特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

 読書『「戦後保守」は終わったのか』と0115 再稼働反対!首相官邸前抗議

まず始めに、新年早々 マスコミが晒した日本の恥のお話です。ツイート&記事を貼りつけます(最後はおまけですが、これがメインでしょうか)。
●13日の日経1面『春秋』、ボウイで炎上。「ウルトラマンをまねたような扮装で歌い踊る。子供だましと言えばそれまでだが」。無知と無教養をさらけ出した日経。
日経新聞・社説が炎上!デヴィッド・ボウイを「子供騙しの特撮扮装で日本のサブカルを世界に」などと酷評 - NAVER まとめ

共同通信の恥ずかしいツイートにも非難殺到。キャメロン首相が直ぐ弔辞を出したのすら知らなかったようです。 

                                        
●それらとは対照的なドイツ外務省のツイート。ちゃんと物事の意味を理解しています。『さようなら、デヴィッド・ボウイベルリンの壁を壊すのを手伝ってくれてありがとう。』

阪急京都線に乗るボウイ。ベルリンの壁をテーマにした『HEROES』を作ったベルリンから京都に移り住んだ頃でしょう。


                      
さて、今週の株価急落はびっくりです。年初から2000円近くも下がりました。原因は中国の株価急落のせいとか、原油安で産油国のファンドが資金を引き揚げているから、とか色々言われていますが、真相はどうなんでしょうか。一般には今年は選挙があるから、それまでは株価は上がっていくだろう、いや政府が株価対策をやって(無理やり)上げるだろう、と言われていました(笑)。実際アベノミクスの唯一の成果が株価ですから。
これからどうなるかは判りませんけど、これでアベノミクスは名実ともに終わった(笑)感じです。こういう時こそ、野党が経済政策を唱えて旗を挙げるチャンスなんだけどなあ。99%のための政治(もしくは若い人の活性化)で景気回復(=再分配を進めて消費を増やす)、そういう旗を掲げるだけでも世の中の雰囲気は明るくなって、だいぶ違うと思うんだけどなあ。未だに共闘すらできない野党の体たらくじゃ、ダメかなあ(笑)。
●日本の現状を的確に表現しているtweet。心の底から同感です。




それにも絡みますが、今回は冬休みに読んだなかで面白かった本のことをもう一つ、書こうと思います。
『「戦後保守」は終わったのか』。日本の戦後政治を動かしてきた中道保守がなぜ衰退してしまったのか、これからどうしていけばいいのか、ということを与野党の政治家の証言を基に論じた本です。

「戦後保守」は終わったのか 自民党政治の危機 (角川新書)

「戦後保守」は終わったのか 自民党政治の危機 (角川新書)

書いたのは船橋洋一元朝日新聞主筆)を中心としたシンクタンク、日本再建イニシアティヴ。『民主党政権 失敗の検証』や『吉田昌郎の遺言 吉田証言に見る福島原発危機』、『カウントダウン メルトダウン』などの本で、リベラル且つ現実的な提言をしています。船橋洋一は財界にも呼ばれて意見を聞かれるような、いわゆる『中道リベラル』ですが、この人はブルース・スプリングスティーンのファンみたいなので(笑)、根本的な価値観はある程度信頼しているのです(笑)。
●なぜ民主党がダメだったのか、絡んだ糸をほぐした良い本でした。菅直人が悪いとか小沢が悪いとか、そんなことで片づけて済むような話ではありません。
民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)

民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)

「戦後保守」は終わったのか』は戦後政治の系譜をたどりながら、こんなことを論じています。
・60年代安保で岸が退陣して以降、日本の戦後政治を実質的に動かしてきたのは中道保守だった。その大きな武器となったのは高度成長を背景とした国民への利益再配分だった。それが田中政治で頂点に達した。
・田中以降も経済優先、平和志向の中道保守政治が続いたが、高度成長も終了し財政も悪化する中 再配分が難しくなってきた。また冷戦の終結で対外環境も変化した。

                                                                           
ボクは自民党政治には批判的です。でも、この本を読んで「池田、佐藤、田中、大平、宮沢、橋本という系譜の『中道保守』が結局は日本を発展させてきたし、維持してきた」と思いました。もちろん彼らのやり方は利益誘導政治だったり、経済至上主義だったり、外交はアメリカの意のままだったり、福祉を軽視したり、原発を進めてきたり、問題点は大アリです。だけど社会党や他の連中はカウンターとしての意義はあったにしろ、主体的には大したことはできなかったことを考えれば、現実『戦争はしなかった』、『70年代以降は多少なりとも福祉政策・再配分を行った』という点において、彼らの功績は認めざるを得ません。
中道保守の代表格、大平元首相はこんなことを言っているそうです。恥ずかしながら、こんな見識のある人だとは知りませんでした。
『過去を捨象すると革命になり、未来を捨象すると反動になる。現在は過去と未来の緊張したバランスの中にあって、革命であっても困るし、反動であってもいけない。未来と過去が緊張したバランスの中にあるよう努めるのが健全な保守だ』
『完全な存在は神だけで、不完全な存在である人間は、長い時間に堪えた歴史に潜む英知をつかむべきだ』
 
さらに中道保守の経済政策については、村山内閣から小泉まで史上最長の任期を務めた官房副長官(官僚のトップ)古川貞二郎氏がこう言っています。
イデオロギー的なアプローチは取らないけれど、所得の分配についてしっかり国民サイドに行き渡るよう配慮する経済政策』

トップの哲学にしろ、経済政策にしろ、安倍晋三とはあまりにもレベルが違う、違いすぎます。
                                                                      
ただし、中道保守にも決定的な問題点があります。この本の第7章で述べられているのですが、中道保守は男女平等という面ではあまりにも無策だった。もちろん、それはタカ派も革新勢力も基本的には同じなので中道保守だけの責任ではありませんが、その結果が現在の少子高齢化と将来の日本の衰退を必然的なものにしていることを考えれば致命的な失政だったとも言えるのかもしれません。

                                              
まとめとなる最終章で、昨年SEALDsの集会でも度々マイクを取った上智中野晃一教授は90年代以降 中道保守が弱体化した原因として以下のようなことを挙げています。

・戦争体験世代の政治家が引退し、富裕で特権的な環境で育った世襲議員を多く含む戦後世代へ代替わりした。
・冷戦の終結により階級対立が弛緩し、革新陣営が衰退、また肥大化した保守陣営が分裂多党化し、政治の座標が右寄りになった。
バブル経済が崩壊し、従来中道保守が行ってきた利益誘導政治の限界が露呈し、経済のグローバル化を加速させる構造改革路線が進められた
小選挙区比例代表並立制で派閥を弱体化させ、党組織内の集権化が行われた。同時に従来のコンセンサスの形成より、リーダーシップの発揮が強調されるようになった。
・アジア内での経済的な相互依存が強まると同時に、中国の経済力・軍事力が増大し、韓国の外交戦略も変化し、対外的な強硬姿勢を政権強化に用いようとする政治手法が目立つようになり、TVやネットによる世論の分極化傾向と相乗作用を起こしている。
・ただし中道保守の衰退は必ずしも必然的なものでもなく、2000年代になっても福田康夫民主党との合同や野田の自民との合議など中道保守を再興しようとした試みもあった。
                                                                                                       
さらに中野教授は中道保守が再生する可能性として3つのシナリオと可能性を挙げています。
1.巨大与党の右左への分裂
⇒与党内のリベラルが弱すぎてムリ
2.民主などが中心となっての中道保守政党の再生
⇒民主は連合しか基盤がなく、他の野党はそれすらもなく、現実には難しい
3.かっての革新勢力とは異なる形でリベラルな勢力が一定程度復活し、それが各政党内のリベラル勢力や保守陣営を左寄りに引き戻して中道勢力を形成する
⇒著しく困難だが、可能性があるのはこれだけではないか


及ばずながらも盛り上がりを見せた昨年の国会前のことを考えれば、確かに3つのシナリオの中では、3の可能性が最も高そうには見えます。ただし問題なのは『かっての革新勢力とは違う形で』という点です。既存の左翼勢力は組合も含めて、政権を運営するための知識も論理も能力もないのは、今や普通の人なら誰でも判っていると思います。社民党なんか今度の選挙で政党要件を喪失するんじゃないですか。まして過激派とかカルトみたいな連中(笑)は単に能力がないだけでなく、普通の人たちの参加を阻害する要因にしかならないから、排除していくしかないネトウヨと一緒で言葉が通じない連中は議論ができませんし、議論ができない相手とは民主主義は共有できない(笑)。それが現実、です。

                     
今のような成熟社会で世の中を動かすには、『中流層を中心とした市井の人たちを如何に多く引き込んでいくか』、ということなんだと思います。そのための路線を『リベラル』と呼ぶのか『中道保守』と呼べばいいのか、ボクにはわかりませんが、 貧富の差が極端に開かない、自由と平和を希求する、ということを共通項として市民がもっと声を挙げ、リベラル層を再興していく、それしか活路はなさそうな気がします。政党にしろ、組合にしろ、(プロ)市民運動にしろ、既存の組織はもはや市民の側が利用するだけの存在価値しかないと思います。利用すらできなければ、ポイすればいいだけです(笑)。
ということで、現実的に政治を考えるうえで、この本は非常に勉強になりました。
●野党の共闘情況。1人区で野党共闘決定が水色(熊本)、共闘の兆しアリが黄色、まだの地域がピンク。画像を大きくするにはurlをクリック!

                                                  
と言うことで、今週も官邸前抗議へ。
今週はとにかく寒かったですが、今日の東京午後6時の温度は7度。北海道や北陸の人から見ると大したことないんでしょうけど、ボクは寒い〜。だけど黙ってると再稼働は一層加速されちゃうだろうからなあ。免震棟は作らない、ケーブルは難燃性にしない、まともな避難計画は立てない(立てられないんだろうけど)、再稼働するにしたって、そんないい加減なやり方でいいんでしょうか。
●抗議風景










                                         
今日の参加者は主催者発表で1100人。これだけ寒くても人数は先週とほぼ同じです。ボクもそうだけど、何としても反対の声を残しておかなければいけない、と思っている人たちでしょう。この前 判決が出た高浜3号機は今月末再稼働、4号機は2月末再稼働と言われています。高浜でなんかあっても関東は大丈夫だろうから知ったこっちゃないけど、関西はかなりやばいでしょう。いいのかなあ(笑)。