特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

お酒は週末だけよ(笑)。:『2050年の世界』と映画『砂漠でサーモン・フィッシング』

12月の街は騒がしくて好きじゃない。人が多いし、宣伝もキラキラだし、かえって息が詰まりそうだ。そこいら中についているイルミネーションを見ると昨年の自粛ムードとやらはどうなってしまったんだろうと思ったりする。疲れるし寒いので、とにかく冬の間はなるべく外出したくない、家から一歩もでたくない。できれば人間も動物のように冬の間は冬眠すればいいのに(笑)。

                                                    
さて、一部で話題になっている本、『2050年の世界』を読んでみた。イギリスのエコノミスト誌の記者、スタッフが政治、経済、科学、様々な分野で2050年を予測したもの。

2050年の世界―英『エコノミスト』誌は予測する

2050年の世界―英『エコノミスト』誌は予測する

こういう予測ものっていうのは当たるも八卦、当たらぬも八卦、読んでみても『へ〜、そうなの』っと言う感想以外はないんだけど、やはり話題になっている日本の衰退のところはちょっと気になった。

●400ページ以上もある本のエッセンスはここだけかも(笑)。

どちらも購買力平価、しかも実質値ベースなので、数字自体はかなり胡散臭い。ショッキングな結論を導くための典型的な、『作った』数字だと思う。ちなみに右の表では2050年の日本の一人当たりGDPは韓国の約半分、中国とほぼ同じという数字になっている。
だが2050年に向けてアジアがますます発展していくのに比べて、少子高齢化の日本の経済は衰退傾向に向かっていくことは間違いないもちろん原発なんかなくたって、エネルギーは足りるに決まっている(笑)。今世紀初頭は先進国だったが今やデフォルト寸前のアルゼンチンみたいになっていくのだろうか。
ボクは世界における日本の地位なんか、まったく興味がない。日本という国が衰退しようとなんだろうと構わない。ただ、住んでいる人がより幸せになる方向へ行くことにしか興味がない。                  
安倍ちゃんが呑気に『日本を取り戻す』とか言っているが、いったい何を取り戻したいのかさっぱり、わからない。どうもフクシマの汚染地域や沖縄の基地のことではないらしい(笑)。愛国心とか公の秩序とか訳のわからない抽象的なものを強調する保守的な姿勢は少子高齢化に拍車をかけて、ますます日本の衰退を早めていくだけだろう。もしかして、ハイパーインフレでも起こして国の債務をチャラにする、それが狙いなんだろうか(笑)。
                                                     

新宿で映画『砂漠でサーモン・フィッシング
宣伝も殆どされていないような地味〜な上映のされ方だが、スラムドッグ$ミリオネアの脚本家+ラッセ・ハルストレム監督、ユアン・マクレガー主演という案外豪華な作品。http://salmon.gaga.ne.jp/

イギリスの水産学者ジョーンズ博士(ユアン・マクレガー)にイエメンの大富豪の代理人であるコンサルタント、ハリエット(エミリー・ブラント)から『砂漠で鮭釣りをしたい』というプロジェクトが持ち込まれる。当初はばかげた話だと一蹴したが、アラブ諸国との明るいニュースを作りたい政府の圧力もあって博士はプロジェクトに参加せざるをえなくなる。

                                                   
良くも悪くもラッセ・ハルストレム監督らしい、オーソドックスな映画。悪く言うと凡庸というか煮え切らないんだけど、この映画は脚本も登場人物の造詣もやたらと丁寧に作られていて成功していると思った。
この映画の登場人物の誰もが、砂漠で釣りをするなんてばかげた話だと考えている。ここがポイント。成功の可能性も低いし、そんなことに何の意味があるというのか。それが次第にマジになっていくところが、この映画の見所だ。伏線敷きまくりの脚本は良くできているなあと思った。

人生にやたらと不器用なジョーンズ博士の造詣も好き。キャリア志向の奥さんには相手にされず、話し相手は池の鯉。ハンサムなユアン・マクレガーがやってるから絵になってるんですけどね(笑)。女性にシャンパンを誘われても『お酒は週末だけ。それも夜7時を過ぎてからしか、飲まないことにしている』って答えるシーンは他人事とは思えなくて、ちょっとびっくり。
●やっぱりハンサムなユアン・マクレガー(笑)

他の登場人物も魅力的。世俗に疎いジョーンズ博士と対照的な、仕事のできる女だったハリエットが軍人の恋人がアフガン戦争で行方不明になってから、途端にうじうじした女に変わってしまう。この人のルックスはあんまり好きではないけれど、高そうなカーディガンを着こなすキャリアウーマンのファッションは見ていて楽しかった。

またプロジェクトを政治利用することしか考えていない政府広報官(クリスティン・スコット・トーマス)が家庭に帰ると、猛烈ワーキングマザーに変わるのも面白かった。この人が一番良かったかも。

                                                                  
イギリスのサーモン・フィッシングに憧れるイエメンの大富豪が哲学的で、映画全体の導き手みたいな役割を果たしている。守るべきは政府でも国歌でもなくて、人々の生活に培われた文化であるってことが、この映画を見ていると良くわかる。
あんまり期待しないで見に行ったんだけど、中々の良作だった。
スコットランドの水に浸かって友人になるアラブの大富豪とユアン・マクレガー