先週 民主党がうちわや観劇会の件を追及していたのは、国会で他に言うことないのかよ、という気がしないでもありませんでした。だが『うちわが討議資料』とシラを切ったり、2000万円以上ものカネの出入りを把握できない人間に大臣の資格がないのも事実です。
小渕は、一からやり直したいとか言ってたが、別にやり直さなくて結構だよ(笑)。まして松島のように見え透いた嘘を強弁する人間が法務大臣なんて耳を疑います。公職選挙法に違反しているのだったら、大臣どころか議員を辞めないのが不思議でなりません。ただリーダーシップという面では小渕は当初から言い訳せずに自分の責任を認めたのは立派でした。それと比べたら記者会見で「目くらましとして刺されたという無念さはないか?」という可能性はあっても根拠のない質問をした自称ジャーナリストの田中龍作は相変わらず詐欺師です。そうやって陰謀論を繰り広げて飯を食ってるんだろうけど、この男のように反対することを商売にしている連中の存在は、この国で原発に関するまともな議論が行われないことを助長していると思いますね。
それより観劇会みたいなものにつられる有権者がまだ存在していることの方が驚きでした。奄美大島ならともかく、東京に近い群馬あたりがそうだとは思わなかったが、ある種のコミュニティというものはそういう繋がりの積み重ねで出来上がっているらしい。結局 事の本質は国民がアホだから、ということになるんでしょうけど、そこはなかなか変えられるものでもない。ボク個人は他人とのベタベタした付き合いなんて死んでも嫌だし、そういうものに対してどう対処したらいいかすらわかりません。今読んでいる『フランクリン・ローズベルト』でも戦時中の日系人の強制収容はローズベルト自身は反対だったのに世論に押されてやむなく実行したことが書かれています。残念ながらポピュリズムもまた、民主主義の一つの形ではある。経営はアートであると言った経営学者がいるけれど、人を動かすという点では政治もまた、そうなんでしょう。
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内閣支持率48.1%に低下 共同通信調べ :日本経済新聞
世の中は理屈や理念だけでは動かないのは事実なんでしょう。だが理屈や理念がなければ動かないのもまた、真実でもあります。
さて、『中年の危機』という言葉があります。40歳くらいになったとき、自分はこのままで良いのだろうかと悩み始め、暴走したり、鬱になったりするという状態の事らしい。ボクも多少は身に覚えがあるけれど(笑)、日々の時の流れはそんなことすら流し去ってしまいました。
更に『老年の危機』という言葉があるかどうか知らないけれど(笑)、これから歳を取っていったとき自分の人生はこれでよかったのか、と真剣に思い悩む時はなんども来るだろうと思います。この映画はそういうことを描いた作品です。
渋谷で映画『リスボンに誘われて』
世界で400万部を売ったというベストセラー小説『リスボンへの夜行列車』を映画化したもの。邦題があまりにも格好悪いのでスルー予定でしたが、見に行って良かった〜。
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●それまでの人生を捨てるかのように列車に乗り込む主人公
ジェレミー・アイアンズの演じる老教師のキャラクターがいいです。学究肌で社交性がない57歳。妻には5年前に去られた。研究生活にいそしんできた彼だが、自分の人生はこれでよいのかと考え始めている。自分の思う通りやってきたわけでもなく、何かを為したわけでもない、世俗と妥協しながら何とかやってきた平凡な人生。やってきた、ではなく、やり過ごしてきた人生かも。『妻に、私はつまらない人間、と言われた』という主人公のセリフがあったが、そういうところ、ボクもすごく共感できます(笑)。
●作家の足跡を訪ねてリスボンを彷徨う主人公
●リスボンでも作家の本を読みふける主人公
スイスとは対照的なリスボンの陽光のもとで、その、プラドという作家の足跡を主人公は追っていきます。70年代 独裁政権下に生きた作家は医師でもあり、独裁政権を倒そうとするレジスタンスに加わっていました。
●独裁政権下、レジスタンスに加わる作家(左)
映画で描かれるリスボンの街にはやたらと分かれ道が出てきます。その中で主人公がプラドの足跡を追う過程が、主人公が変わっていく過程ともシンクロする構造になっています。恥ずかしながらポルトガルの歴史は余り知らなかったです。同国は70年代までファシストの独裁政権下にあり、民衆の無血革命(カーネーション革命)で倒されたそうです。
医師でもある作家は冷血で知られた秘密警察の幹部が民衆に襲われて瀕死の状態だったのを的確な処置を施して命を助ける。そのことで彼はレジスタンスの中で難しい立場に置かれます。そんなある日 彼は警察・軍の内通者の名前・住所を丸暗記しているという美しい女性に出会うのです。
秘密警察の極悪非道な拷問や弾圧にさらされながら、命がけで革命運動に加わった若者たちの姿は美しいです。作家と恋に落ちるヒロインは更に美しい(笑)。だって『オーケストラ』の美人バイオリニスト役のメラニー・ロランだもの。
●世界で最も美しいかもしれないメラニー・ロランさま(笑)。
彼らが追手から逃れて、一晩中走ってたどり着いたフィニステレ岬は名前には聞いていたが、実に美しいところでした。そこで彼らが敢えて決別するシーンも実に美しかった。
そして謎を解き明かした主人公も決別の時を迎える。
●主人公はリスボンで眼科医と知り合う。
若い頃の焼けるような日々も体験したこともなく、平凡なまま中年の日々を迎え、そして老いようとしている主人公の姿はボクの姿でもあります。この映画はエンターテイメントだけど、ある種の切実さが底流に流れている。憧憬が美しければ美しいほど、日常と対比したくなる。そんな想いは誰にだってあるだろう。
やがて主人公は大事なことに気が付く。その思いがけないラストシーンの後味は苦いけれど前途への希望が漂っている。美しいリスボンの光景とロマンティックな筋書き、だけど大人にしかわからない暗喩に溢れた映画。地味〜なプロモーションだったわりにロングランヒットを続けているのが良くわかる、圧倒的な秀作でした。