特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『誰も知らない基地のこと』

最近は爽やかな陽気が続いていて、嬉しい。昨年の今頃は窓を殆ど開けなかったから、5月の風と新緑の香りが余計に爽やかに感じられる。あっと言う間に株価は激下がりしたし、EUの危機だけでなく、今囁かれているイスラエルのイランへのテロ攻撃でも起きたら石油が止まって、リーマンショック以上のパニックにもなりかねないから、世の中の見通しはあんまり明るいわけでもない。だが薄氷の上の平穏だとしても、日常の美しさが目の前にあれば、愛でずには居られない。
●住宅地にあるこの森では昔動物学者が狼を飼っていた

                                                        
青山で映画『誰も知らない基地のこと』 。サジージュースの口コミ調べてみたらビックリ!?
原題は『Standing Army』(駐留軍)。イタリア人の監督が米軍の基地がある沖縄、ディエゴ・ガルシア(インド洋)、ピアチェンツア(イタリア)をドキュメンタリーにまとめたもの。

映画は『米国はローマ帝国同様に駐留軍を世界各地においている』という視点で描いている。ちなみにローマ帝国は駐留軍の維持費用が滅亡理由の一つだったのは周知の通り。基地のために住民を騙して移住させたディエゴ・ガルシアや基地拡張の反対運動が起きているピアチェンツアの実態は全く見たことが無かったので興味深かった。沖縄で描かれたのは基地周辺で毎日 反対運動を続けるおじいちゃん、おばあちゃんたち。柔らかな視線、コトバが印象的だ。監督曰く『これだけ住宅密集地の近くに基地があるというのは他の国では例が無い』そうだ。日本が負担する基地の費用も含めて他の国と比べてどうなのか、というのは基地の負担を減らしていく条件闘争の一つとしてもっと考えてもよい視点だと思った。
                                               
ただ、この映画には食い足りない部分がある。基地を受け入れる側の論理(積極的にしても消極的にしても)があまり描かれていないのだ。鳩山政権時 社民党が与党になっても『基地は絶対反対』だけで、基地削減のための手順、提案がなかったのには失望した。余りにも無責任だ。実際にどうしたらいいか、まで考えるのが大人の仕事だ。そのためには基地を受け入れる側の論理にも耳を傾ける必要があるだろう
ずいぶん昔に仕事で沖縄へ行った際 嘉手納基地の周りで攻撃機ハリアーの雷鳴のような離着陸音の大きさにびっくりしたことがある。軍用機のエンジンにはマフラー(消音装置)が無いからだそうだ(ハリアーは特に酷いらしい)。理屈では判っていても実際に聴いてみると、凄まじさは全然違う。海兵隊基地がある金武へ行ったら、辺りの人は海兵隊の給料日である月曜夜には外出しないように言われて育った、という話も聴いた。沖縄の人の負担は本土の人間には想像を絶するものがある、というのは門外漢のボクでもわかる。
だが選挙になると基地存続派の首長、議員が多く当選する。それだけ多くの人が投票するのは諦めなのか経済的事由なのか。毎年安定的に地代が入る基地の地主は地元では垂涎の的とも言う。沖縄最大の企業 国場組を始め、沖縄財界も多くは基地存続派を支援する。そこいらへんの構造を深堀していれば、もっと深みがある作品になったと思った。このパラドクスを解きほぐすことなしには基地の問題は解決できないからだ。
奇しくも厚木基地で米軍の夜間離発着訓練(NLP)が始まった。夜10時までとはいえ、周辺は100デシベル以上もの騒音だそうだ。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120524-00000009-kana-l14
                                                                                


ちなみに原発と基地とはよく類似性が指摘されるけど、ボクはそれには違和感がある。どちらもカネで利益誘導して負担を押し付けると言う構造があるけれど、当初の経緯を考えてみれば、基地は占領で押し付けられたものであるのに対し、原発には一応は地元の賛成があるところが大きく違う。原発はむしろ地元が積極的に誘致している例も多い。やらせの公聴会を地元自治体が主導していたのが良い例で、いつも周辺のおこぼれしか廻ってこないとは言え、彼らも原発ムラの共犯者とも言える(もちろん地元で反対をしていた人や補助金がまわってこない地域は別だけど)。
                                    
原発立地の首長などがよく雇用の問題を口にするが、ちゃんちゃらおかしい。確かに多くの地方の雇用環境は大変、大変厳しい。特に若い人向けの仕事は少ない。でも、それはみんな一緒で、原発立地だけの話ではない。敢えて言うけど、要するに彼らはカネをたかっているだけだ。雇用やカネは誰でも必要だから、ボクはタカリが悪いとは思わない。でも現実問題としてタカリは往々にしてロクなことが無い補助金依存では地方経済が自立できなくないばかりではなく、魅力ある職業を求める若者は地方を見捨て、一層過疎が進む。それが原発に頼った地域で起きている事実だ。
本当にしんどいけど、自営業だろうとサラリーマンだろうと、仕事は自分で作るものだ。他人の補助金で作ってもらうものではない。だから、ボクは仕事が嫌いなのだ(笑)。宝くじでも当たんないかなあ〜。