特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『有志連合と選挙の話』と『0712再稼働反対!首相官邸前抗議』

 今年の夏休みも京都へ行こうと思ってるんです。
 以前行った桂離宮や御所、修学院離宮などは一見地味そうに見えて実は金がかかっていて面白かった、しかも見るのは無料(笑)。今年は京都迎賓館の見学を予約しました。
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https://www.geihinkan.go.jp/kyoto/

 すると、送られてきた予約票にはこんな禁止事項が書いてありました。
 (3) 次に掲げる服装で敷地内に⽴ち⼊ること。
 ① 公序良俗に反する服装
  ② 素肌の露出が極端に多い服装
  ③ 迎賓館の品格・雰囲気を著しく損なうおそれのある服装⼜は他の参観者が不快と思われるおそれのある服装

 まあ、ここまでは判ります。夏の京都は、外国の人が男も女も肌を露出しまくった恰好で歩いてますけどね。でも、これはどうでしょうか。
  ④ ウェディングドレス、⽩無垢、⾊打掛
  ⑤ 警備員等の制服⼜はそれを模したもの
  ⑥ 着ぐるみ

 今迄 ウェディングドレスや白無垢、警備員のコスプレ、そして着ぐるみを着て実際に行った奴がいた!ってことですよね(笑)。御所や桂離宮の予約票にはこんなことは書いてなかった。
 バカというか、そこまで行けば、偉いと言うか、立派です(笑)。妙に感心してしまいました。
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 今週 トランプが、『イラン沖の船舶護衛で有志連合を』と言い出したのは、来るべきものが来た、と思いました。安保法制定の際、『安保法に反対する側こそ、ホルムズ海峡のことは考えなければいけないだろう』とうっすらと思っていたからです。

 6月にホルムズ海峡で日本のタンカーが襲われた事件はボクはアメリカのやらせじゃないかと疑っています。今週のイギリスのタンカーの襲撃未遂もそう。アメリカには自作自演の謀略で戦争を起こした『トンキン湾事件』(ベトナム戦争)という前科があるからです。ただ『犯人は政権に従わないイラン内の強硬派ではないか』(元イラン大使の孫崎享氏)などの意見もあるから、正直言って判らない。


 ですが、ホルムズ海峡の航行安全は日本にとって死活的な問題です。何もしない、っていうのはムリじゃないですか? じゃあ、どうする??

 外交で何とかできれば一番いい。ですが、イランには安倍晋三が相手にされずに帰ってきたばかり(笑)。それに好戦的に挑発を繰り返しているのはイランではなく、トランプです。アメリカを止める方が先決かもしれません。しかしパシリの安倍晋三が(というか、他の誰でも)トランプを説得はできないでしょう。

 アメリカを放っておいて日本は有志連合には加わらないというやり方はありますが、じゃあ、日本のタンカーはどうするのか、ということになります。

 自衛艦を出してタンカーを護衛する?それともイラク戦争の時のように多国籍軍の後方支援
 法的にもなかなか難しい。戦闘が起きてないから安保法の『存立危機事態』はムリでしょうけど、『重要影響事態』で後方支援はどうなのか、日本の船や日本人が乗っていれば『海上警備行動』はあり得るかもしれないけど、日本のタンカーは殆ど外国籍・外国人乗組員(笑)。『海賊対処法』なのか、新たに法律を作るのか。

 安倍晋三&政府はトランプの言うことを鵜呑みにするだけでしょうから、大して考える必要はない(笑)。むしろ、『9条守れ』と言ってきたリベラル側に踏絵が置かれています。

 外交で何とかするのがベストであることは間違いありませんが、そういう『手』があるかどうか。素人のボクは『ホルムズ海峡の安全はイランの利益でもあるのだから、日本がイランを有志連合に誘ったらどうだ』(笑)くらいに思いますけど、それが現実的かどうか。EUが団結して有志連合を拒否してくれれば、一緒に日本も参加を断れるかもしれませんが。
 
 いずれにしても、日本人一人一人に現実が付きつけられていると思います。日本は石油がなくては生きて行けません。
 そしてアメリカの傘に守られてきた『9条による平和』=一国平和主義が存続できるのかどうか。戦争をしなかった代わりに、朝鮮戦争ベトナム戦争で日本の基地から米軍が出撃し、儲けていた構造(ある意味賢かったが欺瞞でもあった)を改めて考える時が来ているように思います。
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 さて、選挙のほうは、ですね(嘆息)(笑)。
 まず、ネット上の山本太郎『信者』にはマジ、うんざりします。
 どうでもいいんですけど、上田なんとかのTV番組が終わったのは山本太郎特集をやろうとしたから、と奇妙なデマを振りまいている連中が大勢います。番組のスタッフが『圧力もなかったし、番組の打ち切りは半年も前に決まっていた』と言ってるのに(笑)。

●『予定していた山本太郎特集が潰れ、急に番組も終了した』と言う中島岳志に、番組のディレクターが『番組打ち切りと山本太郎特集には何も関係がないし、山本太郎特集自体、決まっていたわけではない。』と言っています。
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田頭 悟 on Twitter: "誤った情報が拡散するのは個人的に嫌なので、スタッフに番組終了が告げられたのは年明け直ぐだったことは記しておきます
「あれは何だったのか?」の答えは"偶然のタイミング"であって、特集の変更と番組終了は関係がないし、そもそも急遽打ち切られたという情報が間違い
#サタデージャーナル… https://t.co/L5p0jpx8c2"


 山本太郎があまりマスコミに取り上げられないことに怒って、NHKに電凸してる信者もいます。ネトウヨと変わりがないじゃないですか(笑)。現時点での支持率を考えれば、山本太郎がN国党と同じ扱いなのは当然(笑)。

 安倍晋三山本太郎政見放送を対比させたものがtwitterで出回ってますが、どっちもまともじゃない。ボクには、両方とも気●●いにしか見えません。これ以上 財政出動なんかできるわけないだろ

●これも似たような例。映画『新聞記者』の上映が終わった映画館についてエセ・ジャーナリスト岩上安身が『官邸からの圧力か?』と、セコい、インチキな煽りをしているのに対して、当の映画館の社長が『官邸の圧力なんかあるはずがない』と抗議しています(笑)。


●ついでに映画『新聞記者』の感想。ボクもこう思う。
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 山本太郎ぐらいなら、未だいいんです。前回、彼が組んでいた三宅洋平と同様、いずれ化けの皮がはがれるでしょうから。
 問題なのは、『信者』の存在です。山本太郎への熱が冷めたら、連中はまた他の信仰対象を探す。事実と自分の願望を区別できないから、です。

 少し前に山本太郎が極右とくっつこうとしたように、連中はいつでもファシズムや独裁支持に転びます。
一般人だけでなく、学者でも著名人でもそういう類は一杯いる。日本の知識人の知的レベルの惰弱さが改めて浮き彫りになっている。

 太平洋戦争もそうやって始まりました。大政翼賛会に先頭切って参加したのは社会党の源流の一つでもあった無産政党社会大衆党です。そして大勢の一般人が近衛文麿や一部官僚の『革新』に酔いしれました。

 そうやって日本全体を『空気』が覆い、天皇も一部のまともな政治家も止められなくなって、戦争への道を進んでいった。
 戦争は軍部や政治家だけが起こしたんじゃない事実と自分の願望を区別できない人たちが流れを作り、政治に無関心な人たちがそれを支持した。
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 いつもの話ですが、世の中、右も左も大きな違いはないことが多いそれより大きいのは、バカかマトモか、の違いです。

 昔 カエサルが『人間、自分が聞きたいものにしか耳を貸さない』と言ったのは実に慧眼、真理だと思います。バカげたフェイク・ニュースやデマが受け入れられるのは、それが当人が聞きたい情報であるからでもあります。
 真偽は関係なく、複雑な物事をスッキリさせてほしい、多くの場合 誰かのせいにしたいんです。ある種の頭の病気でしょう(笑)。勿論バカは伝染しますから、自分だって気を付けなければいけないんですけど。


 しかし、そういう欲求=ポピュリズムの存在は確かにある。それは仕方がない。
 トランプの当選やイギリスのEU離脱には、自分で自分の首を絞めるにもかかわらず一般の人たちが投票しました。よその国のことだと思っていたのですが、良く考えてみれば日本の『鬼畜米英』もそうだったし、どうも現在も事情はあまり変わりがないようです(笑)。

 ポピュリズムの負の側面が鎌首をもたげています。それだけ世の中の格差が拡大している。
 政治家は社会のそういう面、ポピュリズムをコントロールすることが求められていると思います。きちんとした政策/理性とポピュリズムをコントロールするスキル。難しいけど、目指すべきはそれだ、と思います。

東浩紀は大嫌いですが、この指摘は正しい。バカだから悪いのではなく、バカであることを直視しないのが悪いのです。誰だってバカになる可能性はあるのですから。
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もっと 重要な話はこちらです。『自民党投票率が上がった方が有利と見て、若年層に投票を呼び掛けている』そうです。



www.nikkei.com

 若年層では自民党の支持率は高いにも関わらず、投票率は高くない。だから投票率のアップをあの手、この手で図っている、というものです。

 自民党というと組織に支えられた選挙というイメージが強いですが、連中は若年層への浸透にそこまで自信を持っている、ということに驚きました。
 自民が若年層に強いと言っても、男女によってだいぶ差があるとは思いますが、この記事によると20代は6割が、30代は53%が自民党に投票すると答えているというから驚きです。
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 今更、ですが、野党は自民党より、国民の事を見ていない、と思う。少し前のViViの広告の件もそうでしたが、自民党はターゲットがはっきりしてます。組織票、安倍支持層(ネトウヨ)を固め、さらに若いノンポリ有権者へウィングを拡げようとしている。

 野党はどうでしょう?組合のことはまあ、見てると思う。他は?サラリーマン?農家?非正規層?主婦?都会の人?どれも非常にあいまいです。
 共産党も立憲もネットでは若い人へリーチをかけていますけど 「自民党のSNS」に若者がひとこと言いたいワケ | 「脱ゆとり世代」のリアル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準、肝心の政治家の発言や政策がそれに連動していない。
 若い人に『令和デモクラシー』と言っても、そもそも彼らはデモクラシーを求めているんでしょうか??(笑)。

●こういうのはいいと思う。IT企業の社長と立憲の亀石氏のコラボ。現実的に官僚や経営者など組織をマネジメントできる人材を引き入れなければ政権は取れないし維持も出来ない、というのが民主党政権の教訓の一つです。
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 現実は見なければいけないけれど、足りないことばかり揚げつらっても仕方ありません。

 ボクはスポーツ嫌いですけど、実にカッコいい人がいました。同性愛をカミングアウトしているアメリカの女子サッカーチームのキャプテン、ミーガン・ラピノー選手。W杯の期間中、優勝してもホワイトハウスへの招待は断る、と断言してトランプを激怒させ、そして有言実行で優勝!

 これはホワイトハウスの替りにNY市に招かれた祝賀会での様子です。クリックすると動画が観られます。ほんの1~2分、最初のものは対訳つきです。すごくカッコいい!彼女が掛けているサングラスが欲しくなりました(笑)。



www.huffingtonpost.jp

 今 彼女の元へは賛辞だけでなく、ポスターを破られるなど強烈な非難も寄せられているそうです。それくらいでめげるような人ではないでしょう。ボクは権力者の圧力だけでなく、ポピュリズムの流れに掉さして理性を保つ個人の存在に希望を見出したいと思います。



 ということで、今週も原発再稼働反対の官邸前抗議へ。#金曜官邸前抗議
梅雨らしいはっきりしないお天気ですが、夕方になって雨も上がりました。朝着ていたレインコートを羽織ってちょうどいいくらいの涼しさです。
今日の午後6時の気温は21度、参加者は300人くらいかな〜。

●抗議風景。『安倍晋三はサッサと辞めろ!みっともないから首相を辞めろ!』

 各党の選挙公約には原発にも触れられています。
11日の日経で東京理科大橘川武郎教授がこんなことを言っています。
www.nikkei.com



 与党も野党もまともな議論が出来ていないんですね。年金と同じです。これは政治家の能力の問題だけでなく、冷静な議論を許さない国民の側にも大きな問題があると思います。

 原発は事故のリスクがあるだけでなく、コストも高い。より低コストの再生エネをもっと推進していかなければならない。それは間違いない。
でも、過渡期の間は石油供給の問題もあるし、もしかしたら原発のいくつかは必要になる可能性だってあるかもしれない(ないかもしれない)。核のゴミ捨て場のことも考えなくてはならない。エネルギーの安全保障の問題だってある。原発立地の経済のこともある。

 それらのことを考えたら、今のようになし崩しに再稼働を進めるのも頭がおかしいですが、簡単に即時廃止なんてことは言えるはずがない。そんなことを言っている政党なんか絶対に信用できない。
 せいぜい再稼働反対が理性ある大人の言い方だと思うんですが(笑)。

『いだてん 明日なき暴走』と【0707 NO NUKES ! 原発ゼロ★国会前集会】と映画『アマンダと僕』

 日曜日のNHK『いだてん』の『明日なき暴走』は期待に違わぬ出来、いやそれ以上でした。
www.nhk.or.jp

 冒頭 これが遺作になるであろうことが本人も判っていた筈のショーケンの存在感(撮影時、彼は腹水がたまってお腹がパンパンに膨れていました)と本気を出した寺島しのぶが視聴者を物語に引き込み、ビートたけし神木隆之介くんの見事な狂言回しで舞台を整え、主役たちが熱量の籠った演技を見せる。全然知らなかったのですが人見絹枝を演じた菅原小春って人は演技は初めてだったそうですね。国際的なダンサー、振付師だそうです。

 大震災からの伏線を綺麗に回収し、たかだかスポーツの話を女性の自由や平等に昇華させたお話しも素晴らしい。明治、大正の話がまさに現代に繋がった。『明日なき暴走』というタイトルは文字通り''Born To Run''と言うことだったのもやられた~と思いました。開始後20分くらいからはもう、ずっと泣きながら見てました(笑)。TVドラマでこんなものを放送していいのか?!
 この回は『モテキ』や『湯けむりスナイパー』などの傑作深夜ドラマや数々のヒット映画も作ってきた大根仁の最高傑作になったと思います。



 さて、日曜の夕方は『0707 NO NUKES ! 原発ゼロ★国会前集会』へ行ってきました。
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 まあ、ただ集まってるだけの集会とかはあまり興味ないです。スピーチとかも大抵はつまんない。仲間うちにしか通用しない内向きの話を聞くより、自分から声を出したり、歩いたりする抗議やデモのほうがボクは好きです。
 雨模様だし涼しかったので、今年バーゲンで買ったマッキントッシュのレインコートで気分をアゲて出かけました(笑)。生憎の雨で国会前はこんな感じでした。
●雨の中で演奏すると言うのも大変だと思いました。頑張ってる。ただ直接的な歌詞ばかりの歌はご勘弁、でしたが。

●主催者挨拶

●政治家のスピーチ。順に『原発ゼロの会』の初鹿衆院議員、大分スピーチが上手くなった共産党の山添拓参院議員、立憲民主の山崎誠衆院議員、菅直人

 この中では『原発が日本の足を引っ張っている』という山崎誠衆院議員の言っていることが一番納得出来ました。
 それと比べれば『選挙公示初日はおしどりマコと一緒に東電前へ行った』と相変わらずボケまくってる菅直人なんかさっさと引退した方が良い。東電前に行って投票してくれそうな有権者が居るのかよ。日本の将来どころか、デマ芸人を擁立することで票が減ることすら考えていない。楽観的と言うより市民を舐めてます。過去の総括も満足にしないまま、政治不信を煽っている菅直人は、立憲の足を引っ張ってると思う。
 古賀茂明氏もまあ、どうでもいいですね(笑)。


 選挙序盤の予測で『自公が過半をとる』という予測が発表されています。
www.asahi.com

 当たり前だと思います。
 右左関係なく まともな人なら、国会で自公が圧倒的多数を占めるのは良くない、と判ってると思うんです。でも投票したい野党がない、と感じてる人も多いはず。
 


 だって客観的に見て、立憲民主、国民民主、共産、どこも今回の選挙で積極的に支持する理由がないじゃないですか。彼らが前回の選挙と何か変わりましたか?だったら与党が過半くらいとってしまうのは当り前。ボクは3分の2を阻止できれば良いと思っています。


 まさか、MMTの山本太郎?ご冗談でしょ(笑)。
●『山本太郎の特集を組もうとしたら番組がつぶされた』というデマが飛び交っています。C級マスコミが陰謀論を広め、信者がそれを流布します。そもそも番組が終わるんだから、山本太郎が関係あるわけがありません(見出しと違い、記事本文にはそう書いてあります)。スタッフが元『噂の真相』のリテラ(笑)はともかく、中島岳志あたりも引っかかるんだから、ほんとバカばっかり。


 鼻をつまんで投票する冷静に見て、その程度が今の野党の実力じゃないでしょうか。自己認識すらまともにできないから、ダメなんですよ。野党もいわゆるリベラルな人たちも。
●『武器としての世論調査』の光春氏が選挙区別に各報道機関の予測をまとめたもの(参考になります)


武器としての世論調査 (ちくま新書)

武器としての世論調査 (ちくま新書)

 いずれにしても棄権ほど無責任で馬鹿げたことはありません。大した理由もないのに選挙を棄権するような人間は民主主義を破壊する、いわばテロリスト、文字通りの犯罪者という空気はもっと広まってよいはずです。
 参院は選挙期間も衆院選挙より長いし、序盤の予測はいくらでもひっくり返ります。ここから如何に選挙に関心を持つ人が増えるか、増やすことができるか、じゃないでしょうか。



 ということで、恵比寿で映画『アマンダとボク
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www.bitters.co.jp

パリで一人暮らしをする24歳の青年、ダヴィッド。普段は知り合いのアパート経営者の手伝いと公園の枝打ちで生計を立てている。近所にはシングルマザーの姉がいて、姪のアマンダともども仲良く暮らしている。ダヴィッドにはレナ(ステイシー・マーティン)という恋人が出来るが、ある日 テロリストの乱射事件に巻き込まれて、姉は死亡、レナは重傷を負ってしまう。自分が後見人となるかどうかは迷いを抱えながらも、ダヴィッドは7歳のアマンダの面倒を見ることになるが。

 ミカエル・アース監督は長編三作目、日本公開はこの作品が初めてですが、東京国際映画祭のグランプリと最優秀脚本賞を受賞しています。

 主人公のダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)は幼いころに親が離婚して父子家庭で育ったせいもあって、近所に住む姉、サンドリーヌと仲良しです。シスコン気味と言っても良い。
ダヴィッド(右)と姉のサンドリーヌは大の仲良しです。幼い時に母親が家を出ていった二人は父子家庭に育ちました。
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ダヴィッドはシングルマザーであるサンドリーヌの子供、アマンダとも仲良しで学校の送り迎えまでやっています。
●サンドリーヌの娘、アマンダ(左)の学校の送り迎えもダヴィッドがやっています。
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 やがてダヴィッドはアパートの入居人、レナ(ステイシー・マーティン)と恋人同士になります。
●ボクのお目当ては『グッバイ・ゴダール!』でアンヌ・ヴィアゼムスキーを演じたステイシー・マーティン。これだけきれいな人は中々いないと思う。子供の時 日本で育ったそうです。
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 そんなある日、公園でレナとサンドリーヌが無差別テロに巻き込まれます。レナは重傷を負い、サンドリーヌは死亡。レナは傷ついたまま故郷に帰ってしまい、残されたダヴィッドはアマンダを抱えて途方にくれます。
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 ダヴィッドとアマンダ、傷ついた者同士の描写が非常にリアルです。ダヴィッドはまだ24歳、仕事もフリーターに毛が生えたような程度だし、一人前の大人とは言い難い。
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 そんな若者が、まだ7歳の子供を抱えて途方に暮れるのは良く判ります。経済的にも精神的にもプレッシャーは大きい。ダヴィッドは不安に駆られてしょっちゅう涙を見せます。これだけ男の子が泣く映画も珍しいかもしれない。でも、そこが良いんです。演じるヴァンサン・ラコストの演技も含めて、この造型には非常に好感が持てました。
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 監督が道端でオーディションに参加しないかと声をかけたというアマンダ役の女の子も名演だと思います。名実ともに、まだまだ子供なんですが、一人の人間として非常に繊細に描いている。遊んでいる時の素の笑顔と悲しみの感情を押し隠す複雑な表情の対比がお見事です。
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 映画の中ではデヴィッドとアマンダ、二人が走る場面が何度も描かれます。象徴的ではあるんですが、動きのなかで段々と変化していく二人の表情が素晴らしい。この演出は非常に上手い。
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 無差別テロという現代を象徴するような題材を扱いつつも、まともな人間のまともなお話し(笑)に着地しています。世の中がまともではないので(笑)、こういう作品は逆に新鮮に感じました。余韻があるエンディングといい、非常に心に残る、まともな作品です。観ていてホッとしました。
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 繊細な登場人物たちの感情を、奇をてらわず正面から描く、穏やかで繊細な、とても良い映画です。孤独な二人の人間関係が愛情に変わっていく過程も感動的ですが、何よりも人間の理性への信頼が感じられます。いかにもフランス人らしい。この監督の前作『サマーフィーリング』が今月 公開されるので、これも是非見に行こうと思っています。

『アマンダと僕』予告編

ドラマ『いだてん』と『安倍支持の空気』

 今週金曜日の官邸前抗議は7日の日曜日に大規模抗議があるので、お休みです。



 NHKの大河ドラマいだてん』が、大河ドラマ史上最低の視聴率を驀進しているのが話題になっています。
www.asahi.com

 なんでも落語家・古今亭志ん生を演じるビートたけしの出番になると途端に視聴率が落ちるそうで、明治、大正、昭和と時代を縦横無尽に跨いで語られる物語が大河ドラマの固定層には難しすぎる、とか言われてます。

 今までボクは大河ドラマなんか、まともに見たことありませんが、何度も書いているように『いだてん』は大傑作ドラマ(映画)、神戸大震災からの復興をテーマにした『その街のこども』、福島の復興をテーマにした『Live!Love!Sing!生きて愛して歌うこと』を作った制作:井上剛&音楽:大友良英というコンビなので見逃したくない。生まれて初めて大河ドラマを毎週見るという体験をしています。録画で見るにしても時間的にはかなり厳しいんですけどね。

その街のこども 劇場版 [DVD]

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 スポーツもオリンピックもボクは全く興味ありません。日本のマラソン・ランナーの草分け、金栗四三なんかもっと興味ない。日本兵みたいなイガ栗頭も気持ち悪い。主人公に全く共感できないので確かに見ていて辛い部分もありました。

 それでも橋本愛ちゃんや森山未来くんなど今までの井上作品にゆかりがある俳優さんが脇を固めているのは非常に楽しいし、明治期の自由闊達な天狗クラブは眩しかったし、段々世の中の自由が失われていく描写も興味深かった。音楽はもちろんカッコいいし。
 
 お話しも金栗個人ではなく、女子スポーツが勃興する話になってから個人的に盛り上がってきました。特に女性が足を出して走るようになった話や女学生たちが教室をロックアウトしてストライキしたところはマジでかっこよかった。

 日本でも自分の運命に対して能動的だった人たちがいた。『始めて』を切り開いてきた人たちの描写は感動的でした。
第22回「ヴィーナスの誕生」| あらすじ | NHK大河ドラマ『いだてん 〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』
 
 関東大震災から復興しようとする人々の描写もとても良かった。間接的にでも朝鮮人虐殺とフェイクニュースにもちゃんと触れていたし、復興のために人々が自治組織を作っていたり、一般の人のための運動会が行われたというのは知りませんでした。
第24回「種まく人」| あらすじ | NHK大河ドラマ『いだてん 〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』

 ついでに 復興運動会の際 大友良英氏がバンジョーを演奏しながら出演しているのを見て『その頃 日本にバンジョーなんか在るわけないだろ』と思ったのですが、実はそのバンジョーは100年前のアンティークだったというのも恐れ入った(笑)。
 ちなみに原発事故が起きたのに福島の避難が十分に行われないことに対して、総自粛ムードの中で『福島で静かな虐殺が行われている』と、いち早く告発した大友氏は、それ以来ずっと福島の復興、町おこしに取り組んでいます。
 
 ともかくこの程度の話が難しいとか言っている脳軟化症の愚民は放っておけばいいんです(笑)。そもそも世の中は難しいもんなんだよ。

 それに第2部になった先週から主人公が阿部サダヲに代わって、やっとイガ栗頭から解放された(笑)。サイタマノラッパーに出ていた俳優、皆川猿時がフィーチャーされてたのも嬉しかった。
 お話も今までと段違いに面白くなった先週のサブタイトルが『時代は変わる』(ボブ・ディラン)、今度の放送は『明日なき暴走』(スプリングスティーン)。これはもう、作る方は意識的にやっているんでしょう。『いだてん』、これからが楽しみです。

明日なき暴走(REMASTER)

明日なき暴走(REMASTER)

●『いだてん』で可児徳を演じる古館寛治氏のツイート



  さて参院選挙が公示された木曜日、夕食を作りながらNHKの7時のニュースで各党党首の言ってることを見ていました(どうでもいい維新と社民以外)。客観的に見て安倍晋三は、自分の手先の筈のNHKの質問に対してすら全く論理的な受け答えができないダントツのバカで、やっぱり気分が悪くなりました。
 一方 元大蔵官僚だけあって国民民主の玉木は頭は一番良いと思いました。でも玉木は人間が軽すぎるから絶対にダメなんですけど。信用できない。

 共産党の志位は言ってることがパッとしなかったし、立憲民主の枝野は政策はともかく、しきりに草の根を強調してたのは説得力がなかった。立民が草の根というエビデンスを示さなかったし、現実に地方の選挙では自民と一緒に相乗りもしているからです。勿論 デマ芸人のおしどりマコ比例区に擁立しているのは絶対に許せない

 やはり、ボクも支持政党はなし、です。所詮 選挙なんて、もっともマシな投票をするしかないんですけど。 
●このバカ、本当になんとかならないのでしょうか。


 前回のエントリーで朝日新聞『安倍支持の空気』という安倍晋三を支持する人たちの声を紹介する記事に触れました。全3回の記事のうち当日朝に出た今週月曜日の『上』だけでしたので、残りのお話をしたいと思います。

 『上』では『18~39歳の男性の間で安倍内閣の支持率が高い、彼らは政治は助けてくれないのだから、現状維持で良いと考えている』というものでした。
 その年代の男性はグローバリゼーションが進行する中で『男性+正規社員』という自分たちの既得権が失われていくから尚更、変わることに対して抵抗を持っていると思う。
www.asahi.com

 火曜日の『中』は『貧困層、生活に不満を持っている人の多くが格差を容認しており自民支持に回っている。政治を変えるより自己責任と考えている』ということが書かれていました。
www.asahi.com
●上のグラフ:生活に不満を持っている人の間で自民党支持率が高まっている。95年9.8%⇒15年23.3%に上昇。
下のグラフ:貧困層の間でも格差拡大を肯定する人の割合が高まっている。05年17.4%⇒15年23.7%に上昇
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 水曜日の『下』では『基幹労連でも支持政党のトップは今や自民党であり、自分は右でもなく左でもなく中間と考える有権者が増えている。したがって各党の政策は似通ってくるため、右左ではなく政党の実現能力や党首のリーダーシップで判断するようになった』ということが書かれていました。
www.asahi.com

有権者の54%が自分は右でも左でもなく『中間』と答えたそうです。
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 みなさん、どう思われますか? 
 記事(下)の大企業の労働組合の間で自民党支持が高まっているのは当然だと思います。彼らは全体の3割しかない大企業の、しかも正社員しか組合に入ってないんですから、比較的恵まれた立場です(それでも それなりに大変でしょうが)。特に原発維持の電力労連なんか自民党を支持するに決まっています。そんな連中に幻想を抱く方が間違い。

 記事(中)の『生活に不満を持っている人の間で自民党支持が高まっている』、『貧困層の間で格差拡大を肯定する人が増えている』などは正直、『バカじゃねーの』、『一生 奴隷でもやってろ』と思いますが(笑)、現実にはそういう人がいるのは間違いないし、それを生んでいるメカニズムを考えなければ問題は解決しません。


 ここにあるのは『政治そのものへの不信と国民の劣化』(上、中)、『野党への失望』(上、中、下)、『右/左という対立軸の希薄化』(下)です。

 かねがね安倍晋三の最大の応援団は無能な野党』と思ってましたが、国民の生活悪化やスキャンダルがこれだけ起きても安倍政権が続いているのは、野党の責任が大きいということだと思います。
 最初から失敗するのが判っていたアベノミクスに対抗する経済政策だって未だにまともな対案が出てこないし、これだけしょっちゅう野党間で仲間割れしてれば、誰だって嫌になりますよ。

 まして枝野も玉木も小沢も蓮舫民主党政権の総括すら、オフィシャルにやっていない。そんなところだけ安倍晋三の真似をしないで(笑)、総括して謝ればいいんです。
 過去の間違いを正すのは恥ではない。それこそが未来につながる。今のような野党の体たらくでは政治に希望なんか持てない、という人が出てくるのも無理はない。

 だからと言って棄権しても、現実は変わらない(笑)。いや、もっと悪くなるだけです。

 
 上のグラフで『国会で自民党だけが強いのは良くない』と考える人が8割を超えていることから判るように、今の与党を積極的に支持する人は少ない。誰も今の政治が自分の暮らしを良くしてくれるとは思ってない。
 でも、それは野党に対しても言えます。安倍晋三個人はあんなにバカでクズでも、『アベ政治を許さない』だけじゃ安倍政権という現象には勝てないんですよ(笑)。

 与野党問わず、どこが政権をとっても自分の暮らしが良くなるとはボクだって全く思わない!です(笑)。それが『政治不信』の正体でしょう。
 ボクは支持しませんが,、反知性主義そのものの山本太郎に支持が集まるのも、政治不信が原因です。勿論 一時的に人気は集めたとしても、反緊縮、消費税廃止など山本が主張していることで現実が良くなる筈がないので、『信者たち』(笑)は早晩裏切られ、政治不信は一層進むでしょう。

 だけど国民が政治に関わっていないと、社会のシステムそのものが不公平になってしまいます。日本経済はどんどん衰退しているのに、お金持ちの負担が下がり続ける税金が良い例です。
法人税は海外との競争も含めてどうか、という観点はありますけど、金持ちの所得税は下がって消費税が上がる。こんなのおかしいでしょ。
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 関わり方は人それぞれ、選挙の手伝いもあるし、デモや集会もあるでしょうし、近くの人と話をするなど色々でしょう。あと『(組合ではなく)もっと国民の方を向け』と、ダメな野党のケツをどやしつける。これは大事。

 でも絶対に投票だけは行く。そして国民一人一人がもう少し利口になる、リテラシーを高めていく。それしかないと思います。



 最後は抗議の代わりに、今週はこの前食べた夏のイタリアン特集です(笑)。
 まず、味が濃いので生ハムに合うというイタリアのマントヴァ産メロン。出始めです。

 こちらはサマー・トリュフのパスタ。サマ―・トリュフは白や黒とは違って香りも大したことないので好きじゃないんですが、甘いマルサラ酒とチーズで和えた手打ちパスタ自体は美味しかった。

 昨年から輸入されるようになったピエモンテ州のファッソーネ牛ヒレ肉。脂まみれの霜降り和牛とは違って、ちゃんと肉の味がします。ボクは日欧EPAを断固支持します(笑)。