特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『安全保障関連法案に反対する学生と学者による街宣行動@新宿伊勢丹前 歩行者天国』と映画『彼は秘密の女ともだち』

週末の日曜日 新宿の歩行者天国でSEALDsの諸君と学者の会が街宣をやる、と言うので行ってきました。そろそろ強行採決の声が聞こえてくる中で、自分の出来ることはやっておきたいんです。午後2時過ぎに新宿の伊勢丹前へ行くと人は数百人程度の集まりでした。少ないなあ、仕方ないか、と思ったのですが、良く考えたらスタートは3時から、でした(笑)。1時間前からこんなに集まっていたわけです(笑)。
伊勢丹前@午後2時30分:ボクも含めて、皆とっくに仕上がってます(笑)




         
待っている間に雨が降ってきましたが、人はどんどん集まってきます。杞憂でした。新宿の伊勢丹と言うと東京のデパート1番店です。大阪で言ったら阪急梅田、広島で言ったらそごう、そんな感じです(笑)。あとで確認したら伊勢丹からビックロまで人がぎっしり押しかけていました。参加者は主催者発表で12,000人!。新宿でこんな抗議が行われたのは2012年に素人の乱が警察をだまくらかしてアルタ前を占拠して以来、と、言うか70年安保で新宿駅が焼き討ちにあって以来、じゃないでしょうか(笑)。新宿の街頭の上を空撮のヘリコプターが低空飛行しているのも初めて見る光景です。ボクが確認しただけでもTVはNHK,フジ、TBS,テレビ東京が来ていました。NHKですら7時のニュースで流しましたからね。なんか、おっかなびっくりな感じでしたが(笑)。

創価学会の人も!

                   
●パノラマ画像:最近はこういうものもあるんですね。ボクも写ってます。Spherical Image | RICOH THETA

●抗議風景






●ビルに登って撮った人も居ます。2枚目は空撮ですね



●コール光景


●犬のお尻:これだけでもどういう客層が集まったか判るでしょ。


この日は新宿だけじゃなく、福岡も青森も盛り上がったそうじゃないですか。日本中色んな都市で抗議の意思表示がされたんですね。
福岡:

青森:●TBS夕方5時半のニュース

●朝日デジタル版:動画付
http://www.asahi.com/articles/ASH965J3TH96UQIP00V.html
                                            
スピーチで日本学術会議の副会長という人が『国会の議席数は与党が有利だけど、国会議員たちにこの法案に賛成したら次の選挙では戻ってこれないぞ、と国民が意思表示をすることは充分合理的な行動だと思います。』と言ってました。その通りです。デモより選挙行けとか言ってるバカが居ますけど、そんなの当たり前だって。安保法案にしろ、原発にしろ、今の議会は小選挙区制とかいうくだらないシステムのせいで民意を反映していない、要するに間接民主主義に欠陥があるから、わざわざこんなことをやってるんですよ。間接民主主義を補完する為に声を挙げてるんですよ。
                  
今週の金曜9月11日には8・30と同様に『総がかり行動』とSEALDsが一緒になって大規模抗議をやるそうです。ボクも自分が出来ることをやり続けるつもりです。

●おまけ:獄中のネルソン・マンデラ氏らの事を歌ったピーター・ゲイブリエルの『Wall Flower』の締めくくりの歌詞はボクにとっては啓示みたいなものなんです
You may disappear
But You're not forgotten here
And 'I'll say to you
And I'll do what I can do



さて、この映画はとっておきです!新宿で映画『彼は秘密の女ともだち』(原題はThe New Girl Friend)彼は秘密の女ともだち -2016年2月17日(水)Blu-ray & DVD発売!-

主人公クレールはエリート社員の夫と二人暮らし。子供はまだいない。幼少時からの親友ローラを亡くしたばかりの彼女は残されたローラの夫のダヴィッドと生まれて間もない娘の様子を見に行く。そこにはローラの服を着て赤ん坊をあやすダヴィッドの姿があった。『女性の格好をしたい』と打ち明けられたクレールは当惑するが、彼をヴィルジニアと名付けて友人関係を深めていく。ダヴィッドの女装癖を隠すために夫にウソをつきながら密会を重ねていくクレールだが、次第に彼女の心の中に変化が起きていく

フランス映画には珍しく、お洒落っぽい恋愛映画としてフランソワ・オゾン監督の作品は日本でも頻繁に公開されていますが、相性が悪いのかあんまり見に行きたいと思いませんでした。彼が良く主役に起用してたシャーロット・ランプリングとか綺麗だけど病的な感じがしてボクはあんまり好きじゃないんです。この映画も最初は半信半疑でした。


フランス社会は生まれる子供の半分以上が婚外子だそうですし、結婚以外の婚姻契約PACSもあるし、同性愛の結婚も認められている。性的マイノリティに日本よりは寛容なんだと思います。主人公は自立した女性だし、無知な偏見にとらわれるような人間ではありません。それでも、お話の前半部、主人公はダヴィッドの女装癖に当惑しつづけます。ダヴィッドは女性と結婚したし子供もいる。女装はゲイというわけでもないし、判りにくい。ボクだって同性愛では驚かないし受け入れられますが、女装というのはどうとらえればいいか迷うところがあります。
                                       
日本でも『東大話法』で有名な東大教授の安冨歩氏が女装を宣言しました。勇気があるという以前に自身にとっては切実な問題なんでしょう。もちろん個人の自由ですから、他人がとやかく言うことではありません。
●いずれ感想を書きますが、安冨氏の近著、現代の我々の問題に直結する傑作でした。

●自身の女装癖を主人公に打ち明けるダヴィッド(右)(『タイピスト!』に出ていたロマン・デュリス

                                                  
主人公たちが暮らす世界は上流階級の下、と言う感じでしょうか。インテリであるだけでなく、敷地の中に川が流れているような別荘もある。彼女も勿論フルタイムで働いていますが、普段の日常会話で遺産の話が出てくるような家庭です。ピケティが現代の大きな問題として相続財産のことを言うのも良くわかります(笑)。ただ、そういう世界のことはあんまり見たことがないので、興味深かったです。紺と白だけのコーディネイトなど地味だけど趣味の良い服を着ている主人公たちの姿はライフスタイル・カタログとしても非常に面白かった。

                                                  
この監督の特徴なんだと思いますが、主人公のクレールを描く視線はユニークで面白かったです。彼女のキャラクターはインテリだけど保守的な常識人です。画面に映る彼女の姿もスクエアで、彫刻のように端正と言っても良い。だけど時折 情熱的な内面があふれ出すことがあります。直接的なシーンだけでなく、テニスのシーンなどで主人公の感情的な面が出てくるところなど、上手いなあと思いました。人間ってそんなものだとボクも思います。どんなにクールな人でも時折、こぼれるように感情が溢れてくる。それが人間らしさなんだと。
●主人公のアナイス・ドゥ―ムスティエ:この人、良いです。次回作は『私たちの宣戦布告』の監督の新作『Marguerite et Julien』だそうで、楽しみ。今月末にも主演作『バード・ピープル』が公開

                                                                                                
ダヴィッドはむづかる赤ん坊をあやしながら、昔から自分は女性になりたかったと主人公に告白します。主人公は理解に苦しむし、彼のことを自分の夫や身の回りの人たちに打ち明けることができません。そこは多くの観客の気持ちとも重なるでしょう。だけど二人だけの秘密がやがて連帯感に代わり、それ以上の感情に代わっていきます。観客も次第にダヴィッドの気持ちを理解できるようになってきます。クレールはダヴィッドに化粧の仕方を教え、買い物に付き合い、脱毛の仕方も教えます。そんな彼?と触れ合っていくことで、クレールは長年 自分の心の奥底に眠っていた感情を見つけだします。そして観客も必然的に、自分自身に向き合う、という体験をさせられるのです。
                                                                                                     
前半部は奇想天外だけど気楽なコメディだと思ってみていましたが、お話は次第に人間賛歌に変わっていきます。自身がゲイでもある監督は、この作品の中で人間はどこまで遠くへ行けるのかを描くことに挑戦しているかのようです。その過程の中で人間と言う存在自体を高らかに讃えているんです。ゲイだろうか異性愛者だろうがトランスジェンダーだろうが人間の価値には何の関係もないことをきちんと描いたエンディングもお見事です。ネタバレになるので詳しいことをかけないのをお許しください。舐めてかかっていたんですが、本当に素晴らしい作品でした。DVDが出たら、買っちゃうと思います。