したデモに数百人が参加したそうです。

                                            
新宿の街宣は午後2時からということでしたが気温は9度。寒かったです。SEALDsの集会だと政治家も含め、たいていの人が自分の言葉でしゃべろうとします。面白くて、結局最後までいました。でも寒かったなあ。
●抗議風景





                
開始30分前くらいにアルタ前へ行ったら、大勢の人が集まっていました。年配の人から若い人まで、でも官邸前より若い人が多いかな。いい感じです。開始10分前には久方振りの奥田君とUCD君が壇上に上がって新コールの練習を始めました。
●今日は新しいコールがあるとのことで事前に練習したのですが、UCD君みずから失敗しました(笑)。


                                  
●いつも幟を持ってる奴の悪口を言ってますが、創価大のこの幟はOK(笑)。個人の良心の声、立派ですよ。

                                               
                                          
街宣(集会)はわざわざ京都から来た『ママの会』代表の西郷さんの原発に抗議するスピーチから始まりました。

●いい表情です。香山リカ立教大教授。『震災当時 絆という言葉は大嫌いだった。ところが今 全国各地でヘイトスピーチに抗議する人たちを含め、色々な動きが起きている。私たちは本当の意味での『絆』を築きつつあるのではないか』とスピーチ。

●横湯中央大名誉教授(臨床心理学)のスピーチ。最近の引きこもりや登校拒否の人の増加について、戦争神経症候群(SHELL SHOCK)と同じことが起きているのではないかとスピーチしました。それは患者の問題と言うより社会が冷たいからではないか、と。成程〜。彼女は1歳の時、戦争に反対した父親が投獄されて亡くなったそうです。彼女は74歳だそうですが、今年 流行のトレンチコートを着て人前で訴える姿は素敵じゃないですか。


                     
●SEALDsの子のスピーチ。飾り気のない、正直な言葉こそ心を打ちます。特に2枚目、関西から来た寺田さん(ドキュメンタリーに出てた子ですね)の『私たち一人一人が変われるかどうかにかかっています』はその通りだと思います。嬉しかった。


                                                  
その後 野党の政治家がスピーチ。前回のエントリーで社民党の悪口を書きましたが(笑)、今日は吉田が良いことを言ってました。『明日の天気は変えられないけど、明日の政治は変えられる!』って。社民には変えられないかもしれませんが(笑)。この日は民主、社民、維新、共産が喋ったんですが、結局 志位和夫が野党のリーダーシップを取ってるんだと思いました。その中で唯一 この前合意した野党共闘の枠組みを説明するだけでなく衆院選の候補者一本化?にまで、公衆の前で言及していたからです。ボクは共産党は大嫌い、ビタ一文 信用してないですが、この顔ぶれの中では志位和夫は、大局を見ている点で政治家としてワンランク上、と思ったのは事実です。
民主党の小川、社民の吉田、維新の初鹿(維新。あと2週間でなくなってしまいますけど!と言ってました(笑))、志位和夫。今日の集会は志位の姿だけがNHK7時のニュースで流れました。集会のニュースはまるでアリバイのように8:45のニュースで流れました。





                       
その中で奥田君が大変良いことを言ってました。『昨年の今頃は野党共闘と言っても政治家には全く相手にされなかった。』、『昨年までは政治家は自分の党の事しか言わなかった。でも今日は彼らはみんなに向かって話しかけていませんか。まだまだ足りないけど、少しは良くなったんじゃないでしょうか』

●野党は共闘。右端の奥田君が音頭を取っているのに注目。


                                   
その後 スピーチしたのが落合恵子。彼女がSEALDsの集会に来るにはきっと色々あったんでしょうけど(笑)、そんなことを言っている場合じゃないです。良かったですよ。

                   
更におとといの国会前に続いて中野上智大教授がスピーチ。『へなちょこ野党を信用する必要はありません。彼らを使い倒し、監視して、働かせましょう。』

小林節、中野晃一、志位和夫小林節名誉教授は出番はなかったにも拘わらず、来ていました。

●この中にボクのマヌケ面もあります(笑)。

●上からの光景。SEALDsのtweetより

自衛隊南スーダンの駆けつけ警護の危険性を訴える佐藤学東大名誉教授。南スーダンなんか、どう考えてもやばいに決まっています。政府は何を考えてんだ。全然気が付かなかったのですが、今日もゴミ右翼が妨害に来ていたそうです。佐藤教授は敢えて、右翼をブロックしてくれた警察に感謝の言葉を述べ、皆の拍手を求めていました。さすが彼は、自分は能無しで何もできない癖に他人に『警察と闘え』とアジる辺見庸みたいな低能とは大違い、知性も責任感も違います。

今日のSEALDsのコールは昨年とは大幅に変わっています。一言で言うと『生活保障に税金使え』です。それは正しい。軍隊やオリンピックに金を使うより、『みんなの暮らしに税金使え』。アベノミクスの3年間で格差は広がったし、実質賃金は低下して生活は厳しくなりました。安保法案、憲法守れも大事ですけど、生活に根差した声を挙げていくことが多くの人の賛同を得られる方法だと思うからです。今日のスピーチでは野党側にはその発想が薄かったとは思いました。野党共闘で頭が一杯かもしれないですが、少しは頭使ってくれ。
●皆の暮らしに税金使え、保育園落ちたの私だ


自衛隊の命を守ろう

あと、もう一つ。『安倍はやめろ』は多くの人の賛同を得るうえでまずいんじゃないかと思っていたら、彼らも変えてきました。題して『安倍さん やめて。国会来ないで』(笑)。いいな。

最後は佐藤学教授や『ママの会』の西郷さんも壇上に上がって、トラックに載せてコール。やっているうちにグルーブ感が出てきてコーラーも参加者も多くの人がリズムにあわせて手を振っています。華やかで楽しい光景ですので、ぜひビデオを見てみてください。




今日の参加者は主催者発表で3500人。昨年はアルタ前に1万人集まったそうですが、この日もずいぶん多くの人が集まった印象がありました。ボクとしては賛同できるところが多い内容でした。最後に奥田君が『東京だけでなく、数人からの集会でもいいから全国各地で積み重ねていくことの重要性』を言ってました。『選挙へ行こう』のコールで締めくくり。さらに安保法の施行に抗議して、28日、29日に国会前で抗議をすることの予告がありました。行くっきゃないでしょう。

●NHK,共同通信

http://this.kiji.is/81682199826630134



と、言うことで、青山のイメージフォーラム想田和弘監督の新作『牡蠣工場』。この時期はアカデミー賞絡みで見たい作品が多くて、映画の感想が一杯溜まっているんです。
牡蠣の養殖が盛んな岡山県牛窓の漁村に密着、同地の風景を描いたドキュメンタリー。音楽もフェイクもない、観察対象にひたすら密着して記録する想田監督の『観察映画』です。

お話は漁港に屯する白い猫のアップから始まります。野良ではないんだけど、呑気にそこいら中をぶらついている、なかなか肉付きの良い猫です。この猫の存在は映画では格好のアクセントになっています。結構可愛い。

それから、牡蠣を養殖する漁民たちの様子が描かれます。沖合の筏に育った牡蠣を引き揚げ、陸揚げする。その牡蠣を牡蠣剥きの小屋へ持っていき、人手で一つ一つ殻を外して、出荷する。
ボクは牡蠣は大好きですが、こんなに人手をかけてやっているとは思わなかった。だいたい一つ剥くのに15秒くらいかかっています。剥いているのは漁師に、漁師たちの妻や家族、それに中国人研修生。1日にどれくらい剥くのか判りませんが、きつい仕事です。ボクも家で牡蠣を剥いたことがあります。道具の問題もあるけど1個剥くのに5分くらいかかりました(笑)。これを秋から春までの約6か月繰り返す。
●これが牡蠣工場の光景です。バケツ一杯になるまで、延々と牡蠣の殻剥きを繰り返す。

漁港に若い人は殆ど見かけません。ただでさえ人口が減っているのに加えて、漁師の息子さんたちも後を継がないからです。勢い外国人の人手に頼ることになります。牛窓には中国人が大勢来ています。きっと中国の沿海部ではなく農村部の人たちなんだろうなあ。最初はベトナムの人も受け入れたけど、寒くてダメだったそうです。

彼らは『研修生』という名目でやってきています。その外国人研修制度は度々起きる人権侵害などで米国務省からも『人身売買、強制労働』と指摘されています。
『この制度は本来、外国人労働者の基本的な産業上の技能・技術を育成することを目的としていたが、むしろ臨時労働者事業となった。「実習」期間中、多くの移住労働者は、本来の目的である技能の教授や育成は行われない仕事に従事させられ、中には依然として強制労働の状態に置かれている者もいた。』http://japanese.japan.usembassy.gov/j/p/tpj-20150827-01.html
技術を教えると言う名目で時給300円という話しも聞きますから、その不平等さは派遣社員どころではありません。

                                                
しかし日本の農業も漁業もこの制度がないと立ち行かないのかもしれません。事業主は高齢化し、若い人はなかなか入ってこない。かといって規制をかけて企業にも参入させないですから産業としては立ち枯れていきます。そうなってくると奴隷制度と疑われるような制度を使って、ムリな延命措置を取らざるを得ない。TPP反対で『日本の農業守れ』とか言ってる奴の話を聞くと、ボクはかなりムッとします。収入の半分が補助金で、しかも奴隷労働と疑われるような制度を活用しているくせに、そんなことを言う資格があるのでしょうか? ボクだって日本の第1次産業には頑張ってほしいと思いますが、そういう制度に頼らなければやっていけないとしたら、TPP云々より、まず産業の成り立ち自体を根本から考え直さなくてはいけないのではないでしょうか




映画の中で漁民たちは住み込みで働いている中国人研修生を名前ではなく、チャイナさんと呼びます。人間扱いしてない感じもして、イヤな感じです。概して女性は比較的 彼らを受け入れているけれど、男性のなかには何となく壁を作っている人もいるように見えます。実際 漁民たちの間でもゴミ捨てなど生活習慣が全く違う中国人に対して違和感を述べる人もいます。また漁民たちは広島の牡蠣工場で実習生が殺人事件を起こした話も気にしています。やはり怖さや後ろめたさを感じる人もいるのでしょう。
ですが、それだけではありません。作業になると日本人も研修生も同じ場所に座って同じ作業をやります。これは日本の良いところです。自分の仕事が明確に定義されている職務給ベースの欧米人だったら、彼らにやらせるだけでしょう。日本のように皆が同じ場所で同じ作業をするというのは仲間意識も生まれるかもしれません。でも賃金が全く違うわけですから、余計たちが悪いか?。少なくともこの映画で見るなかでは、作業はきついけれど皆平等だし、奴隷労働という感じはしません。ただし技術を習得すると言う感じはまったくなく、制度の趣旨に反して安価な労働力として使っているだけ、というのは間違いありません。


映画では渡辺さんという漁民が出てきます。彼は南三陸で牡蠣を作っていました。小さい子供を4人抱えた彼は、放射能が残っている土地で子育てをしたくなくて瀬戸内海へ引っ越し、また牡蠣を養殖しています。彼の元にも中国人研修生がやってきます。なんとも複雑な気分です。渡辺さんは中国人研修生を住まわせるために庭にワンルームのプレハブを設置します(料金は半年で約60万円)。家族ぐるみで中国人研修生を迎え、一緒に作業をします。渡辺さんに蒸してもらった、初めて食べる蒸し牡蠣に彼らは大喜びです。
●渡辺さんのところへ来た中国の『研修生』。海とは場違いの格好ですが、この恰好で作業をします。

                                 
漁港には他にも中国から来た若い男女が居ます。若くて元気な中国人が大勢いると、高齢者中心の漁民たちはどんなことを感じるのでしょうか。それにしても双方まったく言葉は通じない中でのコミュニケーションは大変です。

映画を観ていて牡蠣剥きは大変さは想像以上に感じました。自分が食べている牡蠣はこんな感じでやっているんだろうか。ですが、作業の非効率性も感じます。素人のボクが見たって、工程の設計など改善できそうなところは幾つもあるんです。超きつい作業である牡蠣剥きだって、企業が本気でやれば自動化、ロボット化できる部分はかなりあるはず。だけど漁民の人たちはそこに投資する資金も技術もない。改善意欲の欠如や作業者の高齢化も相まって 昔からの方法で延々続けているのでしょうか。
                                            
企業などの新規参入を許して効率化するのが良いのか、延々今の非効率的な労働を続けて後継者不足で産業自体がなくなっていくのが良いのか、難しい問題です。漁民の人たちも牡蠣工場の工員さんになるか、今のように自営業でいるか。どちらが良いんでしょうか。このことは牡蠣工場だけでなく、他の第1次産業、町工場や商店にも重なる問題でもあるし、消費者にとっての問題でもあります。
●海の男の顔に刻まれた深い皺

                                                           
上映時間2時間20分は少し長いけど、丸々太った猫が呑気に闊歩する田舎の漁港にもやってきたグローバリゼーションのお話は考えさせられます。こうやって身近なところから描かれると、『グローバリゼーションがどう』とか『新自由主義がどう』など、ご立派な、だけど現実離れした『大文字の言葉』で思考停止しないで済みます。それは『観察映画』の良いところです。他人事ではない、考えさせられる映画でした。面白かったです。



もう一つは渋谷で『レストレポ前哨基地1,2レストレポ ~アフガニスタンで戦う兵士たちの記録~|番組紹介|ナショナル ジオグラフィック (TV)

イラク戦争の最激戦地に設置された米軍の前線基地の1年を監督が兵士と共同生活をして描いたもの


サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門のグランプリ受賞作品です。映画はパート1とパート2、それぞれ約90分の作品に分かれています。なぜか。1は2名の共同監督の作品なのですが、監督の一人は1を撮影後 戦場で亡くなってしまったからです。ちなみに『レストレポ』とは現地に赴任して間もなく戦死した衛生兵の名前です。基地には彼の名前が付きました。
●これがレストレポ基地


アフガニスタンのコレンガル渓谷はCNNが『アフガン戦争の最激戦地』と呼んだ場所。パキスタンとの国境近くの渓谷地帯でタリバンの補給路にもなっています。米軍はそこに前哨基地を設置します。最激戦地と言っても24時間ずっと撃ちあいをしているわけではありません。1日に数回 敵部隊が攻撃を仕掛けてくるのです。24時間いつ襲ってくるか判らないのですから、兵士にとっては文字通り恐怖です。
●生き残るためには相手を撃つしかありません。


                                                
映っているのは本当の戦場です。銃声ってこういう音がするのか、と思わず聞き入ってしまいます。人の命を奪うにふさわしい、乾いた音です。冒頭 監督が同乗した装甲車が爆弾攻撃を受けるシーンがあります。鋭い爆裂音で観客席のボクも思わず身がすくみます。ここにあるのは緊張と文字通りの恐怖、です。米軍兵士が帰国後 PTSDに係るというのは良くわかります。かからないほうがおかしい、とすら思いました。

米軍兵士は時折 近隣の村にパトロールを出かけます。米軍の行動範囲を拡げていくことでタリバンの活動を制限する狙いです。米軍は村人に食料を分けたり、定期的にミーティングを行って彼らの歓心を買おうとします。村人のほうは面従腹背ですね。当たり前です。米軍もタリバンもどちらも武器を持っています。村人たちは双方の言うことを聞かざるを得ません。まして米軍の空爆で子供を含めて村人に損害も出ています。ヘリコプターや攻撃機誤爆で犠牲になった子供の姿や壊された家を画面はしっかりとらえています。米軍は補償はしますけど、村人たちは内心どう思っているかは想像に難くありません。

実際の戦闘シーンもこの目ではっきり見ることができます。本当の銃弾の音って始めて聞きました。死とはあっさりしたものです。まるで天気の移り変わりと同じように、死は突然 日常の中に舞い落ちてくる。タリバンは山々を軽々と駆け回ります。それに対する重装備を背負った米軍兵。米軍はタクシーを呼ぶようにヘリだの攻撃機を呼んで、援護射撃を受けることはできます。火力に圧倒的に差がありますから、タリバンを一時的に追っ払うことは可能です。だけど隙をついて、また襲ってくる。きりがありません。こんな戦いを続けていれば兵士たちは消耗していきます。しかも命がけで闘っても誰からも感謝もされない。安倍晋三自衛隊にこんなことをしろと言うのでしょうか??●住民たちの村。米軍兵士は度々訪れて彼らと交流を持ちます。



兵士たちの装備や戦い方を見ていれば、コスト的に成り立たないのが良くわかります。米軍は武器も通信装置も山ほど持っています。タリバンの安そうなライフルと米軍のごついライフル、値段はどれだけ違うんでしょうか。ヘリや攻撃機のコストだってすごいでしょう。また米軍は山の上の基地に自家発電機を置いてクーラーを何台も動かしています。一方タリバンは着の身着のままとライフルだけ。いくらアメリカが世界最大の経済・軍事大国でもこんなやり方で長期間戦っていれば、いずれ財政は大変なことになる。いつまでもこんなことをやっていられるわけがありません旧ソ連の崩壊の一因はアフガン戦争のコストだとも言われています。


1年の任期を終えて帰国する米兵たちの嬉しそうなこと。同じ隊の仲間の絆は深く結ばれています。そのレストレポ基地は2年後に廃棄されます。そこで映画は終わります。
                                       
本当の戦場の光景は考えさせられるものでした。地獄のような世界ですけど、ホラーみたいな感じでもない。日常の中に突然 死がやってくる。そういう思いをしながら戦闘をしていても、勝利もなければ意味もありません。世界で最も強くて金持ちで労働環境の良い米軍の兵士でさえも、こうなるわけです。
本当の戦場の光景を見るというだけでも得難い体験でした。1,2、ともそれぞれ90分で計3時間、まったく退屈しなかったです。