特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

彼女について聞いている2,3の事柄:映画『グロリアの青春』

世の中はゴールデンウィークだそうだが、ボクは暦どおりの出勤だし、人ごみが嫌いだからどこか観光地へでかけるわけでもありません。それより新緑がまぶしくて、いい季節。もうすぐ萌えるような緑の香りも漂ってくるでしょう。窓をあけたら、そよ風で葉が揺れる音が聞こえるような緑が豊かなところに住んでみたい、と思うようになったのは歳のせいかなあ(笑)。
                                                                                                                  
さて、BBCによると、来日の際 オバマは安倍に『中国への敵対表現と挑発をやめろ』と釘を刺したらしい。案の定と言うか、まあ、そんなところでしょう(笑)。アメリカにとってどちらが大事か考えれば、バカでなければ誰でもわかるはずです。判らないのは日本のマスゴミネトウヨ、それに安倍晋三だけ〜(笑)。
BBC、AM6:11のアーカイブ
BBC World News : BBCAMERICA : April 24, 2014 6:00am-7:01am EDT : Free Borrow & Streaming : Internet Archive
                                   

日曜の衆院鹿児島2区補選でも沖縄市長選でも自民が勝ったのは残念です。これでバカ政治家がまた図に乗ってしまう。相変わらずの悪癖で反自民の票は、『民主+維新+生活+結い』、『共産党』、『反原発を前面に押し出していた無所属のありかわ氏』で3つに分裂していたから、やる前から結果はわかっていたかも。それでも鹿児島の外れのような田舎の保守的な選挙区ですら、野党の票を集めれば自民を上回っているのも、共産党の票を無所属のありかわ氏が上回ったのも驚くべき結果ではあります。

民主や維新なんかとんでもない、という気持ちはボクの中にもあるけれど、それでも なんとか共闘はできないものでしょうか。既存政党を否定するのは簡単ですが、共産党にしろ、無所属にしろ、選挙の勝ち負け以前に現状のままでは政権を担当する能力がない!のもはっきりしています。組織的な政治活動には一切関わりたくないボクが言うのもなんですが、市民の側も既存政党に入り込んで乗っ取る、ようなことも考えてもいいんじゃないでしょうか。結局 国政全体を変えるより原発に消極的な議員が50人以上いる)自民党の中を変えるほうが早い気もします
それにしても国政選挙は地方区なんかいらないと思う。憲法違反の一票の格差はあるし、少数意見を排除するような二者択一の小選挙制の地方区なんか全廃して、全国区一本でやればいいんですよ。


                                                       
昨日のNHKスペシャル調査報告 女性たちの貧困 〜"新たな連鎖"の衝撃〜』は思わず見入ってしまいました。NHKスペシャル
●内容を要約していた人が居た
4/27のNHKスペシャル"調査報告 女性たちの貧困 ~"新たな連鎖"の衝撃~"を見てました。速記メモ。: Fallen Physicist, Rising Engineer

番組で描かれたのはネットカフェで14歳の妹、41歳の母親と暮らしている19歳の女の子とか、裸電球の公営住宅に住み、コンビニでバイトをしながら専門学校へ通う学費を貯める19歳の女の子、掛け持ちでバイトをしながら専門学校に通う二十歳そこそこのシングルマザーとか、愛媛の大学に通いながら休みになると高単価の職で出稼ぎするために上京してくる女子大生など。
アメリカではウォルマートマクドナルドなど、失業した多くの人が就いている低単価賃金の職業を『マック・ジョブ』と言いますが、正直 日本もここまで来ているのかと言うのが感想。彼女らは将来の展望もないまま、その日を過ごすためだけの非正規の職で長時間の労働を強いられています。もちろん、そういう職業に就いているのは女性だけに限った話ではないけれど、過度な格差という歪が彼女たちに押し付けられています。もっと悪いのは一度 そのような境遇に陥ると抜け出すのが極めて難しいこと。貧困は親から子へ連鎖していきます。
番組でも『日本は一人親家庭の貧困は先進国の中でも最悪レベル』ということが指摘されていましたが、原因ははっきりしてます。企業頼みでもともとプアだった日本の福祉政策が企業の経営難と国の財政難で破綻していること、日本の産業の空洞化の進展、それに押し付けられる性役割 番組で取り上げられたのが、家事・育児と労働を一人に押し付けられた女性ばかりだったのは偶然ではないです。
                                                                           
こんなことをやっている限り、日本の将来は真っ暗なのは明確だ。貧困者の増大と女性への家事・育児負担の押し付けで人口はどんどん減っていく。そうなると国内の需要は増えないし、人材は育たない。今 一部の人たちに押し付けられている無理解と無関心による社会の歪が、結果的に日本全体の将来を破壊しています。ボクには、裸電球の下でモヤシ炒めを作る19歳の彼女が他人事には見えなかった!
番組では宮本顕治の息子の中央大教授、宮本太郎が色々言ってましたが、原因は日本のセーフティネットの不備に加えて、最低賃金の問題が大きいと思います。正規・非正規の問題に還元するのはちょっと違うんじゃないでしょうか。昔 非正規労働が解禁されたときは若手の正規社員より非正規社員のほうが時給は遥かに高かった。それならば納得できます。番組で愛媛から休みのたびに出稼ぎに来るという女子大生はその理由を『愛媛では最低賃金は約660円、東京では860円だから』と言ってました。勿論 最低賃金を上げたら、企業の経営が苦しくなるということもよく言われます。だが、最低賃金が払えないような企業は社会的に存在する価値がないことも確かです。そんな無能な経営者は退場してもらったほうが世の中のため、かもしれません。
                                           
これは政治家や役人だけの問題じゃない。結局 世の中にある差別とか搾取は一人一人の日常で起きているのではないでしょうか。例え自分が直接関わっていなくても自分の目の前で起きていることは数多くあります。あとは一人一人がそれを見て見ぬふりをするかどうか、だと思います。



渋谷で映画『グロリアの青春Wedding Photographers

                                                                                  
軍事政権が倒れて民主政治が復活した現代のチリ。主人公のグロリアはアラ・シックスティの独身女性。12年前に離婚した前夫との間に2人の子どもがいるが既に独立している。子育ても終わり離婚も経験した一人暮らしの彼女は昼間はバリバリ仕事をしながら、夜はダンスクラブへ繰り出したりする。ある日 彼女はクラブで元海軍将校で遊園地経営をしている×1の男性と知り合う。付き合うようになった二人だが、男性はグロリアに自分の娘を紹介しようしない。その態度に彼女は次第に不満を抱くようになるが---
                                               
60歳を迎えようとする女性の生き生きとした恋愛を描いた映画として昨年から話題になってた作品。主人公グロリアを演じたパブリナ・ガルシアはベルリン映画祭で主演女優賞を獲得したし作品賞の候補にもなりました。ボクはかねがね見たいと思っていました映画です。

冒頭 主人公が男性と知り合うクラブの描写を見て、チリには大人の社交の場としてダンスというものがあるんだと感心します。轟音が鳴り響き、レーザーがバンバン、という若い人向けのようなものではなく、ゆったりした音楽が流れ、座る席も豊富にあって、飲みものはシャンパーニュ。インテリアは流行の先端じゃないけど鄙びてもいない。こういうのを文化的と言うのだ。年齢に関係なく、こうやって男女が気楽に知り合うことを是とする文化は中南米だからかもしれませんが、何をとち狂ったか警察がダンスを風営法で規制するとか言い出した日本とは何と違うことだろうか
●元海軍将校とデートを重ねるグロリア

●離婚した前夫とも酒を酌み交わしたりする

主人公の造形も面白いです。基本的には経済的にも精神的にも自立した大人の女ですが、シングルファーザーの息子をやけに心配したり、アパートの上階の騒音に苦情を並べたてたり、時折発揮される祖母らしさに笑ってしまうところもあります。そんな彼女が恋に踏み出すとどうなるか。理性的な大人の女だけど、時には男を自分から押し倒したり、泥酔して意識をなくしたりします。大人だけど自由な女性像というのは非常に爽やかです。現実には日本にだって、こういう女性像は結構居ると思うけれど、それこそ映画のヒロインとして描かれることは今まであまりなかった。
●泥酔するグロリア(笑)

主演女優賞をとったこの女優さんは実際には53歳で、すごい美人ではないし、贅肉も皺も歳相応なんだけど、等身大の美しさがとてもとても魅力的です。そう思わせるのは彼女の生き生きした表情とか演技でしょう。あと肌がとても綺麗で、これもちょっと驚き。普段そういうことは全く興味ないんだけど、ボクがそう思うくらいだから、きっとそうなんでしょう(笑)。
●アラ・シックスティとしてはお肌の手入れは欠かせない。この生々しさが素敵(笑)

                     
この映画はグロリアの恋物語だけど、人々を虐殺して新自由主義を無理やり導入した軍事政権が倒れ、チリの社会が今どうなっているか、もちゃんと描いています。失業率の高さを嘆くシーンや若者たちのデモのシーンも挿入されるし、恋人役が元海軍将校という設定なのも制作側には意図があります(笑)。グロリアの子どもたち、息子は就職しないハウスハズバンドだし、娘はチャンスを求めて恋人と北欧へ渡ろうとしています。世の中に対する視線、目配りがばっちり効いています。こういうスパイスが効いているからこそ、説得力があるロマンスになるんです。
                                                       
だからラストのグロリアの痛快な決着のつけ方は、中年女性が子どもを守ってギャングと戦う30年前の名画『グロリア』へのオマージュというだけでなく、かって一般人を虐殺した軍人への強烈なカウンターパンチにも受け取れます。それだから余計に格好いい!

グロリア [DVD]

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往年のヒット曲『グロリア』(スペイン語版)がフルコーラスで流れるラストは解放感に溢れています。見事な大団円は見ていて楽しい映画でした。お子ちゃま(年齢じゃなく精神年齢)にはわからない、中高年の青春を描いた佳品。これを見て勇気づけられる人は多いと思います。見る価値あります!