この前 銀座で、松江の名物という鯛めしを食べに行ってきました。
普通は鯛ごと炊きこんで仲居さんにほぐしてもらうんでしょうけど、ここの店は炊立てのご飯に鯛のそぼろ等の具を載せ、鯛の骨の出汁をかけて食べる。
ま、味はフツ―(笑)、です。まずくはないけど、すごく美味しいというわけでもない。出汁は良かったから、まあ、美味しい、そんな感じです(笑)。
その鯛めしを食べに行ったのは、それを出す松江の旅館『皆美』が、戦前の自由主義ジャーナリストで戦中に亡くなった清沢洌が名著『暗黒日記』を書いたところだからです。
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戦前 東洋経済などで外交や経済で自由主義的な言論を発表していた清沢は、治安維持法の成立後 軍部の弾圧で執筆活動を封じられました。雑誌側も本人も抵抗しましたが、配給制になった紙の供給まで止められてはどうしようもなかった。
仕方なく清沢は東京を離れ松江の旅館『皆美』に長期逗留、そこで日本の敗色が濃くなっていく日々を綴った『暗黒日記』には『当時の軍部や政治家が如何に腐っていたか、国民が如何にアホだったか』が如実に書かれています。
●暗黒日記を引用して呟く『暗黒日記bot』より
日本の新聞記者は官庁のメガホンである。 昭和19年4月3日
— 暗黒日記bot (@AnkokuNikkiBot) 2019年6月7日
戦争カゼもユダヤ人の謀略である旨、ユダヤ研究家が発表している。これが「昭和日本」の知識標準だ。 昭和19年1月22日
— 暗黒日記bot (@AnkokuNikkiBot) 2019年6月6日
この本を読むたびに、今と比べてどうなんだろう、と思ってしまうんです。政治家や国民のアホさ、無関心、フェイクニュースまで、今とあまり変わらないんじゃないでしょうか。
今週末は『安倍辞めろ』デモもあります。様子は月曜日の更新で。
#AbeOut0608 #安倍は辞めろ
— 木村夏樹 Natsuki Kimura (@_natsukik) 2019年6月5日
6月8日(土)12時15分
日比谷公園中幸門出発 pic.twitter.com/Ad2EyR2uLg
#0609原宿デモ のデモコースです🗺
— 未来のための公共 (@public4f) 2019年5月30日
🌟都立青山公園南地区出発
→ 外苑西通りへ右折
→ 南青山三丁目交差点左折
→ 表参道交差点右折
→ 神宮前交差点左折
→ 神宮通公園ゴール🌟#選挙で変える
日時:6月9日(日) 15時45分出発
場所:都立青山公園南地区多目的広場https://t.co/wODKt4uF28
少し前 311以降のさまざまな抗議に参加している社会学者の木下ちがや氏(こたつぬこ)が
- 作者: 木下ちがや
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『実現できないことを掲げないとつかめない層』簡単に言えばアホってことですが(笑)、BREXITやトランプに投票したり、小泉改革やアベノミクスを支持した庶民はまさにそうだと思います。自分で自分の首を絞めているのですから。フランスの黄色いベスト運動もそうですよね。次第にただ暴れるだけの連中が増えて、それを極右・極左が煽ってた。
前回の参院選では、ボクは東京地方区は山本太郎に投票しました。自民の武見と山本太郎が最後の議席を巡って競り合っていたからです。ボクの投票基準は、どちらがマシか、ですから(笑)。
しかし判っていたこととは言え、当選後 山本太郎や周りの連中(三宅洋平とか岩上安見とか田中龍作、中核派もどきも居た)はアホとデマばかりで流石にうんざりしました。
山本太郎はたまには良いことをやっているとは思うけれど、原発即時ゼロ等の非現実的な発言はかねがね、嫌だなーと思ってました。自民候補を当選させるよりはマシですが、功罪を考えれば罪の方が大きい。
実現できないことを掲げるのは、むしろ現実の変革の足を引っ張ります。総理大臣当時の鳩山の『(米軍基地は)最低でも沖縄県外』が良い例です。
山本は最近は『MMT』や『反緊縮』『財務省潰せ』とか言ってるらしい。安倍晋三は史上最大の予算を執行して財政赤字が拡大してるのに何が反緊縮だよ(笑)。こいつは本当にバカだと思います。
過激なことを言って大衆受けしても、まともな人には笑われるだけです(笑)。それでは現実的な力を持つことは絶対にできない。民主党政権がダメだったのは最初は官僚を排除するばかり、後半は官僚に頼りきり、結局 コントロールできなかったのが大きな理由の一つです。
世の中を動かしているのはデマや空理空論ではない。実務の出来る『まともな人』です。少なくとも官僚は実務は出来る(はず)。腐りきった1割くらいは捨てなきゃいけないかもしれませんが、残りは使いこなさなきゃ。それが頭を使うってことです(笑)。
しかし、国民の中には現実に理屈じゃなく判り易い信仰を求めている人も一定数 存在しています(笑)。一定数どころか、少なからずいるのかもしれない。ポピュリズムとも呼んでもいい。木下氏は『そういう層を取り込むには山本太郎は有効じゃないか』というのです。
もし山本太郎が居なければ、信仰を求めている人は『維新』や『NHKから国民を守る党』、『日本第一党』などの極右に行く可能性は高い(笑)。信仰を求めている連中は自分の憂さを晴らせれば何でもいいんです。リベラルとか左とか言ってても、脳味噌が足りないところはネトウヨと大して変わらない。
NHKから国民を守る党 立花代表「(区会議員は)そりゃあもう、おいしい仕事ですよ!」報酬明細や銀行通帳を見せながら解説した。「議会の会期は5日で定例会は年4回ですから年間20日。しかも1回平均2時間程度。それでボーナスが年3回。年収は約1000万円です」 https://t.co/viTiZc32uG
— 町山智浩 (@TomoMachi) 2019年6月4日
そういう層には、なかなか理屈は通じにくい。それだったらバカの票は山本太郎に吸い込んでもらうのもいいんじゃないか。確かに合理的な判断ではあります。ただボク自身はバカは嫌いだし、時間がもったいないので関わり合いになりたくないですけどね。
世の中の常として、考えることができない層は一定量居るのは間違いないので、山本太郎のようにゴキブリホイホイの役割を果たす存在は当面 仕方がないことかもしれません。毒を持って毒を制す、アホを持ってアホを制す(笑)。ゴキブリホイホイは使い捨てですしね(笑)。
ただゴキブリホイホイもマトモな人が副作用は極力抑えないといけないとは思います。
もう一つ、関連する話題です。
前々から書いている通り、元号というものは不便且つ不愉快な存在です。日本の伝統でも何でもない。日本人の井の中の蛙意識を増長させ、日本人の頭を悪くするだけの邪習でしかありません。勤務先でもボクが音頭を取って元号を社内の書類から完全追放したくらいです。
その元号について、今週水曜日 作家の池澤夏樹が朝日朝刊でコラムを書いていました。
www.asahi.com
元号について述べた、以下の書き出しは当然として、
今回の皇位継承は諒闇(りょうあん)なき祝祭だったから世間がはしゃいだのは当然としても、お祭り総理の音頭取りでメディアをはじめ みなよく踊ったものだ。制定の過程を見ていてわかったのは、元号とは天皇制の権威を背景に官邸が国民に下賜するものだ、ということだ。
末尾のこれはその通り、と思いました。
数ある祝日の中で最も無意味に思われるのが二月十一日
中略
国民統合のためにどうしても必要と言うのなら、やはり今の「国体」ができた日本国憲法施行の五月三日がよかったと思う。
いくたび元号を変えようとも、変わらない陰の元号がある。 「戦後」。
池澤の言うとおり、日本国憲法施行の日が建国記念日だったら、我々の日本という国に対する意識もだいぶ違ったと思うんです。
国家の成立には、国民の間で共有できる何らかの『物語』があります。イギリスの名誉革命、フランス革命、アメリカの独立戦争、中国共産党の長征、ボクの知る限り、国民国家というものの存在には全て何らかの『物語』がある。国民の意識を統合するための物語、象徴です。それを具現化したものが『憲法』なんでしょうか。
ところが戦後の日本は、国民の間で共有できる『物語』がはっきりしない。そこに不満を持つ人は左右を問わず、居るわけです。
『太平洋戦争敗戦による民主化』というのは戦後しばらくの間は国民の間で膾炙するものになっていましたが、GHQの力を借りたものですから、物語の力としてはどうしても弱い。『(日本人自ら)敗北を抱きしめた』(ジョン・ダワー先生)で納得できない連中というのはどうしても、出てくる。
- 作者: ジョンダワー,John W. Dower,三浦陽一,高杉忠明
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そういう連中が、大日本帝国を持ち出す。連中の、美化や歪曲した歴史修正主義は最初は常識ある大人には笑われるだけでしたが、戦争の記憶が薄れるとともに多少は力を持ってくるのも理由がある。また自称保守派や丸山穂高のような連中が国家とか道徳とか家族観とか、実態は自分たちの私生活と相反するような規範を持ち出したがるのも(笑)、国民統合の物語がはっきりしないからです。
嫌韓とか嫌中とか言ってるネトウヨ連中も物語を求めている。実生活が惨めだからこそ、それを忘れさせてくれる、自分のアイデンティティとなるような大きな物語が欲しいんです。ちなみに元事務次官に殺されたひきこもりの息子もゲームのドラクエ廃人であるだけでなく、ネトウヨでした(笑)。
農水省事務次官(70代)の父が「周囲に迷惑をかけてはいけない」と思い悩んで刺し殺した40代引きこもりの息子はネトウヨだったのか。 https://t.co/NtxXcrXrNp
— 町山智浩 (@TomoMachi) 2019年6月2日
特に最近は戦争の記憶が薄れ、新自由主義の大波がやってきて格差が広がり、将来の不確実性が拡大し、日本経済は沈没しつつある。それに対する不安から、右左関係なく、国民統合の物語への欲求が高まっているのではないでしょうか。ナショナリズムですね。
元々ボクは『ナショナリズムは愚か者の最後の隠れ家』(サミュエル・ジョンソン)と思ってますけど、日本の場合は物語がはっきりしていない分だけ、ナショナリズムは不健全なポピュリズムに転化しやすい。だから、他国のものより悪質です。
そして、池澤が言うとおり、1945年以降 日本の元号はずっと『戦後』でした。昭和でも平成でもない。
白井聡流に言えば、『アメリカ従属』という新たな天皇を戴く国体がずっと続いていた。安倍晋三などがやろうとしているのは『アメリカ従属という国体を守りながら、新たな国民統合の物語を作ろうとしている』です。それが改憲の意義です。まあ、アメリカに従属しながら国民統合をしようなんてもともと矛盾していますから、ムリ筋の笑い話かもしれないんですが(笑)。
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だけど、それに反対する側も厳しい。
『9条守れ』じゃ、物語としては全然ダメ。統合の物語が欲しいという人々の潜在欲求に応えることができない。『立憲主義』じゃ意味がわかんない(笑)、統合の物語としては全くムリ(笑)。あと『アメリカ従属反対』も物語としてはダメ(笑)。それだけでは別に何か建設的な話、新しい物を創るような話ではありません。アメリカ反対もいいけど、じゃ、どうするの?ってことになる。
沖縄のように地域のアイデンティティを前面に出せば統合の物語に成り得ますが、日本全体ではありえない。そもそも『××反対』っていうのは、ワクワクしない。
国民統合の物語なんか要らない、というのも一つの考え方です。ボクはそう思っています。日本なんかアメリカ51番目の州になって解散しちまえばいい(笑)。経済でも政治でも安全保障でもその方がメリット大きいからです。天皇はどこかの神主にでもして、神棚の上で飾っておけばいい。
でも大勢の人がサッカーやオリンピックに熱狂するのを見ていても、右左に関わらず統合の物語、シンボルを持ちたいと言う欲求に耐えられる人はそれほど多くないと思うんです。
だとしたら民主主義を守ろうとする側も、改憲に代わる『物語』を提示していくことが必要になります。唯一可能性があるとしたら、『経済』、『福祉』でヴィジョンを作り出すということでしょうか。しつこいけど、立憲主義や9条守れ、アメリカ従属、じゃ全然だめ(笑)。コンセプトがずれてる。
現状のかなりお寒い状況を考えると、いよいよ『戦後』という元号が終わろうとしているのかもしれません。
ということで、今週も官邸前へ
今日は生憎の雨。西の方は大雨のところもあったみたいですね。でも抗議が始まる頃には殆ど止みました。
今日の午後6時の気温は18度、参加者は100〜200人くらい?。今までで一番少なかったかも😁
●抗議風景
今週は原発関連で驚くべきニュースが2つ、ありました。
一つ目は『横浜市でこの4月、放射能汚染土を敷地内に埋設している保育園で園児2人が白血病に罹患していることが判明』したという恐ろしいニュースです。
headlines.yahoo.co.jp
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www.kanaloco.jp
こういうのはガセネタが多いものですが、朝日、神奈川新聞と複数のマスコミが報道しているし、白血病が出た保育園で市が説明会を実施していますので、事実です。
依然 横浜市は『安全性』を強調しているようです。もちろん、園児の白血病と汚染土の科学的な因果関係を証明するのは困難です。そんなことはできないと思う。だけど、安全という証明も難しい。だとしたら予防原則で対処するしかないと思います。
そもそも横浜市が保育園や小中学校に汚染土を埋めているのか全く理解できないです。うーん。もともと中学校の給食を拒否する野蛮な自治体です- - -。横浜なんか、絶対住みたくないな。
もうひとつ。こっちの方が大問題。日経産業が今週3回にわたって記事を載せた『サイクル政策の蹉跌』です。内容は11年の原発事故後、核燃料の再処理を見直そうとしながらも事実上、撤回した民主党政権を振り返ったもの。
www.nikkei.com
www.nikkei.com
www.nikkei.com
これが非常に面白い。勉強になりました。長くなりますが大事なことばかりなので、内容をご紹介します。
1.民主党は12年末の総選挙で原発ゼロを本気で公約に掲げる方針で核燃サイクルもやめるつもりだったが、青森県の反発で核燃サイクルを止めることが出来なかった。当時 ちょうどイギリスから再処理後のガラス固化体が輸送中で、核燃サイクルを止めるならガラス固化体を受け入れないと青森県に拒否されるとガラス固化体の行き場が無くなってしまう、のが理由だった。
2.日米原子力協定に関する協議で、民主党はアメリカに『原発ゼロ、核燃サイクル継続』と方針を説明したが、アメリカには『日本は核兵器の原料となるプルトニウムを作り続けるのか』と拒否された。同時に、『アメリカの原子力産業は日米合弁であり、日本が原発から撤退すれば米国の技術も衰退する恐れがある』、『日本が原発から撤退すれば、中東での資源獲得競争が激しくなる』との理由も提示された。
3.11年の事故直後 原子力委員会(当時)は『コストが高すぎる』として再処理を止める案を提案しようとした。しかし、その検討内容が『何故か』新聞やTVに漏れて『原子力委員会の秘密会議』として非難され、民主党政権は再処理放棄の案を採用しなかった。
どれも非常に考えさせられる問題です。当時『電力労連がいるから民主党は脱原発に本気ではない』とボクは思っていたので、民主党が本気で原発を止めるつもりだったが、出来なかったと言うのは意外でした。また、バリバリの保守派の長島昭久がアメリカへ説得に行った、というのも意外でした。だから失敗したのかもしれませんが。
民主党の脱原発が果たせなかったのは、直接的には『1のように政治的手腕の拙劣さや運の無さ』、『2のように理論武装の不足』、『3のように原発村のリーク』などが理由です。が、原発を止めるということは困難だし、時間もかかることが良く判ります。間違っても山本太郎のように『原発即時廃棄』なんて、簡単に言えるわけがない。アホというだけでなく、鳩山元首相より無責任です。
と、同時にこれらの事柄は解決できる問題でもあります。アメリカの言い分だって当時と今とでは事情は全く変わったし(シェールや東芝壊滅、自然エネ)、少なくとも理論的にはクリアできる。もちろんエネルギー安全保障や地元への補償など他の問題もあります。でも、時間と意志、知恵を持てば、我々は原発から脱却できる、改めてボクはそう、思いました。