特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ドラマ『いだてん』と『安倍支持の空気』

 今週金曜日の官邸前抗議は7日の日曜日に大規模抗議があるので、お休みです。



 NHKの大河ドラマいだてん』が、大河ドラマ史上最低の視聴率を驀進しているのが話題になっています。
www.asahi.com

 なんでも落語家・古今亭志ん生を演じるビートたけしの出番になると途端に視聴率が落ちるそうで、明治、大正、昭和と時代を縦横無尽に跨いで語られる物語が大河ドラマの固定層には難しすぎる、とか言われてます。

 今までボクは大河ドラマなんか、まともに見たことありませんが、何度も書いているように『いだてん』は大傑作ドラマ(映画)、神戸大震災からの復興をテーマにした『その街のこども』、福島の復興をテーマにした『Live!Love!Sing!生きて愛して歌うこと』を作った制作:井上剛&音楽:大友良英というコンビなので見逃したくない。生まれて初めて大河ドラマを毎週見るという体験をしています。録画で見るにしても時間的にはかなり厳しいんですけどね。

その街のこども 劇場版 [DVD]

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 スポーツもオリンピックもボクは全く興味ありません。日本のマラソン・ランナーの草分け、金栗四三なんかもっと興味ない。日本兵みたいなイガ栗頭も気持ち悪い。主人公に全く共感できないので確かに見ていて辛い部分もありました。

 それでも橋本愛ちゃんや森山未来くんなど今までの井上作品にゆかりがある俳優さんが脇を固めているのは非常に楽しいし、明治期の自由闊達な天狗クラブは眩しかったし、段々世の中の自由が失われていく描写も興味深かった。音楽はもちろんカッコいいし。
 
 お話しも金栗個人ではなく、女子スポーツが勃興する話になってから個人的に盛り上がってきました。特に女性が足を出して走るようになった話や女学生たちが教室をロックアウトしてストライキしたところはマジでかっこよかった。

 日本でも自分の運命に対して能動的だった人たちがいた。『始めて』を切り開いてきた人たちの描写は感動的でした。
第22回「ヴィーナスの誕生」| あらすじ | NHK大河ドラマ『いだてん 〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』
 
 関東大震災から復興しようとする人々の描写もとても良かった。間接的にでも朝鮮人虐殺とフェイクニュースにもちゃんと触れていたし、復興のために人々が自治組織を作っていたり、一般の人のための運動会が行われたというのは知りませんでした。
第24回「種まく人」| あらすじ | NHK大河ドラマ『いだてん 〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』

 ついでに 復興運動会の際 大友良英氏がバンジョーを演奏しながら出演しているのを見て『その頃 日本にバンジョーなんか在るわけないだろ』と思ったのですが、実はそのバンジョーは100年前のアンティークだったというのも恐れ入った(笑)。
 ちなみに原発事故が起きたのに福島の避難が十分に行われないことに対して、総自粛ムードの中で『福島で静かな虐殺が行われている』と、いち早く告発した大友氏は、それ以来ずっと福島の復興、町おこしに取り組んでいます。
 
 ともかくこの程度の話が難しいとか言っている脳軟化症の愚民は放っておけばいいんです(笑)。そもそも世の中は難しいもんなんだよ。

 それに第2部になった先週から主人公が阿部サダヲに代わって、やっとイガ栗頭から解放された(笑)。サイタマノラッパーに出ていた俳優、皆川猿時がフィーチャーされてたのも嬉しかった。
 お話も今までと段違いに面白くなった先週のサブタイトルが『時代は変わる』(ボブ・ディラン)、今度の放送は『明日なき暴走』(スプリングスティーン)。これはもう、作る方は意識的にやっているんでしょう。『いだてん』、これからが楽しみです。

明日なき暴走(REMASTER)

明日なき暴走(REMASTER)

●『いだてん』で可児徳を演じる古館寛治氏のツイート



  さて参院選挙が公示された木曜日、夕食を作りながらNHKの7時のニュースで各党党首の言ってることを見ていました(どうでもいい維新と社民以外)。客観的に見て安倍晋三は、自分の手先の筈のNHKの質問に対してすら全く論理的な受け答えができないダントツのバカで、やっぱり気分が悪くなりました。
 一方 元大蔵官僚だけあって国民民主の玉木は頭は一番良いと思いました。でも玉木は人間が軽すぎるから絶対にダメなんですけど。信用できない。

 共産党の志位は言ってることがパッとしなかったし、立憲民主の枝野は政策はともかく、しきりに草の根を強調してたのは説得力がなかった。立民が草の根というエビデンスを示さなかったし、現実に地方の選挙では自民と一緒に相乗りもしているからです。勿論 デマ芸人のおしどりマコ比例区に擁立しているのは絶対に許せない

 やはり、ボクも支持政党はなし、です。所詮 選挙なんて、もっともマシな投票をするしかないんですけど。 
●このバカ、本当になんとかならないのでしょうか。


 前回のエントリーで朝日新聞『安倍支持の空気』という安倍晋三を支持する人たちの声を紹介する記事に触れました。全3回の記事のうち当日朝に出た今週月曜日の『上』だけでしたので、残りのお話をしたいと思います。

 『上』では『18~39歳の男性の間で安倍内閣の支持率が高い、彼らは政治は助けてくれないのだから、現状維持で良いと考えている』というものでした。
 その年代の男性はグローバリゼーションが進行する中で『男性+正規社員』という自分たちの既得権が失われていくから尚更、変わることに対して抵抗を持っていると思う。
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 火曜日の『中』は『貧困層、生活に不満を持っている人の多くが格差を容認しており自民支持に回っている。政治を変えるより自己責任と考えている』ということが書かれていました。
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●上のグラフ:生活に不満を持っている人の間で自民党支持率が高まっている。95年9.8%⇒15年23.3%に上昇。
下のグラフ:貧困層の間でも格差拡大を肯定する人の割合が高まっている。05年17.4%⇒15年23.7%に上昇
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 水曜日の『下』では『基幹労連でも支持政党のトップは今や自民党であり、自分は右でもなく左でもなく中間と考える有権者が増えている。したがって各党の政策は似通ってくるため、右左ではなく政党の実現能力や党首のリーダーシップで判断するようになった』ということが書かれていました。
www.asahi.com

有権者の54%が自分は右でも左でもなく『中間』と答えたそうです。
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 みなさん、どう思われますか? 
 記事(下)の大企業の労働組合の間で自民党支持が高まっているのは当然だと思います。彼らは全体の3割しかない大企業の、しかも正社員しか組合に入ってないんですから、比較的恵まれた立場です(それでも それなりに大変でしょうが)。特に原発維持の電力労連なんか自民党を支持するに決まっています。そんな連中に幻想を抱く方が間違い。

 記事(中)の『生活に不満を持っている人の間で自民党支持が高まっている』、『貧困層の間で格差拡大を肯定する人が増えている』などは正直、『バカじゃねーの』、『一生 奴隷でもやってろ』と思いますが(笑)、現実にはそういう人がいるのは間違いないし、それを生んでいるメカニズムを考えなければ問題は解決しません。


 ここにあるのは『政治そのものへの不信と国民の劣化』(上、中)、『野党への失望』(上、中、下)、『右/左という対立軸の希薄化』(下)です。

 かねがね安倍晋三の最大の応援団は無能な野党』と思ってましたが、国民の生活悪化やスキャンダルがこれだけ起きても安倍政権が続いているのは、野党の責任が大きいということだと思います。
 最初から失敗するのが判っていたアベノミクスに対抗する経済政策だって未だにまともな対案が出てこないし、これだけしょっちゅう野党間で仲間割れしてれば、誰だって嫌になりますよ。

 まして枝野も玉木も小沢も蓮舫民主党政権の総括すら、オフィシャルにやっていない。そんなところだけ安倍晋三の真似をしないで(笑)、総括して謝ればいいんです。
 過去の間違いを正すのは恥ではない。それこそが未来につながる。今のような野党の体たらくでは政治に希望なんか持てない、という人が出てくるのも無理はない。

 だからと言って棄権しても、現実は変わらない(笑)。いや、もっと悪くなるだけです。

 
 上のグラフで『国会で自民党だけが強いのは良くない』と考える人が8割を超えていることから判るように、今の与党を積極的に支持する人は少ない。誰も今の政治が自分の暮らしを良くしてくれるとは思ってない。
 でも、それは野党に対しても言えます。安倍晋三個人はあんなにバカでクズでも、『アベ政治を許さない』だけじゃ安倍政権という現象には勝てないんですよ(笑)。

 与野党問わず、どこが政権をとっても自分の暮らしが良くなるとはボクだって全く思わない!です(笑)。それが『政治不信』の正体でしょう。
 ボクは支持しませんが,、反知性主義そのものの山本太郎に支持が集まるのも、政治不信が原因です。勿論 一時的に人気は集めたとしても、反緊縮、消費税廃止など山本が主張していることで現実が良くなる筈がないので、『信者たち』(笑)は早晩裏切られ、政治不信は一層進むでしょう。

 だけど国民が政治に関わっていないと、社会のシステムそのものが不公平になってしまいます。日本経済はどんどん衰退しているのに、お金持ちの負担が下がり続ける税金が良い例です。
法人税は海外との競争も含めてどうか、という観点はありますけど、金持ちの所得税は下がって消費税が上がる。こんなのおかしいでしょ。
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www.nikkei.com

 関わり方は人それぞれ、選挙の手伝いもあるし、デモや集会もあるでしょうし、近くの人と話をするなど色々でしょう。あと『(組合ではなく)もっと国民の方を向け』と、ダメな野党のケツをどやしつける。これは大事。

 でも絶対に投票だけは行く。そして国民一人一人がもう少し利口になる、リテラシーを高めていく。それしかないと思います。



 最後は抗議の代わりに、今週はこの前食べた夏のイタリアン特集です(笑)。
 まず、味が濃いので生ハムに合うというイタリアのマントヴァ産メロン。出始めです。

 こちらはサマー・トリュフのパスタ。サマ―・トリュフは白や黒とは違って香りも大したことないので好きじゃないんですが、甘いマルサラ酒とチーズで和えた手打ちパスタ自体は美味しかった。

 昨年から輸入されるようになったピエモンテ州のファッソーネ牛ヒレ肉。脂まみれの霜降り和牛とは違って、ちゃんと肉の味がします。ボクは日欧EPAを断固支持します(笑)。

「変わりたくない人々」と映画『新聞記者』と『旅の終わり 世界のはじまり』

 今日から7月。1年の折り返しです。
 G20なんか全く興味なかったんですが、トランプが大阪から北朝鮮へ行ったのは流石に驚きました。トランプの安保廃棄発言もそうでしたが、日本は全く『蚊遣の外』なのが明快ですね(笑)。

 トランプの気まぐれとか、安倍の外交は全然だめ、と言うのは些末な話に過ぎません。本質的にはこういうこと↓だと思います。

 これだけ失策とスキャンダルがあっても安倍内閣の支持率があまり落ちないのが不思議だったのですが、やっと納得のいく答えが見つかったような気がします。
内閣支持率があまり下がらないのは安倍政権は『日本は変わらなくても良い』というメッセージを暗に発し続けてきたからではないでしょうか。

 『日本を取り戻す』(笑)を始めとして、民間ではなく官主導の政策が目立つのも、アベノミクスで昭和のような輸出主導の日本経済を目指すのも、マスコミを使った世論誘導も『日本は今のままで大丈夫=日本は変わらなくても良い』という暗黙のメッセージです。これらのメッセージは現実とは関係なく、国民に、特にあまり物事を考えたくない国民に、なんとなく安心を提供する。

 今朝の朝日新聞に面白い記事が載っていました。安倍晋三の支持率が若い男性の間で際立って高い、という記事です。
www.asahi.com

安倍内閣の支持率は、18~39歳の男性で際だって高いのが特徴だ。朝日新聞世論調査で過去3年の平均をみると、18~29歳の男性は57・5%、30代男性は52・8%。男女の全体は42・5%だった。さらに、閣僚らの不祥事が起きても、この世代の支持率は一時下がってすぐに回復する

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 『やっぱり男はバカ』、『男の参政権なんか取り上げちまえ』とボクは思うんですが(笑)、記事で取上げられている彼らの声を拾うと『今より悪くなりたくないから、現状は変わらないでほしい。だから今の内閣を支持する』というのです。
この意見には賛同はできないけど、理解は出来る。それくらい、今の状況が酷い。というか、前途に希望が見えない。

 日本経済の先行きは真っ暗で仕事も厳しい、給与の面でも仕事の面でも日本社会に残っていた男性&正規社員という既得権益セットも怪しくなってきた。だから彼らは不安に駆られている。
 女性の方がもっと厳しい状況に置かれているから、ちゃんちゃらおかしい甘ったれた話ではあるんですが(だから女性の安倍内閣支持率は高くない)、気持ちとしては判る。要は仕事が増えるわけないのに未だにトランプを支持しているラストベルトの白人労働者みたいなものでしょう(笑)。滅びる運命にある存在(笑)。

 そういうムードって、確かに今の日本にはあると思います。日本はどんどん落ち目になっていく。そこで『変わらなくても良い』というメッセージを発せられると確かに心地良い。TVで『日本サイコー』とか言ってるようなアホ番組がその典型です。

 しかし、そういう『変わりたくない人々』の願いはたぶんかなえられない。団塊世代が揃って後期高齢者になる2025年問題を始めとして、
www.msn.com

介護にしろ、コンビニにしろ、今や外国の人の労働力がなければ、日本人は日常生活を過ごすことも死ぬことすら、できない(笑)。


 原発も、社畜化と引き換えに企業が正社員の人生を保障する終身雇用も、『正社員の男性が非正規社員の女性を職場でも家でも安くこき使う』既得権益も、世の中の大きな流れとしては亡びる方向にあります。そういったものに支えられてきた日本の社会は変わっていかなければ生き残ることはできない。
『変わりたくない人々』の昭和リバイバルにも、『9条守れ』に代表される日米安保の傘の下の(偽の)平和主義にも未来はない



 それでもごく僅かですが、日本の社会の中にも変化の種子は播かれています。自分の頭で考え、行動する人々の存在です。たぶん男ではなく女性が、年配より若い人のほうが多いでしょう。我々に未来があるとしたら、そういう種子を大きく育てていくことの中にあると、ボクは思います。


ということで、今回は話題の邦画2本の感想です。奇しくも前述の『変わりたくない人々』とも絡むお話しです。
まず、有楽町で映画『新聞記者
shimbunkisha.jp
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東都新聞の記者・吉岡(シム・ウンギョン)は、規制緩和の特区に伴う大学新設計画にまつわる極秘情報の匿名FAXを受け取り、調査を始める。内閣情報調査室官僚の杉原(松坂桃李)は、政権維持のための世論作りの任務に従事している。官僚は国民に尽くすべきという彼の信念と現実とのギャップに日夜煩悶していた。そんなある日、かっての先輩官僚(高橋和也)から電話がかかってくる。


 東京新聞記者・望月衣塑子氏の著書を原案にしたサスペンスドラマということで話題になっています。ただし、ボクはそういうことで贔屓の引き倒しはしません(笑)。むしろ、題材に引きずられて映画としてはやばいんじゃないかという危惧の方が先に立ちます。
 日本の作品って大多数がそうじゃないですか。ドキュメンタリーも含めて正義感をアリバイにつかったバカみたいな作品の方が多い。

 この週末から公開されたこの映画、ボクは有楽町で見たのですが、客は結構入っている。が、年配客が多い。
 これもまた問題で、こういう映画に関心を持つ層はデモと同じかという気がしないでもない。
 また、それ以前に最近は年寄りの方が鑑賞マナーが悪いことが多い。岩波ホールが典型ですが、トイレが近いので上映中に席を立つ奴が多いのは我慢するにしても、大きな声でおしゃべりしたり、足が弱ってる癖にわざわざエンドロールが流れている暗闇の中で席を立って周りの人にぶつかったり、関節が固いのにムリして足を組んで後ろの席の背を蹴ったり。
 ちなみにボクは席の背を蹴られるのが大嫌いです。あれはすごく気が散る。この日も見ている間 3回背を蹴られて、とうとうブチ切れて後ろのクソジジイを怒鳴りつけました。『真実は細部に宿る』でしたっけ、団塊世代の質の低さってマナーの悪い観客が多いところにも表れている。
 残りの観客は松坂桃李ファンの若い女の子。こっちは害がありません(笑)。


 さて(笑)、映画は深夜の新聞社で主人公の女性記者、吉岡(シム・ウンギョン)がマーティン・ファクラー(前NYタイムス日本支局長)、南彰(新聞労連委員長)、望月記者、前川前文部次官の対談をコンピューターの画面で見ているところから始まります。吉岡は特区での大学新設計画にまつわる情報のファックスを受け取り、調査を始めたところです。
●東都新聞の若手記者、吉岡に匿名の文書が送られてきます。この映画は東京新聞朝日新聞の記者たちがアドバイザーとして入っています。それに映画ファンの文部官僚、寺脇研も加わっています。
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 前半は現実をそのまま反映したような描写が続きます。内閣情報調査室が公安とつるんで前川氏にそっくりな官僚を陥れたり、総理と懇意なライターのレイプ疑惑を闇に葬ったり、官僚がツイッターで政権擁護のコメントを発信しているところが描かれる。内閣に不利な情報が出ると他のマスコミを使って誤報として潰そうとまでする。

 たぶん現実にそういうことは起きているはずです。ランサーズなどの人材派遣会社が人を雇って政権寄りの意見をTWITTERで流す仕事を請け負っているのは暴露されているし、この映画でも描かれているように自民党のネットサポーターズはそういうことをやっている様です。例えばDAPPIという有名なネトウヨ・アカウントなんかは何らかの組織的な運営が行われている典型です。
buzzap.jp

 でも この映画のようにエリート官僚自らが一日中 直接twitterに書き込んだりはしてないと思いますけどね(笑)。東大出てそんなことやってるなんて、さすがにバカすぎるでしょ(笑)。
●外務省から内閣情報調査室に出向しているエリート官僚、杉原(松坂桃李)は国に奉仕するという官僚の本分と実際の仕事のギャップに違和感を抱いています。
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 元来 国のために働くべき内閣情報調査室が政権のために私物化されている、ということをこの映画はフィクションという形式をとりながらも正面から描いています。
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 ただ、ボクはそういうのは食傷気味です。そんなことより、それにかかわっている人たちがどういう論理でやっているのか、どういう気持ちなのか、そういうことを知りたい。
 映画の中では『安定した政権を保つことが日本のため』、『この国の民主主義は形だけのものでいいんだよ』という敵役の官僚(内閣調査室の上司)のセリフがあります。たぶんそんな感じだろうとは想像しますけど、映画での描写はそれだけなので、説得力はないに等しい。見る前から想像できちゃうようなことを言われてもちょっとね(笑)。
内閣情報調査室の上司(右、田中哲司)は『政権の維持を図ることが国のため』と情報操作を命じます
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 あと、吉岡の同僚や他社の新聞記者たちの描写も薄い。使命感を持っている者も上層部に忖度している者も居るでしょうけど、そこいら辺が全然描かれないのはどうかと思う。
●こういうことは映画の中で無視されているわけですよ。


 記者を演じる吉岡(シム・ウンギョン)、韓国の一流女優さんだそうですが、日本語がたどたどしい。日本人と韓国人の両親から生まれ、NYで育った帰国子女という設定なので、それはそれでいいんですけど、心の動きをのぞき込みにくい。『私たちこのままでいいんですか』と圧力に負けそうな上司に詰め寄る姿など骨太な演技には感動するんですけどね。
 ちなみに望月記者もアメリカからの帰国子女だそうです。『変わりたくない人』ばかりの日本社会では異分子こそが活性化の起爆剤になることが多いということでしょう。
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 お話は杉原のかっての先輩だった官僚(高橋和也)が上司の命令で不正に手を染め、やがて上層部からのトカゲの尻尾きりにあって自殺したことで(モリカケでもそういう事件が起こりましたね)、杉原が自分たちのやっていることに疑問を持つことで転機を迎えていきます。
 この映画、後半になってくると、実際の抗議のシーンも含めてやたらと官邸前が舞台になることが多くて、その点は個人的に面白かった。もちろん ボクは映っていませんでしたが(笑)。
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 杉原には愛妻(本田翼)に子供が生まれたばかり、国に逆らえば社会的に抹殺される、それこそ自殺にまで追い込まれかねません。一方 事件の闇を追う東都新聞の吉岡にも有形無形の圧力がかかってきます。彼らはどういう選択をするのでしょうか。
●杉原には子供が生まれたばかりです。なんで本田翼が出ているのか今いちよくわからなかったです(笑)。
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 思ったより悪くはなかった(笑)というのが率直な感想です。もっと、どうにもならない作品を想像していたのですが(笑)、ちゃんと映画にはなってました。何より、日本の商業映画でタブーなしに政治状況を描いたところはやっぱり評価できるし、参院選前を狙って公開されたことに現れているように政治への関心を高めるためにヒットすればいいな、とは思います。

 ただ、やっぱり、モリカケやレイプもみ消しなど現実を反映したデティールは中途半端だったし、何よりも吉岡や内閣情報調査室の官僚たちの描写が薄っぺらい。
 同じような題材の映画、例えばウォ―タ―ゲート事件を描いた昨年の『ペンタゴン・ペーパーズ』、『ザ・シークレットマン』、今年公開されたイラク戦争を描いた『記者たち 衝撃と畏怖の真実』なんかとはレベルが違うし、『バイス』のように政治風刺にもなってない。

ザ・シークレットマン [Blu-ray]

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『0414国会前大行動』と今 見るべき映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』 - 特別な1日
『新聞に出るニュースと出ないニュース』と映画『ザ・シークレットマン』 - 特別な1日
spyboy.hatenablog.com



 観客は登場人物たちの悩みや迷いから何かを感じる、学ぶべき点や思うところを得ると思うんです。その点、『新聞記者』は敵も味方も人物描写が薄っぺらくて、ドラマとしてはだいぶ劣るのは否めません。だから何なのって感じです。この不毛さが日本のマスコミの現実を反映しているのかもしれませんが、

 ただ松坂君はかなり良かったです。二束三文の典型的なイケメン俳優からの脱却を狙って、こういう仕事を受けているようですが今作は見事に成功している。国家権力からのプレッシャーに悩む役どころは、今どきの彫りが薄いハンサム君ならでは、といったところ。
 権力のプレッシャーを受けて、彼のうつろな不安げな表情は素敵でした。牙をむいてくる強大な権力に直面しているのはこの映画の彼だけではない、我々一人一人の姿でもあるのですから。

映画『新聞記者』6.28(金)公開/予告編[群像劇 ver.]

●『いだてん』出演中の俳優、古館寛治氏のツイート。もちろん彼は『新聞記者』にも『主戦場』にも出演していません。それでも、ということ。




もう一つ、新宿で映画『旅の終わり、世界のはじまり
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tabisekamovie.com

葉子(前田敦子)は舞台で歌うことを夢見ながら、テレビ番組のリポーターをこなしていた。旅番組を制作するテレビ局のスタッフ(加瀬亮染谷将太柄本時生)とウズベキスタンでロケを続ける葉子だが、慣れない異国の地のロケで撮影も思い通りにはいかず、葉子の心は晴れなかった。


 『アカルイミライ』の黒沢清監督の新作です。
 ウズベキスタンと日本の国交成立25周年ということで、ウズベキスタンが舞台であれば内容は制約なしで資金を出すという作品だそうです。
 ボク自身 AKBには全く興味ありませんが、前田敦子が主演したニートの大学生を描いた『もらとりあむタマ子』はとても面白かったのを覚えています。この人、女優としては良いと思う。今回の映画も前田敦子が演じる主人公が自分という存在に悩む姿を描いているのは『もらとりあむタマ子』と似ています。



 主人公はTVの旅番組のレポーターをやっています。仕事はプロとしてそつなくこなしている。でも彼女は本当は舞台で歌を歌うことを目指しているけど、そちらの道はなかなか開けない。ます。だから葛藤を抱えている。まあ、よくあるパターンです(笑)。
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 ただ、この主人公像にはボクは全く共感できませんでした。葛藤を抱えながらも仕事を一生懸命やるのは良いけれど、それ以外はスタッフとも、ウズベキスタンの人たちとも一切 話そうとしない。相手の言っていることを聞かない。相手の事を見ない。通りを歩く時も、いつも小走りで走り抜けるほどです。
 周囲を拒絶するのは判ります。ボクも同じです(笑)。でも、もうちょっとうまくやれよ(笑)。これじゃあ、幼稚すぎる。
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 ウズベキスタンという異国の地でドキュメンタリー風に撮られた映像ですから、主人公が心を閉じているのが一層浮き彫りになります。役者だけでなく、現地の人からも奇異な眼でリアルに見られている(笑)。面白いんだけどリアルすぎて、見ていてイライラするのを通り越して、恥ずかしくなってくる。幼稚というか、日本人ってこんなに愚かでひ弱だったんだなってところまで浮き彫りになってくる。
●いかにも、なロケ隊の面々(左から柄本時生加瀬亮染谷将太
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 前田敦子の演技、プロとして仕事をこなす見事なレポーターぶりとグタグタな主人公のキャラクターの対比は見事なものです。個性的な、良い女優だと思う。それにAKBに全然興味がないボクでも、AKBってこんな感じだったのかなと下世話な興味もくすぐられる。
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 あと、2度にわたって披露する、彼女の『愛の賛歌』は聞きものです。思ったよりは良かった(笑)。
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 ただ、ここで描かれている主人公像があまりにも幼稚すぎる。日本人が外国に行くとそう見えるのかもしれないし、実際 葉子が現地の人に子ども扱いされるシーンもあります。
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 バカな癖でひ弱で、内弁慶で、自分勝手な理屈ばかり、主人公を見ていると、最近の日本の風潮と重なって仕方ありません(笑)。主人公が現地のTVで日本で大火事が起きているニュースを見て、主人公が『原発事故?』とパニックを起こすことも含めて、黒沢監督は『目と耳を世界から閉ざして自分の狭い世界に閉じこもる多くの日本人=変わりたくない人々の戯画を描こうとしたのかもしれません。
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 お話しの中では主人公の心は徐々に開けていきます。ただ、それまでがあまりにもバカで幼稚だから、勝手にしろよ、と思ってしまいます。まさにドキュメンタリー!なウズベキスタンの光景、前田敦子の演技、と、悪い映画ではないですが、この映画を見ていると、自分も含めて、こらあ、日本人はダメだ、という感じばかりするのです(笑)。まあ、それは事実ではあるんですが(笑)。

前田敦子の涙が美しい…黒沢清監督『旅のおわり世界のはじまり』予告編

参議院選挙と『0628再稼働反対!首相官邸前抗議』

 早くも6月も終わりですね。もう1年の半分が過ぎてしまいました。
●今夕の日比谷公園のバラ🌹
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 20代の時からボクは定年を指折り数えて楽しみにしています。定年が嫌だと言う人の気がしれません。
 定年後にやること、やりたいことは既に一杯あります。本が床に散乱する読書部屋の掃除に、見ていないDVDを見て、読んでない小説を読んで、ギターの練習をして、PCの音楽演奏ソフトを覚えて、ルーティンの料理&運動もあるし、忙しくてどうにもならないと思います。大嫌いな宴会からも解放されるし。

 特に小説を読むのは好きなんですけど、普段 仕事をしている間はビジネス・モード(血も涙もないモード)(笑)なので、長期休みにでもならない限り あまり読む気になれません。ジョン・アーヴィング先生の本に、塩野七生ギリシャものや十字軍ものも買っただけで床の上に文字通り山のように積んである。

 とにかく早く定年にならないかなあ。ま、ほんとは今でもやれることはあるのに自分が怠惰なだけなんですけど、怠惰だっていいじゃないですか(笑)。
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 大阪の人に聞いたら、今回のG20で今月は全く商売にならないそうです。
news.yahoo.co.jp
●尼崎だけでなく、湾岸には物流センターが多いですから、どうにもならない会社は多いでしょう。

 何よりも物流がまともに動かないので、売上に大きな影響があるそうです。しかも月末なのに。こんなくだらないことのために景気を冷やしてどうするんでしょう。

 同じく 万博も資金不足でかなり強引な寄付のお願いが大阪の企業に回っているそうです。各企業に鉛筆で!金額が記入された奉加帳が回っていると聞きました。それも企業によっては億単位の結構な金額のようです。
 今どき 万博で景気回復なんて時代錯誤だと思いますが、ツケは大阪の皆さん、頑張って払ってね~(笑)。




さて、いよいよ参議院選挙ということで。
 当初はW選が濃厚でしたけど、消費税をそのままにして参院選のみにしたのは5月頃までの世論調査では内閣支持率が落ちず自民有利、という結果が出たから、とボクは解釈しています。W選は公明党の反対もありましたし、消費税の延期は財務省の反対もありました。
 ところが年金の問題で風向きが少し変わってきた、というのが現状でしょう。
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 かといって、野党の方に積極的に投票しよう、という気持も盛り上がらない。自民党は嫌だけど あの政党に入れたい、心から賛同できるっていうポジティヴなモチベーションが湧かないんです。
 
 もちろん今のまま 与党の圧倒的優位が続けば日本の衰退は加速するでしょう。悪化する一方の国民の暮らしと国の財政と景気(全部じゃないですか!)、何の成果もない外交と安全保障少子高齢化など日本が抱える長期的な課題への対処も殆ど進んでいない。それに統計問題などにみられる行政機構そのものの弛緩

 だから与党の議席を減らして、政治に緊張感と議論を齎すようにしなければ、どうにもなりません棄権なんて自分の首を絞める最低の犯罪行為です。これはもう、右とか左とか関係ない。
 だけど、残念ながら、諸手を挙げて応援したいような野党も居ない。

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 現時点での東京選挙区の情勢報道が出ていました。JX通信社というベンチャーの通信社のものですが、前回の選挙ではそれなりに信憑性がある調査をやっていたところです。
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 東京の定数6のうち、『丸川珠代自民党)、山口那津男公明党)に武見敬三自民党)、吉良よし子(共産党)、塩村文夏立憲民主党)、山本太郎(れいわ新選組)が続き、山岸一生(立憲民主党)、音喜多駿(日本維新の会)、水野素子(国民民主党)らが追い上げる展開』だそうです。
 要するに自民2、公明1、共産1、立民1、残りを山本太郎と立民が争っているという構図です。

 参院選は情勢が非常に変わりやすいそうで、しかも公示前ということで性急に判断はできません。ただ 今のところ 山本太郎ともう一人が最後の議席を争う、という情勢は前回と変わらないようです。他の調査でもそうでしたし。
 
 前回は最後の議席山本太郎と自民の武見が争ってましたから、ボクは山本太郎に投票しました。当選後、山本のあまりのバカさに呆れかえったのも事実ですが、それはそれで正しかったと思っています。

 今回もボクは、最後の議席を狙う候補の中で、最もマシな候補に投票します。本当の気持ちとしては、金曜官邸前抗議に殆ど毎週やってくる共産党の吉良ちゃんに投票したいんですけどね。
 彼女はエキタスや未来公共など共産党以外が主催するデモにも、我々同様 個人として一人で参加してくるし、とても共産党とは思えない(笑)。だけど、現時点では当選圏内なので投票しなくても良さそうです。

とにかく マシな議員を一人でも増やす為の戦略的投票です。ただ、できれば山本太郎には投票したくない(笑)。立民の山岸(元朝日新聞記者)と山本の議席争いなら、投票先は立民の山岸にします。
 
 実際 そういう人が多いらしく、不利を感じた山本は、支持層を広げようと三橋貴明のようなネトウヨとくっついたり、比例区への転出を模索したりで、選挙区への立候補を明言していません。
自民党は国会前の抗議を規制することを検討し始めたようです。独裁国家への道、まっしぐらじゃないですか。


 比例区の東京ブロックは今回はもう、共産党一択です。個人としての吉良ちゃんや理路整然とした議論ができる小池晃はともかく、ボクは『民主集中制』というペテン独裁体制の共産党は大嫌いだし全く信用していません

 今回の選挙公約でも『直ちに最低賃金を全国一律 時給1000円に上げ、時給1500円を目指す』とありますが、『直ちに』なんてことをしたら日本経済はひっくり返ります。それで潰れる企業に勤めていた人をどう救済するかということもセットじゃなければ、全く現実的ではありません。ホントにアホな連中です。
 
 でも 比例区立憲民主党に投票すると、比例区の候補に入っている原発デマ芸人おしどりマコが当選する可能性がある。原発事故が起きたらイソジンを飲め』のようなデマで商売しているクズを議員にするわけにはいきません。こいつは左の杉田水脈です。こういう詐欺師が脱原発の足を引っ張るんです。
 嘘つきよりアホの方がマシです。

 ちなみに比例区東京ブロックの情勢は前回より自民が優勢だそうです。
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 無党派層でも自民が伸びています。
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 野党に魅力がない、のはボクだけでなく、多くの人の実感だと思います。立憲民主党だって、蓮舫のヒステリックで的外しな国会での年金質疑、おしどりマコモーニング娘の候補推薦、常識があるまともな人だったら、あんまり投票したいと思わないですよね。他は論外。

 国民の関心は相変らず『福祉』、『景気』です。『憲法守れ』とか関係ないから(笑)。

 これだけ生活が厳しくなると、余計です。しかも東京でこれですから、地方へ行ったらもっと明確でしょう。だからこそ野党も福祉と経済に集中してほしいと思います。アベノミクスが失敗しているのはもう明白なのですから、あとは、いかに説得力を持って政策を訴えられるか。
 選挙戦はこれから始まります。 とにかく少しでもマシな世の中にしないと。



 ということで、今週も官邸前へ #金曜官邸前抗議
 東京は台風一過、爽やかなお天気ではなく、まるでぬるま湯の中を歩いているような、どよーんとした湿っぽいお天気(笑)。今日の午後6時の気温は28度。参加者は300人くらい。
 今日はしばらくお休みだった人も顔を出したり、改めて、この抗議はしぶといなーと感じました。参加者にはアホみたいな奴もいないわけじゃないけど、大多数の人は動員でもなく自分の意思でやって来て、声高でもなく、でも断固として、大人の抗議を続けています。

●抗議風景




 26日、原子力規制委が、国内すべての原発に様々な検査不正があった部品が納入されていることを発表しました。

www.nikkei.com

 規制委によると、具体的にはこれらの製品です。著名企業ばかり。

https://www.nsr.go.jp/data/000275035.pdf

 規制委は『これまで報告を受けた限りにおいて、原子力安全上の問題は確認されていない。』としていますが、報告を受けてないものはどうなんだ????というのは子供でも思いつく突っ込みです。

 しかも再検査は第3者(規制委)が行うのではなく、『各事業者(*電力会社)は製造業者に立ち入り、品質保証体制や過去の検査・試験データの確認等を行い』とあります。電力会社や製造業者がまた嘘をついていたり、調査漏れがあったらどうするのでしょう。現に今までに何度もそういうことは起きています。要するに泥棒に泥棒の番をさせている、という訳です。

 これで原発は安全、と言われても信用なんかできるわけないじゃないですか(笑)。日本を代表する著名企業がこれだけ製品検査の改ざんを行い、それに対して公的機関が子供のような言い訳を堂々と流し、マスコミも誰も突っ込まない(笑)。マジ、日本は劣化しています。そんな劣等国民原発を動かす資格なんかありません