特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

身体を使った映画2題(笑)。『Tokyo Tribe』と『ママはレスリング・クイーン』

昨日 ちょっと考えさせられたのが、毎日新聞に出ていたこの記事だ。
http://senkyo.mainichi.jp/news/20140921k0000e010157000c.html
内容は『沖縄知事選で仮に辺野古移設反対の知事が当選としても、いったん出した埋め立て許可を取り消すのは法的に難しいかもしれない』というものだ。
いったん埋め立て許可を出してしまった辺野古移転を止める法的な根拠を探すのが難しい、法律には取り消し規定がない、という趣旨の記事は先週 朝日にも出ていたから、多分そうなんだと思う。辺野古移設反対を唱えている翁長氏も具体策については今いち歯切れが悪いそうだ。http://www.asahi.com/articles/DA3S11350230.html

行政手続きの実務的なことは良くわからないけれど、これはもっとまじめに考えなければいけない問題だと思う。辺野古移設反対、沖縄の基地を減らせ、と声高に唱えるだけでは無責任だ。普天間基地はボクも行ったことあるけど、確かに住宅地の近くにあんな軍事基地があるのは酷い。事故のリスクもそうだが、海兵隊ハリアーの騒音の酷さは田舎の暴走族だって裸足で逃げ出して土下座するだろう(笑)。普天間は早く止めなければならない。それは仲井真氏も翁長氏も一致しているようだ。
それを辺野古へ持っていくか、あくまでも県内移設を拒否して他県へ持っていくか。仲井真氏が表向き言っているように普天間を止めるのを優先させるのも一理ないわけではない。勿論 翁長氏が言うように県外移設を目指していくのは本筋ではあるけれど。
これはそう簡単に言えない。まして法的な問題があるのなら辺野古を拒否するにしても、粘り強く手続き上の問題点を探すなり、法廷闘争をやっていくしかないだろう辺野古移設を止めるのは翁長氏が当選しても簡単な話ではない。さまざまな利害関係者のバランスを取りながら妥協を重ねて一歩一歩進んで行くしかないのではないか。翁長氏が歯切れが悪いのは当然だ。こういう態度はTVのワイドショー向けではないけれど、現実はTVとは違うのだ。
     
                                                      
結局 この問題は当事者である沖縄の人が粘り強く意思を表明していくしかないと思う。辺野古移設に反対するにしても、それを実現するには知事を選ぶだけでなく、投票した一人一人が選挙の後もリーダーを粘り強く支え続けることができるかどうかにかかっている。選挙でリーダーを選ぶだけであとはお任せ、で解決するような問題ではない。川内原発もそうだ。老人や障碍者など要介護者は置き去り、という避難計画で本当に良いのかどうか。それを判断するのは地元の人間の責任だ。目先の補助金につられて自滅するのも(それだって人間の権利だ)、新たな産業を興していくことも含めて地域の持続的な繁栄にチャレンジするのも、それを選ぶことができるのは当事者だけだ。
結局 本土の人間にできることは沖縄への押し付けを続けるような政府にNOと言い続けることだ、と思う。それにしても翁長氏の票を割ることを目的に立候補するという元国民新党の下地は最低だな。


                                   
もう一つ 日経9月21日の記事『無党派層の膨張のワケ』も面白かった
無党派層 膨張のワケ 第2次安倍政権で24ポイント上昇 自民支持低下、野党に流れず :日本経済新聞

第2次安倍政権になって以来 無党派層が膨張を続けており、この7月には過去最高の47%になったという。この1年半で見ると自民も民社も支持率は低下している無党派が増えた分の内訳は全体の5割が野党支持層、3割が自民党支持から回っているという。
自民党の支持が増えているわけではない。かと言って他に投票する野党の受け皿がない、というわけだ。

これは全く同感だ。逆にいまどき支持できる政党があったら教えてもらいたいくらいだ(笑)。ボクに言わせれば無党派が47%しかいないのが不思議だよ(笑)。今は盤石に見える自民の地盤は決して強いものではない
あとはまともな投票先さえあればなあ。昔の漢の高祖の『法3条』のように、多くの人が同意できる、こういうシンプルな政党の綱領を作ればいいじゃないか。
1.国民の暮らしを良くすることを目標にした、現実的な政策を取る、
2.いかなる理由があろうと、戦争や戦争を起こすリスクを高めるようなことはやめる、
3.放射性物質をばらまく代わりに一部の連中だけを肥え太らせる原発を止める、

未だに反対することが商売の、脳味噌が左巻きの連中はほっぱらかして(笑)、こういう綱領に基づいて、ある程度まともな知能とマネジメント能力がある顔ぶれをそろえれば、世の中の6割か7割くらいの支持が取れるんじゃないだろうか。自民党の政治家でもいい。こういう方向性でいけば、直ぐ首相になれるよ。どうして日本にはカスみたいな野党しかいないのかとも思うが、それは与党だけでなく野党も政治家がいかに国民生活と遊離している特権階級なのかを示しているのだろう。


                                   
さて、身体を使った映画、2つの感想。どちらも気楽に楽しかった。
まず、新宿で映画『TOKYO TRIBE』。園子温監督の新作だ。同名漫画が原作だがボクは知らん。

                                                                 
近未来の東京。そこは池袋、新宿、武蔵野、渋谷、歌舞伎町、各地にTRIBE(族)と呼ばれる若者のグループが割拠して半ば無政府状態になっていた。池袋のWARUと呼ばれるグループは東京統一をめざし、各地のTRIBEに戦争を仕掛けるが。


今や園子温には俳優の方から出演依頼のオファーが殺到しているらしい。今回はボクでも知ってるようなTVで見かける俳優が大挙出演している。ヒロインには清野奈名というモデル出身の人が抜擢されたが、脇を固める池袋の首領には竹内力、その息子に窪塚洋介、幹部に鈴木亮平、更に染谷将太にでんでん、佐藤隆介、叶美香中川翔子、それにラッパー、グラビアアイドル多数、どれも一癖あるような人たちばかりだが。特に悪役二人、竹内力は金ラメの服を着て、何かのクスリを一発決めてるとしか思えないド派手な快演だったし、髪の毛を三つ編みにした窪塚洋介はかなり恰好良かった。ちなみに竹内力ってボクの家の近くに住んでるんだが、彼の家もこういう感じなんだよな。玄関の前に『RIKI』と刻印されたペガサスのでかい彫刻が置いてあるからなあ(笑)。
この映画はNHK朝ドラ『花子とアン』に出ている鈴木亮平最初から最後までずっと半裸で暴れまわっているのが売りらしいが(笑)、ボクは朝ドラ見てないので良くわからん。だけど彼のお尻は形が良かったよ(笑)。
●最初から最後までずっと半裸で暴れている(笑)鈴木亮平(左)

●ヒロインの清野奈名(右)のアクションは確かに良かった。彼女は今後、出演作が目白押し。

                       
世界初のラップ・バトル・エンターテイメントと銘打たれている通り、お話はラップに載せられて進められていく。その割に猥雑ではない。映画が始まって、流れるバックトラックの音がやたらと澄んでいるのが印象的だった。ラップの字幕があるので、言ってることもわかるし。これならついていける(笑)。また舞台となる近未来の東京の造形が美しい。SF的な光景と似非東洋趣味が入り混じったおなじみの感じだが、鈴木清純のような真っ赤な部屋とか、画面を飛び交う花火など独創的な表現もあるし、センスがいいと思う。それに、お金かかってるだろうなと言う感じ。
●舞台セットは猥雑だが非常にセンスあるし、美しいと思う。

                                       
お話がどうこう言うような映画じゃない。過去の映画で言うと『ストリート・オブ・ファイヤー』のラップ版か、『狂い咲きサンダーロード』の近未来版という感じだろうか。ボクの苦手なスプラッター描写も少なかったし、過激そうな題材を扱っているように見えて、見ていて楽しい成熟したエンターテイメントになっている。後半 お話がやや破たんしかける部分もないわけでもないが、単純にとても面白かった。
●こういうシーンを見ると『狂い咲きサンダーロード』を思い出す。

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もう一つ、銀座で『ママはレスリング・クイーン

                                       
フランス北部の田舎町。主人公は一人息子と離れて暮らさなければならないシングルマザー。刑務所から出所してスーパーでレジ打ちをして暮らしている彼女に久しぶりに面会した息子は全然心を開いてくれない。アメリカのプロレス(WWE)に夢中な息子の気を惹くために彼女はスーパーの同僚を誘ってプロレスを始めることにした。飲んだくれのレスリングコーチを無理やり口説いて練習を始める彼女たち。やがてメキシコの選手を招いての試合の日がやってくる。

                                             
この映画は『フル・モンティ』や『ブラス!』などの系譜を引く社会派コメディ。やけくそだが息子のためにはなんだってやる主人公、レジ担当のしっかり者の主婦(ナタリー・バイ)と男好きのシングル女性、引き籠り気味の食肉担当、スーパーに勤める4人の女性たちを中心に展開される。
●主人公はプロレス好きの息子の歓心を得ようと自分でプロレスを始めてしまう。

●リングに立てば、この通り(笑)

                   
その中ではボクはやっぱり昔ゴダールの映画に出ていたナタリー・バイに注目してしまう。彼女は1948年生まれだそうだ。その人が女子プロレスラー役って、さすがにすごいよ。もちろんアクションには限度あるけど、その年代の女性がワンダーウーマンの格好してワイヤーに吊られてリングの上に飛んでくる、それだけで尊敬に値する(笑)。勿論それだけでなく、彼女はスーパーの労組代表(さすがフランス!)として、浮気癖のある夫を持つ妻として、細やかな演技を見せて映画に深みを与えている。
●昼間はスーパーの労組代表のナタリー・バイ(右)

                           
ボクはこの映画で印象に残ったのはお話そのものではない。フランス北部の田舎町の暮らしの哀歓が一番心に響いた。田舎といっても本当の田舎ではなく、かっては栄えていたが徐々に衰退していく田舎町だ。商店はさびれ、町には今や大した仕事もない。しょーもないローカルスーパーのレジ打ちくらいなのだ。住人達は年を取り、男たちは酒場で過去の思い出を語り合うばかり。そこに中年〜老年の女性たちがいきなりプロレスを始める(笑)。紆余曲折あるけれど、そんな彼女たちはやがて町の起爆剤になっていく。
●元気な女性たちとしょぼくれた老レスリングコーチ(右)

                      
映画としてはすっごくよくできている。テンポも良いし、お話の流れもスムーズだ。とても上手な監督だと思う。レジ打ちをしていた女性4人が一念発起してプロレスを始めるというのは荒唐無稽だし、試合シーンの盛り上がりはやや欠けていたけれど、とてもさわやかなお話ではある。女性の新聞記者などがこの映画のことをコラムなどで取り上げていたのは良くわかる。
                   
●これだけでも偉い。ワンダーウーマンの格好をしたナタリー・バイは御年66歳。


こういう町おこしの話は今や先進国共通のテーマになっていることを思い知らされる。大資本の進出や政府の無策に追われ地域はどんどん衰退している。そんな中で町おこしが出来るのは『若者、よそ者、バカ者』というけれど、閉塞感を切り開くには怖れを知らない蛮勇が必要なのだろう。前回書いたPerfumeが良い例だ。この映画はそんなことを、笑いの中で示してくれる。単純に面白いし。既にアメリカでリメイクが決定しているそうだ。