特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

選挙と『選挙2』(笑)

選挙の結果は予想通り、不愉快なので昨晩はさっさと10時に寝てしまった(笑)。
単に自民党議席数だけでなく、思ったより維新の議席も減らなかったし、ワタミのブラック野郎まで当選するし、亀井亜希子氏や森裕子氏のような有為な人材が落選したのも残念だ。
だいたい投票率の低さはどうなってるんだよ!理由もないのに投票に行かないような奴は北朝鮮へでも行け!そういう連中は自分の意志がない生まれついての奴隷根性で民主主義なんか必要としていないんだろう。


だけど結果に完全に失望したか、というと、そうでもない。以下の点は結構 喜んでいる。
1.改憲派議席の3分の2を占めるのは何とか防げた。
沖縄の糸数氏も勝った。それは良かった。
2.東京は反原発派が議席の半分を占めた!
共産党吉良佳子たんと山本太郎、それに公明を0.5足せば反原発派が半分だ。山本太郎は当選しただけでなく、得票数も共産党並み、自民党の医師会落下傘候補の武見より多かったのだ。ボクも吉良ちゃんが堅そうだったので山本太郎に投票した。やり様によっては今の制度でも勝てるのだ!
土曜日に緑の党三宅洋平氏と同じステージに立った山本太郎を見て多少印象は変わったが、ボクはまだ彼のことはあまり信用していない。だが、当選して『まだ これからです』と冷静に答える彼周りのボランティアと一緒に『一人じゃない』というコールをする彼と、他の党の当選した候補が周りの脂ぎったジジイ連中に囲まれて万歳三唱しているのを比べると、つくづく彼が当選して良かった、と思った。


3.緑の党の健闘
比例区ではボクは緑の党三宅洋平に投票した。議席を得られなかったのは残念だったが、得票数を見ると、それほど捨てたものではない。各党の比例区での得票数を比べてみる。
●政党別 比例区の得票数(単位=千票)
自民:18,460、獲得議席18
民主: 7,134、獲得議席7
公明: 7,568、獲得議席7
維新: 6,355、獲得議席6
共産: 5,154、獲得議席5
みんな: 4,755、獲得議席4
社民 : 1,255、獲得議席1
生活 : 944、獲得議席0
大地 : 523、獲得議席0
緑の党: 458、獲得議席0
みどりの風: 430 獲得議席0


知名度ゼロの候補者ばかりの『緑の党』は、現役議員が3人改選だった『みどりの風』の得票数を既に超えている。なかでも三宅洋平氏の個人得票数はなんと180千票! 個人の得票数では26位だ。比例区の当選者は48人だから十分当選圏内だった。自民のワタミのブラック野郎が100千票で当選だから、ほんと今の制度はふざけてる。
知名度ゼロでここまで来た。彼のような考え方に賛同する人がそれだけいる、ということだ。
谷岡代表が辞任すると言っている『みどりの風』が今後、『緑の党』と合流することはそれほどおかしな話ではない(ゲバラのポスターを事務所に貼っている亀井静香先生みたいな人こそ合流して欲しい!)。当選者ゼロの生活は小沢氏の根性から考えて解体はしないだろうが、反原発を考える人たちの投票の受け皿としての意義はこれで消滅したのではないか。『素人の乱』の松本哉氏がtweetしていたように『小沢は裏切りそうな気配しかしない』とボクも思うから、それはOK。
次の選挙で『緑の党』がこれらの党の票も集めて議席を獲得するどころか、民主主義の受け皿となっていくことは充分考えられる。
三宅洋平氏は今 こう言っている。
『全然負けた気がしない。僕らの動きが太郎ちゃんの当選に繋がった。10数万人の票と言うのは質量が重い。3年後の参院選を目指す。これから1000日間で世の中を変えましょう。選挙、面白くてやめられないぜ!』
PS.明日23日放送のNHKクローズアップ現代三宅洋平氏が取り上げられるそうです。



それにしても『組織の力』には改めて考えさせられる。東京ではあんなに投票率が低くても反原発派が半分議席を取れたわけだが、地方ではとてもそうはいかない。
TPPは困るとかいいながら自民党に投票する農家』とか、『地方の商業を振興してほしいとかいいながら自民党に投票する商店主』なんて、ボクは『文字通りのバカ』だと思うが、そういう人たちのほうが数が多いのは事実だ。
土曜の『選挙フェス』で、三宅洋平山本太郎選挙参謀のサブちゃん(名前忘れた)が『全国区で個人が選挙をするなんてカネの面でも労力の面でも、正気の沙汰ではない』と言っていた(それでも三宅洋平は立候補したわけだが)。ボクだって大嫌いだが、現実を変えるには、やはり組織というものは必要らしい。自民党は新人議員の教育システム(勉強会)や地方議員などの組織力の点では確かに野党より優れている。そういうところはボクらはもっと学んでいく必要がある。
あと、もう一つは『善人の不寛容』を止めることだ。
山本太郎ちゃんは『企業は全て、原発から甘い汁を吸ってる』と言ってたが、原発で儲けてない企業のほうが当然、はるかに多い(笑)。更にスズキみたいに浜岡原発に反対している企業もあるし、城南信金や鈴廣(大手のかまぼこ屋さん)みたいに明確に原発に反対している企業もいくつもあるボクだって企業なんか好きじゃないが、全て排除するのは間違いだ。原発を止めたい人たちだってそう。共産党みたいな独善的な連中も居るし、自民の中にも河野太郎以外にも原発反対は居るし、民主の中にもそうだし、ボクはみんなの党が言っている『市場原理を使った脱原発』が、『味方が多い』という点で最も現実的だと思う。つまり、これから原発を潰し、世の中をより民主的に変えていくためには、いかに色々な人と手を繋いでいけるかにかかっている。

ちなみに三宅洋平は選挙前、みどりの風や生活との共闘も試みていたらしい。野党共闘を望む一般からのtweetに対して今日、彼は『(共闘を試みたが)数ヶ月前の無名のボクには力不足でした。引き続き和合の動きを続けていきます。』と回答していた。
希望はある。誰かのセリフだが、絶望は愚か者の隠れ家だ。



                           


青山のイメージフォーラムで映画『選挙2』。映画『選挙2』公式サイト監督は想田和弘
311直後、2011年4月の川崎市議選。脱原発を唱えて無所属で立候補した男のドキュメンタリー。主人公の山内和彦氏は2005年の選挙では小泉チルドレンの末端(笑)として自民党から立候補して当選。関係者を回って、ひたすら頭を下げ続けるドブ板選挙ぶりは想田監督の映画『選挙』に収められた(ボクは未見)。今回は議員を辞め主夫生活を送っていた山内氏が、原発事故に怒りを覚えて突如 無所属で立候補を表明。前回とは全く対照的に選挙公報とポスター、葉書だけで選挙運動を行っていく姿が描かれている。

まず濃厚に感じるのは311直後の、あの空気感だ。自粛ということで街中ではネオンが消えている。名前の連呼を遠慮する候補者もいるし、ガソリン不足ということで自分は街宣車を使わないことをアピールする候補者もいる。街を歩く人は放射性物資除けなのか、マスクをしている人も多い。ちなみに山内氏によると、その選挙で名前の連呼と街宣車の使用を最初に始めたのは共産党だそうだ(もちろん良い悪いではなく)。


奇妙な緊張感の中で、山内氏以外の候補者はひたすらドブ板選挙に徹する。有権者に対して、不自然な低姿勢で挨拶のための頭を下げ続け、不自然なほど丁寧な敬語でしゃべり続ける。政策のことはしゃべらない。マイクでも肉声でも、ひたすら自分の名前とキャッチフレーズだけを連呼し続ける。その脇を有権者が無表情に通り過ぎていく。


山内氏のキャラが面白い。原発政策への怒りで立候補した割には、のんきと言うか、冷めているというか、同行する監督に対して選挙情勢を他人事のように話しているだけ。あとは自分のポスターが剥がれているのを直して周っていたり、立候補している他の候補者に挨拶しているくらいだ。家族と一緒に、そのまんま東の演説会へ行って記念写真を撮ったりしている(笑)。奥さんや子どもと一緒に選挙葉書を出しに行くシーンもあった。選挙とか全然関係なく愚図ったり遊び続ける子どもの姿はすごくおかしい。音楽も盛り上がるシーンもない淡々とした映画だが、そんな山内氏を中心にした選挙活動はエンターテイメントとしてはとても面白い。館内からは笑い声が絶えなかった。
●山内氏のメインの選挙活動。剥がれかけたポスターの貼り直し(笑)

唯一 緊迫したシーンは選挙活動を映画に撮っていることに対して、山内氏の同僚だった自民党議員たちが抗議してくるところ。『選挙は税金が使われている公的活動なんだから撮るのは自由でしょう』、という監督に対して、無礼だとか、撮ってほしくない、などの理由で議員たちは強硬に文句を言ってくる。もちろん その様子もちゃんと映されるから(笑)、思い切り笑えてしまう。彼らが選挙と言うものを公的活動でなく、自分のためのもの、と思っているのが良くわかる。
●山内氏の演説風景(笑)。横にいるのは彼のお子さん。

投票日前日 山内氏は一回だけ駅前で演説をする。脇で自分の子どもを遊ばせながら、彼は放射能防護服のコスプレをして演説をする。内容も正論だし、まともな話し方だ。だが、他の候補者の演説同様、有権者はその脇を無関心に通り過ぎていく。そのあとエンドロールに、山内氏は14人の候補者中13位で落選、という結果が流れて映画は終わる。
                     

                                 
山内氏の朴訥としたキャラも相まって、映画にくら〜い感じはしない。だが忘れてはいけない、311直後のあの雰囲気を思い起こさせてくれる。そして今もボクらを取り巻く無関心も。政治だけでなく自分たち自身について無関心なのだ。昨日の低投票率はその結果だろう。ちなみに想田和弘監督は昨日の結果について、こうtweetしていた。
参院選、一部に光明も見られるが、全体的には1930年代ドイツを連想する流れに日本は進んでいるように感じ戦慄が走る。ただし、現代日本のそれは熱狂を伴わない、しらけムードの、無関心・無気力なファシズムである。だから危機感の温度も低い。しかし、これはかなり危機的な状況である。』
2時間20分という上映時間はちょっと長いけれど、とても面白い、笑いながら考えさせる映画。
結局 これからがスタートなのだと思う。