特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

エネルギー基本計画のパブコメと映画『もらとりあむタマ子』

エネルギー基本計画』のパブコメ今日、1月6日が締め切り。恥ずかしながらボクは以下の内容でパブコメを出しました。原案は核燃サイクル継続とかふざけたことを書いているので、黙ってられるか(笑)。もし必要な方がいらっしゃったらコピペしてお使いください。下のリンクをクリックすれば、所要時間10秒くらいでパブコメを出せます(笑)。
パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ


1.原発ゼロを目指してください。
日本列島に原発が存在するのは国民の安全を守る面からも、経済面からも、安全保障の面からも問題が大きすぎます。
安全性の面では、言うまでもなく一度事故が起きた場合取り返しがつかなくなることは、フクシマの事故で明確になりました。安全対策を強化するのは結構ですが、天災への対応の面からも、人為的組織的ミスの面からも安全とは必ずしも言い切れません。特に人為的・組織的な面では現在の安全基準では殆ど手が入れられていません。また原発周辺自治体の大規模避難の体制も依然 明確になっていません。そのような状況では原発の安全性を確保することは難しいと考えます。
経済面では原発のコストは必ずしも安いとは言えないことが試算されています。むしろ今後安全対策を強化することで現状よりコスト高になっていくことは避けられません。今後の省エネ技術の進展と人口減で電力需要が減少していくなかで、大規模電源の開発の必要性はどんどん薄れていくはずです。今後の電源は原発よりエネルギーの変換効率に優れたガスタービンなどの発電方法に変えていくべきです。
安全保障面から考えると、原発は日本を侵略する国にとっては恰好の標的になります。原発が国土にあること自体が国家の安全保障上 大きなリスクです。それほどのリスクを払わなくても原発以外の代替手段はいくらでもあるはずです。

2.廃炉、省エネなどの技術開発に力を入れてください。
今後 日本には廃炉や省エネなどがいやおうなしに求められます。これらの技術を磨いていくことは日本の新たな輸出産業になるでしょう。仮に原発で温暖化ガスの排出が減らすことが可能だとしても、日本がわずかばかり温暖化ガスを減らすより、省エネ技術を戦略的に輸出するほうが地球全体の温暖化を防ぐためにも遥かに効果が大きいはずです。

3.電力料金制度、燃料調達の仕組みを変えてください。
現在の電力料金制度では燃料を安く調達するためのインセンティヴの効果はほとんどありません。現在の電力会社の地域独占体制を見直して、電力会社にもっと競争をさせ、燃料を安く調達するための制度を整備してください。日本の電力会社の販管費は10兆円以上あります。これを効率化させれば原発停止に伴う燃料輸入コスト2兆〜3兆のアップは充分に吸収できるはずです。

4.核燃料サイクルは中止、撤退してください。
10年以上の期間と巨額のコストをかけても失敗続きの政策はやめてください。溜まっているプルトニウムはイギリスなど他国に引き取ってもらうことは可能なはずです。核燃料サイクルを進めることは日本がアメリカなど他国の核燃料のゴミ捨て場になることにもなりかねません。





                    
ということで本題。新宿で映画『もらとりあむタマ子

                               
スルー予定だったが、評判が良いので年末に見に行った。あまちゃんのユイちゃんこと橋本愛がこの映画を一人で見にいったのがフライデーされたことでも話題の?、だが元AKBの前田敦子主演という話題があるにも関わらず、東京では新宿のミニシアター1館でしかやってない地味〜な扱いの作品。
ボクはアイドルは嫌いじゃないが、AKBはあんまり興味がない。それに加えて、昨年末の安部晋三ASEAN首脳の夕食会に出たAKBのニュース写真をみたら、まるで北朝鮮喜び組みたいだった。若者に媚びようとする政府のいやらしさも気持ち悪い。何がクール・ジャパンだ、バカ。いい年こいた大人がこんな企画をやって恥ずかしくないのか?いや、秘密保護法を推進した安部晋三が目指すのは北朝鮮だから、それでいいのか(笑)。
●全然クールじゃないクールジャパン(笑)。映画監督の想田一弘曰く『権力者とそれにおもねる者たち』日本版ハフィントンポストより
AKBがASEAN首脳の前でダンス「北朝鮮の喜び組のようだ」非難の声も | HuffPost Japan


AKBの娘たちにはこんな醜態の罪はないにしろ、ボクは前田敦子も興味がないし、そもそも良く知らない。ま、『苦役列車』や『マイ・バック・ページ』などを撮った山下敦弘監督のこの映画はアイドル映画というフォーマットでは全然ないし、出演する前田敦子の意識にもアイドルという意識はあまりないんだろうけれど。お話はこんな感じだ。

タマ子は大学を卒業後、山梨の実家に戻り、スポーツ店を営む父と二人で暮らしていた。就職もせず、家事一切は父に任せ、彼氏も友達も居ない。話し相手は中学生の男の子くらい。ジャージ姿で寝転びながら漫画を読み、TVを見るたびに『日本はダメだァ』とつぶやく毎日。だが父に再婚の話が出てくると、タマ子の日常に微妙な波紋が生じてくる---

●お正月はボクもこんな感じでした(笑)。


いわゆるニート状態のタマ子の日常が地方都市の春夏秋冬とともに描かかれる。大晦日には親戚からお節料理をもらったり、サクラの花が咲き乱れる春には学生がスポーツ用品を買いにきたり、夏にはクーラー浴びながら毛布を被ってマンガを読みふけったり。同じ甲府市の暮らしを描いた作品として『サウダーヂ』という傑作があるが、こちらは不況に追い詰められた建設労働者とブラジル人出稼ぎ労働者の話だったのに対して、『もらとりあむタマ子』では家業や地縁・血縁に支えられた、ほどほどの暮らしが描かれている。対照的だが、どちらも真実なのだろう。
●地方都市の失われつつある暮らし。おかずを買うのに彼女が行くのは量販店ではなく、近くの小売店


親娘二人の穏やかな日常を描いたこの映画は、一部では小津安次郎の作品とも比較されているが、それは褒め過ぎかも(笑)。だが、ここで描かれたタマ子や地方都市の暮らしも、ボクはいとおしく感じてならなかった。何の変哲もない暮らしが非常に豊かに感じられたからだ。
親父のスポーツ店は大して儲かっているようには見えないけど、なんとか親娘二人は暮らしてはいける。たまに親父は少しお酒を飲んで、あとは大イベントといえば法事くらい。兄貴に再婚相手を紹介されたら 年甲斐もなくウキウキしてしまう。タマ子の友達は東京へ行って就職したり、彼氏を作ったりしているけれど、タマ子は駄菓子屋の店先に座って、中学生のボウズとアイスキャンディーを舐めてる。たまに携帯で電話する母親は離婚後 東京で一生懸命働いているみたいだ。
●父と娘。父がきちんと出汁を取った年越しそばを食べる。もしかしたら人生の目的はこういう生活を送ることかも

                                         
これで、いいじゃないか。タマ子も親父も向上心のかけらもない、世間一般では『ダメ』と言われてしまうのかもしれないけれど、この映画の登場人物たちはそこで僻んだり、焦ったり、そういうさもしい根性はない。中学生のボウズに『友達がいない』とバカにされていても、向上しようとか、カネをもっと稼ごうとか、まして権力に媚びようなんて、そういう下品な品性は持ち合わせていない。そこが良い。こういうのが本当に豊かな暮らしっていうんじゃないだろうか。

前田敦子は取り立てて美人でもないし、強く印象に残るような場面もない。だが、ぬぼ〜っとした表情はこの映画の役柄にはぴったりだ。この映画でよかったのは中学生の男の子。おたがいぼ〜っとした同士の前田敦子との掛け合いは実に面白かった。
●中学生とタマ子(後ろ姿なのが残念。彼は日本風のいかにも、間の抜けた良い顔をしてます。)

                  
とにかく、この映画は台詞が良い。『ダメだぁ、日本は』が口癖のタマ子にお父さんがとうとう言ってしまう『日本がダメじゃなく、お前がダメなんだ』、いかにもモテなさそうな中学生がタマ子に述懐する『ボクは恋と部活に忙しい』など、思わず場内から笑い声が上がる台詞がいくつもある。そういう笑い声が上がるたびに場内の雰囲気はほんわかしてくるような気がした。

                        
                      
夏の終わりとともに、そんな日々も終わりを告げる。今まで、一人娘にまともに説教も出来なかった父親がタマ子に『夏が終わったら家を出て行きなさい』と命じる。真剣な表情を見せた父親に触れて、タマ子もこの映画で初めて嬉しそうな表情を見せる。そして映画は中学生と一緒にだらしなく(笑)アイスキャンディーを舐めるタマ子の描写で終わる。もしかしたらタマ子は1年で1ミリくらいは成長したのかもしれない。いずれにしても成長なんて、他人、まして国から言わてどうにかなるものじゃないじゃん。

                        
                                        
90分以下と言う短い上映時間を見終わった後 何ともいえない余韻が残るボクらが過ごしている日常の暮らしの豊饒さに対する新鮮な驚きが残る。年末ぎりぎりに見て昨年の個人的ベスト10に入れたけど、これは隠れた傑作かも。エンドロールのあと、本当の最後に、ロケ現場でだらしなく口を空けて寝ている前田敦子の姿が映される。最初にAKBの悪口書いたけど、これなら大好きだよ!