特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『究極のマグロ丼』とNHKの番組2題:『ふたりのウルトラマン』と『中森明菜 スペシャル・ライブ1989 リマスター版』

 楽しい楽しいゴールデンウィーク。2度目の3連休はお天気も良く気持ち良いお天気が続きました。緑の陰影が美しいです。今日から出社です(泣)。

 今回の3連休では散歩がてら築地へ、マグロ卸がやっている『究極のマグロ丼』(笑)を食べに行ってきました。
 前回行ったときは店は全く空いていたのですが、今回はゴールデンウィークで混んでました。普段は並ぶような店にはボクは行きません。長い人生、たまには仕方ないか、と我慢しました。その反動で身体の事も考えず、ウニもトッピングした(笑)。この店、人間ドックで毎年通っている病院のすぐ近くなんです(笑)。

 香りを感じるようなマグロというのは中々食べられないですからね。前回 初春の味とはまた変わって、味が濃くなっていたのは面白かった。


 この 3連休には憲法記念日がありましたが、いよいよ改憲の機運が高まってきたように思えます。
 改憲を唱える自民党や維新の議席を減らして与野党伯仲の状態にならなければ日本は良くならないとは思うけれど、例年にも増して護憲を訴える野党は説得力がいまいち、に見えるからです。

 ウクライナの件が典型でこれだけ世の中の環境変化が激しいのに、護憲派が毎年同じことばかり言っていれば新鮮味は薄れます。更に今年は護憲派が集まる毎年恒例の憲法集会でれいわ新選組がひと悶着を起こしたようです。

 れいわの連中、明らかに目つきがおかしい(笑)。こんなのが本当に参院選に立候補するのでしょうか? 

 れいわの生存戦略は既存野党に因縁をつけることで注目度を上げる、です。ですが、こういう頭のおかしい連中が絡んでくると、ますます野党の側から一般人は退いていくでしょう(笑)。れいわの連中はあいかわらず自民党の別動隊です。


 ボク自身は改憲より、まず、日本がどういう方向へ進んでいくべきか、きちんと議論をすることが大事だと思います。
 特に9条の問題。現実にはプーチンのように武器を山ほど持っていて、しかも言葉が通じない奴がいることがはっきりした。平和主義のドイツの社民党緑の党も軍拡に踏み切ったし、中立&平和主義が国是のフィンランドスウェーデンNATO加盟に傾きつつある

 改憲も護憲も手段であって目的ではありません。9条を守れば平和を守れる訳ではないし、改憲したら日本を守れるとかそんな話もない(笑)。

 昨今のような状況で平和を守るためには複数の他国との集団的自衛権を本気で考えるべきで、それが憲法と矛盾するなら改憲しても良いと思います。確かに9条は日本政府の暴走を防ぐメリットはあるけれど、集団的自衛権に入ってしまえば他国が日本の暴走を止めてくれる(笑)。

 河野太郎が日本はNATOに入れと言ってたようですが(笑)、アジアにNATOみたいなものを構想しても良いのではないでしょうか。それに憲法9条があるから日米地位協定だって変えられないという面もある。
 あとはスウェーデンのように如何に外交を強化していくか。つまり紛争や侵略に見舞われている国や難民などを助けられるか、更に経済力、それが日本の安全保障でしょう。

 しかし、護憲派改憲派も安全保障をどうするか、なんて議論はどこにもない。与党の言っている緊急事態条項とか敵基地攻撃能力なんて単発の話は安全保障の方策ではない。
 実は敵基地攻撃能力は安保法制同様、アメリカの要請で、具体的には『中国の軍拡でアメリカの空母が第1列島線に近づけなくなった代わりに日本に長距離巡航ミサイル極超音速ミサイルを配置したい』のでこういう話になっているようですstr.toyokeizai.net
 でも、日本の安全保障=どうやって平和を守るかの議論もしないまま、そんな武器を配置してしまって良いのでしょうか。

 だけど野党の’’9条守れ’’も説得力を全く感じない(笑)。平和を守れと言って、平和を守れるのなら苦労しません。丸腰状態でいることが却って紛争を誘発することが有るのはウクライナを見てもわからないのか(笑)。

 でも代替案がない限り、いずれ日本列島に強力なミサイルが配備されることになる。日本の政府はアメリカの要請には弱いですから、強行採決でも何でもやるでしょう。
 まともな議論すらないままのミサイル配備も丸腰もどちらも勘弁してくれ

 憲法を論じようにも、報道だって不自由な今の日本ではまともな議論なんかできない。こんな状況で改憲とか言ってもロクなことにならない。沈んでいく船でじたばたしたら余計に早く沈むだけです。


 普段は テレビを見る暇はあまりないのですが、連休中は見ごたえのあるテレビ番組がありました。

 一つはNHKのドラマ『ふたりのウルトラマン

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 1972年の沖縄本土復帰直前、日本全国で大ヒットした「ウルトラマンシリーズ」に脚本家として参加していた沖縄出身の金城哲夫上原正三、この二人を巡るドラマです。

 ボクも子供の時に見ていたウルトラマンウルトラセブンには単なる勧善懲悪ではない、人間や科学の進歩を問い直すお話が多々含まれていました。それを書いたのが沖縄出身の脚本家、金城哲夫であったのは有名な話です。

 

 ドラマは、日本の統治下ではなかった沖縄からパスポートを持って上京した金城らの活躍や苦悩を、ドラマの中に制作に関わった人々の証言を織り交ぜる、という斬新な形で描いていました。脚本、演出は沖縄をテーマにした『ナヴィの恋』や『ホテル・ハイビスカス』、それに福島の双葉町を描いた『盆唄』を作った中江裕司監督です。
spyboy.hatenablog.com

 金城哲夫という真っすぐで明るいけれど、壊れやすいキャラクターを演じた満島真之介君は、本当にピッタリです。名演だと思いました。『ホテル・ハイビスカス』のヒロインだった蔵下穂波ちゃんが出ていたのも嬉しかった。

 精神を半ば病んだ金城が夜のサトウキビ畑に寝そべるシーン、そして金城が文字通り『光の国』を見つけるシーンの素晴らしさは忘れがたい。ウルトラマンの『光の国』とはこういうことだったのか。泣きました。

 当時の事を描きながら、沖縄を差別し続ける現代の日本にも通じる視点を含んだ、実に感動的なドラマでした。今のNHKの夜7時、9時のニュースはひどいものですが、昨年の『今ここにある危機とぼくの好感度』などドラマは素晴らしいものを出してくる。
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 政治部とドラマ制作部との違いなんでしょうけど、この差は何なんでしょう。

 NHKは80年代のコンサートのリマスター版も放送していました。印象に残ったのは「中森明菜 スペシャル・ライブ1989 リマスター版
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 4月30日に放送された、中森明菜が全盛期だった89年、よみうりランドで全シングルを歌ったコンサートです。

 ボク自身は中森明菜のファンという訳ではないのですが、全盛期の彼女には名曲がいっぱいあるのは判っています。作者に細野晴臣井上陽水大沢誉志幸玉置浩二高中正義、松岡直哉、来生たかお等 当時の代表的な作家から、フクシクミコ(シャーベッツ)のような当時の新人作家まで起用した作品群は、80年代の日本のある種の側面を象徴している。

 番組で当時の彼女のパフォーマンスを見ていると、社会が豊かになってきた80年代への苛立ち、悪い意味でなく暗黒の世界へ真っ逆さまに落ちるような感じを表現しているように感じました。バブルの崩落、いや、戦後日本の社会の崩壊の予兆を体現していたのかもしれない。文字通り、時代が彼女に乗り移っている
amass.jp

 勿論 本人はそんなことは意識もしていないでしょう。ただ、楽しそうにニコニコしながら歌っていても、時折、戦闘モードの顔つきになるのも面白かった。天才の天才たる所以だと思いました。


 今回のリマスター版のコンサート、5月2日に放送されたRCサクセションの83年のライブも見ましたが、こちらはあまり印象に残らなかった。
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 ギターのチャボとサックスの梅津の絡みは想像以上にカッコ良かったし、日本語ロックならではの心象風景を描いた部分には強いオリジナリティを感じます。『昨日は車の中で寝た』なんて歌詞は、10代の観客だったら人生を賭けてしまうかもしれない。

 だけど曲やパフォーマンスは所詮 ストーンズの2番煎じだなーと思えてしまうので、物足りなかった。勿論 RCも忌野清志郎も嫌いではないんですが、要はボクはストーンズは金儲けの香りが強すぎて、あまり好きじゃないんです(笑)。いまだに清志郎を神格化している連中も何か気持ち悪い。これは感覚の問題なんですが。

TBS『報道特集』と映画『パリ13区』

 楽しい楽しいゴールデンウィーク。ボクの休日はカレンダー通りなので、今日は出社です。でも1日行けばお休みですから、寂しくなんかありません(笑)。
 3連休が2回と言っても大して長い休みでもないし、まとまって何かをしようという感じでもない(自分が悪いのですが)。ああ、1年中ゴールデンウィークだったら良いのに。
北参道のレティエで今年最後の🍓ソフト。牛さんのクッキーが載ってます(この店は実家の牧場のミルクを使用)。


 土曜日のTBS『報道特集は考えさせられる特集でした。前半はウクライナ情勢、戦争で石油や小麦の価格が上がると貧しい人たちへ皺寄せが行くというお話。

 後半はちょうど今の時期 飛び立っていった特攻隊のパイロットたち、特に学徒動員で駆り出された学生たちを振り返るものでした。見ていて胸が痛くなった。

 彼らは政府のプロパガンダに載せられたというより、日本という国の非道性を理解しつつも自ら死を選らばざるを得ませんでした。 

 番組で作家の保坂正康氏は、国家に死を強要された特攻隊のパイロットたちは『時代に生きるのではなく、歴史の一部として生きることを選んだ』と表現していました。

 死を強要する大日本帝国に納得して特攻に行ったのではなく、歴史という大きな文脈の中で自分の死を位置づけることによって自らを納得させた、というわけです。折しも彼らの多くが飛び立ったのは桜の花が咲き誇っている時期。残酷な話です。

 ウクライナの戦争と特攻隊、番組で並列に取り上げたことには大きな意味があると思いました。戦争による『死』を美化してはならないと思うからです。

 死を覚悟しても歴史の中で生きようとしている、のはウクライナで戦っている人も特攻隊の人たちも同じだと思います。
 ただウクライナでの戦いは特攻隊のような死を前提とした作戦ではないし、そもそもがロシアによる侵略戦争です。たとえ降参してもロシアは住民を殺したり、シベリア送りにしたり、子供を連行したり、性犯罪を起こしているのも違います。武器があるのなら戦わざるを得ないかもしれない。

 ウクライナで戦っている人たちの多くは国に強制されているのではなく自発的に銃を取っているでしょう。郷里や知り合いを守りたいという愛郷心パトリオティズム)に基づいているだけではないか、と想像しています。大日本帝国侵略戦争を起こし、個人に死を強要した太平洋戦争とは根本的に異なる。
靖国で売っている『特攻の母の玉子丼』だそうです(怒)。特攻隊を美化して商売している奴って百田尚樹も含めて地獄へ落ちろ。

 侵略者相手に戦うことによって、ウクライナの人たちはウクライナという国の物語を編んでいる。ゼレンスキー大統領がドキュメンタリーで言っていたように、『侵略者相手に断固として戦った記憶がウクライナの子供たちの将来を切り開く大きな助けになる』というのは真理ではある。

 ボク自身は『パトリオティズム』にしろ、『国民国家』というものにしろ、あまり肯定的に捉えられない面もあります。
 が、『国民国家』が前世紀の遺物であったとしても社会を繋ぐ紐帯が他にないのなら仕方がありません。国民が自ら編んだ物語による社会の統合はロシアの奴隷になるよりマシでしょう。スターリンウクライナ人を1000万人近く餓死させてからまだ100年も経っていません。
 

 『戦争はダメ、殺すな』という普遍的な平和主義で物事を割り切れれば、どんなにか良いかと思います。しかし現実はそんなに単純ではありません
 実際 プーチンのように武器を持って殺戮を繰り返している奴が存在している。『殺すな』という呼びかけは続けるにしても、その言葉が説得力を持つでしょうか?ボクはそうは思いません。ガンジー公民権運動の非暴力だって計算ずく、『当時の状況では暴力より有効な手段と判断したから』行われていたわけです。
●かってイラク侵攻に反対したロック・ミュージシャンのパティ・スミススザンヌ・ヴェガウクライナ『軍』支援のためのチャリティ・コンサートに出演したそうです。
www.nikkei.com

 ウクライナの人にしろ、ロシアの人にしろ、多くの人が犠牲になる戦争なんて全く馬鹿げています。死は美化してはならない。しかし馬鹿げていても戦争を止めるための戦争だったら肯定しなくてはならない時もあります。その方がマシだからです。

 仕事が典型ですが、現実の世界では『正しさ』ではなく『どちらがマシか』で判断しなければならないことも多々あります
 日本の戦後リベラルがどんどん凋落しているのもそんなことすら判らない、現実離れした輩があまりにも多いから、でしょう。改憲の道を一歩一歩進めているのは安倍晋三みたいなバカウヨより、そういうお花畑な連中、例えば想田和弘のような連中かもしれません。


 と、いうことで、新宿で『パリ13区

 舞台はパリ、13区。エリート校を卒業したにもかかわらず、コールセンターで働きながら無為に過ごしている台湾系フランス人のエミリー(ルーシー・チャン)は、ルームメイトの募集広告を見てやってきたアフリカ系フランス人の高校教師カミーユ(マキタ・サンバ)と関係を持つ。一方、ボルドー地域で暮らしていたがソルボンヌ大学の法科に復学した32歳のノラ(ノエミ・メルラン)は大学になじめず、不動産会社に勤めることになる。彼女は、その会社を手伝っていたカミーユと出会うが。

 監督は『ディーパンの闘い』でカンヌのグランプリを取ったジャック・オディヤール。それより脚本が、2年前、本当に素晴らしかった『燃ゆる女の肖像』の監督のセリーヌ・シアマ、ということで見に行った映画です。

 この人は名作『ぼくの名前はズッキーニ』でも脚本を書いている人で、関わっていたら絶対見に行かざるを得ない。


 パリ13区というのはアジア系など多様な人種が住んでいて、再開発も進んでいる地域だそうです。認知症の祖母が所有するアパートを借りて暮らす台湾系のエミリー、そのルームシェア相手のアフリカ系の高校教師カミーユ、法律の勉強を再開するためソルボンヌ大に復学するノラ。そしてノラが見間違われることとなるネット上の風俗嬢、アンバー・スウィート。映画では男女4人の関係が描かれます。

●中国系のエミリー

 エミリーはマクロンやオランド、シラクなどを輩出したエリート校、パリ政治学院を卒業したにも関わらず、コールセンターで適当に働いて、適当に過ごしている。彼女は収入の足しにしようとルームシェア相手を募集します。そこへやってきたのが高校教師のカミーユ。エミリーは彼と直ぐ関係を持ちますが、2週間も経つとうまくいかなくなり、ルームシェアも簡単に解消されてしまう。

●エミリーとアフリカ系の高校教師、カミーユ(右)

 ノラは32歳。地方で働いていましたが、学位を取ろうとソルボンヌの法科へ復学したところ。ここいら辺は日本とは違いますよね。地方から都会へやってきた彼女は気分転換にウィッグをつけて変装、クラブへ出かけますが、ネット上で有名な風俗嬢、アンバーと間違われ、その噂が学校へ広まって学校にも居づらくなります。

ボルドー暮らしを切り上げてソルボンヌ大に復学した32歳のノラ

 不動産会社で働くことにしたノラは、その会社にいたカミーユと出会います。カミーユと付き合うことになったノラですが、うまくいかない。彼女はネット上でアンバーに声をかけ、悩みを打ち明けるようになります。
●ネット上のポルノスター、アンバー。ウィッグを被ってクラブへ出かけたノラは彼女に間違えられたことから、友人になります。

 全編白黒で描かれた、古典的にも見える映画です。しかし分割された画面や、前衛的なエレクトロ音楽など現代的な手法を使いながら、マッチングアプリやネット上のセックス、異性、同性を問わないカジュアルな性関係など、多民族が暮らす現代パリの若者たちの恋愛や性的関係を描いています。

 登場人物たちは30そこそこ、子供ではありません。だけど大人にもなり切れていない。

 カミーユもエミリーもノラも自由に生きているように見えて、自分に嘘をついている。それどころか、性格もどこか欠落している。あまり共感できるような人たちではありません。一番まともなのがネット上のポルノスターのアンバー、というのが如何にも、という感じです。

 性的な関係を結んでも分かり合えない者同士で唯一、分かり合えるのがネット上で知り合ったアンバーとノラ、しかも同性、というのが実に皮肉が効いています。

●左からエミリー、ノラ、カミーユ

 共感できない登場人物たちですが、ツンデレで死ぬほど性格が悪いエミリーはボクは凄く良かった(笑)。

 ノラ役のノエミ・メルランは脚本を書いたセリーヌ・シアマの『燃ゆる女の肖像』にも出ていましたが、殆ど同じキャラクターなのは笑いました。この人はセリーヌ・シアマの彼女だそうですが。

 カッコいい画面と音楽、時折挿入される美しい画面、スタイリッシュな映画です。このスタイリッシュさはボクは好き。
 監督はコメディと言っていますが、あまりコメディぽくは見えなかった。この作品はエリック・ロメールの『モード家の一夜』へのオマージュとも言われていますが、確かに似ている部分があります。人と人との距離を容赦なく見せつけてくる。

 若い登場人物たちはセックスやテクノロジーを使って他者とのつながりを模索し続けます。時代が変わっても人間がつながりを求めるのは変わらない、とでも言っているかのようです。だけど、どんなに時間を費やしても、テクノロジーを使っても、孤独、という病は癒せません。

 

 そんなに重くない、お洒落で皮肉を利かせながら現代を切り取った作品。すごく共感できるとか、深く感動するような感じではないけれど、多様な視点が当たり前になった世界に生きていく人間には、ちょっとした心の養分になるお話です。

www.youtube.com








『国際特集』:『アジア最新情報』とBS世界のドキュメンタリー「戦時下の大統領 ゼレンスキー」

 桜は、すっかり散ってしまいましたが、今度はつつじが咲き誇っています。なんだかんだ言って、世界って良く出来ています。って言うか、元来 人間の感性は自然に沿っているものなのでしょう。
 つつじの他にも花は咲いてますが、ボクは植物の名前は全然わかりません(笑)。とにかく綺麗です。
 毎日の辛さをお花が一瞬でも慰めてくれるのはホント、ありがたいです。

●六本木の新国立美術館。様々な色のつつじがきれいでした。
 


 楽しいゴールデンウィークですが、経済の方は心配です。
 もの凄い勢いで円安が進んでいます。ただでさえ資源高のところに円安ですから、ますます物価は上がる
 昭和の時代なら国内で生産したものを輸出して食っていましたから円安はOKでした。しかし今は工場なんかとっくに海外移転しています。例えばトヨタの自動車生産台数は年間で858万台、そのうち日本で作っているのはその3分の1の276万台です。
www.fnn.jp

 輸出企業ですらこれが実態です。円安が進めば進むだけ資源を輸入しなければやっていけない日本は貧乏になる、ということです。日本の企業や土地が割安になって外国企業からの買収も進むでしょう。
 でも円安を止めるために金利を上げたら借金が残っている企業、特に中小はバタバタ潰れる。失業補償を拡充してゾンビ企業を潰していくのは長期的には良いかもしれませんが、社会的には難しい。金融緩和を進めて円安をもたらしたアベノミクスという政策は、日本経済そのものを麻薬中毒にするようなものでした。

アベノミクスのツケ、どうするんだよ(沈む船を止める手はない)


 さて、今日は国際特集です(笑)。

 最初は 身近なアジア事情から。
 上海の方はロックダウンが続いています。ちょっと前に勤務先の現地の人から話を聞きましたがspyboy.hatenablog.com、また、最新の話を聞きました。

 TVで報じられている’’食料がない’’というのは主に貧困層の人が住んでいる地域、と言っていました。他の地域は不便はあるけど大きな問題はないと、言ってました。ただ、ビールが切れた!と、文句は言ってました(笑)。

 先々週くらいまでは全然問題なかったそうですが(地域差はある)、中国流の完全ロックダウン!が1か月を迎えて『流石にやばい』となってきたようです。社会活動がほぼ止まっているんです。

 日系企業で言えば、4半期決算が出来なかったり、従業員に給与が払えないなどの問題が起きています。ロックダウンで会社に出社できないのですから、決算どころか、給与だって払える訳がありません。決算が出来なかったら、日本の本社の四半期決算にも影響が出る。給与が払えなかったら、現地の従業員の反乱がおきる(笑)。

 ただし、さすが中国で、共産党に●ネがあれば何とかなるそうです。安倍晋三と同じ『人治主義』(法律無視のコネ社会)(笑)。具体的な例としては医療や警察など緊急車両は通行OKなので、コ●を使って救急車をタクシー代わりに使って出社させて給与の支払い手続きをさせたなんて企業の話も聞きました(笑)。

 それでも、さすがに従業員が大勢出社する訳にはいきません。工場はほぼ全て止まっている。と、なると、これから日本にも供給の問題が出てきます。結論として、『これ以上長引くとやばい』そうです。日本の景気にも影響がでてくるでしょう。中国共産党はゼロコロナ政策を見直す気はあるのでしょうか。
 やっぱり間違いを認めない政府って恐ろしい。いまだにPCR検査を拡充しない日本も同じですが。

 ついでにベトナムのお話です。一時帰国した人に話を聞きました。
 あちらではロシアの侵略戦争に対する反感は殆どないそうです。国民感情面では今でもロシアとつながりが強くて、冷凍保存して展示しているホーチミンの遺骸を毎年モスクワに送ってメンテしているほどだそうです。今のロシアは共産主義国ではありませんが、まだまだつながりは強いみたいです。
 ボク自身は、社会主義国と言ってもベトナムは西側への輸出で経済が成り立っていますから実質的に資本主義国か、と思っていたのですが、間違っておりました(笑)。

 国連総会でロシア非難決議を棄権した国は幾つもありましたが、そういうつながりがある国は他にもあるんでしょう。ボクがキューバ人だったら、苦しい時助けてくれたロシアの味方をするのは判らないでもない(笑)。
 やっぱり戦争の恨みは長く残る。そして、困ったときに助けたら覚えていてくれる。どこかの恥知らずな国は政府からして健忘症みたいですが(怒)。


 
 おまけ
 冗談が大好きな某大学の学長さんの話を聞きました。この、プーチンとグデーレス国連事務総長の会談の机の距離、’’まるで自分の家みたいだ’’と言ってました。彼は三世帯同居だそうですが、コロナ対策の為 お孫さんとこれくらい?距離を離さなければ、一緒にご飯を食べさせてもらえないそうです( ´艸`)。 

グテレス国連総長と会談のプーチン氏、歩み寄り見せず…停戦交渉停滞でウクライナ非難:写真 : 読売新聞オンライン



 この前の 日曜夜、NHK-BS1でやっていたドキュメンタリー「戦時下の大統領 ゼレンスキー」、面白かったです。
www.nhk.jp

 今年作られたばかりのドイツ制作のドキュメンタリーです。もともとボク自身はゼレンスキー大統領自体にそれほど知識も興味もなかったのですが、ユニークなお話でした。
 
 皆さん、ご存じのようにゼレンスキーは元コメディアン。彼が脚本を書いたテレビのコメディドラマ『国民のしもべ』で大統領役を演じて人気を博し、そのまま大統領になってしまった、という人です。

www.youtube.com

元々コメディアンとして人気だったゼレンスキーに資金を出してテレビドラマをやらせたのは親ロ派のオリガルヒ(イゴール・コロモイスキー)だったそうです。放送したTV局も親ロシア派のオリガルヒが運営していた。
 選挙戦中もそのことが突っ込まれたそうですし、当初の彼は親ロシア派と評されることもあったようです。

 当時のウクライナは政治腐敗、経済低迷、それにロシアのクリミア併合に加えてドンバス地方への侵攻、と問題山積でした。そういう時期だったからこそ清新なイメージがある彼が選ばれました。

 行政経験のない全くの政治素人だった彼は外国に向かって、きちんと意思表示できるか危惧されていました。ドイツとフランスの仲介でプーチンと和平会談をしても埒が明かなかった。2000年の大統領選の際 トランプが4億ドルの軍事援助と引き換えにバイデンの息子の不正の証拠を調査しろと圧力をかけてきた際も、消極的に拒否するだけでした。
 これらの姿勢がプーチンに舐められた、という見方は確かにあるのでしょう。

 更に昨年秋 エリザベス大統領、プーチン、ブレア元首相などタックスヘイブンを利用していた政治家や有名人を暴いたパンドラ文書(パナマ文書の続編です)の中でゼレンスキーの名が挙がりました。コメディアン時代の財産を、タックスヘイブンを利用して国外に置いていたのです。 

 もちろんタックスヘイブンの利用は違法ではありません。日本の銀行だって、海外に投資する際はタックスヘイブンの活用を普通に勧めてきます。法制度の問題です。ただし、国民的人気だけが資産のゼレンスキーには打撃は大きい。


www.chunichi.co.jp


孫正義氏やドンキ創業者… 日本の財界人も多数登場 租税回避地巡る「パンドラ文書」|【西日本新聞me】

https://www.bbc.com/japanese/58784715

 しかし、ロシアとの関係が緊迫するに従い、ゼレンスキーは変化を見せます。
 彼を応援していた親ロシア派のオリガルヒを切り捨て、『国民のしもべ』を放送していた親ロシア派が経営しているテレビ局も閉鎖させます。と、同時に国民や世界に対する呼びかけを始める。『自由と尊厳以外我々は失うものはない。我々は奴隷にならない。それが我々の意志だ。
 ロシア軍が攻め込めばゼレンスキーは直ぐ逃亡すると思っていたプーチンの思惑とは正反対、文字通り命を懸けた訴えを続け、国民を団結させた。
 あとは皆さん、ご存じの通りです。

 ロシアとの紛争がこれからどうなるか、それは分かりません。
 それでもゼレンスキーは『ウクライナの子供たちに、大人たちがどう行動したか、という記憶を受け継がせたい』と言います。『世界中の人たちが我々がとった行動を記憶に刻んでいる。将来 新たな国難が起きても、その記憶がウクライナの子供たち、孫たちを助ける力になる』と言うのです。

 これは阿片戦争で清の政治家、林則徐がイギリスと戦った理由と同じです。林則徐は戦争覚悟でイギリスからの阿片密輸を取り締まり、没収して焼き捨てました。
 当時の超大国イギリスに麻薬を押し付けられて何も抗議しなければ中国の精神そのものが弛緩する。たとえ負けるに決まっていても不正に対して戦った記憶が100年後に国を再興させる、と林則徐は考えていたようです。偏狭なナショナリズムになりかねない問題もありますが、林則徐の考えは正しかった。今の発展した中国があるのも、阿片戦争で軍だけでなく民衆もイギリスに抵抗した記憶が大いに助けになったに違いありません。

 民間人への虐殺が多数発生していることからわかるように、ロシア相手に無条件降伏しても、国民の命が助かるとは限りません。世の中にはそういう相手もいるのは事実。
 ロシアは既にモルドバにだって食指を伸ばしているのですから、ウクライナの次はバルト三国ポーランドフィンランドだって危ない可能性は高い。ゼレンスキーが『ウクライナはヨーロッパ全体のために戦っている』と言っているのは一理あります。

 平和主義で平和や自由を守れるとは限りません(守れることもあるでしょうけど)。『常に戦っていなければ自由は得ることはできない』とゼレンスキーは言っていました。民主主義と同じですね。
 考えさせられるドキュメンタリーでした。5月4日に再放送があります。