特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『立憲の党首選』と『本当に神を見た(笑)』:映画『リスペクト』と『アメイジング・グレイス』

 金曜日 勤務先からの帰り道 大勢の人が何故か空を見上げている、と思ったら、皆既月食だったんですね(笑)。

 

 立憲民主の党首選が始まりました。少しでも政権交代の可能性がある、まともな野党は立憲民主しかないのですから、せいぜい盛り上げてもらうしかありません。が、それを報じる今の新聞はこんな感じ↓、です。

 昨日は立憲の4候補が出ているNHK日曜討論を珍しく見てみました。企業中心の経済成長ばかり主張する時代遅れの発想の元日銀の慶應の教授と若者代表と称する中年のおっさんという訳の判らないゲストが4人に茶々を入れる酷い番組でした。

 4人とも悪意のあるorバカなゲストに良く我慢して対応していました。ボクだったら絶対怒ってしまってましたよ(笑)。それだけでも立派(笑)。

 話を聞いていて、西村という人は論理的な受け答えができない、ちょっと頭が弱いのではないか、また逢坂氏は一番まとも、特に比例区単独1位に女性候補を並べたい、と言っていたのは素晴らしい、とは思いました。

 あとは4候補の違いは良い意味で、良く判らなかった。どれもごもっとも、です。

 ただ、小沢一郎が推薦しているというだけでも泉氏は×だし、小川淳也氏は時期尚早、と思っています。立憲の役員室長の大串氏は出馬を止めて小川氏支援に回ったそうですが、逆に小川氏が出馬を止めて大串氏を支援する側に回って恩を着せれば良かったのに。是非は別にして希望の党出身の彼にはまだ、仲間がそれほど多くないのは確かなようですし。
●どこまで本当か判りませんが複数のメディアが言ってることを勘案すれば、内幕はある程度判ります。
小川淳也 涙のギリギリ出馬“舞台裏” 今も残る排除の禍根と立民特有の体質が浮き彫り に(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース
失言が心配な小川淳也氏に敷かれた包囲網「自民党のどっかの派閥と同じ」と批判も〈dot.〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース

 TVも新聞もマスコミの論調は悪意を持っている、としか思えないようなものばかりです。リベラルと言われる朝日や東京新聞より、事実を伝えると言う面では読売や日経の方がボクにはまともに見えます。


news.yahoo.co.jp

 特にマスコミの連中がふってくるのは共産党との話題ばかりじゃないですか。4候補とも違いは殆どないのだから、そんなことは論点でもなんでもない。それよりどんな政治を目指すのか、の方が遥かに大事なのに。

 共産党との共闘ばかりに焦点を当てる連中は絶対ストーリーを作ってるなーと思います。たかだか記者風情、傲慢ですよ。

 と、いうことで、新宿で映画『リスペクト

gaga.ne.jp
公民権運動に関わる牧師の娘として生まれたアレサ・フランクリンジェニファー・ハドソン)は父の説教の場で歌う度に圧倒的な歌唱力で天才と呼ばれていた。しかし愛する母との別れや強権的な父(フォレスト・ウィテカー)の抑圧で自分を表現することができないでいた。やがてレコードデビューした彼女だが、歌唱力はあるもののヒット曲には恵まれない。彼女は父親に反抗するかのように女たらしの夫(マーロン・ウェイアンズ)と結婚するが、今度は夫の束縛に苦しめられる。ぎりぎりまで追い詰められた彼女は、自分の気持ちを正直に出す事、つまり女性であること、黒人であることを歌で表現することで大ヒットを出していく。

 2018年に亡くなったアレサ・フランクリンは’’史上最も偉大な歌手’’(ローリングストーン誌)として知られています。
 ボクは彼女のファンという訳でもありませんが、映画『ブルース・ブラザース』に出てきた彼女の歌唱シーンが素晴らしかったのは印象に残っています。

 アレサが偉大なことは判っているし、生前のアレサから彼女を演じることを指名された主役のジェニファー・ハドソンも凄い歌手であることも判っているので、とりあえず見に行きました。

アメリカ版のポスター:バックがやたらと明るい日本版、おかしいでしょ

 アレサは子供の時から天才の名をほしいままにしていました。公民権運動に関わっていた牧師の父の家にはキング牧師、それにダイナ・ワシントンやサム・クックのような有名歌手が出入りしています。すごい環境です。彼女はそんな観客の前で、子供の時から歌っていたわけです。

●父親は高名な牧師であるだけでなく、公民権運動にも関わっています。しかし家族には強権的にふるまいます。アレサの母親はそれに耐えかねて離婚。

 その一方 アレサが少女時代に性的虐待を受けていたことや強権的な父親から逃れて離婚した母親との関係、十代の時の望まぬ出産などが人格に影を落としています。これらの出来事がアレサを歌う機械に変えていた。他人に歌えと言われていたから歌っていただけで、自分の意思では歌っていなかったのです。
 女性監督らしい描写は繊細で露骨な描写は避けています。でも判る人には判るように出来ていて、非常に優れています。 


 彼女はコロンビアレコードの伝説的なプロデューサー、ジョン・ハモンドに見い出されて、レコードデビューします。
 ちなみにジョン・ハモンドという人はヴァンダービルド財閥出身にも関わらず人種的な偏見もなく、ビリー・ホリデイベニー・グッドマン、ディラン、スプリングスティーンを発掘した、これまた物凄い人です。まさに世界の偉人レベル。
 しかし彼の腕をもってしても、アレサにヒット曲を出すことはできなかった。NYの、そしてジョン・ハモンドの洗練された音楽には彼女はマッチしなかった。

 誰もが才能を認めつつも鳴かず飛ばずだった彼女はレコード会社を移籍、新しいプロデュ―サー、ジェリー・ウェクスラーと巡り合います。

 彼に勧められアレサは南部アラバマ州で白人ミュージシャンを集めてレコーディングするという新しい手法を試します。そこで彼女は’’ソウル’’という新しい音楽を見出します。彼女のルーツである教会音楽、ゴスペルから宗教的な部分を除いたものです。そこにマッスルショールズ・スタジオの白人ミュージシャンの、重くてねっちこいリズムが絡み合う。
 ここの描写はめちゃめちゃ面白かった。音楽を作る過程を、よくぞ、ここまで表現したと思いました。

 アレサは私生活では謹厳実直な父親に反抗するかのように、女たらしで悪名高いテッド・ホワイトという男と結婚、マネージャーを任せます。

 この男はバカなくせに嫉妬深く、彼女を束縛したり、暴力をふるう。アレサもクズ男をさっさと切ればよいのに、甘い言葉をささやかれると許してしまう。DVの良くあるパターン、まさに共依存です。
 才能ある女性がこういうダメ男に引っかかる話は良くありますが、どうしてなんだろう。

 しかし、彼女はテッド・ホワイトや父親から受けた仕打ちへの気持ちを歌に込めるようになります。そこで生まれたのが全米NO1になった『リスペクト』。そこから彼女の快進撃が始まります。彼女が公民権運動に積極的に参加したり、ブラックパンサーを支持する記者会見をやったりするところも興味深い。

 やがて彼女はテッド・ホワイトと決別、まともな人間である新しい夫にも出会います。
 しかし、好事魔多し、今度はアレサはアルコールに溺れるようになります。周囲との人間関係も崩壊寸前。映画の中では度々、’’自分の中にデーモンが居る’’と彼女はつぶやいています。自尊感情が不足している彼女の人生には破壊願望が時々顔を出します。
●アレサの姉妹も歌作りに参加します。

 彼女は神の言葉に救いを見出すようになります。そして再起を賭けて自分のルーツである教会音楽、ゴスペルだけでコンサートを開き、ライブレコーディングを行います。

 歌手の生涯を描いた映画ということで、ちょっと前に流行ったクイーンをテーマにした『ボヘミアン・ラプソディ』を思い出します。あれはフィクションがかなり入っているせいもあって、こちらはあそこまで劇的な話ではありません。エンタメとしては負けているかも。しかし公民権運動、フェミニズム、自身との闘いを繊細に描いている内容の充実度は遥かに勝ります

 なによりもやってる音楽のレベルがクイーン『ごとき』とは全く違うので(笑)、圧倒的な充実度があります。お話ではなく、音楽の力でねじ伏せる。
 主演のジェニファー・ハドソンは当代随一の歌唱力を誇る歌手ですけど、頑張って演じたと思います。大変なプレッシャーだったと思いますが、アレサの物まねをやってるのではなく、説得力のある音楽をちゃんと演じている。素晴らしいです。

 特にクライマックスの’’アメイジング・グレイス’’は名唱のレベルです。アレサ自身の解釈とは全く変えているけれど、十二分に説得力がある。彼女の起用はアレサ自身の指名だそうですけど、良くやったとしか言いようがない、満足しました。

 と思ったら、そのあとエンドロールで晩年のアレサ・フランクリンキャロル・キングの歌を歌うシーンが流れます。
 客席にオバマ夫妻が居たから、ミシェル夫人オバマ自身のバースデー・コンサートか何かだと思います。これがすごい。ものすごい。たった1曲歌うだけですけど、号泣してしまいました。ジェニファー・ハドソンも凄いけど、アレサ・フランクリンはその何十倍も凄い。

 ジェニファー・ハドソンの熱演を最後にぶち壊してしまうのはどうか、と思いましたが、素晴らしい映画であることは間違いありません。

www.youtube.com


 、エンドロールにあまりにも感動したので、映画のクライマックスになった72年、LAの教会で行われたコンサート2日間のドキュメンタリーをDVDで見たんです。名監督のシドニー・ポラックが撮影したがなぜかお蔵入り、幻のフィルムと言われていたそうですが、近年発掘されたもの。日本では今年5月公開。

 殆ど『神を見ました』。ただ、静かなアレサの歌で観客が感動して泣いているだけでなく、トランス状態になって錯乱する奴まで出てくる。バックの聖歌隊も泣いている。ピアノを弾いている牧師まで号泣してピアノが弾けなくなって、後ろへ引っ込んでしまう。こりゃあ、どうなってるんだ。

 キリスト教なんか門外漢のボクですら、アレサの歌声に心の平安を感じました。『神を見た』って、ローリングストーン誌か何かの評ですが、ボクもそう思った。神様って本当にいるんだと思いました。正確にはアレサは神というより預言者かもしれませんが。『リスペクト』で背景を理解してから、こっちを見るととんでもない光景が展開されていることがわかります。凄いドキュメンタリーです。
 こんな歌手がいたとはなあ。

『ノー・ニュークス・コンサート1979』と『たかが地球の終わり』(COP26 )

 今日は重要な日(笑)。『ノー・ニュークス・コンサート1979』の発売日です。

 79年、スリーマイル島の事故を受けて原発廃止を訴えるコンサートがNYで開かれました。ドゥービー・ブラザースやトム・ペティジャクソン・ブラウン、クロスビー・スティルス・ナッシュ(日本のアルフィーの元ネタとなったバンド)など豪華スターが出演した一大イベント。映画にもなりました。

 当時売り出し中のブルース・スプリングスティーンも『出演することが原発に対する声明だ』と言って参加しました。ボクが原発に関心を持つようになったのも、それが切っ掛けです。
 その頃 日本では原発のことなんか誰も知りませんでしたよ。チェルノブイリよりも前の話です。高木仁三郎氏らが孤軍奮闘していたくらいです。

www.sonymusic.co.jp

 ボクは高校生の時、CBSソニーの地下室でショーの一部を見せてもらったんですが、ビックリ仰天、ひっくり返りました。こんなステージが世の中にあるものなのかって。溢れるようなエネルギーはちょっと、言葉では表現しがたい。
 映画などで今まで部分的にしか見ることが出来なかったスプリングスティーンのショーがレストアされて90分、フルで見られるようになった。

●『1979年のブルース・スプリングスティーンとノー・ニュークス物語』(日本語字幕付)
www.youtube.com

 もっと若い時に全編を見たかったけど、見ることが出来て幸せです。生きててよかった(笑)。

●予告編です
www.youtube.com


 さて、今週 国会議員の文書通信費100万円の話がずっと取り上げられてましたけど、全くバカみたいです。
 偉そうに指摘していた維新ですが、吉村だって16年に国会議員を1日で辞任して自ら100万円ガメてたり、今回の新人議員の100万を自党に寄付させたり、見事なブーメランぶりです。

 しかし、そういうことはマスコミはあまり報じません。視聴率欲しさに大衆受けしそうなシンプルなストーリーをでっちあげ、アホな国民がまたそれに乗せられる。

●維新もれいわも’’政治ゴロ’’という点では共通しています。自民ではなく、自分たちが勝てそうな相手=立憲や共産を仮想敵にしたてて、自分たちの権力強化に利用する。どちらも、それで商売をするマスゴミがついているのも一緒です。

 戦前『鬼畜米英』と朝日新聞が煽って商売をしていたのと変わっていないじゃないですか。橋下は維新から3000万以上も講演料を受け取っているんでしょ。

 

 100万円ごときの文通費よりアベノマスクの400億円、4兆円と言われる今回の10万円給付などいくらでも報じるべきものはあると思いますが、マスコミも国民も文字通り頭が腐っている。
 村八分の時代から、『妬み』がこの国の行動原理なのかもしれません


 さてさてグラスゴーで行われていたCOP26がニュースになってました。結論は『地球は終わった』ってところではないでしょうか(笑)。
www.jiji.com

 実際に地球が終わるかどうかは別にして、少なくともボクが生きている間、2060年くらいまでは大規模な気候変動の影響は避けられないことは既に確定しました。


www.bbc.com

 協定では’’気温の上昇を1.5度以内に抑えるのを目指す’’と言及されたし、今の目標をクリアするだけでもかなり大変です。やらないよりはマシどころか、それなりの一歩ではあると思う。2019年の温室効果ガス排出量は世界全体で300Gtを超えています。それを2030年には41.9Gtにしようというのですから大変です。
しかし、来年 追加対策を決めるとは言え、今回決定した内容ではとても足りないこともはっきりしています。

【COP26】 新しい気候合意採択、石炭の使用削減に言及 - BBCニュース

 COP26の議論の前提になったIPCCが発表した報告によると、地球の気温は下のグラフのような感じで変化していきます。様々なシミュレーションを計算していますが、簡単に言うと黄色の線(SSP2-4.5)が『グラスゴー協定の合意に最も近いシナリオ』です。勿論きちんと履行された場合です(笑)。

f:id:SPYBOY:20211117103055p:plain
*気象庁の和訳を使っています。
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/IPCC_AR6_WG1_SPM_JP_20210901.pdf

 その場合でも2040年には1.5度、2060年までに2度、2100年までには2.7度気温が上がることになります

f:id:SPYBOY:20211117103639p:plain

 これでどんなことが起きるかというと例えば、気温が2度上がる2060年には酷暑の頻度は現在の2倍以上になる。

f:id:SPYBOY:20211117101905p:plain

 大雨の頻度は今より30%、干ばつは40%も増加する

f:id:SPYBOY:20211117102019p:plain

 海面の高さも2100年には70センチくらい上昇する。

f:id:SPYBOY:20211117104300p:plain

 海面が1メートル上昇すると、多くの都市で大規模洪水のリスクが現実的なものになります。ヴェニスは勿論、アムステルダムニューオリンズホーチミンバンコクもやばい。人口1500万人の巨大都市コルカタも、です。日本だって影響がでるでしょう。


【COP26】 新しい気候合意採択、石炭の使用削減に言及 - BBCニュース


 これはどうしたものか。どのシナリオでも、例えグラスゴー協定より更に温暖化ガスを削減しても2030年では気温の1.5度上昇は避けられません。どう転んでも異常気象はもっと酷くなるということです。
 にもかかわらず、COP26には大勢の人がジェット機、へたすればプライベートジェットで来ている。どこまで真剣なのか判らない。

 だから世界の若者たち、いわゆるZ世代が気候変動問題に怒るのはよくわかります。日本のマスコミは相変わらず他人事ですが。

 ちなみに今週水曜の日経1面にも引用されたアメリカの世論調査会社、ピューリサーチセンターの調査によると、2015年と21年を比較して環境に対する深刻な危機意識が下がったのは日本とアメリカだけだそうです(笑)。アメリカはトランプの影響だそうですが、日本人はどこまで能天気なバカぞろいなんだ(笑)。

●15年と21年、気象変動に深刻な危機感を持つ人の割合の変化。アメリカ、特に日本は危機感を持つ人が減っています(笑)
 
日本人の気候危機への意識は低いのか?-ピュー・リサーチ・センターの調査より|Takayuki Shimakura|note
www.cnn.co.jp

 かと言って、ベストセラーの『人新世の資本論』が主張するような脱資本主義、グリーン社会主義とか言っても、それくらいじゃ全然間に合わない。

 気候変動を防ごうと思ったら、現在の温暖化ガス排出量 約300Gtを10分の1以下にしなければいけません。普通に考えたら脱資本主義というより、もう脱文明でしょう(笑)。

 例えば火力発電の全面廃止は勿論、飛行機を使った出張や観光旅行は禁止、自家用車禁止、リニアモーターカーも新幹線も禁止、完全地産地消とか、24H営業のコンビニやファストフード禁止とか、環境負荷が大きい牛肉は禁止して昆虫食とか、そんなことが現実的なのでしょうか。
 また新興国に『お前らは自家用車を使うな、再生エネ以外は電気を使うな』と言えるのでしょうか

 ボク自身は観光旅行も自家用車もコンビニも牛肉も全面禁止で全く構いません(笑)。人間は徒歩圏内で生きていくのが自然だし、リニアモーターカーなんかとんでもないと思っています。ただ、それをすれば今の文明の形は全く変わってしまいます。
 
 例えば是非は別にして、関連産業まで含めれば日本のGDPの2~3割は自動車関連でしょうから、それが半分になれば大変なことになる。コロナの影響どころではありません。食料だって輸入できなくなる。
 
 また欧州が温暖化対策を強調するのは北海油田の枯渇と自分たちの都合の良い規制を作って金儲けするのが目的ですから、そこも注意しなくてはいけない。例えば、EUの国境をまたぐ炭素課税に対して、インドなど新興国は『差別的』とまで言っています。

 温暖化対策は必要にしても、日本も主張すべきは主張して賢く振舞わなくては、これまた、連中の思う壺です。石炭火力なんて論外にしても、例えば日本の強みである省エネや鉄道技術などの効果はもっと主張しなくてはいけないでしょう。

 今 金融庁は上場企業の財務諸表に気候変動関連情報の開示を義務付けする、と言ってますが、バカげた話です。勿論 企業も省エネ、省資源などの温暖化対策は重要ですが、所詮は『作った数字』です。数字をでっちあげるインチキなコンサルや広告代理店が舌なめずりしてるでしょう。また電通みたいな連中を儲けさせるのか
 

 金儲けのためには地球上の資源をどんどん使い、より遠くへ、より速く移動することを是とする今の資本主義の形は変えなければいけないし、変わっていくでしょうけど、一気に全部変わるなんてムリでしょう。

 北朝鮮みたいな独裁国家にしない限り、飛行機や自家用車、ファストフード禁止なんてことはできないでしょ(しつこいですがボクは禁止で構いません)(笑)。『人新世の資本論』の致命的な欠点は『コモンとか言っても、特定な価値観を強制したら北朝鮮みたいな独裁国家になりかねない』ということです。子供じみた革命幻想なんて有害無益

 温暖化対策の努力は徹底的に進めるにしても脱文明は難しい以上、我々は気候変動の影響と共に生きていかざるを得ないようです。まず、この現実を皆で噛みしめるのが気候変動対策の第一歩でしょう。
 老後はとりあえず、洪水や大雨、台風に強いところへ引っ越しするしかないみたいです(笑)。


 

映画『これは君の闘争だ』

 駒沢公園イチョウも色づいてきました。秋の深まりを一層感じます。

 この週末は九州へ転勤している友人が戻ってきたので、代官山でランチをしてきました。

 お天気も良かったので散歩がてら、家から店まで1時間歩いたあと、昼に飲むシャンパンは気持ちよかったです(笑)。街に小汚い酔っ払いがいないだけ、昼の方が夜より雰囲気が良いかもしれません。
 二世・三世議員みたいな連中は知りませんが、たいていの人にとって世の中は辛く、苦しい。それをアルコールで麻痺させながら笑顔で耐え忍ぶ、という感じでしょうか(嘆息)。それでも健康で仕事がある、それだけで感謝しなくてはならないのでしょう。


 大変な世の中と言えば、今日 お昼に中華屋へ入ったら、アメリカへ渡った元皇族の女の子の話がワイドショーで流れていました。本人がアメリカに行ってまで、やってるんですね。

 若い女の子が誰と結婚しようと知ったことではないし、本人の好きなようにさせてやるのが大人の寛仁大度というものです。放送している連中もTVを見ている連中も自分が恥ずかしくないんでしょうか。
 今回の話は皇族ですら『こんなバカな国民は相手にしてらんね』って、日本を見限ったってことでしょ。皇族にすら見限られる国、ニッポン(笑)っていう事実をもっと自覚するべきだと思いますね。


 と、いうことで、青山で映画『これは君の闘争だ

www.toso-brazil.jp

 2013年6月、ブラジルのサンパウロで公共バスの料金値上げに対する抗議デモが行われた。通学にバスを使っている中学生、高校生も数万人規模でデモに参加、議事堂を占拠、料金値上げを撤回に追い込む。2015年サンパウロ州政府は96もの公立高校を閉鎖し、20万人もの学生を転校させる公立学校の予算削減案を実施しようとするが、学生たちは200以上の学校で学生たちによる占拠が敢行され、削減案を撤回に追い込む。たび重なる汚職や治安悪化によって、14年間続いた左派政権は群衆の支持を失い、2018年に『一切の社会運動を根絶やしにする』と公言するジャイル・ボルソナロが大統領選に勝利し、ブラジル初の極右政権が成立してしまう


 オリンピック、不況、左派政権が倒れ極右政権の登場と、激動の2010年代ブラジル社会を学生たちの視点から描いたドキュメンタリー。ベルリン映画祭のジェネレーション部門で初公開され、アムネスティ・インターナショナル映画賞と平和映画賞を受賞。2019年山形国際ドキュメンタリー映画祭で優秀賞を受賞した作品。監督はエリザ・カパイという女性。

 映画では実際の学生運動に参加した3人の学生たちが当時の運動を振り返りながら、それぞれの意見をヒップホップ・ミュージックに乗せラップバトルのように衝突させていきます。彼女たちは民主的な政権下で育ったブラジル最初の世代だそうです。
●実際の闘争に参加したルーカス(右)、ナヤラ(中央)、マルセラ(左)、3人の学生のナレーションで映画は進んでいきます。

 硬い映画、深刻そうな映画のようですが、全然そんなことはありません。若い3人のラップのようなナレーションはユーモアとリズム感に溢れて大変小気味よい。お話はすいすい進んでいきます。
 もちろんボクにはブラジル人が話すポルトガル語は判りませんが、やっぱりリズム感が全く違うんだなーと思いました。映画の写真を何枚かご紹介しますけど、殆ど皆、中学生か高校生です。外観はとてもそうは見えません(笑)。

●ラッパーとしても活躍するルーカス

 ブラジルの学生たちのパワーに圧倒されます。即興で歌いながら、踊りながら、バス料金反対のデモでサンパウロの街を埋め尽くす。とにかく陽気です。日本のデモは勿論、アメリカやEUのデモとも全く違う。
●運動を主導するサンパウロ州学生連盟のリーダー、ナヤラ

 これで皆、10代というのも驚きです。既存の政党や市民団体の大人たちに影響されたりしたものではなく、首長や政治家に対して自分の意見をきっちり主張する。
●15歳で学校占拠に参加したマルセラ(左)。右の子は催涙弾対策でゴーグルを被っています。

 例えば公立高校を再編する案に反対して学校を占拠した際は、当初、マスコミの報道は低調だったそうです。そこで学生たちはマスコミに報道させるために、学校だけでなく、一般道路を占拠して通行止めにする。
 当然 通勤途中など一般のドライバーたちは怒って、学生たちに詰め寄ってきます。しかし学生たちは、『公立学校の再編は貧しい家庭の子供たちの教育の権利が損なわれかねないから、申し訳ないけど我慢してくれ』と反論する。そこで議論が生まれます。是非は別にして、民主主義の原点を見るような思いがしました。
●学生たちのデモ。ものすごい人数です

 また警官(軍警察)はバンバン催涙弾を撃ってくるだけでなく、子供たちに暴力をふるってくるのも驚きます。女生徒が頭を殴られて救急車で運び込まれるシーンがありますが、警官は一応は法を守る意識はあるものの、日本人の感覚から見ると暴力的です。
●この次の場面では警察が警棒で学生たちを殴ってきます。

 まあ、日本の警察も必ずしも平和的ではありません。311後の反原発デモでは、ボクの目の前で老人が警官に殴られて血を流したり、有楽町のガードレール下の暗い場所(報道のカメラがいない場所)になると機動隊が隊列に襲い掛かってくることもありました。労組や既存の団体とは全く異なる、反原発デモは一般の市民ばかりが目立つので、参加者を何人か捕まえて、既存の組織と繋がりがあるのかを探ろうとしたらしい。つながりなんかある訳ないんですが。
 それでもブラジルの警察はカメラの前でも学生を普通に殴ってたので、やっぱり違うかな。
●警察は盾を叩きながら威嚇して、学生たちに襲い掛かってきます。

 あと、やはり日本とは文化が違う。学生たちは集会をやりながら、端っこへ行って恋人同士で普通にいちゃいちゃしていたりする。ナレーションではマルセラちゃんが『お楽しみ』もなくちゃいけない、と言ってました(笑)。
●学生たちの集会。政党とは何の関係もなく、彼らたち自身の意志で集まっています。

 人目をはばからないのは異性同士だけではありません。同性もです。全然はばかるところがない。
●学生たちはLGBTQ+の権利も主張します。愛し合うもの同士の権利を認めろと。


 とにかく、政治的な意見を言うことすらはばかる白痴なみの奴隷臣民ばかりの日本とのあまりの違いには頭がクラクラしてきます。
●学校占拠の光景。皆、中高生です。

 ただ思ったのは、そんなブラジルの社会は貧富の差も激しく(将来性は日本より遥かに明るいにしても)、政治の汚職も酷い。必ずしも暮らしやすい社会ではありません。奴隷臣民だらけの日本とどっちがどうだろうか。

 単なるアホかもしれないけど、自己主張の強い国ではマスクをしない自由やワクチンを拒否する自由を主張する人もいるわけです。日本はワクチン接種率の高さなど自己主張の少なさがプラスになっている面もないわけではありません。

 また日本では政治運動をやる学生は数少ないけれど、ブラジルの子たちと同じくらいの真剣さで就職活動をしたり、起業したり、ボランティア活動をやったり、物事を考えている子もいます。これをどう考えたらいいのか。視野は狭いんだろうけど、それだけでかたずけていいのか。
 日本人より遥かに自意識が確立しているブラジルの高校生たちを見て感心しましたけど、色々な面もあるなーとは思います。

 学生たちはバス料金の値上げも公立高校の再編も撤回を勝ち取ります。ここで終われば、メデタシなんですが、そうはいきませんでした。

 左翼政権の腐敗と陣営の分裂で、18年の選挙では極右の大統領、ボルソナロが当選してしまいます。こいつは一切の社会運動を根絶やしにする、と公言している。映画はここで終わります。
●ブラジル初の極右の大統領になったボルソナロ。『一切の社会運動を根絶やしにする』と記者会見で公言しています。
f:id:SPYBOY:20211107142822p:plain

 映画の終了後 監督が後日談を語ったインタビューのフィルムが流されました。
 映画の完成はボルソナロ政権成立後になりましたが、監督は出演者たちに『身の危険が及ぶかもしれないが、映画を公開しても良いか』と改めて確認したそうです。すると全員が、『こんな政権ができたからこそ、映画を公開してほしい』と言ったそうです。
 中心人物の3人は今も社会運動を続けています。危険がないわけではありません。時折 監督も身の危険を感じるそうです。’’だからこそ映画を公開し続けることが闘いになる’’と語っていました。

www.youtube.com

 高校生たちの饒舌な言葉・首長とものすごいエネルギーを、ビートとともに紡ぎだす。不謹慎な言い方かもしれませんが、見ていて非常に面白かったです。と、同時にブラジルと同じように日本も極右の政治家が政権を執って今も影響力を保持している。他人事ではないなーという気持ちも改めて感じました。

www.youtube.com